「英語教育改革」によって2021年度から中学校での英語学習の量が増え、授業内容も変わったことをご存知でしょうか? 新学習指導要領では、従来の「読む」「聞く」だけでなく「書く」「話す」も加えた4技能全てを伸ばすことを目標にしています。でも「難しくなったなんて、子どもがついていけるかな……」「具体的に何が変わるの?」と不安に感じますよね。
そんな疑問にお答えするために、英語教育改革で変わった点や英語学習のコツ、受験英語でおさえるべきポイントをまとめました。大きく変わった中学生の英語も、事前に学習方法やおさえるべきポイントを確認しておけば安心です!
「英語教育改革」で変わった中学生の英語
「英語教育改革」とは?
英語教育改革とは、文部科学省が進める英語教育内容の見直しのことです。「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能全てを高めることを目標に、小中高の学習指導要領の改訂も行われました。いわば「英語でのコミュニケーション能力」を伸ばすことに重点を置いた学習にシフトする改善策です。グローバル化が進む中「英語を使う力」を習得する必要性が高まっていることが背景にあります。中学校では、移行期間を経て2021年度から新たな学習指導要領に基づく授業がスタートしました。
授業のオールイングリッシュ化
英語教育改革で、英語の授業は基本的に全て英語で行われる形になります。文部科学省の『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』でも「授業を英語で行うことを基本とする」と明記。教師から生徒への指導や生徒同士のコミュニケーションも全て英語で行う「オールイングリッシュ」の授業を原則としています。身近な話題について理解し、簡単な情報交換ができるレベルを目標に、ニュース記事について自分の意見を発表する授業などが想定されます。
学習内容の増加
英語教育改革にともない、中学英語の学習量も増加。中学校で習う単語数は、1,200語程度から1,600~1,800語に増えます。さらに、以前は高校で学習していた仮定法や現在完了進行形などの文法項目を中学校で先取り。学習量が大きく増え、中学生が目指すべき英語レベルは以前よりも高くなったといえます。
中学校の各学年で習う英語
まずは各学年で習う基本的な学習内容を確認しておきましょう。
中学1年生
アルファベット、肯定文、否定文、命令文、複数形、三人称単数、疑問詞、過去形、現在進行形、過去進行形など
中学2年生
未来文、助動詞、不定詞、動名詞、比較、付加疑問文など
中学3年生
受動態、現在完了形、現在完了進行形、分詞、関係代名詞、接続詞、仮定法など
中学生の英語学習のコツ
英語4技能をバランスよく育てる英語教育にシフトする中、中学生の勉強も従来の暗記だけでは足りなくなっています。これからは「書く」「話す」力の強化も取り入れた学習が必要です。
単語
リーディングの基礎となる単語知識は、しっかりと記憶に定着させる必要があります。さらに「話す」力の強化を見据えて、スペルだけでなく発音も同時に学習するのがポイント。新しい教科書には発音を聞けるQRコードがついていますので、ぜひ確認しながら覚えていきましょう。声に出して読みながら書き取りをすると、さらに効果的です。
リスニング
リスニング力アップには、音読とディクテーションが役立ちます。音読とは、聞こえてくる音声通りに英文を発音すること。ディクテーションとは、音声を書き取る方法です。聞き取れているつもりでも、書き起こそうとするとつまずくケースがあります。単語の発音を知らなかったり、英語特有のリズムやアクセントに慣れていなかったりと、理由は様々。なぜ聞き取れなかったのかを把握することで、英語への理解が深まりリスニング力を強化できます。
ライティング
楽しみながらライティング力を鍛えるなら、英語日記がおすすめです。英作文能力だけでなく、単語や文法の復習にも役立ちます。一日のうちどのタイミングでもよいので、空いた時間に数行程度の短い日記を書いてみましょう。今日あった出来事やその感想、今興味のあることや将来したいことなど、内容はなんでもOK。授業で習った単語や文法を使って自由に書いてみてください。ライティングでアウトプットの練習をすると、スピーキング力の強化にもつながります。
スピーキング
単語・文法・発音を組み合わせて素早く言葉にするスピーキングは、やや難易度が高いスキルです。コミュニケーションを通して磨かれる能力でもあるため、対人で慣れるのがもっとも効率がよいでしょう。授業中にクラスメイトと英語で会話するだけでも効果はありますが、高いレベルを目指すなら英会話スクールを利用するのも一つの手。オンライン英会話レッスンなら自宅で受講できて便利です。個別指導レッスンの場合、周りに他の受講生がいないので気恥ずかしさなく受けられるのもポイント。
受験英語でおさえるべきポイント
高校受験も4技能を測るテストに?
