今更「this」?と思ったあなた。知らないことだらけの新しいコンテンツを学ぶことはとても大事です。しかし今日は箸休めに基本を見直してみるのはいかがでしょう。
「凡事徹底」という熟語をご存知でしょうか。「凡事」とはありきたりでありふれた物事を意味します。つまり「凡事徹底」とは、なんでもない当たり前のことを徹底して行うという意味です。基本を侮るべからず、基礎を怠るべからず。シンプルなことほど奥が深いものです。
というわけで基本の基本「this」を徹底して深堀しました!きっと新しい発見があるはず。一緒に基本に立ち返りましょう!
「this」の英訳は全て「これ」でいい?基本的な意味や発音
「あれ、これ」はパパママに次いで赤ちゃんが最初に覚える言葉のひとつです。言葉で形容しがたい対象物や名前が分からないものなどに対して指差しで知らせます。
このように英語の「this」も「物理的に距離の近いものに対して使う」という認識が一般的です。「this」を語るうえで外せないのが「that」です。「this」をより深く知るために「that」と並行して説明していきます。
「this」は日本人が苦手な発音!
「this」の発音記号は〔ðiːz〕です。記号だけ見てもまったくピンときません。この「th」の発音は日本人が苦手とする英語発音のひとつでもあり、私たちにとっては発音しづらい音なのです。なのでうまくできなくて当たり前。そこでこの「th」の音を発するための筋力づくりから取り組んでみましょう!
まずはストレッチから。
1.口を大きく「あー」と開けます。
2.そのまま舌を「えー」と出し、伸ばせるとこまで伸ばしましょう。
3.舌を出したまま今度は「いー」と口角をグイっと上げます。この時に舌が引っ込まないように、そして噛んでしまわないよう気をつけて!
4.ストレッチが終わったところで、口を閉じてリラックス。(意外と疲れませんか?)
5.リラックスした状態で口を半開きにします。
6.舌先をほんの少し口の外に出します。「しーっ」とするように人差し指を唇に触れ舌が指に軽く触れる程度です。
7.口角に少し力が入るのを感じます。この時に舌は上の歯と舌の歯に軽く触れています。
8.舌先から息を吐きだすイメージで、舌は出たままのポジションをキープしつつ、そのまま息を軽く吐きます。
音とも言えないような、少し間の抜けたような空気音が出てきましたか?そう、それが「th」の音なのです。
ポイントは、7の口角に少し力が入るのを感じることです。にかっと歯を見せるほどの力ではなく、口を一文字に結んだときに入る程度の力の加減です。ここをスキップしてしまうと、舌が奥に引っ込みやすくなり、息が外に出きれず頬に空気の溜まり上手に発音できません。そうなると「D」の発音に近くなってしまいます。
みなさん「D」の発音はそう難なくできますよね。日本語でもそのまま「ディー」と表記でき差異もほぼありません。その「ディー」を発音するとき、舌が上の歯にくっついているのを感じますよね。「th」は舌が口の中のどこにも触れず、上下の歯の存在を感じる状態でそのまま息だけが外に出ていきます。
日本語では使わない音なので、そのための筋力が元々弱い日本人。最初はうまくしようと思わずまずは口をその音に慣らしていきましょう。筋トレと同様、鍛えれば必ず結果は出ます!最初の4工程を繰り返し行うと、「あれ、意外と出来てる?」と上達速度は確実に上がるので、練習あるのみです!
「this」は距離の近いものに使う
thisとは近くにある単数を示すときに使う指示代名詞です。
指示代名詞とは読んで字のごとく、指し示す代名詞です。近くにある単数のものを指差す感覚で使うことができます。
例文を見ていきましょう。
これは駅です。
これは私の本です。
山田さんこれは僕の弟のウォルターです。
なんだか中学生に戻った気分ですね(笑)
紹介するときに「He, She」などの先行詞を引き継ぐ代名詞は使いませんよね。このように「this」の特徴は代名詞でありながら、目に見えるもの、もしくは見えなくても、何について話しているか分かるものを示すことができます。
今朝おばあちゃんの家を訪ねた。
このように時間とくっつけて使うことで、いつの出来事なのかを示すことができます。
「that」は距離の遠いものに
では続いて「that」です。「that」は遠くにある単数を示すときに使います。
あの赤い建物見える? あれが駅だよ。
Excuse me. Isn’t that your book?
