日本から約3時間で行ける距離の近さに加え、親日国というイメージが強い台湾。台湾は、日本人にとって身近で海外旅行先としても人気ですが、英語はどのくらい通じるか知っていますか。

台湾で話されている言語は主に中国語と台湾語です。しかし、じつは世界共通語ともいわれる英語はごく一部の都市でしか通じません。

そこで今回は、台湾の英語事情にフォーカスし、台湾人の英語力や英語教育、歴史と言語の関係について解説していきます。

 

台湾で英語は通じる?

海外旅行先として身近な台湾は、サマータイムもないため、夏場でも時差に関係なく旅行が楽しめます。親日国としても知られる台湾ですが、言葉が通じるのか心配な人も多いでしょう。

台湾で使用されている主な言語は、北京語と台湾語の2種類です。

  • 中国語、北京語
  • 台湾語、閩南語(びんなんご)

中国語ができれば台湾での言葉の心配はないですが、日本人にとっては難しいかもしれません。また、「英語は通じないの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。英語は台湾の地域によって通じ方に大きく差があるため、使うときは注意が必要です。

台北では問題なく通じる

台北は、台湾最大の都市です。大統領官邸である「総統府」をはじめ、大使館のような役目の「日本台湾交流協会」や「台湾観光局」が置かれています。

台北では、英語は問題なく通じるといえるでしょう。観光客が多く、国際教育も進んでいるため、特に大学生くらいの若い世代を中心に英語は当たり前に使われています。一泊3000円程の格安の宿でも、英語ができるスタッフが常駐しているので安心です。

ただし、台北でも地元の人しか利用しないローカルな個人店や、年配の方が経営している食堂や商店などでは、残念ながら北京語しか通じないという場所もあるので注意しましょう。

台北以南は日本と同じくらい

台北以外の地域で、英語は通じるのでしょうか。
答えは「No」です。英語がわかる人の割合は日本と同じくらいなので、台北より南の地域では、基本的に英語は通じないと思っていたほうがよいでしょう。

台湾の人口は、約2,356万人(2020年時点)ですが、そのうちの約2%を原住民が占めています。政府が認定する原住民族は16もあり、その大多数は漢民族です。小さな島国ながらたくさんの人たちが住んでいる多民族国家のため、現地の人たちにしか通じない方言も多く、台湾の共通語はやはり北京語といえるでしょう。

台湾南部にあり、台湾最大の経済都市ともいわれる高雄でも、英語は通じないと思っていて間違いありません。しかし、比較的若い世代の人たちは英語を話せることもあるので、道に迷ったり、困ったことがあって助けを求めたりする場合は、なるべく若い人に声をかけてみるのがおすすめです。

台湾人の英語力

台湾人の英語力

台湾全土に通じるのは英語ではなく北京語、とお伝えしましたが、実際の台湾人の英語力はどのくらいのレベルなのでしょうか。

世界最大の英語能力指数ランキング「EF EPI」で確認してみましょう。
(参照:EF EPI 2021 – EF 英語能力指数 (efjapan.co.jp)

台湾は世界88ヵ国中48位で、英語力は「低い」レベルとなっています。
ちなみに日本は49位なので、「台湾人の英語力は日本人と同じくらい」といえるでしょう。
(参照:efjapan.co.jp)

 

台湾と日本の英語能力指数をまとめました。

地域 指数 英語レベル
台北 54.14 標準的
新北 53.03 標準的
台南 52.70 標準的
桃園 52.34 低い
台中 51.27 低い
高雄 50.25 低い
日本 51.80 低い

台湾の中で最も英語が通じる台北で「標準的」、台中や高雄では日本と大差なく「低い」となっています。

台湾では、年配の人より若者のほうが英語を話せる人が多いですが、彼らは英語への学習意欲が高く、英会話が非常に得意です。その理由は、台湾における英語科教育で詳しく解説します。

台湾を英語で訳す

台湾人の英語力

「台湾」は英語で何と言うか知っていますか。

台湾の正式名称は、「中華民国」で、英語表記は”Republic of China”です。
略称で”R.O.C.”という表記を見たことがある人もいるでしょう。

台湾は国連で認められてない国のため、オリンピックなどでは”Chinese Taipei”(チャイニーズタイペイ)の名称が使われています。

”Taiwan”と”Chinese Taipei”どちらも、台湾を指す言葉として間違いではありません。台湾の歴史と成り立ちから、2つの呼び方があることは覚えておくとよいでしょう。

Aさん
I’m planning on going to Taiwan next year.
訳)来年、台湾に行く予定です。

Aさん
Taiwan has a lot of great food!
訳)台湾には美味しい食べ物がたくさんあるよ!

