パラリンピックは様々な競技の特徴や魅力を伝えてくれる場でもあるとも言えます。初めて見た競技に興味や関心が沸いたという方もいるのではないでしょうか。ボートも実際はとても奥が深い、魅力的なスポーツです。一方でボート競技には様々な英単語が使われており、英語学習に役立つ事も期待できます。そこで今回は、ボートの特徴や魅力を伝えながら、よく使われる英単語や用語などを紹介します。
欧米では人気があるボート競技
ボート競技とは水上の一定距離をボートに乗ってオールで漕ぎ、ゴールまでの速さを競い合うスポーツです。シンプルなスポーツですが、天候や戦略によって成績が大きく左右される事も多い奥深さが一つの魅力と言えます。ボート競技は欧米で特に人気があり、アメリカの大学スポーツ界においては、バスケットボールなどに負けないほど盛んに行われているスポーツです。ボートそのものの歴史はとても長く、紀元前までさかのぼる事となります。オリンピックにおけるボート競技の歴史も長く、第1回のアテネ大会から実施されており、第21回のモントリオール大会からは女子のボート競技も行われています。
基本的にボート競技の水上コースは直線で2,000メートルの距離となっています。レースは5艇前後で実施される事が多いですが、オリンピックの場合は6艇でレースを実施します。ルールは簡単で一斉に全艇がスタートし最初にゴールしたチームが勝者です。水上を風を切りながら疾走するスピード感などがボート競技の大きな魅力と言えます。
また、ボート競技には「スカル種目」と「スウィープ種目」の2種類があります。それぞれの種目を英訳するとスカル種目は”Sculling”、スウィープ種目は”Sweep rowingで”す。「スカル」と「スウィープ」の違いは、1人が持つオールの本数で、オールを2本持って漕ぐのが「スカル」であり、1本持って漕ぐのが「スウィープ」となります。尚、日本におけるボート競技の人口は、欧米に比べて少なく、オリンピックでのメダル獲得はまだありません。
Aさん
What is the difference between a “scull event” and a “sweep event” in rowing?
訳)ボート競技で「スカル種目」と「スウィーブ種目」の違いは何ですか?
In the “scull event,” each rower rows with two oars, and in the “swipe event,” each rower rows with one oar.
訳)「スカル種目」では各漕ぎ手が2本のオールで漕ぎ、「スウィープ種目」では各漕ぎ手が1本のオールで漕ぎます。
Aさん
I see. There is a difference in the number of oars each rower has.
訳)なるほど。各漕ぎ手が持っているオールの数に違いがあるね。
知っておくとボート競技がより楽しくなる英単語などを紹介
ボート競技を英語で表現すると”rowing”や”boat racing”, ”boat race”となります。使い方の例文は以下の通りです。
We participated in a boat race.
訳)私たちはボート競技に参加した。
They overtook another boat by rowing.
訳)彼らは他の舟を漕ぎ抜いた。
また押さえておきたいボート競技に関する基本的な用語は以下の通りです。
・rudder:舵
・cox:舵を取る人、舵手
・rower:ボートを漕ぐ人、漕ぎ手
・crew(クルー):ボートの乗員
・lane(レーン):割り当てられた水路
・blade(ブレード):オールの水を押す部分
・regatta(レガッタ):水上スポーツ競技
ボート競技を含めた多くのスポーツでは監督は”manager”、コーチは”coach”となっていますが、一部のスポーツでは監督の事を”head coach”(ヘッドコーチ)と呼ぶケースもあります。他にも覚えておくとボート競技がより楽しめる専門用語があり、その一つが”catch a crab”(腹切り)です。腹切りはアクシデントに関する用語で、水にブレードを取られて水中からオールが抜けない状態を指します。さらに”row out”(ロー・アウト)もボート競技ではよく使われる用語で、和訳すると体力の限界まで漕ぎ切るという意味になります。尚、1分間でオールを漕いだ回数は “rate”(レート)と呼ばれています。
オリンピックのボート競技には多くの種目がある!
