車いすに乗った状態でサーベルを持ち戦う競技「車いすフェンシング」は、世界的に人気のパラスポーツです。パラリンピックの正式競技にもなっており、近年ますます注目度が高まっています。そこで本記事では車いすフェンシングに関する英語表現を、競技の概要やルール、試合の流れなどとともに紹介します。また、車いすフェンシングにまつわる英語例文も取り上げます。

車いすフェンシングの概要

車いすフェンシングは英語で「Wheelchair fencing」と言います。フェンシングはヨーロッパを発祥としたスポーツであり、競技人口もヨーロッパが特に多めです。そして車いすフェンシングもヨーロッパを中心に盛んに行われています。フェンシングも車いすフェンシングも、競技者は「フェンサー(fencer)」と呼ばれます。

1960年に行われた第1回パラリンピックであるローマパラリンピックから正式競技として実施され続けている車いすフェンシング。日本においては1964年の東京パラリンピックで代表選手を出したのが初めてです。その後1998年に日本車いすフェンシング協会が起ち上げられ何度かパラリンピックに日本選手が出場しました。そして2015年にNPOとして車いすフェンシング協会が再度スタート。日本の車いすフェンシング競技人口は諸外国と比べまだそれほど多くはありませんが、海外大会に遠征するなど選手は腕を磨いています。東京2020パラリンピックでは、6名の選手が車いすフェンシングの日本代表に選出されました。

車いすフェンシングの試合・ルール用語の英語表現

それでは、車いすフェンシングの試合・ルール用語に関する英語表現を、内容とともに見ていきましょう。

車いすフェンシングの基本的ルール

フェンシングはピストと呼ばれる床の上を移動しながら行う競技ですが、車いすフェンシングの場合はピストに車いすを固定します。ピストは英語で「piste」。元々はフランス語の「滑走路」を意味する言葉「piste」が語源です。車いすの位置を固定するため、車いすフェンシングは上半身のみを使い戦います。競技に使用する道具はほぼフェンシングと同様です。例えば頭部を守る面は英語で「fencing mask」と言います。フェンシングをする上で欠かせない剣は「fencing sword」「fencing soil」などと表現します。

車いすフェンシングの種目

車いすフェンシングもフェンシングと同じく「フルーレ」「エペ」「サーブル」の3種目があります。それぞれ英語は「foil」「epe」「saber」です。フェンシングは基本的に用語が全てフランス語なので、英語で表現するときもフランス語をそのまま採用している場合が多く見られます。フェンシングは相手の体の中において、攻撃が有効な面を剣で突く(種目によっては斬りを含む)ことにより得点が獲得できます。この突きをフェンシング用語では「トゥシュ」と言いますが、英語で言えば「hit」です。種目別に異なる点は主に2点。有効な打突面と優先権の有無です。

フルーレは胴体部分の打突のみ有効であり、優先権があります。この優先権とは、先に攻撃をしかけた方が獲得できる権利のことで、もし同時突きなどが起こった場合、優先権を有している方にのみ得点が入ります。なお、優先権はフェンシング用語では「プリオリテ」、英語で言うところの「priority」です。エペはフルーレと異なり、上半身全ての打突が有効になります。また、優先権がないことも特徴です。同時突きをした場合は、双方に得点が入ります。サーブルはエペと同じく上半身全てが有効面ですが、突きだけでなく「斬り」も有効です。また、優先権があります。なお、車いすフェンシングは障害のレベルによって、さらにカテゴリーA・Bのいずれかに分けられます。

車いすフェンシングのルール・試合の流れ

車いすフェンシングは予選と決勝で競技時間が異なります。予選は3分間で、先に5トゥシュするかあるいは制限時間内に得点の多い方が勝ちになります。決勝は3分間を3セットの計9分間行われ、先に15トゥシュするかあるいは3セット終了時に得点が多い方が勝ちです。なお、団体戦の場合は3人1チームで行われ、3セットずつ3試合の計9セットが行われます。9セットの中で45トゥシュ先取か、9セット終了時に得点が多い方の勝利です。

