英語で会話をしていたときや、海外ドラマを見ていると「なぜここで笑っているの?」を疑問に感じたことはありませんか?

とくにイギリスでは「皮肉」を一つのユーモアとして捉えており、日常会話の中でもたくさんの皮肉めいたジョークが使われています。

そのため、皮肉もしくは皮肉めいたジョークを言われているのにもかかわらず、それに気が付かなくてコミュニケーションに溝が生まれてしまうことがあるのです。

そこで今回は「皮肉文化とは何か」を解説したうえで、実際にどのような英語が皮肉として用いられるのかを紹介します。英語上級者を目指して、一緒にチェックしていきましょう。

「皮肉英語」って何?

「皮肉」の意味を辞書で調べてみると、以下のように解説されています。

ひ‐にく【皮肉】 の解説
[名・形動]
1 皮と肉。また、からだ。
2 うわべだけなこと。また、そのさま。皮相。
3 遠まわしに意地悪く相手を非難すること。また、そのさま。当てこすり。「辛辣 (しんらつ) な―を言う」「―な口調」
4 期待していたのとは違った結果になること。また、そのさま。「―なめぐりあわせ」
出典:デジタル大辞泉(小学館)

「皮肉を言う」「皮肉っぽいジョークを言う」というのは3の「遠まわしに意地悪く相手を非難すること。」ですよね。

たとえば、「買ったばかりの服が破れていた」と言ったのに対し、「おー、おめでとう、当たりだね」と返すのは「皮肉」と言えます。

英語の場合、このような皮肉が日本語よりも多く使われる文化があります。とくにイギリス英語では多くの皮肉っぽいジョークが使われ、それに分からないままだと、相手とのコミュニケーションに溝ができてしまうこともあります……。

また、皮肉は「ネガティブな物事に対し、あえてポジティブに反応する」というのが基本です。

ネイティブは会話の中にさらっと皮肉を挟むので、気が付かずに本来の意味として捉えてしまうと「なぜ笑っているのかわからない」というケースに陥りがちです。「皮肉を言っているんだな」と理解できれば、もっと会話が楽しくなりますよ。

「皮肉」は英語で?

「皮肉」は英語で?

そもそも「皮肉」は英語で何と表現するのでしょうか。

「皮肉」にはふたつの英単語がありますが、それぞれニュアンスが異なります。

irony

ironyは思っていることと異なる表現をあえて使い、物事をおもしろくするときに使われる表現です。

そのため、ironyの場合、いい意味と悪い意味のどちらで言っているのか分からない場合があります。

sarcasm

sarcasmも「皮肉」という意味ですが、「あてこすり」「嫌味」といった意味もあります。

そのため、sarcasmは「皮肉」の中でも、あえて感情とは異なる嫌味っぽいことを言ったり、遠回しに非難したりするニュアンスがあります。

つまりsarcasmを使った皮肉は、明らかに悪い意味で言っていることがわかるような表現なのです。

皮肉に用いられる英語表現

皮肉に用いられる英語表現

では実際に英語でどのような「皮肉」の表現があるのか解説していきます。

thank you:ありがた迷惑

誰しも知っている「thank you」という言葉。
感謝の気持ちを伝えるときの定番フレーズですよね。

ただ、日本語でも表向きは「ありがとう」と言いつつも、内心では「余計なお世話だったけどありがとう」「ちょっと迷惑だったけどありがとう」と思っていることってありますよね。
「余計なお世話だった」「迷惑だった」とはもちろん口に出しませんが……

英語でも同様に、表向きは「thank you」と言っていても、皮肉が込められていると少し違った意味合いに変化します。

Aさん
Thank you for your help.
ありがた迷惑です。(手伝ってくれてありがとう。)

Aさん
Thank you very much.
本当にありがた迷惑、なんてことをしてくれたんだ(本当にありがとうございます。)

ちなみに、皮肉の意味合いで「thank you」が使われている場合、丁寧な表現になるほど皮肉さが増します。

thank to:あなたのせいで

「thank to」は「~のおかげで」と感謝を伝えるときに使いますよね。

Aさん
Thanks to you, I am fine.
あなたのおかげでわたしは元気です。

しかし、この「おかげで」という意味が嫌味として用いられることがあり、その場合は「おかげで→せいで」というニュアンスになります。

Aさん
I was late, thanks to the traffic jam.
渋滞のせいで遅れました。
Aさん
Thanks to you for cleaning my room.
部屋を勝手に片付けてくれてありがとう。

funny:つまらない

皮肉の定番としてよく聞くのが「That’s very funny」ではないでしょうか。

「That’s very funny」は話し手の表情もポイントになるのですが、話し手が苦笑いを浮かべながら「That’s very funny」と言っていると皮肉を言っているのがわかります。

日本語でも、「(はいはい、おもしろくないけど)おもしろいね」と、あえておもしろくないことに対して「おもしろい(皮肉を込めて)」と言うことがあるでしょう。

Aさん
Your car keys? I saw someone took it.
車のカギ?誰かがとっていったのを見たよ。
Bさん
That’s very funny ! Who’s took my car keys?
(はいはい、おもしろくないけど)おもしろいね!で、誰がカギを取っていったの?

you know:知っていると思うけど(相手が知らない前提で)

「you know?」は「知っていると思うけど」と相手に同意や確認をするニュアンスで使われる言葉ですよね。

しかし、この「you know」も皮肉の意味合いで使われるケースがあり、その場合は“相手が知らないと知りながら” 「you know」を使ったり、“このくらい知っておいてよ”という意味で使われたりします。

Aさん
As you know, it was a complete failure.
ご存じの通り、完全に失敗でした。(相手が知らないと知りながら)

are you okay? :頭大丈夫?

「Are you okay?」は相手に「大丈夫?」と気遣って声をかけるときの定番フレーズですね。

しかしながら、シチュエーションによっては「頭おかしいんじゃないの?」という意味の「大丈夫?」と皮肉を込めて使われる場合もあるのです。

Bさん
He hopes to explore the uninhabited island.
彼はその無人島を探索したいと願っています。
Aさん
Is he all right? That’s too risky
頭おかしいんじゃないの?それは危険すぎるよ。

まとめ

いかがでしょうか。

今回は「皮肉」の英語表現について解説しました。

英語は皮肉っぽい表現、皮肉を使ってジョークを言うシーンが多くあります。ただ、一般的な意味合いで使われているのか、皮肉の意味で使われているのかを判断するのはかなりむずかしいものですよね。

ただし、文章では皮肉なのか、そうでないのかを判断するのがかなりむずかしいですが、会話であれば相手の表情やトーンで判断できる部分もあります。会話を何度も繰り返し、徐々に「英語の皮肉」のニュアンスを掴んでいくようにしましょう。