日本語でよく使われる「至らぬ点もあるかと存じますが」。ビジネスメールやフォーマルなやり取りの中で、「配慮」「謙遜」「誠意」を込めたいときに使われる、非常に丁寧な表現です。しかし、いざ英語にしようとすると、「直訳ができない」「失礼にならないか不安」と感じる方も多いのではないでしょうか?

特に、丁寧さや控えめな表現が求められられるビジネスメールや、同僚・取引先にフィードバックや感想を伝える場面では、「至らぬ点もあったかと存じますが…」と添えることで、誠実な印象を与えることができます。

この記事では、「至らぬ点もあるかと存じますが」の意味や英語での表現、使い方のコツ、そして英語でも丁寧に伝えるために役立つクッション言葉についても詳しく解説します。

「至らぬ点もあるかと存じますが」の意味とは?

「至らぬ点もあるかと存じますが」の意味とは?

この表現は、ビジネスメールやスピーチ、あいさつ文などで広く使われる、非常に丁寧な言い回しです。自分の対応や説明が完璧ではなかったかもしれないという前提のもと、感謝の気持ちや反省、謙虚な姿勢を込めて相手に伝えるときに用いられます。

たとえば、資料を提出したあとに「至らぬ点もあるかと存じますが、ご確認いただけますと幸いです」と添えれば、「気配りのできる人」という印象を与えることができます。似た表現としては、以下のような言い回しもよく使われます。

  • 「不十分な点もあったかと存じますが」:成果や内容の質に対する控えめな評価
  • 「拙い点もあったかと存じます」:説明や発言など表現そのものへの謙遜
  • 「未熟なところがあるかと存じますが」:経験の浅さや学びの途中であることを前提とした丁寧な言い回し

いずれも、“謝る”というより、“足りなかったかもしれない”という可能性に触れておくことで相手に配慮するという点が共通しています。こうした日本語特有の間接的な表現は、英語に訳す際も工夫が必要になります。

ちなみに、日本語では「至らぬ点も…」のように謙遜することが美徳とされていますが、英語では少し注意が必要です。控えめな表現が行きすぎると、「自信がなさそう」「頼りない」と受け取られることもあるからです。英語では、相手への配慮は大切にしつつも、自分の努力や責任感をしっかり伝えるのがポイントなんです。

「至らぬ点もあるかと存じますが」は英語でどう表現する?

英語では「至らぬ点もあるかと存じますが」をそのまま訳すことはできません。ですが、同じように控えめに自分の不足を認め、相手に配慮する言い回しはいくつか存在します。

よく使われる表現

Aさん

I may have some shortcomings, but I did my best.

至らぬ点もあったかもしれませんが、最善は尽くしました。

Aさん

I understand there may have been some areas that were lacking.

不十分な点があったかと存じます。

Aさん

I apologize if I was not able to meet your expectations.

ご期待に添えず、申し訳ありません。

こうした表現を使うことで、「完璧ではなかったかもしれないが、努力はした」というニュアンスをやわらかく伝えることができます。

クッション言葉を使って丁寧に伝えよう

クッション言葉を使って丁寧に伝えよう

ここで意識したいのが「クッション言葉」です。クッション言葉とは、伝えたい内容の前に挟むことで、相手にやわらかく、丁寧に伝えるための前置き表現です。日本語のクッション言葉には次のようなものがあります。

日本語のクッション言葉の例:

  • 恐れ入りますが…
  • 〜していただけますと幸いです
  • お手数をおかけしますが…

英語にも、こうした“ひと言添えることで印象をやさしくする”言い回しがあります。ビジネスメールやフォーマルな場面では、自然なやわらかさを演出するために欠かせない表現です。

以下に、ビジネスや日常会話でよく使われる代表的なクッション言葉と、その使い方をご紹介します。

I hope ~

「〜であれば幸いです」「〜だと嬉しいのですが」といった、控えめで丁寧な願望を伝える表現です。押し付けるのではなく、相手の反応を尊重したいときに使われます。

Aさん

I hope I was able to help.

少しでもお役に立てていれば幸いです。

If possible, ~

「もし可能であれば」という前置きをすることで、お願いや依頼をよりやわらかく伝えることができます。ビジネスメールなどで頻出の表現です。

Aさん

If possible, could you review this by Friday?

もし可能でしたら、金曜日までにこちらをご確認いただけますでしょうか?

Please feel free to ~

「ご遠慮なく〜してください」という意味で、相手の自由を尊重し、心理的ハードルを下げる表現です。サポート案内やサービス業などでもよく使われます。

Aさん

Please feel free to contact me anytime.

いつでもお気軽にご連絡ください。

I’m afraid ~

「申し訳ないのですが」「あいにく〜でして」といった意味で、悪い知らせや断りをやわらかく伝えるときに使われます。直訳すると「恐れている」となりますが、実際は丁寧な否定や謝罪の前置き表現です。

Aさん

I’m afraid I may have made a mistake.

申し訳ありません、私にミスがあったかもしれません。

関連表現もチェック!

「至らぬ点もあるかと存じますが」と似た意味をもつ日本語表現と、それに対応する英語フレーズをご紹介します。

「不十分な点もあったかと存じますが」

Aさん

I understand there may have been areas that were insufficient.

不十分な点があったかもしれないと理解しています。

この表現では、“may have been”を使うことで「〜だったかもしれない」と過去の出来事に対する控えめな推測を表現しています。また、“areas that were insufficient”は「不十分だった部分」を表し、フォーマルな場面でも違和感なく使える語彙になっています。

「拙い点もあったかと存じます」

Aさん

I apologize if my explanation was not polished.

説明が洗練されていなかった場合は、お詫び申し上げます。

この文では、“I apologize if…”という構文で、「もし〜だったとしたら、申し訳ありません」という丁寧な謝罪の意を示しています。“polished”は「洗練された」という意味で、否定形にすることで「拙かった」というニュアンスを表現できます。話し手の説明に自信がないときに、控えめに謝意を示す場面にぴったりです。

「ご期待に添えず、申し訳ありません」

Aさん

I’m sorry I couldn’t meet your expectations.

ご期待にお応えできず、申し訳ありません。

I’m sorry I couldn’t…”は、できなかったことに対する謝罪を丁寧に伝える定番表現です。ここでは“meet your expectations”を使うことで、「期待に応える」という意味になります。ビジネスシーンではよく使われるフレーズで、誠実さと責任感を示したい場面に適しています。

参考サイト:

英辞郎 on the WEB(アルク)
Oxford Learner’s Dictionaries

まとめ

「至らぬ点もあるかと存じますが」は、日本語ならではの奥ゆかしさや配慮を込めた丁寧な表現です。英語に直訳することはできませんが、今回ご紹介したように、英語でも控えめに自分の至らなさを認めつつ、誠意を伝える表現は数多くあります。

ポイントは、I hopeI’m afraid といったクッション言葉をうまく組み合わせて伝えること。そうすることで、英語でも日本語に近い丁寧さや思いやりを自然に表現できます。

ビジネスメールやちょっとした感謝・お詫びの場面で、「至らぬ点もあったかと存じますが」の気持ちを英語でもしっかり伝えられるよう、ぜひ今回のフレーズや表現を役立ててみてください。

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