「もう50代、人生あっという間だなぁ」
と物思いにふけるみなさん、若いころ、学生時代が懐かしいですね。
しかし、筆者の住むイギリスでは、多くのひとがこんなことを言います。
“Age is just a number.”(年齢はただの数字だ)
<年なんて関係ないよ>という意味のフレーズです。
もし、今まさに「もう少し英会話ができたら……」と考えているのであれば、ぜひこの機会に英会話学習を始めてみませんか?
この記事では、英会話を始めたいと考える50代の方をお手伝いすべく、役立つ情報をお届けします。他の50代の方が、どのようなきっかけで英会話を始めているのか、目的にしていることは何か、どのように英会話の学習を進めるべきかなどを紹介しますので、ぜひ最後までお読みくださいね。
「英会話を始めたい」50代のきっかけ
50代は、どのような年代でしょうか。仕事では責任ある立場の役職に就いていたり、お子さんのいるひとであれば子どもがひとり立ちしたり、持ち家のローンの返済がようやく完了といった、何かの節目になる年代かもしれません。それまでとは体力が落ちたりして、からだの衰えをなんとなく感じて今後が不安になる年齢でもあります。
このような節目にある50代が、「英会話を始めたいと思うきっかけ」とはどういうものなのか、興味がありますね。まずは、新しいことにチャレンジするという気持ちに拍手を送ります!
あるいは、新型コロナウイルスの流行や不況の影響などで、これからのキャリアのために<英語を話せるようにならなくては>という想いをもつ方もなかにはいるかもしれません。
50代が英会話を始める動機
人生を見直すタイミングや、時間に余裕ができたことを活かして新しい趣味を始める50代がいます。楽器、ヨガ、ガーデニング、カメラ、ゴルフなどに加え、語学がランクインしています。
50代は、なぜ、どのような動機で英会話を始めたいと考えているのでしょうか。
-
時間的余裕ができたこのタイミングで、英語コンプレックスをなくしたい。
-
もっと旅行に行きたいし、次はオリジナルのプランの個人旅行で旅したい。
-
地元で外国人と出会ったのに、うまく話せなかった。
-
国内で外国人と接する、国際交流ボランティアというものを見つけた。
-
これまでは留学できなかったが、シニアを対象にした留学制度があることを知った。
-
何か夢中になれるものがほしい。
-
ずっと続けられる趣味がほしい。
-
自分の仕事分野で英会話が必要になった。
-
語学学習は、音楽とともに認知症予防に効果があると聞いた。
-
自分が若かったときにはなかったが、気軽に学べる「オンライン英会話」ができたことを知った。
これらはほんの一部かもしれませんが、ひとそれぞれに、英会話を上達させたいと思うきっかけがあるはずです。このほかにも、「子どもが外国人と結婚したので、英会話の必要性に迫られた」などという、家族生活の変化がきっかけになることもあります。
上に挙げたきっかけで見るように、学生時代には受験英語を経験してきている50代が、これからは<英語を使ってコミュニケーションを取りたい>と会話や実践的コミュニケーションの方向にシフトしていることが分かります。
現在の50代は、1965年から1974年前後の生まれです。この時代には、公立の学校で英語が教科に入るのは中学校からが主流でした。50代のみなさんが中学校に入学した1978~1987年、高校に入学した1980~1989年には、海外留学は今ほど一般的ではありませんでした。
とても詳しいひとを除いて、パーソナルコンピューターが普及したのは「Windows 95」の登場以降ですし、インターネットが一般化したのはさらに後ですから、英語を勉強する場合の音声教材も、カセットテープやCDが中心だったはずです。
熱心な学習者は、CDやカセットテープが付録についた英語教材を買って繰り返し聴いたり、在日アメリカ軍向けのラジオ放送FEN(Far East Network; 極東放送網、現在はAFN; American Forces Network)などの英語放送を聴取していましたが、身近に外国人がいる環境でない場合は、双方向の会話を練習する機会はあまりなかったかもしれません。
現在のように、インターネットに接続さえできれば外国人教師と気軽に会話が楽しめる「オンライン英会話」などは、今の50代の方々の学生時代や、20代・30代では存在しなかったサービスでした。
50代で英会話を始める目的
「若いくせに」「年をとっても」など、日本人は何かと年齢にこだわる傾向があります。しかし年齢に関係なく、興味があることなら何歳でスタートしてもまったくかまわないはずです。
日本語にも「六十の手習い」ということわざがありますが、英語にも、このようなことわざがあります。英会話を始めたくなったのが50代でも、ぜひ始めるべきでしょう。