「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を重視する流れは、高校受験にも影響を与え始めています。東京都教育委員会は、2023年度から都立高校入試で「英語を話す」能力を評価する試みを始めると発表。都内の公立中学3年生を対象にスピーキングテストを行い、その結果を都立高校入試に反映させる取り組みです。こういった試みは他府県では行われていませんが、今後地方へ広がる可能性もあります。従来の「読む」「聞く」力だけでなく「書く」「話す」力もバランスよく強化しておくとよいでしょう。
高校入試では、従来から「読む」「聞く」力を測るテストはありましたが、近年ではE-mailの返信や意見陳述で「書く」力も測るようになってきました。「話す」力を測るテストは、まだ本格的には導入されていませんが、今後もっと本格的に導入されていく可能性が高いです。
英検の資格を持っていると、高校入試で優遇されるという仕組みも増えてきています。東京都立高校の場合、英検準2級以上を持っていると、英語の成績評価で加点されます。
私立高校でも、英検3級や準2級以上の資格を持っていると、英語の成績評価で加点される学校はあり、中3の秋までに英検3級以上の合格を目指す生徒さんが増えています。
中学3年生までに習う内容をしっかり理解する
英語教育改革を受けて、小学校での英語授業もグレードアップします。中学3年生までに習う内容も増えるため、それまでに学習した単語や文法の振り返りが欠かせません。小学校では2020年度から、小学3・4年生での外国語活動(英語)をスタート。小学5・6年生では教科としての英語授業が始まり、成績もつくことになります。新学習指導要領では小学校で600~700語程度の単語習得を目標としており、これだけでもかなりの差がつく量です。受験勉強を始める前に、まずそれまでに習った内容をしっかり定着させておきましょう。
長文読解問題に慣れ、スラッシュリーディングを活用
入試問題の中で大きなウェイトを占める長文読解問題。重要な得点源ですが、ハードルが高いと感じる受験生は少なくありません。単語や文法の復習がひと段落したら、長文読解問題をたくさん解いて慣れておくのがおすすめです。さらに「スラッシュリーディング」というテクニックを使うと、読むスピードが上がります。スラッシュリーディングとは、文章内の意味のかたまりごとに訳していく方法。返り読みせず、頭から訳していけるため速読ができるのです。例文を見てみましょう。
He was so tired that he flopped down upon the nice soft sand on the floor of the rabbit-hole and shut his eyes.
訳)彼はとても疲れていたので、ウサギの穴の床に積もる柔らかい土の上にぺたんと座って目を閉じた。
接続詞や前置詞の前にスラッシュを入れると、このように読みやすくなります。
He was so tired / that he flopped down / upon the nice soft sand / on the floor of the rabbit-hole / and shut his eyes.
訳)彼はとても疲れていた / 彼はぺたんと座った / 柔らかい土の上に / ウサギの穴の床の上の / そして彼は目を閉じた。
慣れてくるとスラッシュを入れなくても、意味のかたまりごとに理解するクセがつき、読むスピードが上がります。
スラッシュリーディングができるようになると、英文読解だけでなく、声に出して長めの英文を読む際にも役立ちます。英検3級以上の二次試験では、声に出して英語パラグラフを読むというのも含まれ、スラッシュリーディングができる人は、英文を読むのも上手い傾向があります。英語の発音の問題もありますが、意味のまとまりでスラッシュを入れて読めると、英文を読むのがうまいと評価されやすいです。
過去問は時間を時間を計りながら解く
試験問題は学校によってある程度出題傾向があります。その傾向をつかみ慣れておくために、過去問は有効です。その時に重要なのが、時間を計りながら解くこと。時間内に間に合うか、何問解けるのかを確認しましょう。そして、問題を解いた後は採点と復習を忘れずに。不正解だった問題の正しい解き方を理解し、少し時間をおいて解き直しをするのが、何よりも大切です。
中学生の英語力をアップさせる方法
中学生で学ぶべきとされる英単語の数が1,200語程度から1600語~1800語に増え、英語の4技能の充実が求められるようになってきて、厳しくなってきたなと感じている親御さんも多いでしょう。しかし、英語の学習方法も数十年前と比べて、劇的に便利になって、充実してきています。
お子さんの英語の成績がイマイチ伸び悩んでいるのは、そういった便利な学習方法がうまく活用できていないというのも一因として考えられます。
中学生の英語力アップに役立つ方法をいくつか紹介します。
英単語・熟語のアプリ
