「難しい」と言いたい時に真っ先に思いつく単語は「difficult」だと思います。しかし一方で「hard」を使うこともありますよね。
この2つは、どう使い分ければ良いのでしょうか?

また、「difficult」と「hard」以外にも、「難しい」という意味で使われる単語はたくさんあります。場合によっては、「difficult」を使うとおかしなニュアンスになってしまう場面もあります。

この記事では、「難しい」ことを表す様々な表現を、例文とともに紹介します。それぞれの表現を使い分けて、自分の気持ちを的確に伝えられるようにしましょう。

difficultとhardを使い分けよう

「difficult」は「頭脳労働を伴う難しさ」

一般的には、「難しい」ことを表すには「difficult」を使います。
「difficult」という単語についておさらいしたい方はこちらの記事も参照してください。

ただ、「difficult」には頭脳労働を伴う難しさを示す意味合いが強く、「肉体的に難しいこと」や、「精神的に努力が必要なこと」という意味で使うことは少ないです。
「知識や判断力を求められる難しさ」を表すということをおさえておきましょう。「肉体的な労働によって生じる難しさ」を意図して使うと、ネイティブにとっては違和感を感じる表現になります。

そのため、difficultを使う場合は、以下のような例文で使うと適切です。

Aさん
It is difficult to solve the problem.
訳)その問題を解決するのは難しいですね
Aさん
It’s too difficult for me to answer the question.
訳)その問題に答えるのは私にとって難しすぎます
Aさん
Math is too difficult for me.
訳)数学は私には難しすぎる

ちなみに、「difficult」の発音は、多くの辞書でアメリカ英語 [dífikʌ`lt]ディフィカルト)イギリス英語 [dífikkəlt]ディフィクルト)と記載されています。
アメリカ英語では「カ」の音に第2強勢を置くため「カ」を強めに読み、イギリス英語では「カ」の発音が弱く「ク」に近くなります。

また、Googleで「difficult 発音」と検索すると、アメリカ英語でもイギリス英語でも [di·fuh·klt] と表示されます。実際には広く「ディフクルト」と発音されているようです。
「フィ」や「カ」を手掛かりに聞き取ろうとすると、単語自体を聞き逃してしまう可能性があるので注意しましょう。

「hard」は「肉体的に難しいこと」や、「精神的に努力が必要なこと」

「difficult」には頭脳労働を伴う難しさを指す意味合いがありました。
一方で、「肉体的に難しいこと」や、「精神的に努力が必要なこと」という意味で「難しい」と言いたい場合は、hardを使います。

「hard」は「硬い」という意味でも使いますよね。
「硬くて力を加えても簡単には形を変えられない」という意味が転じて、「厳しい」「難しい」という意味になったようです。

そのため、「hard」は以下のような例文で使います。

Aさん
It’s hard to climb the mountain.
訳)あの山を登るのは難しいよ
Aさん
To understand him is too hard for me.
訳)彼を理解するのは私には難しすぎるよ

とはいえ、「肉体的に難しいこと」を言う時は「hard」を使わないと不自然ですが、「頭脳労働を伴う難しさ」か「精神的に努力が必要な難しさ」かを厳密に使い分けなければならない場面はあまりありません。

Aさん
Was the exam hard?
訳)試験は難しかったですか?
Aさん
That issue is very hard for me.
訳)その論点は私には難しすぎる

それほど神経質にならずに、まずは「difficult」と「hard」の使い分けを把握した上で、練習してみると良いでしょう。

difficult・hard以外で「難しい」ことを表す単語

tough(骨が折れるほど困難な)

「tough」も「難しい」という意味でよく使われる英単語です。
「頑丈な」という意味のある単語で、日本語でも「タフだね」というと「強いね」という意味になりますが、英語では、「骨が折れるほど困難な」という意味が転じて「難しい」という意味となっています。

difficultと比べると、どちらかと言えば頭脳労働による難しさよりも肉体労働による難しさの方に偏っています。ただ、必ずしも肉体的な難しさを指すと決まっているわけではないので、あくまでイメージの問題です。
少しカジュアルな表現なので、ビジネスメールなどで使うのは避けましょう。

Aさん
It was so much tough to make these products.
訳)これらの商品を作るのはかなり難しかったですね
Aさん
It is tough for me to swim fast.
訳)私にとって早く泳ぐことは難しいんだ

stiff(手ごわい)

「stiff」は、hardと同じく日本語で「硬い」という意味のある単語です。「手ごわい」という意味での「難しさ」を表す単語です。

Aさん
Do you think I could pass the stiff exam?
訳)私があの難しい試験に合格できると思う?

demanding(多くを要求する)

「demand」は「要求する」という意味の動詞ですが、「demanding」は「多くを要求する」ことから派生して、「過酷な」「きつい」という意味で「難しい」ことを指します。
そのため、「達成するのに多くの労力や努力を必要とするもの」に対して使います。

