「英語でなんて言う?」コーナー、今回は「by」の使い方についてです。
「by」には、様々な意味があり、前置詞または副詞として使われる頻出英単語です。幅広いシチュエーションでよく使われる単語なので、正しい使い方をしっかりしましょう。
今回は「by」の基本的な意味やその使い方について解説します。
前置詞「by」の基本的な意味
まずは、前置詞「by」の基本的な意味を説明します。
前置詞「by」は、大きく分類すると、
- 手段・方法
- 場所・位置
- 経由
- 動作主(原因)
- 期限
- 経路
- 数・量・程度
- 単位
- 乗除・寸法
という9つの使い方に分けることができます。
それぞれの使い方について、例文とともに解説していきます。また、「by」と似た意味を持つ他の前置詞との違いについても、説明します。
1:「手段・方法」としての「by」
「手段・方法」を表現したいときに使う「by」について解説します。交通手段、通信手段、支払い方法など、「…で」や「…を利用して」という意味で用います。
なお、「by」の後に交通(通信)手段がくるときは、単数形で、通常は「a」や「the」などの冠詞はつけないのが注意ポイントです。
交通手段に関する表現
「交通手段」を伝える際に用いる「by」に関する、具体的な例を紹介します。
by car | 車で |
---|---|
by bus | バスで |
by bike [bicycle] | 自転車で |
by train | 電車で |
by subway | 地下鉄で |
by plane | 飛行機で |
by ship [boat] | 船で |
例えば、「How long does it take to get there?」(そこに着くまでどのくらいかかる?)という質問に対して、「車なら5分、徒歩なら20分だよ」と答える時は、「Five minutes by car, twenty minutes on foot.」と言います。
ただし、交通手段として「車で」と言う時は、「by car」を使いますが、「自分の車で」と言う時は「by my car」とは言わずに、「I went there in my car.」(私は自分の車でそこに行った)のように、「in my car」と表現します。
さらに、「9時の電車で」のように時間まで具体的に伝える時は、「by [on] the 9:00 train」と、「the」をつけます。「9時の新幹線で東京に行く」は、「I’m going to Tokyo by [on] the 9:00 Shinkansen.」と言います。
通信手段に関する表現
「通信手段」を伝える際に用いる「by」に関する、具体的な例文を紹介します。
by phone [telephone] | 電話で |
---|---|
by e-mail | メールで |
by fax | ファックスで |
by letter | 手紙で |
by airmail | 航空便で |
例えば、「電話かメールで彼に連絡してみるよ」と伝えたい場合は、「I’ll contact him by phone or e-mail.」と表現します。
「支払い方法」を伝える際に用いる「by」に関する、具体的な例文を紹介します。
例
by cash | 現金で |
---|---|
by credit card | クレジットカードで |
例えば、「Are you paying by cash or credit card?」(お支払いは現金とカードどちらになさいますか。)と尋ねられた際に、「カードで」と伝えたい場合は「By credit card.」と表現します。
「支払方法」の「by cash」(現金で)や、「by credit card」(クレジットカードで)は、買い物のシチュエーションではよく使われる表現なので、覚えておくと便利です。
Withとの違い
「手段・方法」を表す前置詞としてよく使われるもう一つの前置詞が「with」です。
byとwithとの違いは、「by」が「交通手段」や「連絡手段」を利用する時に使う単語であるのに対し、「with」は「道具」や「体の一部」を利用する時に使うということです。
He took the picture with his phone.
訳)彼はスマホで写真を撮った
Mary pointed John with her finger.
訳)メアリーはジョンを指さした
2:「場所・位置」としての「by」
「場所・位置」を表現したいときに使う「by」について解説します。「…のそばに(の)」や「…のそばを通り過ぎて」と表現したいときに使用します。
例文
「The girl was sitting by her mother.」は「女の子は母親のそばで座っていた」という意味であり、「by」を使って、女の子と母親の位置関係を表しています。
また、「A group of children ran by me.」は「子供たちの一団が私のそばを走り過ぎた」となり、この「by」は「通過」を意味しています。
「by」と「near」と「beside」の違いについて
「場所・位置」を表す「by」には、同義語として、「near」と「beside」があります。ここでは、「by」「near」「beside」の違いについて、説明します。
「near」について
「near」には「…のそばに」という意味があり、「by」よりも距離が遠い・範囲が広いものを表現したいときに、使用します。例えば、「live by the sea」は、海が見える場所に住んでいることを意味していますが、「live near the sea」では、必ずしも海が見えるわけではなく、単純に「海の近くに住んでいる」ことを表しています。
「beside」について
「beside」は、「by」よりも、「横に、そばに」という意味合いが強く、「すぐ横に並んでいる」というイメージを伝えたいときに使用します。例えば、「a house beside the park」は、「公園の横の家」「公園と並んでいる家」というような意味です。
3:「経由」としての「by」
「体の部分を経由している」ことを表現したいときに使う「by」について解説します。「(人の)…を」や「…で」と表現したいときに使用します。
例文
この例文は、「誰かが“私の腕”を捕まえた」という意味です。しかし、「誰かが“腕で”私を捕まえた」という意味ではないかと考える人もいると思います。
