「インバウンド需要」や「インバウンド対策」などの言葉を聞いたことはありますか?
テレビやネットニュースでもよく耳にするようになった「インバウンド」は、ビジネスシーンで欠かせないキーワードになりつつあります。
「インバウンド」は、英語”inbound”に由来したカタカナ言葉で、「入ってくる」「内向きの」などといった意味を持つ英単語です。
カタカナ言葉に慣れてしまうと、英語の意味を理解しないまま、間違った使い方をしていることが多々あります。
「インバウンドとよく聞くけれど、実際にどういう意味かは知らない」
「インバウンドの英語での正しい意味も使い方も、じつはよくわかっていない」
このような疑問を抱えながらも、いまさら聞けない…と困っている方もいるのではないでしょうか。
今回は、ビジネスに欠かせないカタカナ言葉「インバウンド」について、業界別にみた意味と英語”inbound”の正しい使い方を解説していきます。
「インバウンド」の意味
「インバウンド」は、英語の”inbound”をそのままカタカナ表記した言葉です。
日本語としては、「訪日旅行」または「訪日外国人旅行者」、「訪日外国人観光客」などと解釈されて使われています。
英語の”inbound”は、「内側」を意味する”in-”と、「~へ向かう」を意味する”bound”を組み合わせた単語で、本来は「本国行きの」や「市内に向かう」といった意味を持っている形容詞です。
「外から内に入ってくること」を意味する”inbound”に由来した「インバウンド」は、使用される業界や場面によって意味が異なります。
特にビジネスシーンでは、近年多用されるようになり、テレビやニュースでも頻繁に耳にすることが増えてきました。
ビジネス全般に共通している「インバウンド」の意味は、企業側からではなく顧客側から、注文や消費、問い合わせなど、何かしらのアクションが起こされるということです。
多種多様な使い方・解釈を持つ用語「インバウンド」の業界別にみた意味を紹介します。
観光業界における「インバウンド」
観光業界では、「海外の人が日本に旅行で訪れること」を指しています。
「インバウンド」の推移が、経済動向の重要な指標になっており、訪日外国人旅行者数の増加は、日本経済に非常に大きい影響を与えています。
マーケティング業界における「インバウンド」
マーケティング業界では、ウェブサイトやソーシャルメディアを通じて役立つ情報を提供して、顧客へ宣伝するための手法のことを意味します。
企業側から直接的なアプローチをかけるのではなく、顧客側からの消費行動や購買を促すために情報を発信することを表します。
コールセンター業界における「インバウンド」
コールセンター業界では、顧客側から注文や申し込み、問い合わせ、相談などの電話がかかってくることを指します。
「受電」または「入電」などといわれることもあり、かかってきた電話に出て対応することも意味に含まれています。
具体例:「お客様相談窓口」や「ヘルプデスク」など
「インバウンド」を含むビジネス用語
「インバウンド」は、英語から来たカタカナ言葉ですが、現在はビジネスに欠かせない重要キーワードにもなってきています。
ビジネスシーンで頻繁に使われている代表的な表現を紹介していきます。
「インバウンド需要」と「インバウンド消費」
「インバウンド需要」と「インバウンド消費」は、ほとんど同じような意味で使われています。
両者の違いを細かくいうならば、「インバウンド需要」は国内の需要、「インバウンド消費」は、そこで生み出される消費活動です。
- 「インバウンド需要」:国内で商品やサービスを求める訪日外国人旅行者のニーズ
- 「インバウンド消費」:訪日外国人旅行者による国内での買い物、宿泊、飲食などの消費行動
近年は、質の高い日本商品やサービスを目的に日本を訪れる外国人旅行者が増えたことで、インバウンド需要とインバウンド消費が増加傾向にあります。
「インバウンド対策」
「インバウンド対策」とは、経済効果を狙ってインバウンド消費を増やすために行う対策のことです。
より多くの外国人旅行者にたくさんの物・サービスを購入してもらうことを指しています。
「インバウンド対策」の具体的な施策は以下のようなものがあります。
