ミクロネシア連邦・ポンペイ島の海岸沖に広がる、黒い玄武岩とサンゴで築かれた不思議な人工島群——それが世界遺産「ナン・マドール(Nan Madol)」です。
1200年ごろから1500年ごろにかけて築かれたこの場所には、宮殿、神殿、居住地、墓所など、100もの人工島が点在しています。水路で区切られたその景観は「太平洋のヴェニス」とも称されます。
しかし、現在は泥の堆積やマングローブの繁茂によって保存が難しく、ユネスコの「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産)」にも登録されています。失われつつある儀式都市ナン・マドール。その謎と魅力を、英語のフレーズと共に探検してみましょう!
ナン・マドールとは?

ナン・マドール(Nan Madol)は、ミクロネシア連邦のポンペイ州にある人工島群で、太平洋地域最大級の考古遺跡です。名前の由来には諸説あり、現地語で「間隔の間(between intervals)」や「家がたくさんある場所」という意味だとされています。
古代にこれほど大規模な石の都市が海に築かれていたことは驚きです。
ナン・マドールの伝説と歴史
ナン・マドールの起源は、神話と伝説に包まれています。
物語の中心となるのは、オロシーパとオロショーパという2人の兄弟。彼らは「風下のカチャウ(Katau Peidi)」という西の伝説の地からやってきて、神聖な祭壇を建てるためにこの地に石を積み上げました。
兄のオロシーパが亡くなった後、弟のオロショーパが建設を完成させ、「シャウテレウル朝(Saudeleur Dynasty)」を築いたとされています。
しかし、シャウテレウル王朝の最後の王・シャウテムォイは、島の雷神ナーンシャペを怒らせ、神の子イショケレケルに滅ぼされます。その後、イショケレケルは島を治め、現在に続く伝統の礎を築いたとされています。
この物語は信仰と歴史が交錯した壮大な叙事詩であり、現地の文化理解にも欠かせない要素です。
ミクロネシア連邦ってどんな国?
ミクロネシア連邦は、太平洋西部に位置する600以上の島々からなる国です。4つの州(ヤップ、チューク、ポンペイ、コスラエ)から成り、その中のポンペイ州にナン・マドールがあります。
日本との歴史的なつながりも深く、かつては日本の委任統治領となっていた時代もあります。現在はアメリカとの自由連合協定を結ぶ独立国家です。
アクセス方法
日本からナン・マドールへ行くには、まずグアムまで直行便で約4時間。そこからポンペイ島までは飛行機で約2時間半です。
ポンペイ島の中心部から車で約40分かけて船乗り場へ行き、さらに船で15分ほどでナン・マドールに到着します。
世界遺産としての価値
ナン・マドールは2016年に「Nan Madol: Ceremonial Centre of Eastern Micronesia(ナン・マドール:東ミクロネシアの儀式の中心地)」として世界遺産に登録されました。
登録理由とは?
ユネスコがナン・マドールを登録した主な理由は、その建築的独自性と、ミクロネシア文化における政治・宗教・儀式の中心地であったという点です。
特に評価されたのは、次のような点です。
- 巨石建築の技術的・芸術的価値
- 王権の象徴としての空間構造
- オセアニアにおける特異な政治制度の証拠
ただし、保存状態の悪化により同年に「危機遺産」にも指定されています。風化やマングローブの侵食、水没のリスクがあるため、緊急の保護活動が求められています。
UNESCO World Heritage Convention:Nan Madol: Ceremonial Centre of Eastern Micronesia
覚えておきたい英会話フレーズ
旅の感動を英語で伝えてみましょう。ナン・マドールについての会話を紹介します。
訳)ナン・マドールって「太平洋のヴェニス」って呼ばれてるのよ。
訳)それはすごく幻想的だね。自分の目で見てみたい!
訳)これ、モルタルなしで玄武岩を積み上げて作られてるのよ。信じられる?
訳)古代にしては驚異的な技術だね。
訳)100以上の人工島があって、それが水路でつながってるの。
訳)わあ、まるで海に浮かぶ都市だね。
訳)最後の王様は神様に罰を受けたって聞いたわ。
訳)その伝説が遺跡に不思議な雰囲気を与えてるね。
主な構成遺産

ナン・マドールの遺跡の範囲はおよそ1.5 km × 0.7 km。 北東部と南西部で「上マトル」と「下マトル」に大別され、それぞれに役割と機能がありました。
「上マトル」は司祭者が暮らし、「下マトル」はシャウテレウルの住居や寺院などが設置されていました。
上マトル
上マトルの中心にあるのが「ナントワス(Nandowas)」。シャウテレウル王朝の王たちの墓所であり、神聖な儀式が行われた場所です。
「ナントワス」という言葉は「口の中に」を意味するとされ、中で何が行われているのか分からない神秘性を象徴しています。二重の壁が取り囲み、外からは何も見えません。
ナン・マドールの中でも最も神聖で、宗教的中心地として機能していたと考えられています。
ウシェンタウは司祭者の居住地でした。
下マトル
下マトルには、王の住居や行政施設がありました。その中心が「パーンケティラ(Pahnkedira)」。ここには10棟の食料庫、寺院の跡などが残っており、王族の生活の中心地でした。
イテート (Idehd) は毎年祭祀が行われていた島です。
神聖な空間である上マトルと、政治・生活の中心である下マトルが明確に分かれていたことがわかります。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
ナン・マドールは、海に浮かぶ巨石の都市であり、神話と歴史が交錯するミステリアスな世界遺産です。現地に足を運べば、遠い昔の王朝や神々の気配を感じられるかもしれません。
そして、世界遺産を英語で学ぶことで、言葉の壁を越えてその価値をより深く知ることができるのではないでしょうか。
訳)旅を通じて歴史を知ると、学びは忘れられないものになります。
Let’s travel the world with English and curiosity!