It’s never too late to learn. (学ぶのに遅すぎることはない)
英会話を始める目的には、大きく分けて以下のふたつがあります。
・仕事に役立つ英会話力アップ
・プライベートを充実させるための英会話力向上
仕事に役立つ英会話力アップ
仕事に関連して英会話力をつけたいと考える場合、動機はいろいろありそうです。
- 勤務する会社のグローバル化が進み、英語力が不可欠になってきた
- 退職後はフリーランスとして英語力を活かした職種に就きたい
また、小学校で英語学習が始まったことを受けて、
- 学校で教師をしているが、英会話が弱いので上達させたい
というケースもあるかもしれません。
他のひととの差別化を考える場合、日本では英語のスピーキング力がまだまだ強みになります。社会人の場合は、本業のスキルをもっているわけですから、その上で、英会話で上級者にならなくても、中級を目指すことでも大いに自分のためになります。
英語が話せないことで仕事に差し支えることはあるかもしれませんが、英会話スキルが仕事の支障になることはありません。
英会話ができることで、外国とのやりとりが必要な部署に配属が変わることもあるかもしれませんし、転職の場合でも、企業向けの英会話講師や英会話スクールの非常勤講師などは、50代でも歓迎という場合があります。
プライベートを充実させるための英会話力向上
50代の多くのひとが、これからの人生をさらに豊かにするために英会話ができるようになりたいと考えています。この場合の目的は、海外旅行などで役立つトラベル英会話か、日常生活でのコミュニケーションに使う日常英会話などが中心になります。
「英語力を活かしてしたいこと」のトップはもちろん海外旅行ですが、別に海外に行かなくても、きょうび英語を使う機会は身近にあります。
- 自分の住む地域にいる、外国人と交流する
- 自分のまちを、外国人旅行者に案内する
- 日本語ができない外国人を支えるボランティアをする
出会う外国人がみな英語圏出身ではないにせよ、それでも、相手が日本語を上手に話せない場合、媒介になりそうなのは、やはり世界共通語の英語でしょう。ですから、英会話ができる/できないは、外国人と交流するときに大きな差が出ます。
最近はSNS( social networking service;ソーシャル・ネットワーキング・サービス、交流サイト)が発達していますから、知り合った外国人と連絡先を交換し、交流を続けることもできます。もちろんそれは、旅先で出会ったひととでも、SNSを通じて日常的にやりとりすることができるわけです。
外国人と交流することによって、わたしたちは異文化を知って視野が広がったり、比べる対象ができたことにより、日本文化のよさを再確認したりすることができます。すでに人生経験が豊かな50代であれば、新しい情報を受け取る能力、外国人にシェアできる経験を多くもっていることでしょう。これは、国際交流をする上での大きなアドバンテージです。
50代で英会話を始めようと思う方の英語力
これから英会話の学習を始めようとしているひとであれば、英語への興味は少なからずもっているはずです。他の趣味ではなく、あえて英会話学習を選ぼうとしているくらいですから、あいさつなど、もっとも基本的な英会話フレーズくらいは理解していることでしょう。
それでも、50代で英会話を始めようと考えるひとの英語力は人それぞれです。
- 学生時代に英語を習って以降、ほとんど実際に使う必要がなかった英語初心者
- 海外旅行や短期留学を経験して多少の英会話ができるひと
- 長期留学や海外駐在を経験して、一通りの英会話ができるひと
- 仕事でビジネス英語を使っていて、レベル維持や上達のために英会話を習いたいと考える中・上級者
もしかしたら、学生時代に英語を習ってから、しばらく間が空いていれば、覚えたことを実践に移す機会がなかったとか、忙しさのあまり学び直すことができなくて文法や単語を忘れてしまったとか、教科書英語、受験英語レベルから長年抜け出せないでいる可能性が高いかもしれません。
学生時代にはあまりおもしろく感じなかったことでも、50代なら違う受け止め方ができることがあります。義務として課されているわけではなく、自分で勉強すると決めたことであれば、英語の単語や熟語、不規則動詞の変化を覚える作業も苦にならないでしょう。そして、定期テストや入学試験のためではなく、自分のペースで勉強を続けることができます。
何より、自発的に英会話を学ぶ目的があるわけですから、これほど強い動機づけはないはずです。
Life is what you make it.(人生は自分でつくるもの)
とことわざにいう通りです。
50代におすすめの英会話勉強法
<英会話を始めよう!>とせっかく思い立ったわけですから、まず知りたいのは、望ましい効果を出せる勉強法ではありませんか?
