イギリスといえば紅茶が有名です。しかし、実は街のカフェではラテやカプチーノを飲むイギリス人のほうが多いと思えるくらいにコーヒー好きでもあります。
紅茶やコーヒーのお供に甘いものが欲しいとき、イギリスで超定番のお菓子があります。皆さん、ショートブレッドがどのようなお菓子かご存知ですか?
この記事では、イギリスで長い間愛されている「ショートブレッド」を紹介します。バターがたっぷりのビスケットの歴史や作り方、そしておすすめブランドなどいろいろみていきましょう。
ショートブレッドってどんなお菓子?
ショートブレッドは英語でshortbreadと書きます。shortなbread?短いブレッド?なんて一瞬考えてしまった方はいませんか?
まずは、ショートブレッドがどのようなお菓子なのかみていきましょう。
サクサク感が美味しいショートブレッド
shortbreadはサクサクした食感が特徴のビスケットです。バターがたっぷり使われるため風味がとても豊かです。パッケージを開ければ良い匂いがし、そして、食べれば口のなかでほろっと崩れる感じを楽しめます。
訳)ショートブレッドは、濃厚でバター風味があり、ほろほろと崩れやすく、繊細な甘さがあります。
この英文にcrumblyという言葉が使われていますが、これは「もろい・砕けやすい」という意味の形容詞であり、ショートブレッドの状態をよく表しています。
shortbreadのshortの意味
shortbreadという名前に使われるshortは、英語学習者にとってはかなり親しみのある単語ですね。「短い」という意味であり、反対語はlongになります。しかし、shortにはお菓子などについて「ショートニングが多い・薄くはがれる」という意味もあります。ショートニングは、植物や動物の油脂を原料とした固形油脂、パンやビスケットなど焼き菓子によく使われる食用油脂です。ショートニングが多いと、パンはふんわり、焼き菓子はもろくさっくりとした仕上がりにすることができます。
形はいろいろ!ショートブレッド
ショートブレッドの形はいろいろありますが、3つの代表的な形状があります。fingers(長方形)、petticoat(女性用の下着ペチコートのように末広がりの形)、そしてrounds(丸形)です。手作りであればハートや星形でも四角でも好きな形を作る楽しさがあります。
assortedといって、様々な形のショートブレッドが詰め合わせになっている商品も人気です。
ショートブレッドとクッキーの違い
ショートブレッドはビスケットと紹介しましたが、クッキーとの違いをご存知ですか?
ショートブレッドとクッキーの違い
まず、ビスケット(biscuit)とクッキー(cookie)ですが、イギリスでは焼き菓子全般をビスケットと呼び、クッキーという言葉はほぼ使われません。ですので、ショートブレッドはビスケットということになります。
なお、ビスケットとクッキーの違いですが、日本では全国ビスケット協会によってクッキーは糖分や脂肪分が全体の40%以上、これに満たないものをビスケットという基準が設けられています。
イギリス好き、イギリス英語を学びたい方はビスケットと言えば間違いありません(笑)
スコットランド生まれのショートブレッド
shortieという愛称でも呼ばれるショートブレッドはイギリス全土で人気のビスケットですが、そもそもスコットランド生まれです。スコットランド女王メアリーと関連づけて語られることがよくあります。
そもそもパンだったショートブレッド?
中世、ビスケットパンというものがありました。パン作りで残った生地を低温のオーブンで乾燥させ、ラスクのようなものにしたのです。ビスケットという言葉は「2度焼いた」という意味です。このビスケットパンを作るときイーストの代わりにバターをたっぷり使うレシピに発展し、ショートブレッドになっていったのです。この発明は、16世紀のスコットランド女王メアリーによるものとされることが多いのです。
ホグマネイに食べるショートブレッド
スコットランドでは、大晦日から新年1月1日の未明まで続くお祭り「ホグマネイ(Hogmanay)」があります。このお祝いには、家が暖かく安全であるように火を焚くための石炭、フルーツケーキのブラックバン、そしてショートブレッドを用意することが習わしです。
ショートブレッドの作り方
ショートブレッドはとってもシンプルな材料で作ることができます。ここでは、簡単にレシピを紹介します。
ショートブレッドレシピ
ショートブレッドの材料は、無塩バター100g・薄力粉150g・グラニュー糖50gのみです。
無塩バターは室温で柔らかくし、クリーム状になるまで砂糖と混ぜます。そこに薄力粉とひとつまみの塩を加え、さっくり混ぜます。この生地をまとめ、冷蔵庫で1時間弱休ませた後、厚さ1cmに伸ばして好きな形にカットします。焼き縮みを防ぐために、フォークで穴をあけます。
160℃のオーブンで約25分焼き(表面が淡い黄金色になればOK)、冷ましたら出来上がりです。
訳)ショートブレッドの生地をこねすぎないよう気をつけ、生地がまとまり始めるまで混ぜ、滑らかな生地になったら小麦粉をまぶした台の上に置きます。
美味しいショートブレッドを作るコツ
材料はたった3つ、だからこそ上質なものを選ぶことが大切です。間違ってもバターをマーガリンに替えたり、グラニュー糖を他の砂糖にすることはやめましょう。
ショートブレッドといえばWalker’s
ショートブレッドがスコットランド発祥ということを述べました。そして、ショートブレッドといえば!のブランドがあります。ここでは、Walker’sについて紹介しましょう。
1898年創業のWalker’s
Walker’sは家族経営の会社です。Walker家がスコットランドSpeysideにあるAberlour村でショートブレッドを焼き始めたのは125年以上も前のことになります。そして、家族は今もこの村に住んでいます。ちなみに、Speysideはスコッチウイスキー最大の産地でもあります。
ジョセフ・ウォーカー氏は1898年、この村でパン屋を開業します。上質なパン作りの伝統は孫、そしてひ孫によってしっかりと受け継がれています。最高級の原料のみを使用して作られることを保証するために、創設者の個人保証がWalker’sの全商品のパッケージに記されていることからも、彼らのこだわりが伺えます。
以下、Walker’sのウェブサイトから動画を紹介します。ぜひ、ご覧になってください。
参考:Walker’s
赤のタータン柄パッケージ
スコットランドといえば、日本の家紋に近いクラン・タータンというものがあります。これは多くの異なる色を使った格子柄の毛織物です。日本でもタータンチェックと呼びますね。
Walker’sのパッケージの特徴といえば、赤のタータン柄です。スコットランドの伝統を記念するものとして使用されますが、タータンのそれぞれの色には意味が込められています。赤はWalker’s製品を世界中に広めたいという情熱、青はWalker’sの故郷にあるスペイ川を、緑はSpeysideの肥沃な土地と古代の森、そして金は1898年からパンを焼き続けているウォーカー家5世代を象徴しています。
世界中で楽しまれるWalker’s
製品を世界中に広めたいという情熱を表すタータンの赤のとおり、今ではWalker’sは世界中で楽しまれています。イギリスでもスーパーマーケットでどこでもいつでも買えるお菓子として長年愛されています。
ウォーカー家の継続した情熱、高品質のショートブレッドづくりを評して、英国最高の栄誉のひとつであるKnighthoodや、CBE(大英帝国勲章)などを受賞していることも添えましょう。
訳)ウォーカーズは、ショートブレッド、ビスケット、クラッカーを製造するスコットランドの会社です。
おすすめブランド
Walker’sを代表として、イギリスには他のショートブレッドもたくさんあります。最後に、厳選の2選を紹介します。
Island Bakery
Island Bakeryもスコットランドのブランドです。手書き風の文字やイラストのパッケージが可愛いだけでなく、すべてがオーガニックでバターたっぷりの美味しいショートブレッドを提供しています。Great Taste賞も数回獲得しています。様々なタイプがありますが、125gのショートブレッドが£2.25です。
Marks and Spencer
ショートブレッドはイギリスのどんなスーパーマーケットでも買えますし、スーパーの自社ブランドの商品もあります。イギリス人が愛するスーパーMarks and Spencer(M&S)でもショートブレッドが売られています。箱入り・缶入りと揃っていますが、本当に美味しいです。
参考:Marks and Spencer shortbread
まとめ
本記事ではスコットランド発祥のビスケット「ショートブレッド」を紹介しました。友人の家に呼ばれた際に、イギリスから日本へのお土産に、また母の日などの記念日に一年を通して食べられるお菓子です。お手頃価格も嬉しいですし、缶入りを買えば記念にもなります。美味しい紅茶やコーヒーを淹れて、イギリス式リラックスの時間を過ごすのにショートブレッドは最高です。