パラリンピックには興味深いさまざまな競技があります。ゴールボールもその中の1つであり、パラリンピック特有のたいへんユニークな競技です。実はこのゴールボール、英語を学ぶのに役立つ競技でもあります。というのは、ヨーロッパで盛んに行われているため、英語の教材に事欠かないからなのです。ではゴールボールは、英語ではなんと言うのでしょうか。また、ゴールボールで英語を学ぶにはどんな方法があるのでしょうか。
そもそもゴールボールとはどんな競技?
ゴールボールは、視覚障がいのあるアスリートがチームを組んで競うスポーツです。この競技の歴史やルール、見どころなどは次のようになっています。
歴史
ゴールボールの発祥の地はヨーロッパです。退役軍人向けのリハビリテーションの一環として考案されました。1946年のことです。考案したのはオーストリア人とドイツ人の2人です。最初はリハビリテーションを支援する手段だったゴールボールですが、1950年代から60年代にかけて徐々にスポーツとしても認知されるようになっていきます。ゴールボールがパラリンピックに初めて採用されたのは、1972年の西ドイツ大会です。ただしこの大会では、デモンストレーションスポーツという位置づけでした。正式な競技として採用されたのは、1976年トロント大会が最初です。年を追うごとに競技を行う国が増え続け、2017年時点では81の国が競技に参加しています。
日本のゴールボールの歴史は、1982年にスタートします。とは言ってもこのときは競技の紹介のみにとどまり、全国的な普及とまではいきませんでした。その後競技規則の翻訳などにより徐々に全国に浸透し、1994年には世界大会に代表を送り出すまでに成長しました。なお、この大会(フェスピック北京大会)の最終結果は4位です。パラリンピックに初出場したのは2004年アトランタ大会で、女子チームが見事に銅メダルを獲得しています。日本女子チームは2008年北京大会、2012年ロンドン大会、2016年リオ大会と4大会連続で出場し、なんとロンドン大会では金メダルに輝くという実績を残しています。
競技場の仕様や競技方法
ゴールボールの競技場の長さは18メートル、幅は9メートルと定められています。1つのコートが、6つの均等なセクション(sections)に分割されているのがゴールボールの大きな特徴です。1つのセクションの長さは3メートルとなります。ゴール前のセクションは「チームエリア(team area)」です。次のセクションが「ランディングエリア(landing area)」で、3つめのセクションは「ニュートラルエリア(neutral area)」です。真ん中のラインを挟んで、相手チーム側にも同じセクションがそれぞれ存在します。1つめと2つめのセクションをまとめてチームエリアと呼ぶこともあります。また、ゴールの幅はコートの幅と同じ9メートルです。
ボールの重さは1.25キログラムで、中には鈴が入れられています。1チームのプレイヤーの数は3人で、前半12分後半12分、そしてハーフタイムが3分の、合計27分で試合が行われます。同点の場合は延長に突入し、延長でも勝負がつかなかった場合には「エクストラスロー(extra throw)」が行われます。延長は「ゴールデンゴール(golden goal)」形式で、前半3分後半3分です。またエクストラスローとは、サッカーでいうPK合戦のようなものです。選手はそれぞれ目にアイシェイド(eyeshade)を着けて競技を行います。この目隠しは、視覚障がいの程度に関わりません。全員が同じ目隠しを着用し、全盲状態でプレーするのがゴールボールのルールです。
プレイヤーはボールを転がし、相手ゴールを狙います。ボールは、自チームのランディングエリアとニュートラルエリアの両方でバウンドさせなければなりません。片方でしかバウンドしなかった場合には反則となります。また、見方にパスしたボールがコート外に出た場合には相手側にボールの所有権が移ります。守備により跳ね返されたボールがそのままセンターラインを越えたり、サイドラインから外に出たりした場合も同様です。
見どころ
ゴールボールの最大の見どころは、静寂の中で繰り広げられる攻防です。相手に攻撃場所を悟られないよう、音がしないように移動したり、見方の声だけを頼りにパスを交換したりします。また、敵チームのかすかな足音などから、相手の攻撃を読み取る必要もあります。そのため試合中はとても静かです。相手にボールのコースを察知されないよう、ゴールを狙うのが基本的な戦術です。選手はプレー中は全盲状態となるため、ベンチワークが大切になってきます。監督やコーチなどがプレーに声をかけるのは反則なので、タイムアウトや選手交代時にうまく戦術を伝えるのが肝心です。またタイムアウト後には得点が入りやすいので見逃せません。
