身近な会話や言葉遣いで、相手の主観に基づいた思い込みや偏見を感じたことはありませんか?
平等が良しとされている社会でも、実際には、自分以外の特定の人たちをカテゴリー化したり、勝手なイメージに決めつけたりして、国籍や人種、職業、性別などで多くの差別が行われているのは事実でしょう。
物事や人物の一面的な部分だけをみて決めつけることを「ステレオタイプ」といいます。
たとえば、国の違いで「日本人は真面目」「アメリカ人は肥満」、または性の違いで「男性は強い」「女性はか弱い」などという見方は、「ステレオタイプ」の代表例ですね。
「ステレオタイプ」は、英語由来の言葉ですが、英会話ではどのように表現するのが正解なのでしょうか?
今回は、思い込みが誤解を招きかねないカタカナ言葉「ステレオタイプ」について、英語での正しい使い方と類義語を解説していきます。
「ステレオタイプ」の意味
「ステレオタイプ」は、英語”stereotype”をカタカナ表記した言葉です。
ある特定の集団あるいは個人に対して、一般的に認識されている固定的なイメージや概念のことを表します。
個々の特徴や異なる状況を一切排除し、単純化された認識を持たれることが多く、文化や社会によっては差別や偏見の原因にもなります。
「ステレオタイプ」を最初に提唱したのは、アメリカの政治評論家でジャーナリストの、ウォルター・リップマンです。
リップマンは、1992年に出版した著書「世論」の中で、以下のような考えを述べています。
人間は、現実環境・疑似環境・行動の三角形の中で行動する。 自分の行動を決めるために、複雑で変わりやすい現実世界をより単純にした、疑似的な世界のイメージをつくり、 そのイメージをもとに行動する。 |
そうした疑似的な世界のイメージが固定化されたものが、社会で広く用いられるようになり、現在の「ステレオタイプ」になりました。
「ステレオタイプ」には「印刷の版」という意味もありますが、これは、ステロ版印刷(※)に起因しています。
- 印刷で用いる鉛版、ステロタイプ
- 行動や考え方が、固定的・画一的であり、新鮮味のないこと、紋切り型
- ありふれたやり方、きまりきった型、行動・思考・性格などが型にはまって一様であるさま
参考:デジタル大辞泉
「ステレオタイプ」は、ステロ版で印刷された印刷物のように、思考や観念、ものの見方や捉え方が、型を用いて作られたかのように全く同じものを示していることに由来しています。
※ステロ版印刷
文字や線画、写真を圧して作った紙型に、鉛を流し込んで作った原版を用いる印刷技術
型を抜いて作られたかのように全く同じものが印刷される
「ステレオタイプ」の特徴と影響
「ステレオタイプ」は、特定の国や文化によって類型化され、社会で共有された固定的な認識です。
「ステレオタイプ」の特徴
- 過度に単純化されていること
- 不確かな情報や知識に基づき誇張され、しばしばゆがめられた一般化ないしカテゴリー化であること
- 好悪、善悪、正邪、優劣などといった強力な感情を伴っていること
- 新たな証拠や経験に出会っても、容易に変容しにくいこと
引用:人権啓発用語辞典
上記のような特徴を持つ「ステレオタイプ」は、しばしば個人の自尊心や自己評価にも大きな影響を与えます。
自分が属しているグループに対してネガティブな「ステレオタイプ」を意識すると、ストレスや不安を感じ、仕事や学習面でのパフォーマンスが低下するといわれています。
「ステレオタイプ」はまた、職場、教育現場、広告メディアなど、社会のさまざまな分野において、偏見と差別も助長してしまいかねません。
社会に定着しているからこそ、ときに個人的な先入観が入りマイナスイメージを与えることもあるのです。
”stereotype”の意味
”stereotype”は、特定の集団や個人に対する、一般化された「固定観念」や「先入観」を意味する英語です。
辞書にも、”especially an idea that is wrong”とあるように、実際の個人が持つ特性を無視し、間違って認識されることで、偏見や差別を助長してしまう恐れがあります。
a set idea that people have about what someone or something is like, especially an idea that is wrong