Aさん
Why do you choose such a demanding job?
訳)なんでそんな難しい仕事を選んだわけ?
Aさん
I hate physically demanding tasks.
訳)私は体力的に厳しい仕事なんて大嫌いだよ。

「tough」や「demanding」のニュアンスについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

delicate(扱いが難しい)

「delicate」は「デリケート」というカタカナ語からも連想できるように、「繊細に扱わないとダメになってしまうような難しさ」を表します。
日本語でも「デリケートな問題」と表現しますよね。

Aさん
My co-worker is in a delicate situation.
訳)私の同僚は今難しい(微妙な)立場にいるんだ。
Aさん
You can’t understand how delicate the negotiation is.
訳)その交渉がいかに難しいかを君は理解していない。
ビジネスに携わる方は、「delicate problem(気づかいが必要な問題)」と「difficult problem(頭を使う必要がある問題)」のニュアンスの違いを理解できるようにしておきましょう。

troublesome(面倒な)

「troublesome」は、「技術的に難しい」わけではなく、「解決するまでが面倒だ」という意味で「難しい」問題などに対して使う表現です。
人について表現する時に「面倒な人」という意味で使うこともあります。

Aさん
It’ll take a while to do this because it’s kind of troublesome.
訳)この仕事はちょっと面倒だから、少し時間がかかるだろう
Aさん
Bob is a troublesome child.
訳)ボブは問題児だ

「めんどくさい」という意味での「troublesome」の使い方については、以下の記事も参考にしてみて下さい。

problematic(厄介な)

「problematic」は、「problem(問題)」の形容詞形です。「troublesome」と似たような使い方をし、「解決するまでが面倒な難しさ」や「面倒な人」を表します。

Aさん
I’ll talk about some problematic situations we encounter in real life.
訳)実生活で遭遇する難しい状況についてお話しします
Aさん
I found out John has a problematic personality.
訳)ジョンは性格に難ありってことが分かったよ

tricky(ややこしい)

「トリッキー」と日本語で言うと、「奇をてらった」という印象を受けますよね。しかし、英語で「tricky」というと、「ややこしい」という意味での「難しさ」を表します。
「簡単にできない」・「手間がかかる」という意味で「難しい」場合には「tricky」を使うということを覚えておきましょう。

Aさん
It can be quite tricky to make cute character bentos.
訳)可愛いキャラ弁を作るのは難しい
Aさん
It’s amazing that the birds were able to build a nest in such a tricky place!
訳)こんな難しい場所に巣を作るなんてすごい鳥だね

complicated(わかりにくい)

「complicated」「厄介な」「複雑な」という意味での「難しさ」を表す単語です。
しばしばマイナスのニュアンスが含まれることもあります。また、厄介な問題や事柄だけでなく、人間関係の複雑さを表すこともできます。

Aさん
The situation is complicated.
訳)その状況はやっかいだ。
Aさん
John and Mary have a complicated relationship.
訳)ジョンとメアリーは訳ありカップルだ(難しい関係だ)

「わかりやすい」と「わかりにくい」の表現については、以下の記事も参考にしてみて下さい。

complex(複雑な)

「complicated」と似た表現に「complex」があります。「complicated」が主観的に「複雑な悩み」を指すのに対し、「complex」は「複雑な要素」「複雑な経路」など、客観的・物理的に難しい問題を表します。
complicatedにはネガティブな意味が含まれますが、complexは必ずしもネガティブな意味で使われるとは限りません。

Aさん
This is a complex problem requiring a clear head.

訳)この問題は難しいから明晰な頭脳が必要だね

challenging(難しいけどやりがいがある)

ポジティブな意味で「難しい」と言いたい時は、「challenging」を使います。

Aさん
My job can be quite challenging but I love every bit of it.
訳)私の仕事は少し大変ですが、大好きです。

ただ、challengingは必ずしもポジティブな意味ばかりで用いるわけではないので注意して下さい。

Aさん
The train is usually really crowded, so getting to work is challenging.
訳)普段電車がかなり混雑しているので、仕事に行くのがつらいです

「challenging」という表現に関しては、以下の記事も参考にしてみて下さい。

sticky(やりにくい)

stickyは「sticker(ステッカー)」から連想できるように、「ベタベタくっつく」という意味の単語です。主にイギリス英語で、「うっとおしくて厄介な」という意味での「難しさ」を表します。

コンサルティングを扱う英語のWebサイトなどで、以下のような表現を見かけるかもしれません。

Aさん
If you want help solving a sticky problem, contact us right now.
訳)難しい(厄介な)問題解決の助けが必要ならこちらにアクセスしてください

grueling(厳しい、つらい)