覚えておきたいペナルティ用語
ゴールボールを観戦するとき、もしくは英語を学ぶ際に覚えておきたい主なペナルティ用語は次の8つです。
・Short ball(ショートボール)ボールが相手のエリアに到達しない場合
・High ball(ハイボール)投げたボールが自チームのランディングエリアに触れない場合
・Long ball(ロングボール)投げたボールがニュートラルエリアを飛び越えて相手のエリアに達した場合
・Eyeshades(アイシェイド)許可なくアイシェイドに触れること
・Noise(ノイズ)守備側に不利になるような音を攻撃側が出すこと
・Ten second penalty(10セカンズ)守備側がボールに触れてから、投げ返してセンターラインを越えるまでに10秒以上かかった場合
・Illegal coaching(イリーガルコーチング)プレー中や審判が「Quiet Please(お静かに)」と言った後に、監督などから指示が発せられた場合
・Illegal defence(イリーガルディフェンス)身体のどの部分もチームエリアに触れていない状態で、ディフェンダーがボールに触れた場合
以上の8つの反則には「ペナルティスロー(penalty throw)」が与えられます。ペナルティスロー時には、防御側は1人しかゴールを守ることができません。また、「Unsportsmanlike conduct(スポーツマンシップに反する行為)」や「Delay of game(ゲームの遅延行為)」があった場合にもペナルティとなることがあります。
ゴールボールは英語ではなんと言う?
ゴールボールは英語で「Goalball」と言います。goalとballを合わせただけなので、覚えやすいのではないでしょうか。ゴールボールを使った例文としては、次のようなものがあります。
Goalball is a strategic sport.
訳)ゴールボールは戦略的なスポーツだ。
All external noise is prohibited in goalball.
訳)ゴールボールではすべての外部ノイズが禁止されています。
ゴールボールで英語を学ぶ方法とは
ゴールボールで英語を学ぶための効果的な方法は、次の3つです。
動画で学ぶ
実際の場面を見ながら学べるというのが、動画による英語学習のメリットです。「goalball rules」で検索すると、英語によるさまざまな解説動画がヒットします。選手の動きに合わせて説明してくれるので、ルールを覚えるのに役立ちます。また、比較的ゆっくりと解説してくれるので、英語のヒヤリングにもぴったりです。ただしパラリンピックの実況動画などは、英語を学ぶのにはあまり適していません。なぜならゴールボールの競技としての性質上、他のスポーツのようなアナウンサーによる実況が入るのは稀だからです。動画で英語を学ぶのなら、ニュース動画や解説動画がおすすめです。
ニュース記事で学ぶ
ゴールボールに関する英語のニュース記事はたくさん存在します。小説や詩などのような文学的表現が少ないため、比較的解読しやすいのがニュース記事のメリットです。また、スラングや簡略化した言葉遣いなどはあまり用いられないので、標準的な英語を学ぶのに適しています。音声読み上げソフトやアプリを使用すれば、発音やアクセントなども学べます。使い方によって、たいへん効率のよい勉強ができるのがニュース記事なのです。
SNSで学ぶ
英語で直接やり取りできる可能性があるのが、SNSで学ぶ方法です。英語で会話するときのような、当意即妙さはさほど必要ありません。比較的時間をかけられるので、辞書を片手に交流ができます。ゴールボールの試合結果などに関するSNSを探し、可能であればコメントを残しましょう。最初は短い文でも構いません。英語の文章を考えるだけでも勉強になるからです。返信があったら、自分にできる範囲でまた返します。無理にすることはありません。実力や状況に合わせ、柔軟に活用できるのがSNSのメリットです。
ゴールボールで英語を楽しく学ぼう!
ゴールボールはとても奥の深い競技です。3人のチームワークが問われますし、ベンチワークも重要です。また、単純な体力勝負ではないため、日本人に向いている競技であるとも言えるでしょう。ゴールボールの本場はヨーロッパです。ゴールボールに関する情報に接することで、英語のスキルを伸ばすことも十分可能です。今回の記事を参考にして、ゴールボールで楽しく英語を学びましょう。