北欧の神話や民話にたびたび登場する「トロール(troll)」は、日本の妖怪のような存在です。ときに恐ろしく、ときにどこかユーモラスでもあるこの妖精は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークなどの伝承に現れます。

ノルウェーの山奥や深い森の中には、今もトロールがひっそりと暮らしている――そんなおとぎ話が語り継がれています。

この記事では、トロールの特徴や地域ごとの違い、有名な物語について、英語での表現を楽しく学びながらご紹介します!

トロールとは?

トロールとは?

「troll」という英単語は、北欧語の「troll」「trold」などが語源とされています。古くから「人間とは異なる存在」として描かれてきたトロールは、時代や地域によってその姿も変わってきました。

かつては巨大で恐ろしい毛むくじゃらの巨人として描かれましたが、近年の絵本やファンタジーでは、小さくて可愛らしい姿でも登場します。変身能力(shape-shifting)を持つともされ、姿形はさまざまです。

鼻や耳が大きく、時には三つの頭を持つトロールまで語られています。

トロールの特徴

トロールは多くの場合、山や森に住んでいるとされています。人間から離れた場所にひっそりと隠れ、夜になると活動を始めるといわれてきました。

彼らは太陽の光に非常に弱く、太陽を見ると石になってしまうという言い伝えもあります。そのため、昼間は岩や洞窟に身を潜めています。

この伝説は、北欧にある奇岩や巨石の姿と重ねられることもあります。「あれは石になったトロールだよ」と語られるのです。

Aさん
If a troll sees the sun, it turns to stone.
訳)トロールは太陽を見ると石になってしまいます。

トロールの能力

トロールは一般に「巨人族(giants)」とされ、並外れた怪力を誇ります。大きな木を引き抜いたり、岩を投げたりと、人間には到底敵わない力を持っています。

また、トロールは自然と深くつながった存在です。木々の中に溶け込むように姿を隠したり、動物と会話することができるとも信じられています。

中には魔法を使えるトロールも登場します。呪文を唱えたり、姿を変えたりする力を持っており、知恵と力の両方を備えた存在として描かれることもあります。

トロールの役割

民話の中でトロールは、主人公が乗り越えるべき存在として登場します。知恵を使って倒したり、勇気を示して乗り越えたりすることで、主人公は成長していきます。

ノルウェーの有名な民話『三びきのやぎのがらがらどん』では、橋の下に潜むトロールがヤギを食べようとします。しかし、最後にはヤギにやり返されて倒されるという、子ども向けの寓話になっています。

Aさん
Trolls are symbols of fear, but they also play a moral or instructive role.
訳)トロールは恐怖の象徴でありながら、教訓的な役割も果たしています。

地域別のトロール伝承

地域別のトロール伝承

北欧の国々では、地域によって異なる特徴をもったトロールが語られています。それぞれの文化の違いが反映されていて、とても興味深いです。

デンマークのトロール

デンマークでもトロールは伝説や童話に登場します。しばしば森に住み、人間にいたずらを仕掛ける存在とされ、特に子どもにとっての恐怖の対象でした。

フィンランドのトロール

フィンランドには「シェー・トロール(Sjötroll)」と呼ばれる水のトロールが語られています。霧が出たり嵐が来ると、池の中から現れて人を水に引きずり込むと信じられていました。

また、「スターロ(Stalo)」というトロールは、夜に子どもを守る存在として語られることもあり、善悪両面の性質を持っているのが特徴です。

ノルウェーのトロール

ノルウェーでは、トロールは日常的にも親しまれている存在です。物がなくなると「それはトロールの仕業だよ」と言われることもあります。

女性のトロールは美しい赤毛をしているとされ、誘惑的な存在として描かれることもありました。民話『ヘダルの森でトロールに出会った少年たち』では、3人のトロールが1つの目を共有するというユニークな描写もあります。

Aさん
Hmm, where did my smartphone go?
訳)あれ?私のスマートフォンどこにいったのかな?
Bさん
It must be the work of a troll!
訳)トロールの仕業だよ。

スウェーデンのトロール

スウェーデンでは「ベルグフォルク(Bergfolk=丘の人々)」とも呼ばれ、財宝を守る存在とされました。夜になると洞窟が光り輝き、気に入った人間には幸運を、気に入らない者には災いをもたらすと言われています。

フェロー諸島のトロール

フェロー諸島には「フォッデン・スケマエンド」と呼ばれるトロールの伝説があります。彼らは「地下の人々(the people under the ground)」と呼ばれ、人間をさらって何年も閉じ込める存在と信じられていました。

トロールが登場する有名な作品

ファンタジー作品にはトロールがよく登場します。民話や文学、映画、ゲームにまで広がり、さまざまな姿で私たちを楽しませてくれます。

『ホビットの冒険』/J.R.R. トールキン

太陽光を浴びると石化するトロールが登場します。
Trolls turn into stone in sunlight.

『指輪物語』/トールキン

サウロンによって生み出された凶暴な種「オログ=ハイ(Olog-hai)」が登場。太陽にも耐性をもち、石化しません。

『ハリー・ポッター』シリーズ

巨大なトロールがホグワーツに現れ、悪臭を放つとされています。
Troll in the dungeon!”(『賢者の石』より)

『ペール・ギュント』/ヘンリック・イプセン

トロールたちは自分たちのルールで生きる誇り高い存在として描かれています。

『となりのトトロ』/スタジオジブリ

トトロは、「トロール」がモチーフになっていると言われています。

トロールにまつわる英語表現

トロールにまつわる英語表現

トロールは英語でもよく使われる言葉で、特にインターネット上の「荒らし行為(trolling)」を指す表現として広く知られています。

Don’t feed the trolls.
(トロールにエサを与えるな=ネット上で荒らしに反応するな)
SNSや掲示板でよく使われる表現です。

Troll under the bridge
(橋の下のトロール)
相手に立ちはだかる邪魔者のたとえ。

She called her boss a “troll under the bridge” after he rejected her idea.(彼女は、自分の提案を却下されたあとで、上司のことを「橋の下のトロール」と呼んだ。)

Trolling for attention
(注目を釣るためのトロール行為、わざと変なことを言って目立とうとする行動)
例:He’s not serious — he’s just trolling for attention.(彼は本気じゃないよ―ただ注目を集めたくてからかってるだけだよ。)

Troll face
(インターネット・ミームでよく使われる、ニヤニヤした顔のキャラクター)

まとめ

トロールは、恐ろしくも魅力的な北欧の妖精です。その姿や性格、役割は多種多様で、地域によっても異なる特徴を持っています。古い民話から現代のファンタジー作品、アニメやゲームに至るまで、トロールは今も多くの人の想像力をかき立てています。

英語の中でも「troll」という言葉は現代的な意味も持つようになりました。言葉の背景にある文化や物語にも興味を持てば、英語学習もさらに楽しくなりそうですね。

トロールーWikipedia

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