2020年春以降、緊急事態宣言や度重なる外出自粛によってわたしたちの生活は大きく変わりました。
いたるところで「ソーシャルディスタンス」が叫ばれ、仕事も勉強も急速にオンライン化が進みました。
SNSと呼ばれる「ソーシャルネットワークサービス」も、今やコミュニケーションツールとしてなくてはならない存在となっています。

ここ数年で「ソーシャル」という言葉をよく耳にするようになりましたが、もともとの英語はどのような意味を表すのでしょうか?
今回は、日本語としてなじんでいるカタカナ言葉「ソーシャル」について、英語”social”の意味と正しい使い方を解説していきます。

「ソーシャル」の意味

「ソーシャル」の意味

「ソーシャル」は、英語の”social”をカタカナで表記した言葉です。
”social”は辞書で以下のように定義されており、おもに「社会の」「社会的な」「社交的な」という意味を持っています。

【adjective】

  • relating to your position in society, according to your job, family, wealth, etc.
    仕事、家族、財産など、社会における自分の地位に関する
  • relating to human society and its organization, or the quality of people’s lives
    人間社会とその組織、または人々の生活の質に関する
  • relating to meeting people, forming relationships with them, and spending time with them
    人と出会い、関係を築き、一緒に過ごすことに関する

【noun】

  • an occasion when the members of a group or organization meet informally to enjoy themselves
    あるグループや組織のメンバーが、非公式に集まって楽しむ機会

参考:Cambridge Dictionary Longman Dictionary

”social”は、形容詞として「社会の」「社会的な」「社交的な」のように使われるほか、名詞として、人との交流に基づく「集まり」「懇親会」または、動植物の「群生」を指して用いられます。

”social”は、イギリス英語で /ˈsəʊ.ʃəl/(サウシャウ)、アメリカ英語で /ˈsoʊ.ʃəl/(ソウシャル)と発音します。
カタカナの「ソーシャル」とは違って、「so」は長音を強調せずに、「ウ」を入れて読むようにするのがポイントです。

”social”は、「仲間」を意味するラテン語”socious”に「〜の」を表す”-alis”が付いた”socialisが語源といわれています。
”socialis”は、「交際の」という意味で、古来から人々の交流を指して使われていました。
”social”が「社会」だけでなく、人々の「交流」や「付き合い」を意味するのには、語源が関係しているのも納得できるでしょう。

社会的階級や階層を表す”social”には、スラングとしての意味もあります。
上流階級や富裕層を揶揄して「上流階級じみた」「あらたまった」のように使われたり、古い風習や社会的に凝り固まった様子を指して「儀礼的な」「形式ばった」のように用いられたりもします。

「ソーシャル」を含む関連語

日本語に浸透している「ソーシャル」は、ほかの言葉と組み合わせた複合語としてよく使われています。
代表的なものには「ソーシャルワーカー」や「ソーシャルメディア」がありますね。
「ソーシャル」を含んだ関連語を紹介します。

ソーシャルエンジニアリング

「ソーシャルエンジニアリング」は、英語で”social engineering”と表記され、社会工学あるいはコンピューター犯罪の手法の一つを意味する言葉です。
社会工学とは、集団における人々の姿勢や社会的な行動が与える影響を研究する学問で、社会問題に理工学的なアプローチをすることを意味します。
犯罪としての意味では、パスワードや暗証番号などのセキュリティ情報を聞き出したり、盗んだりする不正行為を指します。

ソーシャルワーカー

「ソーシャルワーカー」は、英語で”social woker”と表記し、職業として社会福祉事業に従事する専門家を意味する言葉です。
日本語では社会福祉士とも呼ばれ、患者をはじめ、生活困窮者、高齢者、障害者、子どもやその家族など、社会的な問題を抱える人々を支援します。

ソーシャルディスタンス

「ソーシャルディスタンス」は、日本語で「社会的距離」を意味する言葉です。
パーソナルスペースを侵害されない程度の十分な対人距離を表しており、新型コロナウィルス感染症をきっかけに広く使われるようになりました。
英語では”social distancing”と表記するのが正しく、WHO(世界保健機関)では”physical distancing”とも表現されています。

ソーシャルメディア

「ソーシャルメディア」は、インターネットを通じた、情報の授受、メッセージの交換などに用いられるメディアを意味する言葉です。
YouTubeやTikTokなどの動画共有サイト、LINEに代表されるメッセージングアプリのほか、FacebookやX、Instagramといったソーシャルネットワーキングサービスを含みます。

ソーシャルネットワーキングサービス

「ソーシャルネットワーキングサービス」は、ソーシャルメディアの一種で、インターネットを利用して社会的なネットワークを構築するために用いられるオンラインサービスです。
英語で”Social Networking Service”と表記することから、頭文字をとってSNSと呼ばれています。

”social”を使った例文

”social”を使った例文

「社会的」「社交的」「階層」など、さまざまな意味を持っている”social”の使い方を例文で確認しましょう。

社交的、社交の

Aさん
I became a member of a social club when I was in college.
訳)わたしは大学時代に社交クラブの会員になったことがあります。
Aさん
There is a social event every two or three months in this company.
訳)この会社では2、3カ月に1度、社交行事があります。

社会的、社会の

Aさん
Exercise classes are a good way to keep fit and improve your social life.
訳)エクササイズ教室は、健康を維持し、社会生活を向上させる良い方法です。
Aさん
Group play helps children develop social skills.
訳)集団遊びは、子どもたちの社会的スキルの発達に役立ちます。

社会的地位、階級、階層

Aさん
The stress rate at work is consistent throughout the population, irrespective of age, sex, and social class.
訳)仕事におけるストレスの割合は、年齢、性別、社会階級に関係なく、集団全体で一貫しています。
Aさん
Coverage by occupational pension schemes is not, evenly distributed amongst all social classes.
訳)職業年金制度は、すべての社会階層で均等に適用されているわけではありません。

まとめ

日本語としてなじんでいるカタカナ言葉「ソーシャル」について、英語”social”の意味と正しい使い方を解説しました。

「ソーシャル」は、英語”social”に由来したカタカナ言葉です。
おもに「社会の」「社会的な」という意味で使われていますが、英語”social”には、ほかにも「社交的な」「階層」「懇親会」などという意味も持っています。

日本語に浸透しているカタカナ言葉は、英語がもとになっていても、意味やニュアンス、使い方が違っていることが多々あります。
「どうやって使うんだっけ?」「英語の意味はよくわからない」と思ったときは、そのままにせず、必ず辞書を引いて正しい意味を理解するようにしましょう!

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