ボート競技の場合、オリンピックによって種目の数や内容が若干異なっています。そのため、今回は東京オリンピックを例に挙げ、種目名の英語表記を紹介しながら種目の内容も併せて説明します。
エイト Eight
エイトは1人の舵手と8人の漕ぎ手が参加する団体種目で、エイトの英語表記はEightです。左右4本ずつ、計8本のオールで漕ぐため、ボート競技手は最も高速な種目と言えます。船首に一番近い漕ぎ手はバウと呼ばれており、英語表記は”bow”です。全体を見ながらチームを鼓舞したり、指示を送るなどの役割があります。一方、船尾に近い漕ぎ手はストローク(Stroke)と言い、ボート競技の経験が豊富なクルーが担当する事が多いです。バウとストロークを除いた残りの漕ぎ手はミドルクルー(Middle Crew)となります。エイトの場合、舵手と漕ぎ手全員の息を合わせる事がより早くゴールするためには重要なポイントとなります。
Aさん
“Eight” in rowing is a team event with a cox and eight rowers.
訳)ボート競技の「エイト」は、1人の舵手と8人の漕ぎ手が参加する団体種目です。
シングルスカル Single sculls
シングルスカルは個人種目のボート競技で英語表記では Single scullsです。2本のオールを持って1人で漕ぎ、他のボートと競い合います。ボート競技の中でタイムの遅い部類に入る種目となっています。1人でボートを漕ぐので、肉体面と精神面、両方のタフさが求められてきます。またシングルスカルはトレーニングでもよく利用されており、漕ぎ手の技術力アップに繋がるとも言われています。ただスカルとスウィープ、それぞれに求められる能力は異なるので、スカルが得意な人はスウィープも得意であるとは限りません。
Aさん
In single sculls, one competitor rows with two oars and competes against other competitors.
訳)シングルスカルでは、1人の選手が2本のオールを持って漕ぎ、他の選手と競います。
You row the boat by yourself in single sculls, so you need to be tough both physically and mentally.
訳)シングルスカルでは1人でボートを漕ぐので、肉体面と精神面、両方のタフさが求められます。
ダブルスカル Double sculls
ダブルスカルは2人1組でボートに乗り込んで競技する種目で英語では Double scullsです。舵手はおらず、1人が2本のオールを持ち、合計4本のオールを使ってボートを漕ぎます。オリンピックのダブルスカルには軽量級とオープンと呼ばれる体重制限のない階級があります。
Aさん
In double sculls, pairs of two row in a boat, each rowing with two oars.
訳)ダブルスカルでは、それぞれが2本ずつオールを持って2人1組でボートを漕ぎます。
Bさん
There are two weight classes in the double sculls: lightweight and no weight limit.
訳)ダブルスカルには「軽量級」と「体重制限のない階級」があります。
舵手なしフォア Coxless four
舵手なしフォアはスウィープに分類されるボート競技であり、英語表記は Coxless fourです。1チーム4人の漕ぎ手で競い合い、オールの数は左右2本ずつの計4本となります。舵手がいないのが大きな特徴で、舵は漕ぎ手の1人が受け持ちます。
Aさん
In the coxless four, there is no cox and each of the four rowers rows with one oar.