中学生で覚えなくてはならない英単語の数は、以前より1.3倍から1.5倍増えましたが、10年以上前と比べて、英単語・熟語のアプリが充実してきました。英単語・熟語を覚えるために、そういったアプリを活用されている方も増えているのではないでしょうか。
英単語・熟語を覚える上でおすすめのアプリは、以下のとおりです。
- 英語の友:英検の出る順・パス単のテキストの音声アプリ。単語とその意味、例文などが音声で聴けて、1日30問まで無料でクイズに回答できる。
- mikan:大学受験は英単語ターゲットシリーズや速読英単語、英検®︎は出る順パス単シリーズ、TOEIC®︎は金フレ・銀フレを含む特急シリーズをはじめとした150冊以上を収録。
- 英語学習モード Playgram Typing:中学3年、英検2級までの単語をカバーしており、タイピングしながら単語が覚えられます。
英語の多読ができる本やアプリ
単語・熟語をその使い方と併せて覚えることは必要ですが、小中学生の頃から英語の多読に慣れ親しみ、長文を読むことに抵抗を感じないようにすることも重要です。
英検3級までは、特に学習障害がないお子さんであれば、人並みにコツコツ努力して勉強すれば誰でも合格できると言っても過言ではない時代になってきていますが、準2級以上になかなか合格できない生徒さんが一定数おられます。
単語・熟語だけ覚えてもそれを英文の中でどう使っていいのか分からない子、長文読解やリスニングがとても苦手な子がいます。実は、そういったお子さんには共通している特徴があります。
「幼児や小学校のときから読書をほとんどやってこなかったし、読書が嫌いで苦手」と申し合わせたように同じことを言います。学校の教科書やテストでは、仕方ないから与えられた英文を読んでいるけど、面白いと感じて自主的に本を読むことは一切ない様子です。
中学生の早い段階から、英語の多読の本やアプリなどを通して、読んで楽しいと思える本に出合える機会を作るようにするのがおすすめです。楽しいと思って多読をすることで、読解力は身に付いてくるでしょう。できるだけ若い時からそれをやっていくのがおすすめです。
多読をする際に、先ほど紹介した「スラッシュリーディング」のスキルを活用していきましょう。
オンライン英会話の活用
昨今の中学生は学校の成績を上げるために、どこかしら塾に通っている人がほとんどでしょうが、その塾で本当に成績がアップしているかは、時々見直してみた方がいいです。
「塾に通っているのに成績が上がらない、英検合格などで成果が出ない」と感じたら、まずその原因が何かを分析してみましょう。塾に通っているから大丈夫だろうと安心してしまい、本人が努力をしていないからかもしれないし、その塾がお子さんに合わないからなのかもしれません。
私立から公立までさまざまな中学校があるので、自分の学校の中間・期末テストに対応してくれる塾を選んでおられるケースが多いでしょう。しかし、英検合格に関しては、オンライン英会話のレッスンの方が成果が出やすいというケースもあります。
学研Kiminiオンライン英会話にも英検®合格コースがあります。学研の人気書籍「英検をひとつひとつわかりやすく。」シリーズをもとにしたコースです。英検合格に必要な語彙や文法の学習に加えて、学んだ内容を実際の会話で使うことで「話す・聴く・書く・読む」の4技能が総合的に身に付きます。
英検®5級合格コースから英検®2級合格コースまで、5コースがあり、3級以上は二次試験対策のための模擬試験8回分を含めたコースになっています。レッスン数は、25分のレッスンが約80回で、級によって少しずつ違います。
まとめ
学習内容の変更・増加や授業のオールイングリッシュ化など、大きな変化の中にある中学英語。不安に感じる中学生や保護者は少なくありません。ただ今回の英語教育改革は、小中高の先にある大学や社会人生活で、使える英語力を身につけるためのもの。小学生のうちから英語に触れ、グローバルなコミュニケーション能力を高めるよう工夫されています。変更ポイントや学習のコツをおさえて、少しずつ英語の知識を積み上げれば大丈夫。着実に英語力を強化していきましょう。
参考サイト
文部科学省『今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~』https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352464.htm
文部科学省『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1343704.htm
教育開発出版株式会社「中学英語教材」
https://www.kyo-kai.co.jp/school/chuu_e/
東京都教育委員会「東京都中学校英語スピーキングテスト事業について」
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2021/release20210924_03.html
Beatrix Potter “THE TALE OF PETER RABBIT”
https://www.gutenberg.org/files/14838/14838-h/14838-h.htm