2020年度より英語教育が小学校で必修科目になりました。

2020年度以前は中学校1年生からのスタートだったので、2020年度以降は小学校5年生からスタートになることで、2年間前倒しになったと言えます。

どうして英語教育が小学校で必修科目となったのか、その理由が気になりますよね。

この記事では、英語教育が小学校で必修科目になった理由や背景について、文部科学省の見解や日本人の英語力を表すデータなどから見ていきます。

どうして英語教育が小学校で必修科目になるの?その理由とは

投稿一覧どうして英語教育が小学校で必修科目になるの?その理由とは

日本の学校教育を運営する文部科学省は、「学習指導要領」を改訂して、2020年度から「学習科目としての英語」のスタートを、中学校1年生から小学校5年生からに引き下げました。

つまり、教科書で習う英語のスタートが2年繰り下がったことを意味します。

もちろん、英語科目のスタートが2年早まったからと言って、終わるのも早くなるわけではなく、しっかり高校3年生まで科目としての英語は続きます。

授業としての英語が2年分伸びたor増えたと言って良いでしょう。

それでは、文部科学省はなぜ小学校と中学校の垣根(かきね)を超えて、2年間も前倒しにしてまで英語科目を必修にするのでしょうか?

数多くある理由の中から、中心となるものを見ていきましょう。

グローバル化

「英語教育の強化」という点で「グローバル化」という言葉は欠かせませんね

特に2020年度には(結果的に翌年に延期されましたが)、東京オリパラリンピックが開催されていたこともあり、日本人と外国人とのコミュニケーション手段として、国際共通語である英語は大きく注目されたと言えるでしょう。

さらに文部科学省は、2020年度の現状にとどまらずに、30年後である2050年頃には「多文化・多言語・多民族と協調、そして競争する環境になるだろう」と予想して、国際共通語である英語習得の重要性を強調しています。

我が国では、人々が英語をはじめとする外国語を日常的に使用する機会は限られている。しかしながら、東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・多民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。

 

出典:文部科学省HP 今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~より

上に提示された文部科学省の方針を見ると、ますますグローバル化(国際化)される社会の中で、国際共通語である英語の習得に力が入っていることから、「英語教育スタートの引き下げ」の必要に駆られていることが伺(うかが)えます。

日本人のアジアにおける英語力の立場向上

日本の英語教育が小学校で必修になる理由として、「日本人のアジアにおける英語力の立場の向上」も挙げられるでしょう。

文部科学省のホームページにある「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」によると、異文化理解と異文化コミュニケーションのために、「アジアでトップクラスの英語力を目指すべき」と書かれています。

これからは、国民一人一人にとって、異文化理解や異文化コミュニケーションはますます重要になる。その際に、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって不可欠であり、アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべきである。

 

出典:文部科学省HP 今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~より

「アジアでトップクラス」と書かれているということは、現在の日本はそうでないことが見てとれますね。

実際に「学校で英語は得意科目だったけど、実際に英会話やコミュニケーションは出来ない!」という日本人も多いですし、TOEICに代表される英語資格が有力ながらも、「日本人の英語力」という点でアジア諸国と比較しても苦手意識があることは事実です。

海外留学やワーキングホリデーを手掛けている”EF”によると、非英語圏全体での日本人の英語力は、116カ国の中で92位、能力レベルは5段階のうち下から2番目の「低い」と出ています。(出典:EF EPI EF 英語能力指数

また、日本の一つ下のミャンマーが「非常に低い」と出ているため、EF英語能力指数での日本人の英語力は「限りなく『非常に低い』に近い『低い』」と言えます。

さらに「アジアにおける日本の英語力」についても、アジア23カ国のうち日本は16位で変わらず「限りなく『非常に低い』に近い『低い』」と出ています。

アジアにおいてはシンガポールが第1位(非英語圏全体でも、ヨーロッパのオランダとノルウェーに次いで第3位)で「非常に高い」とされ、続いてフィリピンとマレーシアが第2位と第3位で「高い」、香港とお隣韓国が第4位と第5位で「標準」の水準でした。

さらにお隣韓国は、首都「ソウル」に限れば、5段階評価で上から2番目の「高い」の水準です。

以上のデータを見ると、非英語圏全体から見てもアジアから見ても、日本人の英語力は文部科学省の提言にある目標の「アジアの中でトップクラスの英語力」には大きなギャップがあることがわかりますね。

日本人の英語力の現状と、文部科学省の提言にある目標である「アジアでトップクラスの英語力」とのギャップから、英語教育を小学校で必修科目にして「アジアにおける英語力の立場向上」を意図しているのが読み取れますね。

小学校、中学校、高校の連携強化

英語教育が小学校で必修科目になる理由として、「小学校、中学校、高校の連携強化」の意図もあると言えるでしょう。

実際に文部科学省のホームページにある提言にて、以下のように記されています。

各学校種での指導改善は進んでいるものの、学校間の接続(小・中連携、中・高連携)が十分とは言えず、進学後に、それまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が多い。

 

出典:文部科学省HP 今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~より

小学校から中学校、中学校から高校へ、学校英語の連携に課題を感じていることがわかりますね。

裏を返せば、小学校、中学校、高校と連携を高めることによって、より効果的に英語を学べるという期待の表れでもあります。

実際に、中学校の外国語の学習指導要領にも、「前回の学習指導要領から中学校で習う英単語の数は増えているが、小学校で習う英単語と関連付けることで無理なく扱える」と記載されています。

「1600 ~ 1800 語程度」については,前回の改訂における「1200 語程度」と比べると増加幅が大きく見えるが,小学校において中学年の外国語活動で扱ったり高学年の外国語科で学んだりした語と関連付けるなどしながら,中学校で語彙を増やしていくことを考えれば,言語活動の中で無理なく扱うことのできる程度の語数であると考えられる。

出典:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 p.34

以上のことから、小学校、中学校、高校との英語教育が連携し、より効果的な英語教育を行うことで、アジアでトップクラスの英語力を目指し、グローバル社会の中で日本人が影響力を強く持つことを期待して、英語教育を小学校から必修科目にしているのが伺(うかが)えますね。

まとめ

まとめ

この記事では、2020年度から日本で「英語教育が小学校で必修科目になる理由」を、具体的なデータや公式の見解をもとに以下のようにお伝えしてきました。

  • グローバル化
    →児童たちの将来、国際協調と国際競争のなかで他言語&他文化コミュニケーション手段として、国際共通語の英語が役に立つ
  • 日本人のアジアにおける英語力の立場向上
    →非英語圏の中でも英語が苦手な現状を打破しようとする意図
  • 小学校、中学校、高校の連携強化
    →学習のステップをスムーズにすることで、より効果的な英語の習得を図(はか)る

この記事でお伝えした内容が、あなたの見識を広げ、英語に対してより前向きなモチベーションの源泉となれば幸いです。