ルーマニア中部、トランシルヴァニア地方の小さな村々には、中世の面影を残す「要塞教会」が点在しています。これらは15世紀から17世紀にかけて、ドイツから移住してきたザクセン人たちによって建てられたもの。村を守るために教会そのものを要塞化するという独特の建築様式が、今も残されています。
なかでも「ビエルタンの要塞教会」は、三重の防壁を持つ堅固な構造で有名です。
今回は、トランシルヴァニア地方の要塞教会のある村落群を、英語学習と共に旅してみましょう。
トランシルヴァニア地方の要塞教会のある村落群とは?

トランシルヴァニア地方に残る要塞教会の多くは、教会を中心に村が発展しました。
かつてこの地方に入植したザクセン人や、ハンガリー系のセーケイ人たちは、繰り返される戦乱から身を守るため、教会を要塞としても使えるよう工夫しました。その結果、村と教会が一体化した独特の景観が生まれたのです。
要塞聖堂群は300ほど形成されましたが、現在、ユネスコ世界遺産に登録されているのは、以下の7つの村落です。
- ビエルタン(Biertan)
- プレジュメル(Prejmer)
- ヴィスクリ(Viscri)
- クルニク(Câlnic)
- サスキズ(Saschiz)
- ドゥルジウ(Dârjiu)
- ヴァレア・ヴィイロル(Valea Viilor)
歴史:教会が砦になった理由
この要塞教会の始まりは、13世紀のハンガリー王ゲーザ2世によるドイツ系ザクセン人の入植にさかのぼります。国境防衛のために呼び寄せられた彼らは、オスマン帝国やタタール人の侵攻から村を守る必要がありました。
規模の大きな町では街全体が城壁で囲まれましたが、小さな村では、村の中心にある教会を囲う形で防御施設を築いたのです。防衛用の塔や石造家屋も付け加え、防壁に囲まれた教会は、平時は信仰の場、非常時には籠城の拠点となりました。
アクセス方法
要塞教会群の拠点となる都市は、シビウとシギショアラです。シビウには空港があり、フランクフルトやウィーンなどから直行便があります。シギショアラへはブカレストから鉄道で約5時間。
これらの都市から、各村へはバスまたは車で移動します。ただし公共交通機関では不便な村も多いため、現地ツアーへの参加が効率的です。
世界遺産としての価値とは?
1993年、ビエルタンの要塞聖堂のみが「ビエルタンとその要塞聖堂」(Biertan and its fortified church)の名で、ユネスコ世界遺産に登録されました。
その後、1999年、他の6つの村が拡大登録され、名称がトランシルヴァニア地方の要塞教会のある村落群(Villages with Fortified Churches in Transylvania)に変更されました。
登録理由は?
この世界遺産は、以下の点で高く評価されました。
- 独自の防衛建築と宗教建築の融合
- 中世ヨーロッパの生活様式の保存
- 放射状村落構造という希少な景観
これらの教会と村は、今なお人々が暮らす“生きた文化遺産”でもあります。
UNESCO World Heritage Convention:Villages with Fortified Churches in Transylvania
覚えておきたい英会話フレーズ
旅の感動を英語で伝えてみましょう。要塞教会の驚き、美しさ、歴史を語る表現を覚えておけば、海外の人とも気持ちを共有できます。
訳)わあ、この教会、お城みたい!
訳)うん、これは要塞教会なんだ。昔は戦争のとき、みんなここに隠れてたんだよ。
訳)すごいわ。こんなの、今まで見たことない。
訳)僕もだよ。まるでタイムスリップしたみたいだね。
訳)塔からの景色、最高!
訳)そうだね、ここに建てた理由がわかる気がするよ。
訳)この扉、すごく古そうなのに、まだ頑丈そう。
訳)これぞ中世の建築技術だね。
訳)写真を撮ろう。この場所、一生忘れたくないな。
訳)いいね。こんな景色、人生で一度きりだもんね。
見逃せない!7つの要塞教会

トランシルヴァニア地方の世界遺産登録されている7つの要塞教会を紹介します。
ビエルタンの要塞教会
ビエルタンは、トランシルヴァニアで最初にドイツ系の入植が行われたため、その後の入植地にさきがけて発展していました。
三重の防壁を持つこの教会は、まさに要塞そのもの。特に15の閂(かんぬき)を一つのドアノブで開けられる扉は見ものです。かつてトランシルヴァニアの宗教改革運動の中心でもあり、歴史的にも重要な建物です。
教会内部には豪華な祭壇や説教壇が残り、信仰と防衛が融合した独自の空間が広がります。
プレジュメルの要塞教会
円形の防壁に囲まれ、壁の高さは12m以上。跳ね上げ橋や鉄の門、さらには死のオルガンと呼ばれる防衛設備も残っています。「死のオルガン」は一度に多数の矢や石を発射できる防御装置で、オスマン帝国の軍勢を何度も撃退したという伝説が残っています。
城壁の内部には、倉庫や学校、さらには避難用の部屋も備えられており、住民たちが長期間にわたって籠城できるよう工夫されていました。金箔で装飾されたトリプティカル祭壇画も見どころです。
ヴィスクリの要塞教会
白壁と赤い屋根が印象的なため「白い教会」とも呼ばれ、美しさと堅牢さを兼ね備えたバランスが魅力。英国のチャールズ国王(当時は皇太子)もこの村を訪れ、その魅力を称賛しました。内部にはロマネスク様式とゴシック様式が共存しています。
その他の教会群
- クルニク:13世紀に建てられた城壁と鐘楼が印象的。
- サスキズ:高い塔と美しい内部装飾。
- ドゥルジウ:セーケイ人が築いた唯一の村落。
- ヴァレア・ヴィイロル:保存状態の良さで知られます。
これらの村々も、それぞれに異なる特徴を持ち、訪問する価値があります。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
中世の村を歩くと、歴史や文化が今も息づいていることを実感できます。教会が村を守り、人々の希望となった日々。それを知れば、建物とともに、当時の人々の生活も見えてきそうです。
その感動を、英語で誰かに伝えられたら、旅の思い出はさらに深まるはず。
Let’s travel the world through language and culture.