車いすフェンシングの試合中に使用される用語も基本的にはフランス語です。例えば試合の始めに「ラッサンブレ・サリュ―エ」と審判が発します。これは「気を付け、礼」という挨拶のことです。英語圏ではあまりこのような挨拶の習慣はないため、直接この言葉に当たるような表現は見られません。審判が「アンガルド」と声を掛けたら、競技者は所定の姿勢になります。アンガルドは「構え」という意味で、英語風の発音をすれば「オンガード」となります。その後、審判が「エト・ヴ・プレ?」と選手に尋ねます。これは「用意はいいですか?」という言葉です。つまり、英語の「Are you ready?」と同義です。これに対し、各選手は用意ができていれば「ウィ」、できていなければ「ノン」と答えます。ウィは英語で言う「Yes」、ノンは「No」です。両者の用意が整ったら「アレ」の言葉で競技が始まります。

車いすフェンシングに関する英語例文

車いすフェンシングに関する英語例文

それでは、ここまで紹介してきた用語などを使用した英語例文をいくつか紹介します。海外の人に車いすフェンシングの歴史・ルールの説明をしたり、試合について一緒に語らったりする際の参考にしてみてください。

Aさん
Wheelchair fencing is especially popular in Europe.  It has been a formal competition since the 1st Paralympics.
訳)車いすフェンシングは特にヨーロッパで盛んに行われています。第1回パラリンピックから正式競技になっています。

車いすフェンシングの特性やパラリンピックとの関わりを説明する例文です。フェンシングについて知っていても、車いすフェンシングまではよく知らない人もいるでしょう。ぜひ車いすフェンシングのことを説明する際の掴みとしてこちらの例文を活用してみてください。

Aさん
The coach of the Japanese wheelchair fencing team praised the success of the Japanese players.
訳)車いすフェンシング日本代表の監督は、日本選手の活躍を讃えました。

フェンシングは部活や実業団チーム、国の代表チームなどには監督がいます。熱い試合を繰り広げた選手たちに監督が賛辞を送る場面は珍しくありません。

Aさん
The wheelchair fencing match begins with the referee’s “Allez” shout after the players greet and prepare the armor.
訳)車いすフェンシングの試合は、選手が挨拶を行い、防具の用意などが終わった後審判の「アレ」の掛け声で始まります。

車いすフェンシングの試合の始まりを説明した英語例文です。車いすフェンシングはピストに車いすを固定した状態で試合を進めますが、基本的な競技の流れはフェンシングと同じです。このような例文を覚えておけば、フェンシングの話題全般に使用できます。

Aさん
The highlights of the wheelchair fencing game are sword handling and defense from a short distance, and player bargaining.
訳)車いすフェンシングの試合の見どころは、近距離から繰り出す剣捌きや防御、選手の駆け引きなどです。

車いすフェンシングはピスト内の移動ができないため、常に選手同士が近距離で対峙することになります。上半身をフルに使った豪快あるいは繊細な剣捌きや巧みな防御、いつ攻撃を繰り出すか図る選手同士の駆け引きなど、観戦の見どころが盛りだくさんです。ぜひ車いすフェンシングの魅力について尋ねられた際にこの例文を参考にしながら説明してみてください。

車いすフェンシングを詳しく知り英語力の幅を広げよう

車いすフェンシングは世界中に競技者がいるパラスポーツです。基本的なルールや試合の流れ、そして関連する英語表現などを知ることは、グローバルなスポーツに対する見識を深めることにも繋がります。また、海外でも多数の大会が行われているので、大会にまつわる英語のニュースを理解する場合にも役立ちます。ぜひこの記事を参考に車いすフェンシングに関する知識を身に付け、同時に英語力の幅を広げましょう。