この「ことわざ」、「英語」で何と言う?シリーズ、今回は、「天」のつく「ことわざ」を英語に翻訳してみました。

「天」とは、人の上にある存在や人を超えた存在を現します。また、人間が暮らす「地」の対義語であり、人の上方ということから「空」の意味と重なるつかわれ方もします。

そんな「天」のつく「ことわざ」を今回は6つ選んで英語に訳しました。

1. 一念天に通ず

1. 一念天に通ず

「一念天に通ず」は、どんなことも、成功させるという固い信念を持って臨めば、必ず天に通じて成し遂げられるという意味の「ことわざ」です。

英語では
“Care and diligence bring luck.”
と翻訳することができます。

直訳すると「専心と勤勉は幸運をもたらす」という意味です。

”care”は「注意・用心、世話・管理、手入れ」などの意味を持ちますが、ここでは「専心(専念すること)」の意味でつかわれています。”diligence”とは「勤勉、不断の努力」の意味です。

「一念天に通ず」はどういう状況で使えるのか、対話文でチェックしてみましょう。

Aさん
I know it’s hard to make my dream come true, but I really don’t want to give up.
訳)夢を叶えるのは難しいと思うけど、どうしても諦めたくないんだ。
Bさん
If you have that strong desire, you will be okay. Care and diligence bring luck. You will surely make it.
訳)その強い思いがあれば大丈夫だよ。一念天に通ずだよ。きっとうまく行くよ。

2. 天に口あり 地に耳あり

「天に口あり 地に耳あり」は、どんな秘密や悪事も、だれかに話せばいつの間にか広まってしまうことを意味する「ことわざ」です。同じ意味を持つ「ことわざ」に、「壁に耳あり障子に目あり」があります。どこで誰が聴いているか分からないので、内緒話は心にしまっておくのが良いかもしれません。

英語では
“Walls have ears.”
と翻訳することができます。

直訳すると「壁に耳あり」という意味です。このことわざの翻訳では、「天」が訳されていませんが、そういう場合もあります。

他にも“You never know who is watching.”と表現することもできます。「だれが見ているかわからない」という意味です。”never~”で「決して~ない」という意味です。

Aさん
I posted a complaint about my boss on social media. Only my friends see it, so it’s okay, right?
訳)SNSで上司の愚痴を投稿しちゃった。友達しか見てないし、大丈夫だよね?
Bさん
You’d better be careful. Walls have ears, and you never know who is watching.
訳)気を付けた方がいいよ。天に口あり 地に耳ありだよ。

3. 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず

3. 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず

教育者で知られる福沢諭吉の著書『学問のすすめ』には、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という有名な言葉があります。これは、人間は全て平等であり、身分によって偏見や差別をしてはならないと説いています。

英語では
“All men are created equal.”
と翻訳することができます。

直訳で「すべての人間は平等につくられている」で、福沢諭吉の「学問のすゝめ」が引用したとされるアメリカ独立宣言の原文の一部です。

”equal”は「等しい・同じ、平等」という意味を持ちます。

Aさん
I hear that to be rich, it is important to be born in a rich family, what do you think?
訳)お金持ちになるには、金持ちの家で生まれることが重要だって聞くけど、どう思う?
Bさん
It is said that all men are created equal, so you can change yourself with effort no matter what the environment is.
訳)天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らずって言うし、どんな環境でも努力次第で変われるよ。

4. 天上天下唯我独尊

「天上天下唯我独尊」は、天と地の間において、「我」よりも尊いものはないということで、釈迦(しゃか)が人格の尊厳を教えた言葉とされる「ことわざ」です。

釈迦は摩耶夫人(まやぶにん)の右脇から生まれたとされていますが、驚くことに、生まれたばかりの釈迦は7歩歩いた後に右手で天を指し、左手で地をさして「天上天下唯我独尊」と発したという伝説があります。

英語では
“Above earth, under heaven, only I am worthy of honour.”
と翻訳することができます。

直訳すると「地上で、天の下で、自分はたった一人の唯一の存在である」という意味になります。

”worthy”とは「価値のある、立派な」という意味で、”worthy of ~”で、「~に値する」という意味になります。”honour”(米:honor)は「名誉、面目、尊敬」の意味の英単語です。

Aさん
I don’t have any special talents, and nothing I do will work.
訳)自分には特別な才能なんてないし、何をやってもうまくいかないよ。
Bさん
That’s not true. Above earth, under heaven, only you are worthy of honour.
訳)そんなことないよ。天上天下唯我独尊だよ。

会話文では、文脈に合わせて「我」の部分を You と訳した方が意味が通りやすいです。自然な会話になるように、主語を変更することは時々ありますね。

5. 天は二物を与えず

5. 天は二物を与えず

「天は二物を与えず」は、天は一人の人間にいくつもの長所は与えないので、すべての長所を兼ねそろえた人はいないということを意味する「ことわざ」です。ひいては、人には長所も短所も1つずつあるという意味でもあります。

英語では
“God doesn’t give with both hands.”
と翻訳することができます。

または、“Heaven does not grant people with more than one talent.”と翻訳することもできます。直訳すると「天は人に1つより多くの才能を与えない」という意味になります。

Aさん
They say that God doesn’t give with both hands, but she has both beauty and intelligence.
訳)天は二物を与えずというけど、彼女は才色兼備だよ。
Bさん
I’m sure she has some things she’s not good at.
訳)きっと彼女にも苦手がことがあるはずだよ。

6. 人事を尽くして天命を待つ

6. 人事を尽くして天命を待つ

人間ができる限りのことをすべてやり尽くして、あとは運命に任せるという意味です。このことわざの由来は、中国南宋初期の儒学者・胡寅による著作『読史管見(とくしかんけん)』であると言われます。

この著作内に、東晋王朝時代の中国に異民族が攻めてきた際に、将軍の謝安ができる限りの作戦を全うした結果、異民族の撃退に成功したという叙述があります。全力を尽くした謝安の姿が「人事を尽くして天命にまかす」と言い表されており、この一文が「人事を尽くして天命を待つ」のもとになったと考えられています。

英語では
“Do your best and let the heaven (God) do the rest.”
と翻訳することができます。

「運命を天に任せる」の前に「自分の最善を尽くす」が入っているため、共感を覚えてこのことわざを座右の銘にしている人もおられるのではないでしょうか。

Aさん
I studied for 10 hours a day before the university entrance exam, but I’m not sure what the outcome will be.
訳)大学入試前に一日10時間勉強したけど、結果がどうなるか分からないよ。
Bさん
You did all you could do, didn’t you? As the saying goes, ”Do your best and let the heaven do the rest.
訳)君は自分のできることをすべてやったんだろ?。ことわざの通り、「人事を尽くして天命を待つ」だよ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、「天」のつく言葉にまつわる「ことわざ」をまとめてみました。

今回は、福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」や釈迦の「天上天下唯我独尊」など歴史に残る「名言」もご紹介しました。「天」は昔から人の上にあるものと考えられていたことから、格式高い「ことわざ」や「名言」が多く生まれているようです。「天」にまつわることわざの中で、皆さんの心に響いたことわざはありましたでしょうか。機会があれば、本記事で紹介したことわざを英語で表現してみてください。

今後も様々な「ことわざ」や「名言」を翻訳していきますので、お楽しみに!