訳)すみません、あれはあなたの本じゃないですか?
Oh yeah, this is! I almost forget. Thanks!
訳)そうこれ僕のだ。忘れるとこだったよ、ありがとう!
あれは弟のウォルターです。
thisの例文と同じくここでも先行詞がないので「He」は使いません。
あの入り口に立ってる男の人、彼が弟のウォルターです。
このように「a guy」の先行詞があるので、ここでは代名詞「He」が使えます。
Wow this picture looks very old so which one is your grandma?
訳)わぁ、この写真すごく古そう。どれがおばあちゃん?
That lady sitting beside the guy wearing glasses.
訳)眼鏡をかけている男の人の横に座ってるその女性だよ。
この会話ではAさんが「this pictuire」と言っていることから、写真がAさんの手元にあるもしくは距離的に手が伸びる場所にあることがわかります。それに対してBさんはどれがおばあちゃんかを説明する際に「that lady」と示しています。距離的に話者から離れていると感じるときに「that」が使われます。
When did you visit your grandma?
訳)おばあちゃんち訪ねたのっていつだった?
Well, That day we had a math exam.
訳)ええと、ほら数学のテストがあったあの日だよ。
物理的な距離だけじゃない!「this/that」で表現できる3つの距離
さて、ここで覚えて(思い出して)おきたいのが、「this」は空間的な距離、時間的な距離、心理的な距離これらの「3密」ならぬ「3距離」を表すということです。
物理的に距離の近いものにthisを使うことはもちろんのこと、「this year」など時間と一緒に使うことで特定の活動時間を示すことができますよね。
こんなの今更復習するまでも…ちょっと待てよ。心理的距離の「this」ってなんだっけ…。すこし怪しくなってきてませんか?さあここで一括クリアにしておきましょう!
空間的距離
空間的距離は話者から手が届くかどうかで判断する場合がほとんどです。
Don’t you think this electric car is cool? good for environment though.
訳)この電気自動車かっこよくない? 環境にもいいし。
I agree but the price is quite high. and check the space I think it’s a bit too small for us. That black car is also nice and reasonable price.
訳)そうだね、でもちょっと高くないかな。それにほら、このスペースだと僕らにはちょっと狭いよ。あの黒い車もかっこいいと思ったよ。値段も手頃だし。
電気自動車を「this electric car」と指し、黒い車を「that black car」と指しています。また、Bさんが車の広さに関してAさんに注意を促してることからも、二人が同じ位置から同じ距離の対象物を見ていることが推察できます。このやりとりから、電気自動車の方が二人からは近く、黒い車の方が遠いことがわかります。
Hello, is that Walter? this is Sammy.
訳)もしもし、ウォルター?サミーだよ。
電話の時は「あちら側」にいる顔の見えない相手を確認する際に「that」を使います。
時間的距離
This is a really exciting event!
訳)このイベントすごく楽しい!
This is going to be an exciting event!
訳)これはとても楽しいイベントになるぞ!
「this」はbe動詞と一緒に使うとき、現在もしくは未来のことを指します。
That was an exciting event last night!
訳)昨日のパーティはとても楽しかった!
「taht」の場合は過去の出来事に対して使います。では「this was」は使わないのかといえば、そうではありません。
②That was the first MacBook I bought yesterday.
③This was the first MacBook I bought.