台湾語は英語で”Taiwanese”または”Formosan”です。
両方とも「台湾の、台湾人の」という意味の形容詞としても使われます。

Aさん
What are the differences between Taiwanese and Chinese?
訳)台湾語と中国語の違いは何ですか。

Aさん
She is a Taiwanese person.
訳)彼女は台湾人です。

 

台湾における英語科教育

台湾を英語で訳す

台湾の英語教育は、日本と比べ格段に進んでいます。

日本で小学校の英語が必修化されたのは2020年ですが、台湾では15年以上前からすでに必修化されているのです。

2001年 小学校における英語教育の必修化(第5、6学年が対象)

2003年 英語教育の開始学年を第3学年に早めることが決定

2005年 第3学年での英語教育が必修化

台湾では「2030年バイリンガル国家計画」として英語教育を掲げており、その重点政策のひとつが国民の英語能力向上です。

現在検討されている具体的な施策は3つあります。

  • 公教育で二言語習得(中国語、英語)を奨励すること
  • 英語専門のテレビ局を開設すること
  • 行政や民間のサービスを二言語化すること

(参照:フォーカス台湾 – CNAイングリッシュニュース (focustaiwan.tw)

台湾にはインターナショナルスクールや、中国語と英語の二言語で授業を行うバイリンガルコースのある学校が数多くあります。他にも、早期教育として英語で保育・幼児教育をするプリスクールも人気です。

幼少期から英会話の塾に通うのはもはや当たり前。留学経験のない小学生が、ネイティブのように流暢な英語を話す姿には驚くこともあるでしょう。

台湾で英語を教える先生が口を揃えて言うのは、「まずはリラックスできる環境で学ばせることが大切。ミスを恐れず間違っても構わない。間違ったら訂正すればいいだけ。」

物怖じせずに堂々と英語を話す台湾人の背景には、国を挙げての英語教育への積極的な取り組みに加え、寛大な精神で英語を指導する先生たちの努力があるのでしょう。

台湾の歴史と言語の関係

台湾を英語で訳す

台湾は、原住民と移民が入り混じる多民族社会です。そのため、台湾語と中国語以外にそれぞれの民族語(郷土言語ともいう)が話されていることが多く見られます。

台湾人は大きく4つのグループに分けられます。

  • ホーロー人(1600年代に台湾に来た漢民族)
  • 客家人(1700~1900年代に台湾に来た漢民族)
  • 外省人(1949年国民政府とともに台湾に来た漢民族)
  • 原住民(漢民族移住前から住んでいる民族)

台湾では、総人口の7割以上を占めるホーロー系の人々の母語だけではなく、多数派民族の言葉が「台湾語」として話されています。

台湾の歴史を年表で確認してみましょう。

~1624年 原住民の社会
1624年~1661年 オランダが占領(一部地域はスペイン領下)
1661年~1683年 鄭成功(ていせいこう)が占領
1683年~1895年 清が占領
1895年~1945年 日本が占領(日清戦争に勝利、植民地化)
1945年~ 中華民国が支配
1949年 本土に共産党政権「中華人民共和国」
台湾に国民党政権「中華民国」
1971年 国連が「中華人民共和国」を中国として承認
「中華民国」が国連を脱退

1624年に初めて外国人が来るまでは、原住民が静かに暮らしていた台湾。オランダ、鄭成功、清による支配の後、日本が台湾を植民地としていたことは、日本人なら誰もが知っている史実ですね。

当時の日本は道路や鉄道、上下水道や電気などインフラの整備だけでなく、教育にも力を入れました。そのため、人々の識字率は大きく向上し、台湾の近代化がされたともいわれています。

第二次世界大戦で日本が敗れると、台湾は中華民国の支配下に置かれます。日本が降伏すると、中国本土では国民党と共産党の内戦が始まりました。

1949年、共産党のリーダー毛沢東(もうたくとう)が北京を首都に「中華人民共和国」を樹立。すると、敗れた国民党のリーダー蒋介石(しょうかいせき)は台湾に逃れ、台北を臨時の首都として、中華民国政府を宣言しました。

こうして、本土に中華人民共和国、台湾に中華民国、と2つの国が存在するような状態に至ります。

1971年に、国連が中華人民共和国を国家として承認すると、これを不服に思った中華民国は国連を脱退。

台湾は世界各国から国として認められておらず、国連やWHOのような国際機関にも参加していません。オリンピックのような国際的なスポーツ大会で台湾が「Chinese Taipei(チャイニーズタイペイ)」という表記なのは、そうした複雑な歴史から説明できます。

まとめ

台湾の英語事情にフォーカスし、台湾人の英語力や英語教育、歴史と言語の関係について解説しました。

台湾で最も英語が通じるのは台北です。台南や台中、空港のある桃園や経済都市の高雄でも、英語でコミュニケーションを取れるのはごく一部の限られた場所のみ。英語学習に意欲的な若い世代に対し、地元の年配者にはほとんど英語は通じません。

しかし、複雑な歴史的背景から中国語や台湾語、日本語に親しんできた台湾の人々は、国を挙げての熱心な英語教育によって急速に英語能力を伸ばしています。

台湾を訪れる際には、簡単な挨拶や質問が言えるように中国語と一緒に台湾語も覚えていくと心強いですね。郷土言語に触れることで、台湾のさらなる魅力を発見できることでしょう。