この「ことわざ」、「英語」で何と言う?シリーズ、今回は、「海・山」のつく「ことわざ」を英語に翻訳してみました。
夏のレジャーと言えば「海にする? 山にする?」という話題が定番ですよね! そんな「海・山」は、どのように定義されたものを指すのかご存知ですか?
まず、地球の陸地以外を「海」といい、地表の約70%を海が占めています。海はすべて繋がっているものを差し、海につながっていないものは塩を含んでいても「湖」とされます。
そして、平地に比べて盛り上がった地形を「山」といいます。「丘」との違いは定義されておらず、標高3mでも丘ではなく山と呼ばれているものがあります。日本ではたくさんある状態を「山のように」と言うように、度々比喩に使われることがあります。
そんな「海・山」のつく「ことわざ」を今回は6つ選んで英語に訳しました。
1.井の中の蛙 大海を知らず
自分だけの狭い見識に捕らわれ、外の広い世界を知らない世間知らずを「ことわざ」では「井の中の蛙 大海を知らず」といいます。井戸の中が全ての世界だった蛙にとって、どこまでも広く続く海は思いもつかない世界です。
私たち人間も家に籠っているだけでは、この蛙と同じく大海を知ることはできません。こうして英語を勉強することも、広い世界を知るきっかけになっているはずです。
英語では
“A frog in a well does not know the ocean.”
と翻訳することができます。
“well”は、ここでは名詞の「井戸」を意味します。英語のことわざが日本語の対訳になっていますね。例文をチェックしてみましょう。
訳)自分の経験を制限すると、大海を知らない井の中の蛙になります。
訳)井戸の中の蛙は大海を知らないですが、ひとたび跳躍する勇気を持てば、一生にはもっと多くのことがあることを知ります。
2.大海の中の一滴
「大海の中の一滴」は、とても大きなものの中に、非常に小さなものがある様子を意味する「ことわざ」です。
英語では
“A drop in the ocean.”
と翻訳することができます。
”drop”は「○○を落とす、降ろす」などの動詞でつかわれますが、ここでは名詞の「しずく」の意味で、”a drop” で「ひとしずく」を意味します。
訳)彼女の親切は、彼が必要としていた助けの大海の中の一滴にすぎなかったが、違いはあった。
この表現は、アメリカ人なら誰でも知っている言い回し、ニール・アームストロングの名言に通じるところがあります。
“That’s one small step for a man, one giant leap for mankind.”
『一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍です』
3.海に千年、山に千年
「海に千年、山に千年」は略して「海千山千」と言われることもありますが、長い年月にさまざまな経験を積んで、世の中の裏も表も知り尽くしていて悪賢いことです。
英語では
”Very experienced and cunning”
と翻訳することができます。
「海に千年、山に千年」を文字通り訳すと、”A thousand years in the sea and a thousand years in the mountains”という意味になりますが、直訳だと言いたいことの要点が伝わらないので、上記のような英語になります。
このことわざは、「海に千年、山に千年住んだ蛇は竜になる」という中国の故事に由来します。
似たようなことわざに「百戦錬磨」というのがありますが、「百戦錬磨」は「たくさんの実戦を経て、十分な経験を積んできている状況」のことを指しますが、「海千山千」は「長年さまざまな経験を積み、したたかでずる賢い性格になっている状態」のことを言います。
訳)その政治家は海千山千で、自分が行動を起こすタイミングを正確に把握していました。
4.妻の言うに 向山も動く(つまのいうにむこうやまもうごく)
「妻の言うに 向山も動く」は、夫にとって妻の言葉は、山が動くほど強さを持つということを意味する「ことわざ」です。本来は動くはずのない山でさえ、妻の一言では動くと比喩することで、「無視することはできない」という意味を持ちます。
英語では
“A wife’s words move even mountains.”
と翻訳することができます。
訳)妻の言葉は山をも動かすと信じていたからこそ、彼は妻の助言を決して過小評価することはなかった。
”underestimate”は「過小評価する」です。
5.山のものと嫁の見置きはない
「山のものと嫁の見置きはない」は、キノコや木の実などの山の幸と同じく、年頃の娘は早く手に入れたもの勝ちであると例えた「ことわざ」です。
山で見つけたキノコを「後で採ろう」と時間を置いてしまうと、後から来た人に採られてしまうことがあります。同じように良い人も「後で声をかけよう」と時間を置いてしまうと、誰かにとられてしまうかもしれません。気になった旬のものはすぐに確保すべし! という教訓が込められています。
英語では
“Get the bride and mushrooms as soon as possible.”
と翻訳することができます。
”do … as soon as possible”は「できるだけ早く…する」という意味です。”bride”は「花嫁、新婦」を意味します。
訳)直前の混乱を避けるため、できるだけ早く花嫁とキノコのような旬のものを確保する必要があります。
6.山彦(やまびこ)と女はおなじように秘密をたもつ
「山彦」とは、日本の山にいるとされる神・精霊・妖怪です。山に向かって声をかけると、反響して自分の声が聞こえることを昔は「山彦が応えた」と考えていました。
そのため、山彦は自分が話したことをすぐに話してしまう(反響させてしまう)います。女性も山彦のように聞いたことをすぐ誰かに話してしまうことから「山彦と女はおなじように秘密をたもつ」という「ことわざ」があります。
「山彦と女はおなじように秘密をたもつ」は、隠し事は女性に話してはならないことを意味する「ことわざ」です。隠し事をする際には、女性にバレないようにすると吉かもしれませんね。
英語では
“Women speak a secret like echoes.”
と翻訳することができます。
”echo”は「音の反響」を意味し、ここでは「こだま」や「山彦」として訳しています。日本語の「山彦と女はおなじように秘密をたもつ」ということわざは、山彦も女性も秘密をたもたないので、何だか変な言い回しに聞こえますが、英語のことわざでは「秘密をたもつ」keep a secretを使っていないので、自然に聞こえますね。
訳)謎はすばやく村中に広まりました。女たちは秘密をこだまのように語り、決してそれを一か所に留まらせないからです。
訳)女性は秘密をこだまのように語って、誰が最初に話したか知らずに、誰もが知るようになると言われています。
まとめ
今回は「海・山」のつく言葉にまつわる「ことわざ」をまとめてみました。
広くどこまでも続いている「海・山」のように、スケールの大きさを例えた「ことわざ」をピックアップしました。海と山は万国共通なので、英語で「ことわざ」を言えると、海外の人との交流のきっかけになるかもしれません。文化や慣習が違うので、通じづらいものもあるかもしれませんが、ことわざを英語で説明するというチャレンジから交流が始まる可能性があります。
今後も様々な「ことわざ」や「名言」を翻訳していきますので、お楽しみに!