イタリア南部、プッリャ州の静かな丘の上に、八角形の城があります。名前は「カステル・デル・モンテ(Castel del Monte)」。13世紀に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によって建てられました。
この記事では、そんなカステル・デル・モンテの魅力と謎を、「英語を楽しく学ぶ」視点から解説していきます。
カステル・デル・モンテとは?

カステル・デル・モンテ(Castel del Monte)は、1240年頃、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によって建てられた八角形の城塞です。イタリア南部プーリア州、バルレッタから内陸に約30kmに位置し、その独特な形と設計思想から「謎の城(mysterious castle)」とも呼ばれています。
イタリア語で「カステル(Castel)」は「城」、「モンテ(Monte)」は「山」を意味します。つまり、「カステル・デル・モンテ」は「山の上の城(The Castle on the Mountain)」という名前なのです。
皇帝フリードリヒ2世とは?
フリードリヒ2世(Frederick II)は、神聖ローマ皇帝であり、シチリア王、そして一時期はエルサレム王の地位にもありました。彼はまた、ナポリ大学を創設したことでも知られ、歴史・哲学・神学・天文学・数学・語学に精通した、まさに“ルネサンスの先駆者”でした。
彼は9か国語を話し、アラビア語にも堪能だったため、イスラム文化にも深く関わりがありました。特に有名なのが、戦争をせずにエルサレムを一時的に返還させた外交手腕です。
黄金比と八角形の建築
カステル・デル・モンテの最大の特徴は、すべてが「8」にこだわって設計されていることです。
- 八角形の中庭
- 八角形の外壁
- 八角形の塔(角ごとに1つ、計8つ)
- 各階8つの部屋
この「8」という数字は、キリスト教で「復活」や「永遠の命」を象徴すると言われています。
また、正面玄関には、人間が最も美しいと感じる比率「黄金比(golden ratio)」が用いられています。縦横の比率が約1:1.618になっており、「神の数学」とも呼ばれる美の法則が建築に生かされているのです。
訳)このデザインは黄金比に従っています。
この城の設計には、幾何学、天文学、宗教的象徴が複雑に絡み合っています。たとえば、城の建つ丘は、フランスのシャルトル大聖堂と、イスラム教の聖地メッカを直線で結んだラインの交差点上にあるとも言われています。
城の用途は?
この城が何のために建てられたのかは、実ははっきりしていません。記録によれば「Castrum(城塞)」と記されていますが、防御用にしては壁の構造や備えが弱く、戦闘には不向きです。
そのため、研究者の間では「迎賓館」や「狩猟のための別荘」、「知識人を集める場」だったのではないかと考えられています。
アクセス方法
カステル・デル・モンテを訪れるには、まずローマから南イタリアの都市バーリ(Bari)へ国内線で移動し、そこから車で約1時間。丘の上に現れる八角形の城が目に飛び込んできます。
世界遺産としての価値

カステル・デル・モンテ(Castel del Monte)は1996年にユネスコの世界遺産に登録されました。
登録理由は?
登録理由には以下のような点が挙げられます。
- 建築学的独自性(Architectural uniqueness);フリードリヒ2世の先駆的な発想を反映したユニークな建築物である
- 数学・天文学との関係性(Relation to science and astronomy)
- 複数の文化を融合したデザイン(Fusion of Islamic, classical, and Gothic elements)
覚えておきたい英会話フレーズ
カステル・デル・モンテについて話すときに使える英語フレーズをご紹介します。
訳)お城が八角形なのって、どうして?
訳)天と地の調和を表してるって説もあるよ。それに、フリードリヒ2世が幾何学を好んでたからとも言われてるね。
訳)お城にはどうやって黄金比が使われてるの?
訳)正面玄関が縦横1:1.618の比率になってるよ。自然界でもっとも美しい比率って言われてるんだ。
訳)カステル・デル・モンテにはどんな謎があるの?
訳)まず用途がはっきりしてないし、場所がメッカとシャルトル大聖堂を結ぶ線上にあるから、不思議がられてるんだよ。
カステル・デル・モンテのおすすめポイント

カステル・デル・モンテは、その美しい幾何学的構造と数々の謎に包まれた背景から、多くの旅行者を魅了しています。13世紀に建てられたとは思えないほど洗練されたデザインと、歴史的・天文学的な意味が込められている点もユニークです。
カステル・デル・モンテの楽しみ方を紹介します。
デザインを楽しむ
この城は、外観も内部も、無駄のない「幾何学的美」に溢れています。石材には、サンゴを含む石灰岩や大理石が使われており、自然光の当たり方で色合いが変化します。中庭から見上げる八角形の空は、まるで万華鏡のようです。
謎多き建造物
この城は岩の上に直接建てられており、通常あるはずの整地工事の跡がありません。さらに、城の影が春分・秋分の日の正午に八角形と重なるという、天文学的な仕掛けも。
セントユーロ硬貨
1999年から2018年にかけて発行されたイタリアの1セントユーロ硬貨には、このカステル・デル・モンテが描かれています。イタリア国民にとっても、この城は誇り高き文化遺産なのです。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
カステル・デル・モンテは、唯一無二の存在と言えるユニークなお城です。中世の皇帝が抱いた宇宙への好奇心、建築への美意識、そして宗教や文化を超えた理解と寛容の精神が、この八角形の石の建物に詰まっています。
世界遺産を英語で学ぶことで、その魅力を海外の人と共有したり、自分の視野をさらに広げたりすることができます。英語の学習が「知識を伝える楽しさ」につながり、言葉の力で世界とつながる喜びを感じられるはずです。