この場合の「by」の意味を考える上で大切なのは、「by」の基本概念を正しく理解することです。「by」は、ある状況に至った経緯を表す前置詞で、何かに接した(経由した)結果、ある状況になったという一連の流れを表現します。
つまり、この場合、「私の腕」を経由して、「誰かが(動いている)私を捕まえた」という流れです。このように体の一部を言う時は、「by」の後に「the + 部分名」を続けます。
4:「動作主(原因)」としての「by」
受動態で使われる、「…によって」を意味する「by」について説明します。この意味で使う場合、「by」の後には、動作をする人や、結果に対する原因などが続きます。
例文
「Romeo and Juliet was written by Shakespeare.」という文章は、「『ロミオとジュリエット』はシェークスピアによって書かれた」という意味で、「by」のあとに作者(動作主)が続きます。
また、「His house was destroyed by fire.」(彼の家は火事で焼失した)では、「by」の後ろに、家が破壊された原因が続いていることが分かります。
5:「期限」としての「by」
「期限」を表す、「…までに(は)」を意味する「by」について説明します。
例文
(明日までにそれをしなさい)
(ぼくは5時までにはそこに行ってますよ)
上記の2つの例文から分かるように「by」の後には、具体的な期限を表す単語が置かれています。この「by」は、「期限までには済ませておく」という意味合いが強く、英語で表現するならば、「on or before」(ちょうどぴったりか、それまでに)です。
期限をあらわす・・・「until (till)」の違いについて
日本語で「…までに」を意味する「until (till)」と「by」の違いについてもふれておきます。
おさらいになりますが、「by」は「…までに(は)」の意味で期限を表すのに対し、「until (till)」は「…まで(ずっと)」の意味で、動作・状態が、その期間ずっと続いていることを表します。
以下の2つの文章の違いを考えてみましょう。
例文
(彼は6時までには帰ります。)
この文章では、「彼」は6時までには帰宅し、それ以降は家にいることを表しています。
(彼は6時までは家にいます。)
一方、こちらの文章では、「彼」は6時までは家にいるが、それ以降は家にいないことを表しています。
このように、日本語では同じ「…まで」を意味しますが、「by」と「until (till)」では文章全体の意味が全く異なりますので、注意しましょう。
6:「経路」としての「by」
「経路」を表現したいときに使う「by」について解説します。この「by」は、「…を通って」や「…を経由して」という意味です。
例文
この例文は、「父はロンドン経由で帰国する」という意味で、「by way of…」は、「…経由で」という慣用句です。「way of」を省略して「My father will come home by London.」でも同じ意味になります。
また、経路を表す「by」は、「via」に置き換えることができます。
「via」について
「via」は、「…を経由して」という意味であり、「経路」として「by」を使う時と、同じ使い方ができます。
例えば、「I went to school via train.」と「I went to school by train.」は、どちらも「電車を使って学校に行った」という、同じ意味の文章です。
7:「数・量・程度」としての「by」
「数・量・程度」を表す、「…だけ」を意味する「by」について説明します。
例文
「 Bill is three years older than Mike.」は「ビルはマイクより3歳年上です」という意味ですが、これを、「by」を使って「Bill is older than Mike by three years. 」と言うことができます。
また、経済情報などの難しそうな話題でも、「by」を使って、「Prices have risen by 5 percent this year.」(今年になって物価は5パーセント上昇した)と表現することができます。
8:「単位」としての「by」
「単位」を表す、「…単位で」や「…ぎめ」を意味する「by」について説明します。
単位を表したい場合、「Eggs are sold by the dozen.」は「卵は1ダース単位で売られている」という意味で、「by」で卵の数を表わしています。
また、「I’m paid by the hour [by the week, by the month].」(私は時給 [週給、月給]で給与をもらっている)では、「by」で給与の支払い方法(…ぎめ)を表しています。
9:「乗除・寸法」としての「by」
「乗除・寸法」を表す、「…で(かけて、割って)」を意味する「by」について説明します。
まず、かけ算の例として、「3かける4は12 (3×4=12)」は、「Three multiplied by four makes twelve. (3 multiplied by 4 is 12.)」と表現します。ただし、かけ算の場合、口語では「multiplied by」の代わりに、「times」を使って、「Three times four is Twelve.」と言うことが多いです。
同様に、割り算は、「12割る4は3 (12÷4=3)」は、「12 divided by 4 is 3」と表現します。
副詞「by」の使い方
ここまで、前置詞「by」について9つの使い方を解説しましたが、次に、副詞「by」について、その使い方を説明します。
副詞「by」は、「そばに」や「そばを通り過ぎて」という意味で使い、「go by」のように、自動詞の「go」(行く)とともに使われることが多く、「(そばを)通り過ぎる」や「(時が)過ぎ去る」という意味の複合動詞になります。
例文
(私は彼の車が通り過ぎていくのを見た)
(時は過ぎゆく)
「by and by」(やがて、まもなく)
副詞「by」を使ったイディオムとして、「やがて」や「まもなく」を意味する「by and by」があります。
例文
これは、「6月だ。やがてバラが咲くだろう」という意味です。「by and by」は古語表現で、「after a white」(やがて)や「soon」(まもなく)と同じ意味です。
「by」を使った有名なイディオムやフレーズ・名言
最後に、「by」を使ったイディオムやフレーズ・名言をいくつか紹介します。
イディオム
By the skin of my teeth.
これは直訳すると「(私の)歯の皮で、」という意味ですが、「ぎりぎりのところで」「かろうじて」という意味を持つイディオムです。例えば、「I passed the exam by the skin of my teeth.」は、「私はその試験に、かろうじて合格した。」という意味です。
ただし、単純に「ぎりぎりのところで」という意味ならば、「I failed the exam by the skin of my teeth.」(私はその試験に、ぎりぎりのところで落ちてしまった。)という言い方もできると思う人もいるでしょう。しかし、基本的にこの使い方は間違いです。
「By the skin of my teeth」は、日本語でいうと「間一髪で助かる」というニュアンスに近く、「ぎりぎりのところで、悪い結果を回避し、良い結果で終わる」ときに使うイディオムです。
By the book
直訳すると「本に従って」ですが、このフレーズは「決まりに従って」「ルール通りに」などの意味で使用します。
例えば、「You are famous for completing every task by the book.」なら、「あなたは、全ての仕事を正確にこなすことで有名です」と訳します。
By the way
このイディオムは、よく耳にするフレーズではないでしょうか。意味は「ところで、」「話しは変わるけれど、」であり、会話の中で話題を変えるときなどに使用します。
「By the way, have you seen that film? 」という文章なら、その意味は「ところで、あなたはあの映画を観ましたか?」です。
しかし、「by the way」には「道端で」「途中で」という意味もあり、「I met him by the way. 」だと、「私は途中で彼に会いました」という意味にもなります。「By the way」が文章の先頭に来ていたり、「I met him, by the way.」というようにコンマが付いていると、「ところで、私は彼に会いました」という意味で使うことが多いです。前後の文脈や、会話の中でのニュアンスによって変わってくるので、注意が必要です。
time goes by
このフレーズは、曲の歌詞などで見かけると思います。
意味は「時間が流れる」であり、「No matter how much time goes by, I love you.」であれば、「どんなに時間が経っても(永遠に)、あなたのことを愛しています。」というドラマチックな表現として使えます。
また、先頭に「as」を付けて「As time goes by」にすると、「時が経つにつれて」という意味になります。例えば「As time goes on, grief fades away.」は、「時がたつにつれて、悲しみは薄らぐ。」という意味です。
go by
「go by」は直訳すると、「通りすぎる」という意味ですが、「…によって判断する」「信鵜呑みにする」といったような意味もあります。「Don’t go by what he said.」ならば、「彼の言ったことを鵜呑みにしないで」という意味です。
フレーズ・名言
stand by me
「stand by me」は直訳すると「私のそばに立って」という意味です。しかし、曲や詩の中でこのフレーズが使われるとき、「stand by me」は「私を支えて」というような抽象的な意味を持ちます。
アメリカのソウル歌手「ベン・E・キング」の名曲に、「stand by me」という曲があります。この曲の歌詞で使用されている「stand by me」も、「私のそばにいて」「私を支えて」という意味であり、物理的に「そばに立っていて欲しい」というよりは、「気持ちの上で寄り添って欲しい」という意味に近いです。
step by step
邦楽曲のタイトルでもみかける「step by step」は、「一歩一歩」「段階的に」という意味です。「Learn English step by step.」なら「英語を段階的に学ぶ。」という意味です。
また、「step by step」には「着実に」という意味もあり、上記の例文であれば、「英語を段階的に(しかもひとつずつ着実に)学ぶ。」というニュアンスが含まれています。
It’s only by saying no that you can concentrate on the things that are really important.
これは、アメリカの実業家であり、アップル社の共同設立者の一人でもある、スティーブ・ジョブズの名言で、「重要なことに集中する唯一の方法は“ノー”と言うことだ。」という意味です。
例文冒頭の「It’s only by saying no」は、「“ノー”と言うことによってのみ」という表現であり、そのあとに、“ノー”と言った結果として「重要なことに集中できるのだ」と続いています。
Great things are not done by impulse, but by a series of small things brought together.
この文章もまた、偉人の名言です。意味は「偉業は一時的な衝動でなされるものではなく、小さなことの積み重ねによって成し遂げられるのだ。」で、オランダの有名な画家フィンセント・ファン・ゴッホの言葉です。
「not by …, but by …」は「…によってではなく、…によって」という意味であり、例えば「Not by talent but by effort」という文章は「才能ではなく、努力によって」という意味です。
まとめ
今回は「by」の意味と使い方を解説しました。
「by」と同じ意味の前置詞との違いについても触れました。様々なシチュエーションで、適切な前置詞を選択できるように、それぞれの意味をしっかり理解しながら、繰り返し練習しましょう。
参照:アンカー 大人のための英語学習辞典 2016年12年20日初版第1刷発行(株式会社学研プラス)