「亡き母に捧ぐ」「青春を捧げる」といった言葉を耳にしたことはありませんか?
「捧げる」とは、尊ぶべきものや人に対して、全身全霊をかけて真心を差し出すことです。
自分の愛情や慎みの心を、惜しみなく相手につぎ込む様子を表しています。

日本語では「供える」や「献上する」とも言い換えられる「捧げる」ですが、英語ではどのように表現するのが正しいのでしょうか?

今回はちょっぴり難しい意味も含む日本語、「捧げる」を表す最適な英語表現を4つ紹介していきます。

 

歌や本を捧げる dedicate

“dedicate”は、「捧げる」「尽くす」「専念する」といった意味を持つ英語です。
“dedicate A to B”で「AをBに捧げる」のように使われることが多く、Aには歌や本、作品など具体的なものが入ります。

“dedicate”は、「捧げる」ものの範囲や含まれる意味の幅が広いことが特徴です。
CDの歌詞カードやブックレット、映画や本などでもよく目にするかしこまった言い方で、「捧げる」「捧ぐ」を意味する代表的な英語といえます。

英英辞書では、下記のように定義されています。

  • to give all of your energy, time, etc.
    自分のエネルギーや時間などのすべてを捧げること。
  • If you dedicate a book, play, performance, etc. to someone, you publicly say that it is in that person’s honor
    本や演劇、パフォーマンスなどを誰かに捧げる場合には、「その人の名誉のために捧げる」と公言すること

参考:DEDICATE | definition in the Cambridge English Dictionary

【例文1】

Aさん
This wonderful song was dedicated to my mother, who died recently.
訳)この素敵な歌は最近亡くなった母に捧げたものなの。
Bさん
I love it. His lyrics made me cry.
訳)すごくいい歌だね。歌詞に泣かされちゃったよ。

 

【例文2】

Aさん
Her father dedicated his life to helping the sick and medical work.
訳)彼女のお父さんは、病人を助けること、そして医師としての仕事に一生を捧げたわ。
Bさん
He would have been larger than life for her.
訳)彼女にとって、偉大な存在だっただろうね。

 

自分の人生や時間を捧げる devote

自分の人生や時間を捧げる devote“devote”は、「充てる」「捧げる」「没頭する」「費やす」といった意味を表す英語です。

“dedicate”と同じように”devote A to B”で「AをBに捧げる」のように使いますが、Aには本や花といった具体的なものは入れられません。
“devote”は、自分の時間や努力、人生など、目に見えない抽象的なものを捧げる場合に使われることが多いのが特徴です。

to give all of something, especially your time, effort, or love, or yourself, to something you believe in or to a person
何かを、特に自分の時間、労力、愛情、あるいは自分自身のすべてを、自分の信じるものや人に捧げること

参考:DEVOTE SOMETHING TO SOMETHING/SOMEONE definition | Cambridge English Dictionary

【例文1】

Aさん
I heard she left the city councilor.
訳)彼女、市議会議員を辞めたって聞いたけど。
Bさん
She’s always said before that she wanted to devote more time to her children.
訳)彼女は以前から子どもたちにもっと時間を割きたいと言っていたからね。

 

【例文2】

Aさん
He had decided to devote his life to music.
訳)彼は、音楽に人生を捧げることを決めたのよ。
Bさん
I’m sure that he will be a brilliant composer.〇〇〇
訳)彼はきっと素晴らしい作曲家になると思っているよ。

 

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祈りや供物を捧げる offer

祈りや供物を捧げる offer

“offer”は、「提供する」「捧げる」「供える」「差し出す」などを意味する英語です。
“dedicate”と”devote”とは違い、「神に祈りを捧げる」「先祖に供物を捧げる」といった場面でよく使われています。

to say a prayer or make a sacrifice to a god
神に祈りを捧げたり、生け贄を捧げたりすること

参考:OFFER | definition in the Cambridge English Dictionary

“offer”は動詞ですが、名詞”offering”は「金銭や食べ物、お香などのお供え物」を表し、”make an offering”で「神仏に供物を捧げる」という意味になります。

【例文1】

Aさん
I visited my parent’s graves and offered flowers and incense to my ancestors.
訳)お墓参りに行ったから、両親にお花とお線香を捧げてきたの。
Bさん
My family always visits the graves during Obon, a big vacation for summer, too.
訳)我が家も、お盆や夏の大型連休には必ず墓参りをしているよ。

 

【例文2】

Aさん
We offer an earnest prayer on the evening of December 24.
訳)わたしたちは12月24日の夜、切なる祈りを捧げるの。
Bさん
Oh, I see! It’s a very holy day.
訳)そうなんだ!とても神聖な日なんだね。

 

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身を捧げて犠牲にする sacrifice

“sacrifice”は、「犠牲にする」「生贄にする」「身を捧げる」という意味を持つ英語です。
“sacrifice A to B”で、「BのためにAを捧げる」のように使います。

英英辞書の定義からもわかるように、「犠牲にする」という意味合いがとても強く、大切なものや人、尊い存在のために身を捧げることを表します。

  • to give up something that is valuable to you in order to help another person
    他の人を助けるために、自分にとって大切なものを手放すこと
  • to kill an animal or a person and offer them to a god or gods
    動物や人を殺して神に捧げること(生贄にすること)

参考:SACRIFICE | definition in the Cambridge English Dictionary

【例文1】

Aさん
He sacrificed his life to save his child.
訳)彼は自分の身を捧げて我が子を助けたのよ。
Bさん
Parents can always sacrifice everything for their children.
訳)親はいつだって、子どものためならなんだってできるものだよね。

 

【例文2】

Aさん
She sacrificed her outstanding career to retain his dignity.
訳)彼女は自分の威厳を保つために、すばらしい経歴を犠牲にしたわ。
Bさん
It is impossible for me to do that like her.
訳)僕にはとても真似できないな。

 

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まとめ

「捧げる」を表す4つの英語 dedicate, devote, offer, sacrifice について、意味と使い方を詳しく解説しました。

日常ではあまり聞き慣れない言葉でも、英語の正しい言い方を知っておくと、いざというとき役に立ちます。
まずは幅広い意味を持っていて使いやすい”dedicate”から覚えることをおすすめします。
努力や時間などの抽象概念には”devote”、祈りやお供え物には”offer”、犠牲にして捧げる場合には”sacrifice”です。

知らない単語を習得するのは決して簡単なことではありません。
地道にコツコツ語彙を増やしていけば表現の幅も広がり、英会話の自信にもつながるでしょう。