ここで、英会話を習うきっかけと目的のふたつを再確認します。英会話ができるようになってしたいことのポイントは「外国人とのコミュニケーション」でした。
ですから、目標が達成できたかどうかをみるためには、いかに外国人と話す機会をつくるのかが鍵になります。外国人の友だちや知り合いができて、そして英語で会話ができれば、自分の会話能力の上達が感じられるでしょう。必要なのは、英会話の学習が心から楽しい、やりがいを感じると思えるポジティブな環境づくりです。
基礎文法をおさらいする
比較的自由度が高い日本語に比べて、英語は正確な語順が必要な言語です。めちゃくちゃな順番で単語だけ並べても、何を言おうとしているのかがわかりにくいという性格があります。それが現在の話なのか、過去のどこかのできごとかをはっきりさせるためには、時制や動詞のかたちも正しくなくてはいけません。
ですから、ちょっとした立ち話のような簡単なコミュニケーションでも、基本的な英文法が間違いなく必要です。
「基本的」とはどういうことを指すかというと、日本の中学生が習うレベルの文法と考えば十分でしょう。
今50代のあなたの学生時代と違って、現在はスマートフォンやタブレットを使って、いつでも手軽に英語の勉強ができる、学習アプリケーションが数多くあります。もちろん、文法の参考書やドリルを使っておさらいしてもいいでしょう。
こういった方法で基礎的な英文法を復習しながら、文例などに出てくる英単語や熟語を覚えて、会話で使いこなせるようにしていきましょう。
外国人と英語を話す機会づくり
もし、外国人の同僚や友人がいれば、積極的に会う機会をつくりましょう。身近にそういう知り合いがいない場合は、教師役を探すことになります。
しかし、友人や知り合いを相手にする場合は、もしあなたの英語が間違っていたとしても、言おうとしていることがだいたいわかればそれでよし、と誤りを指摘してもらえないかもしれません。正しい英語に直すために、会話の流れを妨げるこになるからです。
あるいは、英語のネイティブスピーカーであったとしても、なぜそういうルールなのか、あなたが納得できるような説明ができないかもしれません。
この点、訓練を受けた英語教師であれば、誰を相手にしても正しく伝わる英語が使えるようになるためのチェックが入ります。プロの教師にレッスンを受けるには、英語学校や英会話教室や英会話サロン、個人教師などの選択肢があります。あらかじめ日程や時間を決めるのがむずかしければ、自宅で好きな時間に教師と話せるオンライン英会話という方法もあります。
これらの機会をつくり、どんどんインプットとアウトプットをしていきます。上で述べた基本文法のおさらいですが、いくらしたところで実践で使わなければ身につかず、自分のモノになっていきません。
Practice makes perfect.(練習が完璧をつくる)
このことわざは、しばしば日本語の「習うより慣れよ」と意訳されることがありますが、その通りです。
外国人と話す機会が多くなれば、それまで間違っていた言い方に気がついたり、発音を正しく直したなり、話の運びや相槌の打ち方なども含めて外国人と英語で話すことに慣れてくることでしょう。こうした経験を重ねることで、英会話力とスキルは向上します。
学習の成果を確かめるレベルチェック
英会話の学習を始めて3か月、半年、1年とある程度の期間が経ったら、レベルチェックをしてみましょう。以前の自分の英会話力と比べて、レベルが上がっていることを確認できれば、効果的な学習をしていることになり、学習のモチベーションがまた上がります。
レベルチェックには、英語学校や英会話スクール、オンライン英会話などの体験レッスンを利用するのも賢い方法です。
もうひとつ、自宅でできることがあります。世界中の著名人による、パワフルなプレゼンテーションがいっぱいのTEDをご存知でしょうか?
