ドイツ西部、ライン川沿いの小さな街シュパイヤー。そこにそびえ立つのが、ユネスコ世界遺産に登録されているシュパイヤー大聖堂(Speyer Cathedral)です。
ロマネスク様式を代表するこの大聖堂は、世界最大のロマネスク建築のひとつとも称されます。
今回はこの荘厳な大聖堂の歴史、見どころ、英会話フレーズを紹介します。
世界遺産「シュパイヤー大聖堂」とは?

正式名称は「聖マリア・聖ステパノ大聖堂」(Cathedral of St. Mary and St. Stephen)。建築様式はロマネスク様式。その堂々たる姿から、「シュパイヤーの皇帝大聖堂(Imperial Cathedral of Speyer)」と称されることもあります。
この大聖堂は、神聖ローマ帝国の皇帝たちによって築かれ、彼らの権威と信仰を象徴する建造物です。1981年にはユネスコ世界遺産に登録されました。
シュパイヤーってどんな街?
ドイツ南西部、ラインラント=プファルツ州に位置するシュパイヤーは、人口約5万人の小さな街。実は1000年以上前から存在する古都であり、かつては交易と金融の中心地として栄えました。
現在では静かで美しい観光都市として知られ、多くの歴史的建造物や博物館が集まっています。
シュパイヤー大聖堂の構造
シュパイヤー大聖堂は、バシリカ式の構造を持つ巨大建築です。特徴的なのは、4本の高い塔と、アーチ型の天井、そして3列の側廊。ロマネスクの傑作ともいえるでしょう。
平面図を見ると、ラテン十字の形をしており、全長はなんと約134メートル。身廊の幅は約38mもあり、そのスケールに圧倒されます。
アクセス
シュパイヤーへは複数の都市からアクセス可能です。フランクフルト中央駅から特急電車でマンハイムまたはハイデルベルク乗換、さらに市電で約2時間です。マインツからは約1時間、カールスルーエからは約40分。
シュパイヤー中央駅から大聖堂までは徒歩でも15分ほどです。駅からは大通りをまっすぐ進めば、遠くからでも大聖堂の塔が見えてきます。
シュパイヤー大聖堂の歴史
建設が始まったのは1030年。建設を命じたのは、当時の神聖ローマ皇帝であるコンラート2世(Conrad II)。彼はこの大聖堂を、自らの墓所とするために特別な思いを込めて建てさせました。
この建築計画は非常に壮大で、当時としては世界最大級のロマネスク様式の建物となる予定でした。大聖堂の完成には長い年月がかかり、1061年になってようやく献堂式が行われました。式典は孫にあたるハインリヒ4世(Henry IV)の手で執り行われました。
その後の歴史も波乱に満ちています。1689年、フランス王ルイ14世の軍隊がプファルツ継承戦争のさなかにこの地を襲い、大聖堂の一部が破壊されてしまいます。さらに1794年には、フランス革命軍がドイツ西部に侵攻し、再び大聖堂は焼き討ちに遭いました。こうした出来事により、かつての栄光を誇った建物は一時、廃墟のような状態にまで追い込まれたのです。
19世紀になると状況が変わります。ドイツ南部バイエルンの国王であったルートヴィヒ1世(Ludwig I)が、この歴史的建造物の価値を認め、大規模な再建事業を支援しました。
再建の努力はその後も続き、1961年には創建当初の姿に近づけるための復元工事が行われました。こうして、シュパイヤー大聖堂は現在のような荘厳な姿を取り戻すことができたのです。
世界遺産としての価値
シュパイヤー大聖堂(Speyer Cathedral)は、1981年、ユネスコ世界遺産に登録されました。
訳)シュパイヤー大聖堂は、1981年にユネスコの世界遺産に登録されました。
世界遺産に登録された理由
理由のひとつは、ロマネスク建築の発展における極めて重要な役割を果たしたことです。特にその純粋な建築様式、スケール、保存状態が高く評価されています。
覚えておきたい英会話フレーズ
観光しながら使える、シュパイヤー大聖堂関連の英語フレーズをいくつかご紹介します。
訳)シュパイヤー大聖堂の大きさと静けさに深く感動しました。自分がとても小さく、そして不思議と穏やかな気持ちになれました。
訳)大聖堂の中を歩くと、まるで時間をさかのぼっているような感覚でした。
訳)地下聖堂は特に印象的でした。多くの皇帝たちがそこに眠っていると知って、身震いがしました。
訳)この大聖堂がドイツの歴史においてどれほど重要だったか、行くまで知りませんでした。
シュパイヤー大聖堂の主な構成資産

シュパイヤー大聖堂には、歴代皇帝の眠る地下聖堂や歴史的な水盤など、見どころがあります。
地下聖堂(クリプタ)
大聖堂の地下には、ドイツ最大規模のクリプタ(crypt)があります。その広さは東西約35メートル、南北約46メートルに及び、まさに地下に広がる壮大な聖域です。
この地下聖堂には、神聖ローマ帝国の歴代皇帝や王たち、皇后や聖職者たちの棺が安置されており、訪れる人々に深い感銘を与えます。棺は地上よりも高い位置に置かれており、訪問者は階段を上って見学する設計になっています。
大聖堂の水盤
大聖堂の西側ファサード前には、巨大な石造りの水盤(stone basin)が設置されています。かつては新しく任命された司教の就任時、この水盤にワインを満たして人々に振る舞うという荘厳な儀式が行われていたそうです。
この伝統は形を変えて今も続いており、毎年9月には「大聖堂ワイン祭り(Domwein Fest)」が開催されます。ドイツ有数のワイン産地・プファルツ地方のワイン生産者たちが、大聖堂を背景に自慢のワインを紹介し、多くの観光客で賑わいます。
正面門と周辺施設
正面の門から見上げる大聖堂の姿は絶景です。また周辺には「プファルツ歴史博物館(Historisches Museum der Pfalz)」や、「旧門アルトペェルテル(Altpörtel)」といった観光スポットもあります。
おわりに:世界遺産を英語で楽しむ
シュパイヤー大聖堂を訪れれば、皇帝たちが眠る地下聖堂に足を運び、中世の人々がワインを分かち合った水盤の前に立ち、過去とつながる感覚を味わえるでしょう。
こうした感動を英語で伝えられたら、旅はもっと豊かになります。英語で表現することで、思い出はより深く心に残ります。そして、世界中の人とその感動を共有することができるでしょう。