これら3つの文章はどれも「初めて買ったマックブックだ」と訳せます。目の前にあるマックブックを開きながら「This was」と過去形を使われたら少し違和感を覚えるかもしれません。しかしこれは間違いなどではなく、話者が会話の中で何について強調したいかで捉え方が違ってきます。
①の「This is the first MacBook I bought」は3距離の中の「空間的距離」に該当します。つまり目の前にある「これ(MacBook)」について始めて買ったものであると説明しています。
②の「That was the first MacBook I bought yesterday」の方は、That was an exciting event last night!(昨日のパーティはとても楽しかった!)の例文と同様、過去の事であるという事実が大前提にあります。「yesterday」という時間的な強調もあり、「昨日買ったばかりで新品ホヤホヤなんだ!」ということを伝えたい「時間的距離」に該当します。
では③の「This was the first MacBook I bought」はというと、これから説明する「心理的距離」に該当します。
目の前の新品マックブック「This」について説明しつつも、購入自体は過去のことなので「That was」と同様be動詞を過去形で使っています。しかしここで「This」を使うことにより②のような時間的な強調は薄まり、いつ買ったのかということよりも「初めて買ったんだ!」という事実を強調したい話者の心理がはたらいた文章なのです。
まとめるとこのようになります。
This is the first MacBook I bought.
話者とマックブックとの空間的な距離が近く、端的に「もの」としての説明。
②時間的距離
That was the first MacBook I bought yesterday.
話者が過去の出来事について説明をしている文章。買ってからまだ時間が間もないことを強調したい。
③心理的距離
This was the first MacBook I bought.
本来なら「This is」もしくは「That was」となるところ、話者にとって時間的な事実関係はそれほど重要ではなく、MacBookを初めて買ったことを強調したい話者の心理的がはたらいている。
ここまでの「This was」の解説に関しては、口語的な使用の際に起きることを説明しています。「先生!話者の心理がはたらくと文章にはThis wasもありなんですか!?」などと焦らず(笑)文法的に現在・未来は「This is」、過去については「That was」と一旦頭の中をシンプルに整理しておきましょう。
ここでモヤっとしているあなたは次の心理的距離の解説で腹落ち必須です。
心理的距離
I’m obsessed Ed Sheeran! Do you like his songs?
訳)私今エドシーランにハマってるの!彼の歌好き?
Ed Sheeran! He has a remarkable voice I like this singer a lot too。
訳)エドシーランね! 素晴らしい声の持ち主だよね。俺もこの歌手大好きだよ。
Ah, that singer. He is super popular but not for me.
訳)あーあの歌手ね。人気ではあるけど、俺好みではないかな。
言語に関係なく好きなものや人に対しては近くにいたい、その存在を感じていたいと思うものです。逆にあまり好意をもてなかったり、遠ざけたいものには距離をおきたいと思うのが人間の心理です。大好きだと答えるBさんの前者の返答は「this」が使われていますが、好みではないと答える後者の文には「that」が使われています。
好きかそうでないかで無意識にその歌手に対する距離を変えている、話者の心理が大きく反映されています。
I said you are a nerd at the party without knowing about you. I’m sorry for this. I was thoughtless.
訳)パーティーではあなたのことよく知りもしないのに、オタクなんて言って本当にごめんなさい。軽率だった。
I said you are a nerd at the party and I’m sorry about that. I had too much drink.
訳)昨日のパーティーでオタクって言ってごめん。ちょっと飲みすぎちゃってさ。
さて、同じごめんなさいでも温度差が感じられます。「I’m sorry for this」と「I’m sorry about that」どちらもよく聞きますし、よく口にするフレーズでもありますよね。冒頭でも述べたように、人間は自分にとって不都合な物事や害があると感じた場合無意識にそれらを自分から遠ざけたいという心理が働きます。
前者「I’m sorry for this」はそのことに対して自分に責任があると認める場合に使うことが多いです。前置詞の「for」も伝えたいことが明確にし、そこに対して自分が悪かったと印象付けられます。一方「I’m sorry about this」は悪かったと思う罪悪の念はあるものの、そこに対して自分には責任がない、もしくはその責任を遠ざけたいと思っているときによく使われます。更に前置詞「about」によって物事がぼんやりとした印象になり「あの時はごめんね」とかるーい感じの謝罪になりかねません。
文章だけ見ると2語の些細な違いですが、受け取り方でその後の関係に大きく響くことになる可能性だってあります。違いをしっかりと理解し、その場に適した正しい使用を心掛けましょう。
ではここでもう一度MacBookの例文に戻ってみましょう。
②That was the first MacBook I bought yesterday.
