ロシア北西部、カレリア共和国にあるオネガ湖。そこにぽつんと浮かぶ細長い島がキジ島(Kizhi Island)です。この小さな島には、世界的にも珍しい「釘を1本も使わずに建てられた木造教会」が存在し、その美しさと建築技術の高さから1990年にユネスコ世界遺産に登録されました。
青空の下で輝く玉ねぎ型の銀色ドーム、厳しい冬には雪に包まれ幻想的な姿を見せる教会群。
今回は、キジ島の木造教会の歴史や見どころを、英語を交えながら紹介します。
キジ島の木造教会とは?—驚異の建築技術

キジ島でひときわ目立つ建物は、1714年に建てられた顕栄聖堂(プレオブラジェンスカヤ教会)。この教会の最大の特徴は、「釘を1本も使っていない」という点です。
使われているのは、ロシアの寒冷地に育つ強靭な木材だけ。職人たちは斧1本で木を削り、組み合わせ、鉄の代わりに木製のくさびを用いて、22個の玉ねぎ型ドームをつくりました。そのすべてが人の手で丁寧につくられたのです。
この独自の建築様式は、寒冷地での木造建築技術が極限まで高められた成果といえるでしょう。
キジ島の歴史と背景
キジ島は、長さ約7km、幅約500mという細長い形をした島です。オネガ湖にはおよそ5,000の島が浮かんでおり、その中でもキジ島は古くから重要な場所とされてきました。
「キジ」という名は、カレリア地方の先住民であるカレリア人やヴェプス人の言葉で「祭祀の場」を意味するといわれています。もともとは自然信仰の聖地であり、宗教的儀式が行われていたのです。
16世紀には周辺に130あまりの集落が存在し、キジ島はその中心地となっていました。すでに教会建築が存在していた記録もありましたが、落雷や老朽化で破壊されてしまいます。
その後、ロシアとスウェーデンとの間で行われた北方戦争が終結した後、1714年に顕栄聖堂(プレオプラジェンスカヤ教会)が再建されました。その後、冬でも使えるように1764年には生神女庇護祭聖堂(ポクローフスカヤ教会)が隣に建てられ、1874年には鐘楼も加えられました。
1966年、ソ連政府はキジ島全体を保存地域に指定し、「ロシア木造建築博物館(Russian Museum of Wooden Architecture)」として整備を進めました。ロシア各地から貴重な木造建築が移築され、現在では教会、住宅、風車などを含む多彩な建築を見ることができます。
アクセス方法と注意点
キジ島へ行くには、まずロシア・カレリア共和国の首都ペトロザヴォーツクを目指します。ここはサンクトペテルブルクから車で約6時間の場所にあります。
5月中旬〜10月上旬の夏季には、ペトロザヴォーツクから高速船が運航しており、約1時間でキジ島に到着します。ただし、冬になるとオネガ湖が凍結するため、船は運休となります。
世界遺産としての価値
1990年、キジ島の「顕栄聖堂」「生神女庇護聖堂」「鐘楼」の3つの建物を中心とする教会群「Kizhi Pogost(キジ・ポゴスト)」がユネスコ世界遺産に登録されました。
登録理由は?
登録の主な理由は、以下のような点です。
- 建築技術の独創性:釘や金属を一切使わずに建てられた高度な木造建築。
- 文化的価値:ロシア正教の伝統とカレリア地方の文化が融合した宗教施設。
- 保存状態の良さ:300年以上の時を超えて、現在まで保存されていること。
- 周囲の自然景観との調和:オネガ湖の自然と美しく調和している建築群。
覚えておきたい英会話フレーズ
キジ島を旅しながら英語で会話したいとき、使える英会話フレーズをご紹介します。
訳)これを1本の釘も使わずに建てたなんて信じられない!
訳)うん、全部木でできてるんだ。すごい技術だよね。
訳)見て、あの玉ねぎ型のドーム!陽に当たって輝いてる!
訳)こんなの見たことないよ。まるで魔法みたい。
訳)これってロシアで最古の木造教会なの?
訳)そうだよ。聖ラーザリ復活教会は14世紀に建てられたと信じられているよ。
訳)キジ島にはどうやって行くの?
訳)夏ならペトロザヴォーツクから高速船で行けるよ。
おすすめの見どころ

キジ島には、22のドームを持つ顕栄聖堂をはじめ、冬用の生神女庇護聖堂、ロシア最古の木造教会である聖ラーザリ復活教会など、見逃せない建築が点在しています。どれも木材だけでつくられた驚きの技術と美しさが魅力です。
顕栄聖堂(プレオブラジェンスカヤ教会)
1714年に建てられたこの教会は、22個の玉ねぎ型ドームが特徴的な夏季用の礼拝堂です。当初、ドームは1つだけでしたが、キリスト教の四使徒の象徴である4つの小ドームがつくられ、その後徐々に数が増えていきました。
外から見た銀色のドームは、太陽光の加減で美しく輝き、写真映えも抜群。現在、内部観光も可能ですが、見学できる時期やエリアに一部制限があるため、事前に確認しておくと安心です。
内部には、5層構造のアイコノスタシス(聖障)が設置され、18世紀のロシア正教会の美術が楽しめます。また、複雑な木組みの構造美、自然光に照らされる空間の静けさも、内部観光の大きな魅力です。木の香りと温もりも感じられるでしょう。
生神女庇護祭聖堂(ポクローフスカヤ教会)
プレオブラジェンスカヤ教会の隣に建つ、9つのドームを持つ冬用の教会です。暖房設備が整っており、寒冷期にも使えるように設計されました。鐘楼や他の教会との配置バランスを考え、美しく並ぶ三つの建物がキジ島を代表する風景を生み出しています。
聖ラーザリ復活教会
ロシアに現存する最古の木造教会のひとつ。もともとムーロム修道院にありましたが、1961年にキジ島へ移築されました。長年風雨にさらされず、大聖堂の中に保管されていたため、驚くほどの保存状態を保っています。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
キジ島の木造教会群は、自然と文化、技術が融合した「生きた歴史博物館」です。英語でその魅力を伝えたり、現地の人と交流することで、より深く旅を楽しむことができます。
次は、ロシア・カレリアの湖に浮かぶ、木の芸術を見にいきませんか?
Let’s explore the world, one heritage site at a time.
(一つひとつの世界遺産をめぐって世界を旅しよう)
