みなさんは「アンソロジー」という言葉を聞いたことはありますか?
今初めて聞いた方も、言葉だけは知っていたという方も、「正しい意味や使い方まではよくわからない」と思ったのではないでしょうか?

「アンソロジー」は、英語”anthology”からきたカタカナ言葉です。
芸術分野における作品集を指して使われることが多く、日本語では「詞華集」や「選集」とも呼ばれています。

今回は、あいまいな認識のまま使いがちなカタカナ言葉「アンソロジー」について、英語”anthology”の正しい意味と使い方を例文とともに解説していきます!

「アンソロジー」とは

「アンソロジー」とは

「アンソロジー」は、英語の”anthology”をカタカナで表記した言葉です。
作家や詩人の作品を特定のテーマや基準で選りすぐり、まとめた作品集のことを表します。

「アンソロジー」は、ほかに「詞華集」や「選集」、「佳句集」「名文集」などに言い換えることもできます。
日本最古の和歌集である「万葉集」、そして平安時代を象徴する「古今和歌集」などは、日本の「アンソロジー」の代表例です。
現代では、詩集や歌集だけでなく、小説、歌曲、絵画、マンガなど、ジャンルを問わず集めた作品も「アンソロジー」と呼ばれるようになりました。

しばしば耳にする「コミックアンソロジー」は、既に発行されているのマンガ作品の「二次創作」に位置づけられる作品集(または短編集)のことです。
「同人誌」や「同人雑誌」ともいわれ、同人(同好の士)が自己資金で、執筆・から編集、発行までを行って出版する雑誌を指します。
同人誌の一つに複数の作家が合同で発行する「合同誌」がありますが、同人誌も合同誌も、「作品集」という点では共通しており、発行者や編集者、発刊方法の違いによって呼び方が変わります。

「アンソロジー」は、おもに名詞として以下のような表現で使われます。

  • お気に入りの作家の作品が載っているアンソロジーを注文した。
  • 発刊から何十年も経って編集されるアンソロジーもある。
  • ホームページで、公式のアンソロジーが発売されると知った。
  • アンソロジーを制作するのは、卒業文集以来なのでワクワクした。
  • 短編マンガや読み切りマンガを集めたものをコミックアンソロジーが好きだ。

「アンソロジー」という言葉だけでは伝わりづらいこともあるので、その場合は、「作品集」や「厳選集」などに言い換えて表現してみてもいいでしょう。

「アンソロジー」と「オムニバス」の違い

「アンソロジー」と似ている言葉に「オムニバス」があります。
もしかしたら、「アンソロジー」よりも「オムニバス」の方がなじみがあるという方もいるかもしれませんね。

「オムニバス」は、英語で”omnibus”と表記され、特に映画やドラマといった映像作品をまとめたものを表現するときに用いられる英語です。
カタカナにすると「オムニバス映画」や「オムニバスアルバム」のように呼ばれることもあります。

a program consisting of two or more parts that have already been broadcast separately
すでに別々に放送された、2つ以上の部分からなる番組

参考:Cambridge Dictionary

「アンソロジー」が、同一テーマでまとめられた詩集や歌集を意味するのに対し、「オムニバス」は、おもに映像作品(音楽作品を含むこともある)の集まりを指して使われます。
アンソロジーは、詩や歌、俳句、小説といった文学作品には、「アンソロジー」を、映像作品や音楽作品には「オムニバス」と覚えておくとわかりやすいでしょう。

”anthology”の意味

”anthology”は、「名詩選集」「詩選」「名文選集」「論集」などを意味する英語です。
辞書では以下のように定義されています。

a collection of artistic works that have a similar form or subject, often those considered to be the best
似たような形式や主題を持つ芸術作品の集まりで、しばしば最高傑作とされるもの

参考:Cambridge Dictionary

辞書に”the best”とあることからも、「最高傑作」として表現されることが多いのが”anthology”です。
文学作品を特定の作家やテーマ、ジャンルを基準に時間をかけて厳選し、一つの本やアルバムにまとめてつくられます。

”anthology”の発音はイギリス英語とアメリカ英語で少し違います。
▶︎イギリス英語 /ænˈθɒl.ə.dʒi/(アンスォロジ)
▶︎アメリカ英語 /ænˈθɑː.lə.dʒi/(アンスァーラジ)

語尾は伸ばさず、どちらも「ジ」で終わるイメージで発音するのがポイントです。
日本語で話すようなカタカナの「アンソロジー」とは異なりますので、正しい発音を身につけておきましょう。

”anthology”を使った例文

”anthology”を使った例文

”anthology”を使った例文を紹介します。
特に詩や小説などの文学作品集を表現する際に使われるので、例文でよく確認しておきましょう。

文学作品に関する”anthology”

Aさん
I examined the cover and suspected that it might be an anthology containing the best poems of the 20th century.
訳)表紙を見て、これは20世紀の最高の詩を集めた詩集なのではないかと考えました。
Aさん
She has published an anthology of her works featuring early short stories.
訳)彼女は、初期の短編小説を収録した作品集を出版しています。
Aさん
This anthology edited by a renowned critic is a must-have for any fan of classical literature.
著名な評論家が編集したこのアンソロジーは、古典文学ファン必携の一冊です。

文学作品に限定されない”anthology”

Aさん
The anthology contains works from various artists and covers a wide range of genres.
訳)そのアンソロジーには様々なアーティストの作品が収録され、幅広いジャンルをカバーしています。
Aさん
Created by feminists, the anthology included diverse works by young and older women and was critically acclaimed.
訳)フェミニストたちによって制作されたこのアンソロジーには、若い女性から年配の女性までが参加し、批評家たちから絶賛されました。
Aさん
This anthology is a testament to her genius and provides an overview of her career.
訳)このアンソロジーは、彼女の天才ぶりを証明するものであると同時に、彼女のキャリアを総括するものでもあります。

まとめ

あいまいな認識のまま使ってしまいがちなカタカナ言葉「アンソロジー」について、英語”anthology”の正しい意味と使い方を例文とともに解説しました。

「アンソロジー」は、英語の”anthology”をカタカナ表記した言葉で、特定のテーマや基準で選りすぐった作品集のことを意味します。
”anthology”は、おもに文学作品において、特定の作家やテーマを基準にして選び抜き、一つにまとめた「最高傑作」です。
「アンソロジー」のように、カタカナと英語に大きな違いがないものがあれば、意味も使い方も全く違う言葉もあります。
解釈に迷ったときは、辞書を引いて正しい意味を確認する癖をつけておくのがおすすめですよ。

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