③This was the first MacBook I bought.
3つそれぞれの違いと、③の文の感覚が先ほどよりもはっきりしたのではないでしょうか。
3距離まとめ
「this」は空間的、時間的、心理的距離を表すはたらきを持っています。
空間的距離は対象となるものが近いか遠いかで「this」と「that」を使い分ける。話者から手が届くかどうかが基本的な判断基準。そのほかに人物を紹介したり、電話先など相手の顔が見ない時なども空間的距離の「this/that」を用いる。
時間的距離の「this」は現在形be動詞「is」と使うことで、現在もしくは未来のことを指す。過去の出来事は「that」を用いて過去形be 動詞「was」を使用。「this」+morningなどの時を表す名詞とくっつけて使うことで、より詳細な活動時制を表現することができる。
心理的距離は話者の心理のはたらきかけで「this/that」が変動する。話者が好ましい、もしくはその活動や物事に対して強い関与があるという意識が強い場合「this」を用いる傾向が強い。逆にあまり好意を抱いていなかったり、遠ざけたいと思う物事に対しては「that」を用いる傾向が強い。
thisを含むイディオム
では、以下でthisを含むイディオムをいくつか紹介します。
this amount of hardship
この程度[くらい]の苦労
this amount of~で「このくらいの~」と表すことができます。使用頻度の多いものや、日常会話で使うものから覚えていくと効率的です。
It was not easy but I don’t mind this amount of hardship.
訳)大変だったけど、このくらいの苦労なんてことないよ。
You are a powerful woman.
訳)あなたって本当に強い女性だね。
this and that
あれやこれや、いろいろなこと
I was so busy this morning doing this and that.
訳)今朝はあれこれやることがあって忙しかった。
this applies to ~ too
~も当てはまる
How old are you?
訳)おいくつですか?
I’m 20.
訳)20歳です。
That means this rule applies to you too. It says 20 years and older.
訳)ということはこのルールはあなたにも当てはまりますね。20歳以上ということなので。
this being the case
そういう状況であれば、こういう状況だから
I think I’m making the same mistake with exes.
訳)私元カレたちに同じ間違いを犯してると思うんだよね。
like what?
訳)たとえばどんな?
They always start to ask for money and I give some.
訳)お金を貸してって言われて、どうしても貸しちゃうんだよね。
This being the case, you shouldn’t go date that guy you talked earlier because he is unemployed.
訳)そういうことなら、なおさらさっき話してた男とはデートに行かない方がいいよ。彼無職だし。
this bit of news
このちょっとしたニュース
this brand of humor
こういう類のユーモア
This brand of humor is not for everyone but I like this comedian I have been to his live show.
訳)この手の冗談は万人ウケじゃないけど、私はこのコメディアン好きだしライブにも行ったことあるよ。
まとめ
英語の勉強で「this」は「これ」で「that」は「あれ」と教わりましたよね。もちろんそうなのですが、しかしそれだけではありません。この記事では「this」の性質について、空間的・時間的・心理的距離の3距離の解説、そしてイディオムの紹介をさせて頂きました。
日本人には単数と複数の概念にそれほどの執着がありません。そのため最初に出てくる基礎の「this/that/these/thoes」に無意識に抵抗があり、最初のつまづきポイントになりがちです。
しかし、そもそも日本人が持っていない感覚を文法などの法に当てはめて覚えようとしているのですから、そうすんなり入っていかない方が普通です。外国人が日本に来て信号を見ながら「青信号」という日本人の感覚が分からないと同様、そもそも感覚として持ち合わせていないのです。This being the case, it is important to know such basic deeply. そう、だからそこ基礎を深く知ることは大切なのです。
「あれ/これ」の意味だけにとらわれず、ネイティブですら無意識に使っている「this/thatの感覚的なところ」を少しでも掴んで頂けたでしょうか。きっと日常の中でも当たり前すぎて見落としていたり、忘れていたりしていることがあるはず。知識は正しく深く持ってこそ力が発揮されます。これを機に本記事で取り上げた「this」のような、その他の基礎を見直してみてはいかがでしょう。