中国の中央部にある都市・西安。その郊外には、かつて中国を統一し、初めて「皇帝」を名乗った人物、秦の始皇帝が眠る壮大な墓「始皇帝陵」があります。そしてその東1.5kmに発見されたのが「兵馬俑」です。これはなんと8000体以上もの兵士や馬をかたどった陶器で、死後の始皇帝を守るために作られたと考えられています。
このふたつを合わせた「秦の始皇帝陵及び兵馬俑坑」は、1987年にユネスコ世界文化遺産に登録され、世界中の人々を魅了し続けています。
秦の始皇帝陵及び兵馬俑坑とは?

中国統一を成し遂げ、万里の長城を築いた始皇帝。その壮大な権力を象徴する陵墓と、死後の世界を守る兵馬俑が一大遺産となっています。
秦の始皇帝の歴史
秦の始皇帝(紀元前259年–紀元前210年)は、13歳で秦の国王となり、わずか数十年で戦国時代の混乱を終わらせ、中国全土を統一しました。統一後は「始皇帝」と自らを称し、中央集権体制を強化しました。
彼の改革には、文字・度量衡(長さや重さの単位)・貨幣の統一など、のちの中国の基礎を築いたものも多く含まれます。一方で、言論弾圧や焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)などの強硬政策でも知られています。
彼の死後、わずか数年で秦は滅びてしまいますが、彼の残した文化的遺産は、現代にまでその存在感を示しています。
秦の始皇帝陵とは?
始皇帝の陵墓は、中国・陝西省西安市の東、臨潼区にあります。紀元前247年から40年近くかけて、70万人以上の労働力によって造営されたとされます。
この陵墓はかつては高さ76m、広大な敷地に2重の城壁が築かれていました。地下30mの位置には、地下宮殿のような構造があるといわれています。
古代の歴史家・司馬遷の記録『史記』には、地下宮殿には水銀の川や海があり、夜空を再現した天井もあったと記されています。実際に、現地の土壌からは高濃度の水銀が検出されており、記述の信憑性を裏付けています。
兵馬俑坑とは?
兵馬俑は、1974年に井戸を掘っていた農民によって偶然発見されました。これらは始皇帝を死後の世界で守るために作られた粘土製の兵士・馬の像で、その数は8000体を超えるとされています。
それぞれの俑(よう:像)は高さ約1.8m、重さは200kg以上。驚くべきことに、顔の表情や髪型、服装、体型まで一体一体異なっており、実在の兵士をモデルにしたと考えられています。兵士のほか、指揮官、戦車、騎兵、文官の像もあり、軍隊としての編成が忠実に再現されている点が大きな特徴です。
発見時にはあまりにもリアルだったため、「生き埋めの兵士や馬」だという伝説があります。しかし、それについては確証が得られていません。
また、これらの俑はかつて鮮やかに彩色されていましたが、空気に触れることで急速に色が失われることが判明しており、現在も未発掘の部分が多く残されています。
世界8番目の不思議?
兵馬俑の発見は、「20世紀最大の考古学的発見」とも言われています。2000年以上地中に眠っていた巨大な地下軍団が突如として現れた衝撃は計り知れず、「世界の七不思議」に続く「第八の不思議」と称されることもあります。
その圧倒的なスケール、精巧さ、歴史的価値、そして今なお謎に包まれた地下宮殿の存在は、世界中の人々を魅了し続けています。
アクセス方法
兵馬俑は西安市内から公共交通で気軽にアクセスできます。西安駅から専用バス(306番)で約1時間。「兵馬俑駅」で下車し、徒歩5分です。秦始皇帝陵博物院と兵馬俑博物院の間は、無料シャトルバスがあります(約15分)。
世界遺産としての価値
秦始皇帝陵及び兵馬俑坑は、「Mausoleum of the First Qin Emperor」の名称で、1987年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録理由とは?
主に以下のような点が評価されて登録されました。
- 中国初の統一国家を築いた皇帝の陵墓という歴史的意義
- 兵馬俑に代表される、当時の技術と芸術性の高度な水準
- 地下宮殿や未発掘部分に残る考古学的な可能性
UNESCO World Heritage Convention:Mausoleum of the First Qin Emperor
覚えておきたい英会話フレーズ
旅行先で感動を共有したり、現地の説明を理解する際に使えるフレーズを紹介します。
訳)この兵馬俑、まるで本物の兵士みたい!
訳)うん、一体一体顔が違うなんて信じられないね!
訳)地下宮殿はまだ謎に包まれているらしいよ。
訳)それがまたロマンがあっていいよね!
訳)これが2000年以上前に作られたなんて、信じられる?
訳)職人技が本当にすごいよ。
訳)始皇帝についてもっと知りたくなっちゃった。
訳)僕も。帰ったらドキュメンタリーを観よう!
おすすめの見どころ

秦の始皇帝陵と兵馬俑には、考古学的・芸術的価値の高い展示や遺跡が多数あります。実際にその目で見ることで、古代中国の壮大なスケールと歴史の重みを体感できます。
秦の始皇帝陵
現在は「秦始皇陵遺址公園」として整備されています。公園の中心には大きな墳丘があり、その地下には始皇帝の宮殿があるとされます。『史記』の記録と、近年の科学的分析により、地下に水銀の存在が確認されつつあり、実際の発掘が期待されています。
秦始皇帝陵博物院
博物院には、地下宮殿の構造を再現した模型や資料が展示されています。ここでは始皇帝がどのような人物であったか、当時の歴史背景なども学ぶことができます。
秦始皇兵馬俑博物院
現在も、出土したときのままの形で展示されています。1号坑~3号坑まで見学可能です。
1号坑:発掘された陶俑は総数6000体に及びます。兵士や馬が埋められているとされ、そのほとんどは歩兵で構成されています。最大規模の見学エリア。
2号坑: 1号坑の北東に位置し、戦車や騎兵、歩兵などの混合部隊が再現されています。一部はガラスケース越しに、土の中に埋もれた状態で発掘されたばかりの兵馬俑が保存されている様子や、修復中の様子を見学できることもあります。
3号坑:一番小さい坑です。軍の司令部と考えられており、指揮官の俑が配置されています。威厳ある姿や精巧な鎧、冠の細部に注目できます。
どの坑も迫力満点で、古代軍団に出会ったような気持ちになります。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
秦の始皇帝陵と兵馬俑は、中国の歴史、文化、そして人間の想像力と技術力の結晶です。歴史を英語で学びながら訪れることで、知識も英語力も深まる旅になることでしょう。
Let’s travel through world heritage, in English!
