映画や歌詞のタイトル、ファッションなどでも耳にする「ボヘミアン」という言葉。なんとなく雰囲気ならわかるけど、はっきりとした意味はわからない、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな「ボヘミアン」の意味についてご紹介します。
さらに、「ボヘミアン」と同様に「よく耳にするけど意味はイマイチ」という方が多いであろう「フォークロア」や「ヒッピー」の意味も併せてご紹介するので、ぜひチェックしてください。
ボヘミアンってどういう意味?
「ボヘミアン」の意味の前に「ボヘミア」について確認しましょう。
ボヘミアとは?
「ボヘミア」とは、12世紀から20世紀まで存在したボヘミア王国のこと。
ボヘミア王国は、中央ヨーロッパ、現在のチェコ共和国の西部にあたる地域にあった王国です。
長い歴史を持つボヘミアは、中世から近代にかけてヨーロッパの政治的、文化的中心地の一つとして機能してきました。
チェコの伝統的な工芸品の一つであるガラスは「ボヘミアガラス(Bohemian glass)」と「ボヘミア」の国名を冠しています。
さらに、観光地としても人気の世界遺産のプラハは、かつてのボヘミア王国の首都。
優美で繊細なボヘミアガラスや、プラハの美しい街並みを見ると、かつてのボヘミア王国の栄華を感じることができるのではないでしょうか。
ボヘミアンの意味は?
ボヘミアは英語では”Bohemia”。ボヘミアンは“Bohemian”です。
本来の“Bohemian”の意味は「ボヘミア人」や「ボヘミアの、ボヘミア人の」というものでしたが、やがて定住地を持たない「流浪の民」なども“Bohemian”と呼ぶようになりました。
これはかつてフランスに流入していた移民が主にボヘミア地方出身だったため。
そのため、“Bohemian”には「ボヘミア人」という意味と「流浪の民」、またそこから転じて「型にはまらず、自由に生きる人」という意味も持つようになりました。
単に地域を指す言葉である“Bohemia”から、その歴史的・文化的背景を通じて「ボヘミアン」という言葉が生まれ、それが今日のような広い意味を持つようになったというのは、とても興味深いことですね。
ちなみに日本語の辞書の「ボヘミアン」も「ジプシーの別称」と「世間一般の規範や型の外で自由に生きる人。また、型にはまらず自由なさま」と2つの意味が掲載されています。
bohemianの使い方を例文で確認しよう
“bohemian”の使い方を例文で確認しましょう。
彼女は創造性と自発性に満ちたボヘミアンなライフスタイルを送っています。
“creativity”は「創造性」、”spontaneity”は「自発性」という意味です。
そのカフェは、ボヘミアンな雰囲気で、不揃いの家具が並び、地元のアーティストの作品が壁に飾られていた。
“atmosphere”は「雰囲気」、”mismatched”は「調和がとれていない、不揃いの」という意味です。
彼はいつも冒険心でいっぱいのボヘミアンな友人たちと過ごす時間を楽しんでいます。
“be up for” は「~する気がある、~する準備ができている」という意味のイディオムです。
「ボヘミアン・ラプソディー」の意味するものは?
「ボヘミアン・ラプソディー」は1975年にイギリスのロックバンド「QUEEN」が発表した楽曲です。数多くのヒット曲を世に送り出した「QUEEN」ですが、この「ボヘミアン・ラプソディー」が最も売れた曲。2018年には、同名の映画が公開されたので、このタイトルに聞き覚えがあるという人も多いでしょう。
“Bohemian Rhapsody”は直訳すると「流浪の民の狂詩曲」。「狂詩曲」とは、「自由奔放な形式で民族的または叙事的な内容を表現した楽曲」のことです。
実際に“Bohemian Rhapsody”は狂詩曲に多い、アカペラ、バラード、オペラ、ハードロック、バラードというさまざまなジャンルの曲のメドレーで構成されています。
「ボヘミアン・ラプソディー」の歌で最も印象的なのが”Mama, just killed a man”で始まるサビの部分。「ママ、今人を殺してきた」というギョッとする歌詞ですね。
この歌詞の解釈はさまざまで、どれが正解なのかはわかりません。
宗教や出自、セクシャリティでマイノリティだった「QUEEN」のボーカル、フレディ・マーキュリーが自身のことを歌ったのでは、という説もあります。
アーティストとして、本当の自分を隠しながら、音楽活動を続けてきたフレディの、「流浪の民」のように自由に生きたいという願望を表したものなのかもしれません。
“bohemian”の意味を確認した上で、改めて“Bohemian Rhapsody”を聴いてみると今までとは違う印象を受けるかもしれませんね。
ボヘミアン、ジプシー、フォークロア、ヒッピーの違いを確認
「ボヘミアン」はファッションでもよく使われる言葉です。同様にファッションシーンでは「ジプシー」「フォークロア」「ヒッピー」もよく聞く表現。また、最近よく耳にする「ロマ」という言葉の意味と併せて、その違いを確認しましょう。
ジプシー:gyspy
辞書ではボヘミアンは「ジプシーの別称」という意味も持ちます。このジプシーとは、北インドに起源を持つ移動民族。中東欧のスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアや、西欧ではスペイン、フランス、そしてアメリカに多く分布しています。ジプシーの語源は” Egyptian(エジプト人)”。これは、フランスにやってきたジプシーが「エジプト出身である」と言ったことからだそう。
英語では”gyspy”ですが、最近では、差別的な言葉として使われることもあり、彼らの自称である「ロマ(roma)」を使うのが一般的です。
英語で会話するときは、避けた方が良い表現です。気をつけてください。
フォークロア:folklore
フォークロアは「民族」「民間伝承」という意味。ファッションで使われる場合は、民族衣装をベースとしたファッションアイテム、柄、スタイルを指します。
ヒッピー:hippie
ヒッピーとは1960年代から70年代にかけて、反戦や民権運動に参加したアメリカの若者のこと。彼らの独自のカルチャーは、ファッション、思想、音楽、アートとさまざまなジャンルに影響を及ぼしました。今でも目にするサイケデリックな柄やアートはこの時代のものです。
まとめ
今回は「ボヘミアン」の意味をご紹介しました。映画や歌で聞いたことのある言葉だけど、しっかり意味を知っていた人は少ないのではないでしょうか?
もともとは「ボヘミア王国」に由来する言葉ですが、今では「ボヘミア王国」に全く関係のない「自由に生きる人」という意味を持つのは興味深いですね。
また、ファッションでよく使われる「ジプシー」や「フォークロア」、「ヒッピー」の意味も改めて確認しました。次にファッション誌などで「ジプシー」や「フォークロア」、「ヒッピー」のスタイルを見たら、それぞれの特徴を見比べるのも面白いですね。
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