訳)舵手なしフォアでは、舵手はいなくて、4人の漕ぎ手が1本のオールで漕ぎます。
「舵手なし」は英語で “Coxless”となります。
舵手なしペア Coxless pair
舵手なしペアは英語表記でCoxless pairとなり、舵手なしフォアと同様、スウィープ種目のボート競技です。また舵手なしフォアと同じく、舵手はいないので、漕ぎ手が舵を担当します。ボートには左右両側に1本ずつオールが設置されています。舵手なしペアは、技術力だけでなく高いコミュニケーション能力も要求されるため、ボート競技の中では漕ぐのが難しい種目とも言われています。ちなみにボート競技の大会では舵手つきフォア(Coxed four)と舵手つきペア(Coxed pair)もありますが、東京オリンピックでは行われていません。
舵手なしクォドルプル Quadruple sculls
舵手なしクォドルプルは4人1組で行うボート競技であり、英語表記はQuadruple scullsです。quadrupleとは四重や四つ組といった意味があり、ボート競技ではquadrupleを省力してquadと呼ぶケースもあります。一方、ボート競技には舵手つきのクォドルプル種目もありますが、東京オリンピックでは舵手なしクォドルプルのみが行われています。
軽量級ダブルスカル lwt double sculls
軽量級ダブルスカルは体重制限のあるボート競技の種目で、英語ではlwt double scullsとなり、lwtは”light weight”の略で「軽量級」を意味する略語です。男女共に漕ぎ手の平均体重及び個人の体重に上限が設けられています。規定の体重を満たしていない場合、デッドウェイトが課せられてしまいます。
パラリンピック ボート競技のクラス
パラリンピックのボート競技には、肢体不自由と視覚障がいの選手が参加します。パラリンピックのボート競技は、英語では ”Paralympic Rowing”と呼ばれ、2008年北京大会から正式競技に加わりました。2016年リオ大会までは全長1000mの直線コースで行われていましたが、2020年東京大会からは距離が倍増し、オリンピックと同じ2000mの直線コースで行われています。
パラリンピックのボート競技は、障がいの種類や程度に応じて分けられた3つのクラスごとに競技が行われますが、クラスごとに出場できる種目が決められいます。3つのクラスについて、詳しく見ていきましょう。
PR1クラス
このクラスは、4上肢と肩のみでこげる選手が対象です。このクラスの選手たちは、体幹は効きません。1人乗りの「シングルスカル」(男女)には、下肢障害で体幹が効かないPR1クラスの選手たちが出場します。
PR2クラス
このクラスは、体幹と上肢を使ってこげる選手が対象です。下肢を使うスライド式シートは使えません。したがって、PR2クラスの選手たちは、男女2人乗りの「混合ダブルスカル」に出場します。
PR3クラス
このクラスは、四肢に障害があるけれど、下肢・体幹・上肢を使いスライド式シートを使ってこげる選手、または視覚障害の選手が対象です。PR3クラスは、障害の程度が一番軽度なクラスと言えます。下肢障害や視覚障害のPR3クラスの選手が、男女2人ずつ合計4人に舵手(コックス)が同乗する「混合舵手つきフォア」に出場します。男女2人乗りの「ダブルスカル」にも、PR3クラスの選手によって実施されます。
ボート競技を楽しみながら英語を学ぶ方法
ボート競技を通じて英語をより学びたいのであれば、ボート競技に関連した記事が掲載されている英文の記事を積極的に読むのが良いでしょう。正しい表現で書かれている事が多いので、基礎力の向上が期待できます。新聞の内容がネットで配信されているものも少なくないので、スマートフォンがあればちょとした隙間時間に読んで英語を少しづつ身に付ける事も可能です。またボート競技の動画を見ながら英語を学ぶ方法もあります。臨場感のある生きた英語が学習できるだけでなく、自然とボート競技に関する専門用語も身に付けられるので一石二鳥と言えるでしょう。
ボート競技は英語の教材としては打ってつけ!
いかがでしたでしょうか。ボート競技は日本ではマイナーなスポーツに捉えられている傾向がありますが、欧米では人気のあるスポーツです。そのため、大会が開催されると記事になりやすく、ボートに関する動画も豊富にあります。これらの事を踏まえるとボート競技は英語の学習に適した教材と言えます。
「スカル」と「スウィープ」の違いや「舵手」を表す英語表現などが学べたのではないでしょうか。今回紹介した英単語や専門用語を身に付ける事ができれば、ボート競技と英語がより楽しめるでしょう。