TED: Ideas change everything
TEDでは、さまざまな分野の専門家の講演をオンラインで視聴できます。ほとんどの動画は15分前後の長さです。教養、健康、AI、スポーツ、女性活躍など、自分の興味がある分野の動画をひとつ選んで視聴してみてください。
初めはすべて聞き取るのが難しくても、数回繰り返して観ることで、興味のあることについての理解が進みます。日本語の字幕つき/日本語・英語の字幕つきを選ぶこともできるので、字幕の助けを借りれば、聞き取りに少々自信がなくても、講演内容をしっかり理解できるはずです。
さまざまな分野の動画を視聴することで、今どういうことが話題になっているのかを知ることもできますし、関連する単語や言い回しに接することができます。外国人との会話の話題にすることもできるので、レベルチェックにもきっと役立つでしょう。ぜひ視聴してみることを勧めます。
英会話学習の力試しのひとつとして、資格や試験に挑戦してみてもよいでしょう。この場合は、スピーキングの能力を測定できるものを受験し、望んでいる結果が出せるかどうか、試してみましょう。
次の記事では、多種多様な英語の関連資格・試験の紹介をしていて参考になります。50代で英会話学習を始めてあなたにぴったりのものをぜひ選んでください。
50代の英会話学習のポイントはたっぷりのアウトプット
「英語の勉強をやり直す」というときに、英文法の参考書やドリルを使う、単語集を機械的に覚えるといった、自分で見直し学習を続けていくスタイルでは、学生時代の受験英語の繰り返しになってしまいます。
辛抱強く基礎を学んだ割に、ほとんどアウトプットの機会がなく、自分がどれだけできたのかを測ることもできない、辛い勉強法はもう終わりにすべきです。
人生経験のある50代が、コミュニケーションを主眼に勉強を再開するなら、これまでと比べものにならないほどのアウトプットの機会をつくるという意識が重要です。文法を間違えたり、ふさわしい単語がとっさに出てこなかったとしても、失敗を恐れないでください。RとLの発音がうまくできないからとこだわりすぎて、英語を話そうとしないのも問題です。次から直せばよいのです。
No pain, no gain.(痛みなくして成果なし)
英会話はもっとオープンなものであるべきです。
筆者はイギリスに住んで17年目になります。これまで、さまざまな外国人と接してきましたが、英語のネイティブスピーカーではなく、強いなまりの英語を話すひとからも「英語に自信がない」というような声を聞いたことがありません。たとえ英語圏の出身でなくても、発音にくせがあったとしても、イギリスに暮らす外国人たちはとても積極的にコミュニケーションを取ります。
一方日本人は、少なくとも義務教育でそれなりに英語を勉強しているにもかかわらず、70%強が<英語力に自信がない>と答えているという調査結果があります。なぜこのような違いが生まれるのでしょう。いたずらに完璧主義に陥ったり、失敗を恐れてしまったりしてはいないでしょうか?
50代は、公私ともにいろいろな経験を積んできているはずです。学生時代に英語が得意だったひとも、どちらかというと苦手だったひとも、何かのきっかけで<英会話を勉強しよう>と思ったのなら、いったん学生時代の得意・苦手を忘れてください。
なぜなら、今度の英語学習の目的は、試験でよい成績を取ることではなく、外国人と英語でコミュニケーションを取れるようになることです。また、今はかつての学生時代とは違い、さまざまな教材を使って効果的に会話の勉強を進めることができるからです。
外国人と出会う機会を積極的につくり、アウトプットを増やせば、インプットも自然に増えていきます。これこそ双方向の「コミュニケーション」です。英語でコミュニケートを取る目的に合うよう、ぜひ勇気を出して前進してください。
まとめ
中学校で習うレベルの単語やフレーズ、文法の基礎を学ぶことは、むかし学生時代にやってきたことと変わりません。しかし、<もう一度英会話を勉強してみよう>と思ったあなたなら、より意欲的に学べるはずですし、仕事の上でさまざまな知識や技術を獲得してきた50代だからこそ、その経験を英会話学習にも活かすことができるでしょう。
多少の失敗などを恐れず、オープンな気持ちで、英語で会話ができる機会をたくさんつくって、英会話を上達させていただきたいものです。
Life is short!(人生は短いもの)です。ぜひこれからは、英会話を楽しめるようにしていきましょう!