地中海東部に位置するキプロス島は、自然豊かで美しい島として知られています。しかしその一方で、1974年に起こったギリシャ系住民とトルコ系住民の衝突をきっかけに、島は南北に分断されました。現在、国際的に承認された国家である「キプロス共和国」は南側を占め、北側には「北キプロス・トルコ共和国(※国際的には承認されていません)」が存在します。
今回ご紹介する世界遺産は、キプロス共和国の山岳地帯にある「トロードス地方の壁画聖堂群」です。この地域には、11世紀から16世紀にかけて築かれたギリシャ正教の聖堂や修道院が点在し、内部には色鮮やかで精緻なフレスコ画(壁画)が数多く残されています。
この記事では、トロードス地方の壁画聖堂群の歴史、特徴、見どころをわかりやすく解説しながら、英会話フレーズも楽しく学んでいきましょう。
トロードス地方の壁画聖堂群とは?

キプロス島の中央から西部に広がる「トロードス山脈」は、島で最も大きな山脈です。この山岳地帯の村々に点在する、9つの教会と1つの修道院が、ユネスコ世界遺産として登録されています。
シンプルな教会外観と彩り豊かなフレスコ画
これらの聖堂や修道院の外観は、地元の伝統建築に基づいた石造りで素朴です。一見すると農村の民家のような姿ですが、内部に足を踏み入れると、壁や天井一面に広がるフレスコ画の美しさに息を呑むことでしょう。
これらの壁画は、主に11世紀から16世紀にかけて描かれたもので、ビザンティン様式の宗教美術の粋を極めています。鮮やかな色彩と細やかな描写で、キリストやマリア、聖人たちの姿が神聖な物語として描かれています。
アクセス方法
トロードス地方の壁画聖堂群は、いずれも山間部にあるため、個別に訪れるには車での移動が便利です。複数の聖堂を巡るなら、現地発のガイド付きツアーに参加するのが安心でしょう。
資産の歴史:ビザンティン帝国から十字軍、ヴェネツィアまで
キプロス島の歴史は非常に複雑で、多くの国と文明の影響を受けてきました。
395年、ローマ帝国が東西に分裂すると、キプロスは東ローマ帝国の一部となり、ギリシャ正教が広く根付きました。その後7世紀にはイスラム王朝ウマイヤ朝の支配も受けましたが、965年に東ローマ帝国が再び島を奪還し、支配を回復しました。
12世紀末にはビザンティン皇族イサキオス・コムネノスが島で反乱を起こして独立しましたが、すぐに第3回十字軍遠征中だったイングランド王リチャード1世(獅子心王)によって征服されます。
その後キプロスはローマ・カトリックの影響下に入り、1192年にはキプロス王国が成立。軍事や貿易の要所として栄えましたが、最終的には1489年にヴェネツィア共和国の領土となりました。
このような歴史のなかで、トロードス山脈には多くの教会や修道院が建てられました。
世界遺産としての価値

「トロードス地方の壁画聖堂群(Painted Churches in the Troodos Region)」は、1985年ユネスコ世界遺産に登録されました。2001年には救世主顕栄聖堂が拡大登録されました。
登録理由とは?
世界遺産に登録された主な理由は、以下のようなことです。
- ビザンティン美術の発展を示す重要な証拠であること(文化遺産基準ⅱ)
- キリスト教建築と宗教美術の卓越した例であること(文化遺産基準ⅲ、ⅳ)
聖堂内部のフレスコ画は、宗教的な意味合いだけでなく、美術史的にも高い価値を持っており、中世東地中海世界の文化の交差点であったキプロス島ならではの様式融合が見られます。
UNESCO World Heritage Convention:Painted Churches in the Troodos Region
覚えておきたい英会話フレーズ
ここでは、トロードスの壁画聖堂群について会話をしたいときのフレーズを紹介します。旅行や観光地の感想を伝えるときに便利です。
訳)このフレスコ画、本当に息をのむ美しさね!
訳)何世紀もたっているのに、こんなに鮮やかだなんて驚きだよ。
訳)外はすごく素朴なのに、中はまるで美術館ね!
訳)それが、こういう隠れた名所の魅力なんだよ。
訳)今のところ、どのフレスコ画がいちばん気に入った?
訳)「最後の審判」かな。すごく迫力あったよ。
おすすめの見どころ

世界遺産に登録されている9の聖堂と1つの修道院、そのフレスコ画を紹介します。
屋根の聖ニコラオス聖堂
カコペトゥリア村の近郊に位置し、11世紀に建てられたビザンティン様式の教会。12世紀に追加された玄関の切妻屋根が印象的で、「屋根の聖ニコラオス」と呼ばれています。
内部の代表的な壁画には、「セパステの40人の殉教者」「最後の審判」「主の顕栄」などがあり、保存状態も非常に良好です。
訳)屋根の聖ニコラオス聖堂には、「最後の審判」などのフレスコ画が保存されています。
蝋燭(ろうそく)の聖イオアン修道院
カロパナヨティス村にある修道院で、3つの付属聖堂を持っています。13世紀のフレスコ画には東洋的な影響が見られ、14世紀のものは『新約聖書』の場面を描いています。
アシィヌの生神女聖堂
12世紀以降のフレスコ画が残る聖堂で、色彩の美しさが特に評価されています。キリスト、聖母マリア、聖人、預言者などが豊かな表現で描かれています。
豆の生神女聖堂
1192年に描かれた聖母子像などが残る木造聖堂。
ムトゥラの生神女聖堂
キプロス最古の教会とされ、「十二大祭」や「最後の審判」の壁画が残されています。
大天使ミハイル聖堂
1474年に描かれた、ビザンティン帝国滅亡後のフレスコ画が特徴的です。
聖十字架聖堂
かつてキプロス王家ジャンの所有だった教会です。
足の生神女聖堂
1502年建造の旧修道院付属聖堂。
聖水の十字架聖堂
1494年のフレスコ画などが保存されています。
救世主顕栄聖堂
2001年に追加登録された新しい構成資産で、急傾斜の屋根と16世紀後半のフレスコ画が印象的です。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
キプロスの「トロードス地方の壁画聖堂群」は、外観は素朴ながら内部に素晴らしい宗教美術が秘められている世界遺産です。
世界遺産を英語で紹介できるようになれば、世界の人たちと感動を共有できますね。
次の旅では、「This place is full of history and beauty!」と、英語で感動を伝えてみませんか?