誰かまたは何かがどのようなものであるかについて、人々が抱く、特に間違った考えのような固定観念
”stereotype”の発音記号は、 /ˈster.i.ə.taɪp/ で、「ステェリィァタァィプ」と発音します。
日本語でいう「ステレオタイプ」とは発音が異なるので、正しい読み方を習得しておきましょう。
ギリシャ語の”stereos”(固定されている、立体的な)と、”tupos”(型、印象)が語源といわれており、元来は印刷の世界で型を意味する言葉として使われていました。
後に、「固定された印象」という意味が加わり、現代の「固定観念」を指すことが一般的になりました。
”stereotype”を使った例文
「固定観念」や「先入観」を表す”stereotype”。
実際の使い方を、例文で確認していきましょう。
訳)日本人のステレオタイプのひとつに、みんな空手を知っていて、寿司を食べるというイメージがあります。
訳)ステレオタイプに基づく価値観を他人に押し付ける人たちには、嫌悪感を抱きます。
訳)その映画は、古いステレオタイプに基づいて登場人物を作ったと批判されました。
訳)このような漫画の筋書きは、国のステレオタイプがいかに根強いかを示しています。
訳)広告には古いステレオタイプがあふれており、多くの人がいまだにそれを信じています。
訳)その責任の一端を担うニュースメディアは、そのようなステレオタイプを助長するようなイメージを作らないよう注意すべきです。
”stereotype”の類義語
”stereotype”とは、社会的な思い込みや決めつけ、先入観、偏見などを意味する英語です。
ときに差別的にもなりえる単語ですが、他にも同じような意味を持つ英語はあります。
場面や会話の相手によって、適切に使い分けられるようにしましょう。
prejudice
”prejudice”は、個人やグループに対する偏見や先入観を意味する英語です。
”stereotype”よりも深刻な意味合いを含み、人種、性別、宗教、年齢などさまざまな要素において、不当に否定的な判断や態度を持つことを表します。
訳)偏見とは差別につながる有害な態度のことを指します。
bias
”bias”は、主観的な見方や思考の傾向、一方に偏った考え方などを意味する英語です。
特定の意見や立場に偏見を持っていることを表します。
客観性を欠いた意思決定や判断のことを、日本語でも「バイアスがかかっている」と表現しますよね。
”bias”による思考や行動への影響は大きく、客観的に慎重に考慮することが非常に重要です。
訳)会社に対する彼の偏見から、好ましくない決断を下すこともありました。
generalization
”generalization”は、一般的な傾向に基づいて判断された抽象的な法則や原則を意味する英語です。
複数の事例や情報から共通した特性を見出して、学習や理解を深めるために用いられます。
日本語訳では、「一般論」「一般化」「抽象化」などで表現されます。
訳)豚はみんな太っている、というのは一般論にすぎません。
cliché
”cliché”は、非常によく使われる決まりきった言葉やフレーズを指した言葉です。
一般的すぎて新鮮味がなく、オリジナリティに欠けた印象を与えるので、「陳腐な表現」「マンネリした言い方」などネガティブな意味合いで使われることもあります。
訳)人生は公平ではないという典型的な決まり文句は、真実なのだと学びました。
まとめ
思い込みが誤解を招きかねないカタカナ言葉「ステレオタイプ」について、英語”stereotype”の正しい意味と使い方、類義語を解説しました。
「ステレオタイプ」は英語の”stereotype”から来ており、「固定観念」や「先入観」を意味するカタカナ言葉です。
メディアや教育、親や友人など、さまざまな要素に影響されて、無意識のうちに陥っている「ステレオタイプ」。
個人の特性や事実、実際の状況が無視されることで、誤解、偏見、差別の原因にもなりかねません。
国、人種、文化、宗教などが異なる英会話では、「ステレオタイプ」にならないよう、客観的に判断して発言することが大切です。
合わせて読みたいおすすめ関連記事: