中華料理のデザートといえば、「杏仁豆腐」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
とろける食感とほのかな甘みが美味しい「杏仁豆腐」は、中国発祥の甘い点心料理の一つです。
英語では”almond jelly”といいますが、厳密には豆腐でもなければゼリーでもない、不思議なスイーツなのです。
起源となった中国での歴史は古く、かつては生薬として使われてきたともいわれている「杏仁豆腐」。
今回は、体に優しい中国のデザート「杏仁豆腐」について、英語表現とともに、歴史やさまざまな種類を紹介していきます。
「杏仁豆腐」とは
「杏仁豆腐」とは、杏仁(きょうにん)というあんずの種の中身(仁という)をすりつぶして搾った汁を、寒天やゼラチンで固めて作る甘い点心料理です。
中国の首都北京の伝統的なデザートとして知られており、清朝時代に宮廷で行われていた豪華な宴会「満漢全席」の定番メニューの一つでもあります。
厳密には豆腐ではありませんが、見た目と食感が豆腐に似ていることから、「杏仁」で作った「豆腐」で、「杏仁豆腐」という名前がつけられました。
タンパク質が豊富に含まれている杏仁は、滋養強壮効果が高いとされ、中国では古くから生薬として使われていました。
「体に良い食材を日常的に食べて健康を保っていれば、特に薬は必要ない」という中国の「薬食同源」の考えのもと、杏仁は生薬や今でいう漢方薬としての役割を担っていたとされています。
「杏仁豆腐」の英語
「杏仁豆腐」は、英語で”almond jelly”(アーモンドゼリー)です。
この”almond jelly”という言い方は、おもに香港や東南アジアの英語圏で使われている表現で、アメリカやイギリスなどの英語圏においては、”Almond tofu”と呼ぶことも多いです。
中国語では「xìngrén dòufu(シンレンドウフ)」や「An Nin Dou Wu(アンニンドウウ)」と発音されています。
「杏仁」は、英語で”apricot kernel”または”apricot seed”ですが、杏仁の種子や香りがアーモンドによく似ていることから、”almond jelly”と表現されるようになりました。
あんずの種子を乾かした「杏仁」とアーモンドは、風味が似ているだけで全くの別物ですので、”almond”はあくまでも「杏仁豆腐の」呼び名だけ、と覚えておいてくださいね。
”almond jelly”を使った例文
”almond jelly”を使った例文を紹介します。
”almond jelly”の説明や美味しさを伝えるときには、以下のような表現が活用できますよ。
訳)杏仁豆腐は、一般的に中華料理デザートとして出されます。
訳)杏仁豆腐は、独特の風味とミルク感が魅力的なスイーツです。
訳)杏仁豆腐はほのかな甘みがあり、低カロリーでヘルシーなデザートです。
「杏仁豆腐」が美味しいお店を、以下のような表現でおすすめしても良いですね。
訳)この中華料理店では、マンゴープリンよりも杏仁豆腐の方が人気があります。
訳)ここのお店の滑らかでクリーミーな杏仁豆腐が好きです。
訳)ここでは、いつも杏仁豆腐をハチミツをかけて出してくれます。
生薬や漢方の役割も果たす「杏仁豆腐」の栄養や効能は、以下のように表現できます。
訳)杏仁豆腐には、咳を止める作用やビタミンEやカルシウムといった栄養素が含まれています。
訳)杏仁豆腐には、コラーゲンや食物繊維も含まれています。
訳)杏仁豆腐に含まれる成分は、美容と健康の両方に効果的です。
「杏仁豆腐」の歴史
昔から薬として役立ってきたという「杏仁豆腐」の歴史をさらに深掘りしていきましょう。
「杏仁豆腐」の始まりはとても古く、魏、蜀、呉の三国が争っていた三国時代までさかのぼります。
漢の時代に活躍し、「建安三神医」と称された名医の一人、董奉(とうほう)が、杏仁を使って喘息や肺炎などを治療したのが始まりです。
喘息を患っていた董奉が、自分なりに調合した杏仁の粉末を常用して病気を治療していたのが、後の「杏仁豆腐」の原型になったと考えられています。
董奉は、治療費を受け取らない代わりに、完治した患者へ「杏の苗木を植えてください」と助言をしていたそうです。
やがて、董奉からもらった苗木が育ち、立派な杏の林ができると、優れた名医は董奉になぞらえて「杏林」と呼ばれるようになったともいわれています。
肺と腸を潤し、咳止めや喘息、便秘に効くとされた杏仁ですが、一つ「苦味」だけが難点でした。
宋の時代から明の時代にかけては、苦味が強くそのままでは食べにくい杏仁に、甘みを足して食べやすく加工がされるようになり、水で溶かして寒天で固めたり、砂糖を混ぜて風味や甘さを加えたりしたものが作られるようになりました。
「杏仁豆腐」が日本に伝わったのは大正時代で、初めは和え物など和食の一品料理として食べられていました。
昭和時代に入ると、食後の甘味や学校給食、中華料理店などに広まり、今や中華の人気デザートととなりました。
「杏仁豆腐」の種類
漢時代の生薬から始まった「杏仁豆腐」は、宮廷料理の最高峰「満漢全席」のデザートとして、皇帝や妃たちに親しまれる存在になりました。
そんな高貴な「杏仁豆腐」は、地方によって味や固さが異なります。
北方の「杏仁豆腐」がつるんとした固めの食感であるのに対し、南方の「杏仁豆腐」は、柔らかくとろけるような舌触りが特徴です。
北方の「杏仁豆腐」
北方の「杏仁豆腐」は寒天を使って凝固させているため、固めでプルンとしています。
「杏仁豆腐」の名前の通り、豆腐のような見た目なので、「杏仁豆腐」といえば、このタイプをイメージされる方が多いでしょう。
日本のプリンに似ており、切り分けてフルーツポンチやジュースに入れたりできます。
南方の「杏仁豆腐」
南方の「杏仁豆腐」は、コンスターチを使って凝固させているので、とろみがあって柔かいのが特徴です。
切り分けるほどの固さはなく、器に盛ってあってスプーンですくって食べるようなタイプです。
口に入れるとほろりとほぐれ、ミルキーで濃厚な味わいが、日本でも人気を集めています。
まとめ
生薬や薬膳から始まった中国の伝統的なデザート「杏仁豆腐」の英語表現とともに、歴史と種類を紹介しました。
杏仁豆腐は英語で”almond jelly”です。
原料の杏仁の種子が”almond”に似ていることから名付けられました。
杏仁豆腐をもっと簡単に作れたらいいな、と思っている方には、牛乳寒天にアーモンドエッセンスを加えて作るのがおすすめです。
牛乳のミルク感とアーモンドの豊かな香りは、本格的な「杏仁豆腐」さながらの美味しさを味わえますよ。
寒天の固さを加減して、旬のフルーツやシロップなどお好みのトッピングで、自分ならではの特別な「杏仁豆腐」を作ってみてはいかがでしょうか。
「杏仁豆腐」をはじめとした中国の甘い点心やおやつには、他にも、月餅や胡麻団子などがあります。
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