「モラルが低い」や「モラルに欠ける」など、「モラル」という言葉を最近よく耳にします。
みなさんはこの「モラル」という言葉が、どのような意味を持っているか知っていますか?
「モラル」は、英語”moral”をそのままカタカナで読んだ言葉です。
日本語では、「モラル違反」や「モラルハラスメント」のようにネガティブな意味合いで用いられることが多いですが、”moral”も同じような使い方をするのが正しいのでしょうか。
今回は、聞き慣れているカタカナ言葉「モラル」について、英語”moral”の正しい意味と使い方、類義語を解説していきます。
「モラル」の意味
「モラル」は、英語の”moral”をカタカナで読んだ言葉です。
「道徳」、「倫理」、「倫理観」、「道徳意識」などの意味を表します。
道徳や倫理をわかりやすく言うと、日常生活における道徳的に正しい行動や社会の普遍的な基準のことです。
ただし、違反したからといって法的な罰則はなく、あくまでも個々の道徳的な感性による判断基準を指しています。
「モラル」は、ビジネスシーンでもとても重視されており、「モラル」を守ることはビジネスパーソンとしての資質を高め、相手との良い信頼関係を構築することにもつながります。
「モラル」と同じ意味を持つ言葉には、道義や善徳、徳行などが、対義語には、徳行やインモラルなどがあります。
「モラル」の類義語
「倫理」… 社会で人として守り行うべき道理、善悪の判断において普遍的な基準となるもの 「道義」… 人の行うべき正しい道 「道徳」… 正しい行動をするために、守らなければならないルールや規範 |
「モラル」の対義語
「インモラル」… 不道徳な、背徳的な、みだらなさま、性的にだらしないさま |
最近よく聞くようになってきた「モラルハラスメント」は、非道徳的な言動で相手の心を傷つける精神的な暴力行為を指した言葉です。
無視や陰口だけでなく、容姿を非難したり身体的な特徴をからかったりすることが該当します。
「不道徳」を表す「インモラル」ですが、一般的には「性的に不道徳」や「性的にだらしない」の意味で使われることが多いので、ビジネスやかしこまったシーンでは使わないように気をつけましょう。
英語”moral”の意味
英語の”moral”には、「道徳」や「倫理観」を意味する名詞と、「道徳の」や「教訓的な」を意味する形容詞の2つの用法があります。
善悪を判断する基準や規範のことを指し、人の行動や意思決定においてとても重要な役割を持っています。
”moral”は辞書で以下のように定義されています。
【形容詞】
・(善悪の基準になる)道徳上の、倫理的な
・道徳を教える、教訓的な
・善悪の判断のできる、道義をわきまえた
・道徳的な、品行方正な、(性的に)純潔な、貞節な
・(法律・慣習ではなく)徳義に基づいた、心(精神)に働きかける【名詞】
・(社会の)道徳、モラル、(特に男女間の)品行、風紀
・(寓話などの)教訓参考:Weblio英和辞書
【adjective】
・relating to the standards of good or bad behavior, fairness, honesty, etc. that each person believes in, rather than to laws
法律よりも、各人が信じている善悪の行動基準や公正さ、正直さなどに関するものを指す・behaving in ways considered by most people to be correct and honest
世間一般に正しいとされる行動をとるさま【noun】
・standards for good or bad character and behavior
性格や行動の良し悪しの基準
”moral”の発音記号は /ˈmɒr.əl/ で、カタカナでは「モーロゥ」のように読みます。
わたしたちが普段使っている「モラル」とは、全く違う発音になるので注意が必要です。
”moral”は、古フランス語”moral”(行動や道徳原則に関する)とラテン語”moralis(社会における人の適切なふるまい)が語源といわれています。
「個人の気質」を表して、名詞の複数形では、「風習」、「習慣」、「礼儀」、「道徳」などを指す言葉として使われていました。
何も考えずに単語を丸暗記するのはとても大変ですよね。
覚えるのに疲れた、なかなか覚えられない、そんなときは語源を紐解いてみましょう。
根っこにある単語から派生した言葉をつなげていくと、英語学習がもっと楽しくなりますよ。
”moral”と”manner”の違い
「モラル」に似た言葉で、「マナー」を思い浮かべた人がいるかもしれません。
「マナー」は、英語の”manner”からきたカタカナ語、行儀や作法を意味する言葉です。
”manner”と”moral”は、違反の基準が客観的か主観的かという点に違いがみられます。
manner:その場の状況や人物によって客観的に判断される(マナーに反する)
moral:個人の経験からくる感情や憶測によって主観的に判断される(モラルに反する) |
一般的に、「マナー違反」は周囲の人から非難されることが多く、”moral”と同じく罰則はないものの、下品で良くない行いとして認識されています。
社会や環境で定められている規則で客観的に判断されるのが”manner”であるのに対し、一個人の考えに基づいて主観的に判断されるのが”moral”です。
”moral”は、個人の感情や精神的理由が関係するため、立場や状況を見極めて不適切な使い方をしないように注意しましょう。
”moral”を使った例文
”moral”には、形容詞と名詞2つの用法があります。
”moral”の使い方を例文で確認していきましょう。
形容詞の”moral”
形容詞の”moral”は、「道徳的な…」と訳されることが多いです。
訳)人生において、強い道徳心を持つことは大切です。
訳)彼女は、わたしたちに道徳的な価値の重要性を説いてくれました。
訳)落とし物の財布を見つけたとき、道徳的ジレンマに直面しました。
名詞の”moral”
名詞の”moral”は、「教訓」「倫理」「良心」と訳されることが多いです。
”The moral of the story is…”は、「…の教訓は」と言うときの定番フレーズなのでぜひ覚えておきましょう。
訳)この教訓は覚えておく価値があります。
訳)この物語の教訓は、他人に親切にすることは重要だということです。
訳)他人を助けることは自分を助けることになるという教訓なのでしょう。
”moral”の類義語
”moral”は、善悪についての道徳的基準や概念を意味しています。
”moral”と同じような意味を持つ類義語のなかで、代表的なものを例文とともに紹介します。
ethical
”ethical”は、「倫理的な」という意味を表す形容詞です。
”moral”と同じく正しい行動や態度に関する倫理的価値観を指しますが、正義や公正などの意味合いも強く、より専門的で法的な概念を含んでいます。
訳)わたしたちは、高校で倫理的判断について学びました。
virtuous
”virtuous”は、「善良で道徳的な」「高潔な」という意味を持つ形容詞です。
品性が高く、美徳的な人格のことを指し、その人の正義感や高潔さを表すときに使われます。
訳)正直であることは美徳です。
righteous
”righteous”は、「正しい」「義理正しい」という意味を持つ英語です。
自分の信念や価値観に忠実で、倫理的に正しいとされる道徳的行動をすること、人や社会に対しても公正であることを示します。
訳)父は、いつも他人を助ける正義感のある人です。
まとめ
カタカナ言葉「モラル」について、英語”moral”の正しい意味と使い方、類義語を解説しました。
「モラル」は、英語”moral”からきたカタカナ言葉で、「道徳」「倫理」「道義」などの意味を表します。
”moral”には形容詞と名詞2つの用法がありますが、日本語の「モラル」は、おもに形容詞としての意味で使われています。
形容詞の”moral”と、カタカナの「モラル」は、個人的な主観による善悪の判断基準を示しています。
会話で”moral”と出てきたときは、日本語のような「モラル」と決めつけずに、形容詞なのか名詞なのかによって意味を推測してみましょう。
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