- 案内や標識の多国語表示
- 外国語を話せるスタッフの配置
- TAXフリーやキャッシュレスへの対応
- 風俗習慣(宗教・文化)への理解
日本を訪れた外国人旅行者が、不便を感じることなく快適に消費活動ができるよう環境を整えることが「インバウンド対策」の目的であり、大きな経済効果が期待されています。
「インバウンド」と「アウトバウンド」の違い
「アウトバウンド」は、「インバウンド」と同じような使われ方をするため、意味を混同しがちです。
しかし、内向きの「イン」と外へ向かう「アウト」では、大きな違いがあります。
基本的に、「アウトバウンド」は、中から外へ出ていくことを表しています。
観光業界では、訪日外国人旅行者を意味するのが「インバウンド」、海外旅行をする日本人を意味するのが「アウトバウンド」です。
マーケティング業界では、「企業から顧客へのアプローチ」、コールセンター業界では「顧客に電話してセールスやアンケートを行う架電」を指します。
顧客側からのアクションを待つ「インバウンド」に対し、企業が主体となって積極的に広告・宣伝活動を行うのが、ビジネスにおける「アウトバウンド」です。
具体的には、テレビやラジオのCM、新聞広告など、情報を一方的に発信する媒体が該当します。
”inbound”の意味
”inbound”は、「内側」を表す”in”と、「~の方向に向かっている」を表す”bound”から成り立つ英語です。
「入ってくる」「到着する」「本国行きの」などといった意味を持っており、英語の意味がそのままカタカナ言葉「インバウンド」の意味に反映されています。
辞書では以下のように定義されており、物や情報が中心に向かって移動することを指しているのがわかります。
文脈によって解釈が異なる場合もありますが、相手からの何かしらのアクションに対応する受動的な意味合いを持っている単語といえるでしょう。
- traveling towards a particular point
特定の場所に向かって旅行すること- coming from another country
別の国から入ってくること
”inbound”の発音記号は、/ˈɪn.baʊnd/ で、「インバゥンドゥ」のように読みます。
カタカナの「インバウンド」と違う点は、「ウ」と「ド」をはっきり言わないところです。
母音を弱めに発音してみると本来の読み方に近くなりますよ。
”inbound”を使った例文
”inbound”に由来した「インバウンド」を、わたしたちは「訪日外国人旅行者」として使っています。
しかし、じつはネイティブの会話では、”inbound”は「訪日の旅行」という意味で使われていません。
英語の”inbound”は、「帰航の」「復路の」「市内に向かう」「到着する」といった意味で使われるのが一般的です。
”inbound”の正しい使い方を例文で確認していきましょう。
訳)平日は、「通勤列車」は上り列車としてのみ運行します。
訳)悪天候のため、全ての到着便がキャンセルになりました。
訳)わたしたちは一緒に、市内へ向かうバスに乗るつもりです。
訳)全てのインバウンドの鉄道輸送をトラックに転換させるのは難しいでしょう。
訳)サンフランシスコ国際空港の到着ロビーは、入国者専用となっています。
まとめ
ビジネス用語として欠かせないカタカナ言葉「インバウンド」について、業界別にみた意味と英語”inbound”の正しい使い方を解説しました。
「インバウンド」は、英語”inbound”に由来したカタカナ言葉です。
業界によって異なる意味を持っているため、正しく理解しておくことが大切です。
訪日外国人旅行者を意味するビジネス用語としてなじみのある「インバウンド」ですが、英会話では「訪日旅行」の意味で用いられることはほとんどありません。
”inbound”は、「帰航の」「復路の」「市内に向かう」「上りの」「到着する」などの意味で使われることが多いのです。
カタカナの「インバウンド」と英語の”inbound”、文脈やシーンに応じてそれぞれの意味と解釈をしっかり習得しておきましょう。
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