レッドキャップ(Redcap)は、スコットランドとイングランド北部の民間伝承に登場する、不気味で血に染まった帽子を被る妖精(またはゴブリン)です。
一般的な妖精のイメージとはかけ離れた恐ろしい存在であり、中世の城や戦場跡に現れ、人々を恐怖に陥れました
レッドキャップの正体とは?
What is the True Nature of Redcaps?

レッドキャップは、イギリス北部の廃墟となった古城や塔、特にかつて流血の戦いが行われた場所に棲みつくとされる妖精です。彼らの最も有名な特徴は、血で赤く染まった帽子(red cap)をかぶっていること。この「帽子の赤」は、彼らが犠牲者の血を染み込ませることで保たれており、血が乾くと力を失うとされています。
そのため、レッドキャップは常に新たな犠牲者を求めて彷徨っていると信じられてきました。
レッドキャップの外見と性質
Appearance and Characteristics of Redcaps
レッドキャップの伝承に共通する姿は以下のように描かれています。
- 小柄な老人の姿
背が低く、鋭い歯を持ち、長くて鉤爪のような指をしています。 - 赤い帽子
その赤は、人間の血によって保たれており、定期的に新たな血を吸わせなければなりません。 - 鉄のブーツを履いている
重い鉄靴を履いているにもかかわらず、非常に俊敏に動くとされます。 - 残虐性と知性の両立
獰猛な存在である一方で、人間の言葉を理解し、狡猾に罠を張ることもできるといわれています。
レッドキャップの伝説と登場地域
Redcap Legends and Areas of Appearance
レッドキャップの伝承は、特にスコットランドのボーダー地方(イングランドとの国境地帯)に多く見られます。この地域は中世の間、度重なる戦争と略奪に見舞われ、血が流れることも多かったため、戦場跡に取り憑く悪霊的存在としてレッドキャップの伝説が生まれました。
有名な伝承地の一つに、スコットランドのハーミテージ城(Hermitage Castle)があります。この城は実際に13世紀から存在し、血なまぐさい歴史を持つ場所として知られています。
「世界の神話~レッドキャップ(Redcap)」をテーマにした番組や作品
Programs and Productions on the Theme of “World Myths – Redcap”
1.『ハリー・ポッター』シリーズ(J.K.ローリング)
- 登場作品:『幻の動物とその生息地』(Fantastic Beasts and Where to Find Them)
- 内容:レッドキャップは、人間の血が流された場所に棲みつく、危険な魔法生物として紹介されています。
- 特徴:身長が小さく、鋭い爪を持ち、武器で人間を襲う残忍な性格と描写されています。
- 補足:直接シリーズに登場はしませんが、ホグワーツの授業で学ぶ「魔法生物」として言及されます。
2.『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)』
- 登場作品:複数の版にレッドキャップが登場(5e Monster Manual など)
- 内容:レッドキャップは「邪悪なフェイ生物(Fey Creature)」として、呪われた地に自然発生する恐ろしい存在。
- 特徴:鋼鉄の靴、血の帽子、巨大な鎌などを持ち、非常に凶暴。
- 教育的視点:ファンタジーRPGでの神話理解や英語読解力の向上に最適。
3. TVドラマ『グリム(Grimm)』
- シーズン:シーズン2・エピソード6「Over My Dead Body」
- 内容:レッドキャップをベースにしたヴェッセン(Wesen)と呼ばれる怪物が登場。姿は異なりますが、血にまつわる伝承を背景にしたキャラクターとして登場。
- 特徴:人間社会に潜む怪物たちを描いた犯罪+神話系ドラマ。
4. 『ヘルボーイ(Hellboy)』シリーズ(マイク・ミニョーラ)
- 媒体:アメコミ/映画
- 内容:ケルトや北欧神話を元にした妖精・悪魔が多数登場。直接「レッドキャップ」という名称ではないが、似たモチーフ(赤い帽子の血に飢えた小鬼)が出てくるエピソードあり。
- 特徴:神話ベースのキャラクター解釈が豊富で、ダークなビジュアル。
5. 『The Spiderwick Chronicles(スパイダーウィックの謎)』
- 媒体:小説/映画(2008年)
- 内容:妖精やゴブリンが実在する世界で、レッドキャップによく似たゴブリンが登場。
- 特徴:子供向けだが、妖精=善とは限らないというイギリス民間伝承の精神を反映。
6. 短編アニメーション『Redcap』(イギリス)
- 制作年:2010年(学生・独立制作が中心)
- 内容:スコットランドの伝承に基づいたレッドキャップの恐怖を描いた短編ホラーアニメ。
- 特徴:アート系の作品が多く、YouTubeやVimeoで公開されていることが多い。
7. 小説『The Redcap』(Morag Joss著)
- ジャンル:サスペンス/心理ドラマ
- 内容:直接的に妖精のレッドキャップが出てくるわけではないが、タイトルと象徴的なテーマに「レッドキャップ」のイメージが用いられている。
- 読みどころ:不安や暴力の予兆を表す文化的モチーフとしてのレッドキャップの用法。
文化的背景と象徴性
Cultural Context and Symbolism
レッドキャップの伝承は、単なるホラー要素ではなく、戦争の記憶や恐怖の記憶の象徴とも解釈できます。血塗られた帽子は、過去の暴力がいまだに土地に染みついていることを暗示しているのです。
また、キリスト教文化圏における「悪」と「信仰」の対比、さらには妖精=必ずしも善ではないという中世的な価値観も浮かび上がってきます。
「世界の神話~レッドキャップ(Redcap)」に関連する英語表現
English Sentences Related to “World Myth: Redcap”

■ 基本語彙と表現
・Redcap・・・レッドキャップ/スコットランドの伝承に登場する血の帽子をかぶった邪悪な妖精
・blood-soaked cap・・・血で染められた帽子/The Redcap is known for his blood-soaked cap.
(レッドキャップは血まみれの帽子 で知られている。)
・supernatural creature・・・超自然的な存在/Redcaps are one of the most feared supernatural creatures in British folklore.
( レッドキャップは、英国の民間伝承の中で最も恐れられている超自然的生物のひとつである。)
■ 例文と応用表現
1. “Redcaps dwell in old castles and towers where blood has been shed.”
(レッドキャップは血が流された古い城や塔に棲んでいる。)
- dwell:住む(文学的・詩的な表現)
- blood has been shed:血が流された(”shed” は「こぼす、流す」の意味)
2. “They must keep their caps red with fresh blood, or they will lose their power.”
(彼らは帽子を新しい血で赤く染めておかないと力を失ってしまう。)
- keep ~ with ~:~を…の状態に保つ
- lose their power:力を失う
3. “A Redcap cannot be defeated by weapons, but only driven away by holy symbols.”
(レッドキャップは武器で倒せず、聖なる象徴でしか追い払えない。)
- cannot be defeated by ~:~では倒せない
- driven away by ~:~によって追い払われる
4. “He may be small, but Redcap is swift and merciless.”
(彼は小柄だが、レッドキャップは俊敏で容赦がない。)
- swift and merciless:素早く容赦のない
- 対象の外見と内面のギャップを強調した表現
5. “Legends say a Redcap’s hat must never dry, or he will vanish into dust.”
(伝説では、レッドキャップの帽子が乾くと彼は塵となって消えてしまうという。)
- must never ~:絶対に~してはいけない
- vanish into dust:塵となって消える
まとめ
レッドキャップは、スコットランドを中心に語られる恐ろしい妖精の一種であり、その伝承は暴力と信仰、妖精と悪霊の境界を考えさせられる存在です。
日本の妖怪や怨霊と共通する部分も多く、世界の民間信仰における「恐れの形」が文化を超えてどこか共通していることに気づかされます。
最近の子どもは叱られることがなく、怖いものが少ないようですが、レッドキャップのお話はどういう風に感じるでしょうか?
参考文献:
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