「grueling」は「厳しく罰する」「ひどい目にあわせる」という意味の単語「gruel」から派生した形容詞で、hardよりさらに厳しくつらい状況を表現したい時に使います。

Aさん
My son will take the grueling entrance exam.
訳)息子はとても難しい入学試験を受けるんです

「難しい」にまつわる英語のスラング

「難しい」ことを表すスラング的な単語は「tough」になります。

例えば、「攻略が難しいラスボス」について表現したい時は、「tough boss monster」などと言えます。

toughを使ったスラングもたくさんあります。

  • tough bird(煮ても焼いても食えない人)
  • tough buns(不運)
  • tough chap / tough cuss(手ごわいやつ)
  • tough cookie(タフなやつ)

また、「厄介な人」を表す時は、「troublesome」や「problematic」を使うと紹介しましたが、直接「厄介な人」と言及するのを避けるためか、「厄介者」を表すスラングもたくさんあります。

  • black sheep
  • hell-raiser
  • heller
  • bad news

例文としては、以下のように使います。

Aさん
She is the black sheep of this company.
訳)彼女はこの会社の厄介者だよ
Aさん
He’s a real bad-news guy.
訳)彼は本当に厄介な奴だ

ちなみに、「black sheep(厄介者)」は、「黒い羊の毛は白い羊の毛と違って染めることができないため、高く売れなかった」ということに由来するそうです。

「難しい」ことを表す例文

上の項目には挙げませんでしたが、「big」も「problem」と組み合わせると、「大きな問題」という意味で、「難しい問題」、「手ごわい問題」という意味になります。

Aさん
You will face a big problem in the future.
訳)将来大きな問題に直面することになるだろう

「a big problem」と似たニュアンスの表現として、「a major problem」や「a big order」という表現もあります。

少しマニアックですが、「dense」という単語にも「難しい」という意味があります。「dense」は主に「密度が高い」ことを意味する単語ですが、「内容の濃い本」という意味で「難しい本」と表現することがあります。

Aさん
They use dense textbooks in the class.
訳)その授業では難解な教科書を使う

最後に「難しい顔をする」という表現を紹介します。「難しい顔」は「difficult face」とはいいません。
「しかめっ面」を表す単語「frown」を使います。

Aさん
Don’t frown at me.
訳)そんな難しい顔をしないでくださいよ。

「難しい」を別の英語フレーズで言い換えよう

難しい仕事や作業をしたくない時、やんわりと断りたいなら、直接的に「difficult」や「hard」と言わない方が良い場合もあります。

Aさん
It’s not easy for me.
訳)私には難しいです
Aさん
I can’t deal with it.
訳)難しすぎて対処できません

「deal with」は、「対処する」という意味のイディオムです。
「deal with」などビジネスなどに役立つ「対応」を表す英語表現については、こちらの記事を参照してください。

また、notをつけると「難しい」という意味になる単語も一通りおさえておきましょう。
日常英会話ではあまり使いませんが、ビジネスの場でよく使うのが「feasible(実現可能な)」という単語です。
notをつけると、「実現はちょっと難しい」という意味になります。

Aさん
If anything goes wrong, this plan may not be feasible.
訳)もし何かあったら、この計画の実現はちょっと難しいでしょうね

「ちょっと難しい」のではなく、ほぼ不可能な場合は、以下のような表現を使います。

Aさん
It’s almost impossible.
訳)それは難しくて不可能に近いです

逆に、「難しいことじゃない」という言い方には、こんなものがあります。

Aさん
It’s not rocket science.
訳)そんなに難しいことじゃない。

「rocket science(ロケット科学)は、「難しいこと」の象徴として使われている表現です。
似たような表現として、「brain surgery(脳の手術)」がありますが、文脈によって皮肉になってしまうので、使う時は注意しましょう。

まとめ

「難しい」ことを表す英単語には「difficult」と「hard」がありました。
「difficult」は「頭脳労働を伴う難しさ」を表す一方、hardは「肉体的に難しいこと」や、「精神的に努力が必要なもの」を表すので、適切に使い分けていきましょう。

他にも「難しい」ことを表す様々な表現がありましたよね。以下の例文を思い出してみて下さい。

Aさん
My co-worker is in a delicate situation.
訳)私の同僚は今難しい立場にいるんだ。

この例文での「難しい立場」とは、「配慮が必要な、微妙な立場」のことですよね。そのため「delicate」という表現がふさわしいと言えます。
ここで「difficult situation」と言ってしまうと、相手に正確なニュアンスが伝わらないかもしれません。

とはいっても、座学だけでそれぞれの表現のニュアンスを習得することは難しいので、失敗を恐れず、どんどん実際に使って覚えていくことをおすすめします。

All things are difficult before they are easy.
どんなことでも簡単にできるようになるまでは難しい=習うより慣れよ