しばらく前から、テレビや新聞のニュースで「アノニマス」というハッカー集団がときどき取り上げられるようになりました。
Anonymous Hackers Threaten To Expose IDF’s ‘Top Secret Projects’ (Forbes, April 20, 2024)
(訳:アノニマスのハッカーがIDF〔イスラエル国防軍〕の「極秘プロジェクト」を暴露すると脅迫)
という具合で、「アノニマス」は政府機関や企業のサーバーに侵入してデータを盗んだり、書き換えたりしているのは抗議活動の一環であると主張しています。
ややこしいのは、グループ名のAnonymous には英語で「匿名の」という意味があることで、「アノニマス」と名乗っているのか、「名前がわからない」ハッカーなのかどうかがはっきりしないため、
hacker group Anonymous (訳:ハッカー集団「アノニマス」)
などど、たいていは「アノニマス」が固有名詞であることが明確にわかるように、大文字で表記されています。
時事ニュースですっかり有名になってしまったanonymousですが、英語の発音では/ənάnəməs(米国英語), ənˈɔnəməs(英国英語)/で、カタカナに置き換えると「アナナマス」の方が近い音になるます。
この記事では、anonymousの意味と、使い方を例文を挙げて説明します。
anonymousとはどういう意味?
はじめに、anonymousにはどのような意味があるのか、確かめておきましょう。
アメリカの『ウェブスター』英語辞典では、このように定義しています。
1: of unknown authorship or origin
2: not named or identified
3: lacking individuality, distinction, or recognizability
「作者や出自が不明であること」「名前が記されていない、または特定されていない」「個性、特徴がない、または認知されていない」という意味ですね。
「匿名の電話」anonymous call
冒頭で、anonymousには「匿名の」という意味があると説明しました。
そもそも「匿名」には日本語でどのような意味があるのかをここで確認しておきます。
自分の名前を隠して知らせないこと。また、本名を隠してペンネームなどの別名をつかうこと。(デジタル大辞泉「匿名」)
anonymousがよく使われる例として、anonymous call「匿名の電話」があります。
たとえばある事件について、テレビや新聞でよく見かける表現にこういうものがあります。
The police investigated the incident after receiving an anonymous phone call.
訳)警察は匿名の電話を受けて事件の捜査を開始した。
通報者は、名前を言わず、自分の身元を明らかにしなかったことがanonymousでわかります。
anonymousの使い方
anonymousはさまざまな場面で使うことができます。例文を挙げてみましょう。
「匿名の」anonymousを使った例
たとえば何らかの事情で、身元を明かさずに連絡を取りたいことがあるかもしれません。内部の人間でなければわからない情報を報道機関に伝えるとか、自分が知り得た不正行為を知らせる「公益通報」などが考えられます。
この場合、望ましくない影響を受けないために、あなたはこのような記事をインターネットで探すかもしれません。
How to send an anonymous message from your e-mail account
訳)あなたのEメール・アカウントから匿名のメッセージを送る方法
anonymous messageで「匿名のメッセージ」という意味になります。
匿名で明かした情報が、社会的な意味のあるものだった場合、先の例だと報道機関からの取材や、公的機関の聞き取りの依頼が舞い込むかもしれません。
She accepted the interview on this matter, with the condition to remain anonymous.
訳)彼女は匿名を条件に、この件に関するインタビューを引き受けた。
ときどき、ドキュメンタリー番組などでこういう断り書きがありますね。
anonymousの同意語には何がある?
先述の通り、anonymousには複数の意味があります。それぞれの意味によって同意語も変わりますが、似た意味をもつ単語をいくつか紹介しましょう。
nameless (形容詞)名のない、匿名の、無名の
unnamed (形容詞)名前のない、名を隠した
unidentified (形容詞)未確認の、身元不詳の
unknown (形容詞)未知の、不明の、名の知られていない
日本語と同様、英語の類義語にも置き換えてまったく問題がないものもあれば、用法によってふさわしくないものもあります。
anonymousとunknownの違い
「名前がわからない」ことを意味する単語としては、unknownがあります。よく似た意味のanonymousとunknownですが、どのように違うのでしょうか。それぞれの単語の意味を比較してみます。
anonymous (形容詞)匿名の、特徴のない
unknown (形容詞)未知の、名前の知られていない、無名の
古くからの言い伝えや民謡・民話には、誰が言い出したのか、作ったのかわからないものがいろいろあります。日本の和歌にも「詠み人知らず」といういい方がありますね。
この場合は、明らかな意思をもって名前を伏せた「匿名」ではありません。
そしてanonymousにも
an anonymous author「作者不詳の」
an anonymous song「作者不詳の歌」
という用法はありますが、「作者がわからない」「作者不詳」という意味ではanonymousよりはunknownのほうがよりふさわしいでしょう。
anonymousの反対語
それでは、anonymousの反対の意味をもつ単語にはどのようなものがあるでしょうか。
「匿名」の反対語は「記名」です。名前を伏せてあるのではなく、明記してあるという意味です。
an anonymous letter 匿名の手紙
a signed letter 記名の手紙
また、「誰だかわからない」の反対の意味であれば、「特定されている」という言い方もできるでしょう。
The novel was written by an anonymous author. 訳)その小説は、匿名の作家が書いた。
The novel was written by an identified author. 訳)その小説は、名前が特定されている作家が書いた。
まとめ
この記事では、anonymous には「作者不詳や出自不明」「無記名、または特定されていない」「没個性・特徴がない、または未認知の」といった意味があることを確認し、類義語や対義語、使い方などを説明しながらanonymousという単語の性質について考察してきました。
ある単語がどのような場面にふさわしいのかを知るには、やはり用例を増やすのが一番です。辞書ばかりでなく、英語のニュースや小説、映画などでの使い方がわかると、実際に使うときに役に立ちます。
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