「思春期に入ったから大変」
「そういうお年頃なのかも」
子どもから大人へと成長する「思春期」の子育てに、悩んでいない親御さんはいないでしょう。

ときには親に暴言を吐いたり、悪態をついたりと大変な時期ですが、「思春期」は、親から自立したい気持ちとまだ甘えたい気持ちが揺れ動く、とても不安定で繊細な時期といえます。

今回はそんな「思春期」について、海外事情をはじめ、「反抗期」や「青春」といった思春期にまつわる英語表現を紹介していきます。

思春期に悩むのは日本だけ?

日本では当たり前に耳にする「思春期」という言葉。じつはアメリカやイギリスをはじめといした欧米諸国には、日本のような「思春期」がないという声も聞きます。

10歳を過ぎると、ほとんどの子どもは自己主張強くなったり親子や友人関係で悩んだりと、いろいろな葛藤があるというのは世界共通です。

しかし、息子が母親に対して暴言を吐いたり、娘が父親を極端に避けたりするような問題行動は、どうやら日本にだけみられる珍しい事例だそうです。

一見穏やかで協調を重んじているはずの日本人が、なぜ思春期になると乱暴な言動を起こしてしまうのでしょうか。

日本で思春期の子どもに反抗的な言動が目立つ要因としては、下記の2つが考えられます。

  • 子どもは親に属する存在という刷り込み
  • 親は最善の育児をするべきという思い込み

日本と違い、個人を尊重し生まれた時から1人の人間として育てられる海外の子どもたちは、小さい頃からいい意味で「自己責任」という感覚が身についています。

「周囲との協調性こそが大事」である日本と、「責任を持ちながら自由を謳歌できる」欧米諸国で、どちらがのびのびと成長できるかは一目瞭然でしょう。

アメリカと日本の有名なことわざを比較してみると、その違いは歴然です。

アメリカには、”The squeaky wheel gets the grease”ということわざがあります。

直訳すると「きしむ車輪は油をさしてもらえる」で、不満や意見など思っていることは、声に出して言わない限り、周囲には気付いてもらえないという意味です。

多民族国家であるアメリカには、人種や宗教など異なるルーツを持った人々が混在しています。考え方や価値観は他人と違うのが当たり前なので、言葉で伝えることがとても重要なのです。アメリカにしばらく暮らされた方は、「不満や意見は声に出して言わない限り、周囲に気付いてもらえない」について、「確かに!」とうなづけるのではないでしょうか。

「不満や意見を声に出して言ったら、気付いてもらえて、何かが変わるのか?」というと、気付いてもらえても、現状がなかなか変わらないこともあります。しかし、周りに気付いてもらうことが、何かを変える上での第一歩となります。アメリカのような多民族国家で、現状を変えるためには、どういう方法で誰に向けて伝えるかを考えることも大事になってきます。

多民族国家は多様な民族から構成されており、想像を絶するような行動もとる人もいて、過激な人と接触することで被害に遭うこともあるかもしれません。しかし、個人を尊重しつつ責任感を持って生きることを重視する欧米には、「周囲との協調性」ばかり重んじる日本では出会えないような素晴らしい価値観や考え方の人と出会えるチャンスもあります。

一方、日本には、「出る杭は打たれる」ということわざがありますね。

Aさん
The nail that sticks out gets hammered in.
訳)出る杭は打たれる。

才能があって頭角を現す人や、目立った行動をした人は、周囲から憎まれたり非難されたりするという意味です。

和を尊ぶと言えば聞こえはいいですが、間違っていることを間違っていると言えない日本の文化は、子どもの成長に少なからず悪影響を及ぼしていると言っても過言ではないでしょう。昨今では、才能があって頭角を現す人は、大舞台に出て才能を披露すれば、認められて活躍できる場が与えられる傾向にありますが、狭い環境の中で、頭角を現したり人と違う目立つ行動をしたりすると、周囲からねたまれたり非難されたりすることがあります。

「思春期」を表す英語は2つある

「思春期」を表す英語は2つある

親から離れたいけれど不安という難しい時期である「思春期」を、英語では何と言うか知っていますか?

一般的によく使われているのが”adolescence”と”puberty”の2つです。

”adolescence”が心の変化に焦点を当てているのに対して、”puberty”は体の変化に着目した表現をしたいときに使われます。

「思春期」と言うときは反抗的な態度や行動のことを指している場合が多いので、まずは思春期=”adolescence”と覚えておくとよいでしょう。

”adolescence”を使った例文

Aさん
The youngest sister, Emma, will be in adolescence.
訳)末っ子のエマもそろそろ思春期に入る頃ね。
Aさん
It’s difficult to raise adolescents.
訳)思春期の子どもを育てるのは難しいよ。
Aさん
I met a lot of wonderful people throughout my adolescence.
訳)思春期を通して、たくさんの素晴らしい人との出会いがあったわ。

”puberty”を使った例文

Aさん
My daughter, Olivia, seems to have reached puberty.
訳)娘のオリビアは思春期に入ったみたい。
Aさん
He can’t stop thinking about the girls because I’m in puberty.
訳)彼は思春期だから、女の子のことが気になって仕方ないのよ。
Aさん
Puberty is a very difficult growing period for children.
訳)思春期は、子どもにとって非常に難しい成長の時期だ。

 

10代の若い年齢を指して”teenage years””teenager”などと表現されることもあります。

ほかにも、日本語をそのまま直訳した”difficult age””a difficult stage”という言い方もありますが、子どもが知ったら気分を悪くしてさらに怒ってしまう可能性もあるので、使い方には注意が必要です。

Aさん
If you could meet yourself as a teenager, what would you say?
訳)今、思春期の自分に会えたら何て言ってあげたい?
Aさん
I forgot what is like to be a teenager.
訳)昔すぎて思春期の気持ちなんて忘れちゃったわ。
Aさん
She is going through a difficult stage, isn’t she?
訳)難しい年頃だよね。

 

”adolescence”と”puberty”の違い

思春期を表す英単語は、”adolescence”と”puberty”があると書きましたが、英語圏では、厳密にいうと、その2つに違いはあるのでしょうか。

英英辞典で、それぞれの単語の意味について、調べてみると、次のような説明が見つかります。

”adolescence”: the period between the onset of puberty and adulthood
「思春期の開始と大人の間の期間」

”puberty”: the phase where a child’s physical and sexual characteristics start to mature
「子どもの身体的・性的特徴が成熟し始める時期」
男子は11歳か12歳から始まり、女子は9歳か10歳から始まるという説明もあり、女子の方が早熟と考えられています。

この説明を読むと、厳密に言えば、”adolescence”の中に”puberty”が含まれていて、”adolescence”の方が長い期間を指すことが分かります。”adolescence”は「青年期、青春期」を訳されることもあります。

子どもから大人へ成長する「思春期」は、親から自立したいという気持ちと、親から離れることへの不安がせめぎ合う難しい時期です。

混乱したり迷ったりしながら、自分の気持ちをコントロールできないことに子ども自身も悩んでいます。

子どもも心と体の急激な変化に戸惑っているのだと割り切り、気持ちを強く持って接してあげたいものです。

「反抗期」を表す英語はある?

