ペルーと言えば、古代インカ帝国の遺跡マチュピチュ、そして砂漠地帯に描かれた幾何学図形や動植物の絵であるナスカの地上絵など、歴史的な遺跡が世界中の旅行者を魅了する国です。
南米西部に位置し、南米で3番目に大きな国ペルーに、スペイン発祥のお米のスイーツがあることをご存知ですか?
この記事では、日本人にはちょっと違和感があるかもしれない?お米の甘いデザート「アロス・コン・レチェ」を紹介しましょう!
アロス・コン・レチェってどんなお菓子?

アロス・コン・レチェはペルー版のライス・プディングです。ライス・プディングはその名のとおり、お米を使ったデザートになります。日本にもミルク粥がありますが、これとは少し異なります。
ペルー版ライス・プディングのアロス・コン・レチェ
アロス・コン・レチェはArroz con Lecheと書きます。ペルーの公用語はスペイン語・ケチュア語・アイマラ語の3つであり、Arroz con Lecheもスペイン語になります。
訳)アロス・コン・レチェは、ペルー版ライスプディングです。
アロス・コン・レチェは牛乳でお米をじっくり煮込んで作ります。さらにミルクからできている練乳を足すことで、コクとクリーミーさをアップ、その食感はもちもちになり美味しいライス・プディングになります。アロス・コン・レチェには、レモンやシナモンが加えられることもあります。
このアロス・コン・レチェの発祥について次で紹介しましょう。
訳)アロス・コン・レチェは主に、短粒種のお米、砂糖、エバミルク、加糖練乳を使って作られます。
アロス・コン・レチェ発祥の地は?
ライス・プディングであるアロス・コン・レチェの発祥がどこか辿ると、それはヨーロッパのある国ということが分かります。
発祥はイベリア半島スペイン
イベリア半島は、ヨーロッパ大陸の南西端にあり、5分の4をスペインが、残り5分の1をポルトガルが占めます。そして、アロス・コン・レチェ発祥の地はイベリア半島スペインです。ネットでアロス・コン・レチェと調べても、実際スペインで定番のデザート、という結果がたくさん出てきます。
Arroz con Lecheもスペイン語でした。Arrozは「米」、conは前置詞で「〜と」、そしてLecheは「牛乳」の意味です。直訳で「ライスとミルク」「ミルク入りライス」のようになります。
アロス・コン・レチェがラテンアメリカへ
イベリア半島のイスラム支配時代に生まれたアロス・コン・レチェは、スペインのムーア人によって16世紀、ペルーを含む南米に広まったと考えられています。16世紀は、ペルーにとってスペイン植民地時代でした。
ペルーとスペインの歴史的関係
英語学ぶ人にとっては、興味深いのは世界の歴史です。アロス・コン・レチェがスペイン発祥で南米に渡ってきたことがわかったところで、ペルーとスペインの歴史的な関係について少し触れておきましょう。
1533年にスペインに征服されたペルー
それまでインカ帝国の中心であったペルーでしたが、フランシスコピサロやアルマグロといったコンキスタドルがインカ帝国を覆します。コンキスタドルとはスペイン語で征服者を意味し、15〜17世紀のアメリカ大陸への征服者・侵略者を指します。スペイン帝国のペルー副横領を設置したことにより、1533年にスペインに征服され、植民地となりました。
ペルー共和国の独立は1821年
その後、ペルー共和国は1821年に独立をします。
今ではペルー共和国は南米でブラジル、アルゼンチンに次いで3番目に大きな国です。そしてペルーからスペインへの移民も多く、首都マドリードでは約300ものペルー料理のレストランがあるなど、彼らの文化は逆にスペインに浸透しているのです。
アロス・コン・レチェの作り方

次に、アロス・コン・レチェの材料や作り方を紹介しましょう。
アロス・コン・レチェの材料(4〜5人分)
お米(短粒種)1カップ
砂糖
エバミルク1カップ
加糖練乳1缶(約400g)
水2カップ
シナモンスティック1本
シナモンパウダー
レモンの皮少々
バニラエッセンス少々
アロス・コン・レチェのレシピ
1. シナモンスティックとレモンの皮を加えて、お米を水で炊く。
2. 牛乳と練乳を加え、とろみがつくまで弱火で煮る。
3. バニラエッセンスを加える。
4. 仕上げに、シナモンパウダーをふりかけて完成!
人によっては、干しぶどうを入れることもあります。そのまま熱々でも、冷ましていただいても美味しいのがアロス・コン・レチェです。
アレンジバージョンCombinado
アレンジしたバージョンとしてCombinadoというスイーツがあります。ペルーのもっとも伝統的なスイーツであるアロス・コン・レチェとマサモラ・モラーダを混ぜ合わせたものです。マサモラ・モラーダは、紫とうもろこしを使った半ゼリー状のお菓子です。
訳)ペルーのデザートであるコンビナードは、アロス・コン・レチェとマサモラ・モラーダという2つのもっとも伝統的なお菓子から作られています。
ペルー人にとってのアロス・コン・レチェ

ここで、ペルーの人々にとってアロス・コン・レチェがどのような存在なのか紹介します。単なるデザート以上の意味を持っているようです。
ペルーの文化遺産的なシンボルのアロス・コン・レチェ
アロス・コン・レチェはスペインからペルーに渡ったスイーツですが、ペルーの地で先住民コミュニティがペルーのものに形づくりました。スペインでは中東のライスプディングがルーツであるのに対し、ペルーでは独自の甘さ、そしてシナモンの風味を加え進化させたのです。
宗教的なお祭りに欠かせないアロス・コン・レチェ
ペルー版ライスプディングは、何世代にも渡って受け継がれてきました。そして、宗教的なお祭りをはじめ、様々なフェアやイベントにお祝いのシンボルとして欠かせないデザートになりました。
今では、アロス・コン・レチェはペルーの文化遺産的なシンボルとして、この国の多様な料理の風景、そして人々の不屈の精神を体現しています。
訳)アロス・コン・レチェはペルーでもっとも象徴的なデザートのひとつとなり、ペルー人の心のなかで特別な位置を占めています。
イギリスのrice pudding
最後に、英語の本場イギリスのお米スイーツ・ライスプディングについても紹介しましょう。
14世紀まで遡るライスプディング
イギリスのライスプディングは、レシピが残っている14世紀まで遡ります。イギリスでは何世紀にも渡って、輸入米の高騰によってライスプディングは裕福な人々が楽しむ贅沢品でした。その後、一般的になったのは18世紀以降と言われます。
イギリスのお米スイーツ
筆者はイギリス渡英後、イギリス人夫がデザートにライスプディングを食べよう、と言ったときにそれが何を意味するのか一瞬考えました。イギリスでpudding(プディング)といえば、それはデザートを指します。ということは、お米のデザートではないですか。米が甘い?そして、一口夫のライスプディングを試しました。すると・・・クリーミーでお腹に溜まる感じはあったものの、味は全然悪くなかったのです。
しかし、イギリス人にとってもライスプディングは好き嫌いが分かれるデザートのひとつです。そのままシンプルなクラシック、塩キャラメル味、ラズベリー味、いちご味、チョコレート味などバリエーションもあります。
まとめ
本記事では、お米をデザートに使ったペルー版ライス・プディング「アロス・コン・レチェ」を紹介しました。お米を主食とする日本人もこの発想にびっくり、だからこそ異文化は楽しいですね。ミルク粥を作るときにアロス・コン・レチェ風にしてみればペルー、スペイン、そしてイギリスの食文化を少し体験できるでしょう。