「思春期」と同様の意味でよく聞く「反抗期」という言葉。

子どもが親に対して反抗的な態度を取るのは、成長過程では当然のことで決しておかしくありません。

「反抗期」は英語で”a rebellious phrase”や”a rebellious stage”と言います。

例文で一緒に確認してみましょう。

Aさん
Did you have a rebellious phrase when you were little?
訳)小さい頃、反抗期ってあった?
Aさん
My son, John, is going through a rebellious phase. I don’t know what to do about it.
訳)息子のジョンは最近反抗期で、手がつけられない。
Aさん
Rebellious and stubborn children are much better.
訳)親に反抗するエネルギーや自分の意思があるだけ、まだましだと思うよ。
「反抗期」というと、ネガティブな響きがありますが、”rebellious” の後に”spirit”を続けて “rebellious spirit”「反骨精神」という意味になり、ポジティブな意味で使えます。例文を見てみましょう。
Aさん
They admired his rebellious spirit, always challenging the status quo.
訳)彼らは、常に現状に挑戦する彼の反骨精神を賞賛した。
現状 ”the status quo”に挑戦するのは「反骨精神」”rebellious spirit”で、”rebellious”という単語がポジティブな意味で捉えられます。1つの単語が、どの単語と結びつくかによって、ネガティブな意味合いからポジティブな意味合いに変わるというのがすごいですね。

「反抗」を表す英単語を使いこなす

「反抗期」は英語で”a rebellious phrase”や”a rebellious stage”と言うと紹介しましたが、「反抗」は英語で何と言うのでしょうか?

「反抗」は英語で “rebellion”, “rebelliousness” と言います。具体的な使い方を見ていきましょう。

Aさん
Rebellion was in his blood, passed down through generations of fighters.
訳)反抗は彼の血の中にあり、何世代にもわたって戦士として受け継がれてきた。

Aさん
Rebellion was not a choice but a necessity for those denied basic rights and freedoms.
訳)基本的な権利や自由を否定された人々にとって、反抗は選択ではなく、必要なことだった。

また、”rebel”には名詞「反抗者、反逆者」、形容詞「反抗する、反逆心のある、反政府の」、動詞「反抗する」の意味があります。名詞、形容詞、動詞としての”rebel”の使い方をそれぞれ見ていきましょう。

[名詞 “rebel”]
Aさん
The rebel stood defiantly against the oppressive regime, refusing to yield.
訳)反乱軍は圧政に挑戦的に反抗し、屈服することを拒んだ。

[形容詞 “rebel”]
Aさん
The rebel leader’s charisma drew followers from all walks of life.
訳)反乱軍のリーダーのカリスマ性は、あらゆる階層から信奉者を集めた。

[動詞 “rebel”]
Aさん
The workers rebelled against their exploitative employers, demanding fair wages.
訳)労働者たちは搾取的な雇用主に反抗し、公正な賃金を要求した。

“rebel”を動詞で使う場合、過去形にすると、”rebelled” と “l”を2つ重ねることに注意しましょう。

「青春」を表す英語はある?

youth

「思春期」に関連して、楽しかった中学や高校時代を「青春」と表現する人は多いでしょう。

甘酸っぱい初恋や親友との仲違いなど、青春時代を振り返ると、懐かしくて微笑ましい思い出がたくさんありますよね。

そんな「青春」を英語では一般的に”youth”と表現します。

Aさん
“Sing the praises of youth.”
訳)”青春を謳歌する”
Aさん
When I look at my yearbook, I’m reminded of my youth.
訳)卒業アルバムを見たら、自分の青春を思い出した。
Aさん
It must be nice to be young. I wish I could return to my youth.
訳)青春してるね。わたしもあの頃に戻れたらなあ。

”youth”には「若者」という意味もあり、カジュアルな場面では”lad”(男の子)や”lass”(女の子)などのスラングもよく使われています。合わせてチェックしてみると理解が深まるでしょう。

まとめ

「思春期」の海外事情をはじめ、「青春」や「反抗期」といった思春期にまつわる英語表現を紹介しました。

学校教育も家庭でのしつけも、周囲に迷惑をかけないように厳しくしてしまいがちな日本の子育て。

今回紹介した英語を使えば、言語の壁を越えてコミュニケーションを図れるかもしれません。

接し方の難しい思春期は、自立した大人になるまでの通過点のようなものです。

どっしりと広い心で、揺れ動く子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげたいですね。