「サイレントマジョリティー」という言葉を聞いたことはありますか?
ときに「声なき声」や「静かなる多数派」とも称され、意見や抗議を述べない多数の民衆のことを指したカタカナ言葉です。
特に政治やマーケティングにおいて、無言で保守的な人たちの声にこそ耳を傾けるべき、という考え方を意味しています。
今回は、知っているようで知らないカタカナ言葉「サイレントマジョリティー」について、英語”silent majority”の意味と使い方を解説していきます。
「サイレントマジョリティー」の意味
「サイレントマジョリティー」は、英語の”silent majority”をカタカナで表記した言葉です。
”silent”の「口数が少ない」「無口」といった意味と、”majority”の「多数派」「多数党」という意味を組み合わせて「声なき声」や「静かなる多数派」とも言われています。
反対意見の表明や抗議などをあえてせず、沈黙を貫き、保守的な態度を示すような大多数の人たちを指したのが「サイレントマジョリティー」です。
政治やマーケティングなど経済界でよく使われる言葉ですが、商品に不満があってもクレームを言わない消費者や、現状に満足していないものの声をあげない人たちのことも「サイレントマジョリティー」と呼ばれます。
マーケティングでは、全体の9割以上を占めるといわれている「サイレントマジョリティー」の声こそが重要とされています。
商品やサービスに不満を感じていても、多くの人たちが声を上げず、黙っているのが現実ですが、そんな声なき声に耳を傾けて反映させることが、やがて大きな利益を生むことにつながるのでしょう。
”silent majority”の意味
”silent majority”は、声高に自分の意見を唱えない一般大衆を意味する英語表現です。
「物言わぬ大衆」「声なき声」などともいわれ、現状に満足していようといまいと、自ら声を上げようとはせず、黙っている多数の人たちを指します。
辞書では以下のように定義されています。
- a large number of people who have not expressed an opinion about something
何かについて意見を表明していない多数の人々- the ordinary people in a country, who are not active politically and who do not make their opinions known
政治的に活動的ではなく、意見を表明しない国の一般の人々
”silent majority”は、1969年、ベトナム戦争真っ只中のアメリカで、大統領に就任したリチャード・ニクソンが演説中に使ったことがきっかけで世界に知れわたりました。
声をあげない民衆が戦争に反対していると理解していたニクソン大統領は、多くの支持を得ることに成功しました。
大統領の演説で用いられた言葉ということで、日本でも「政治家は大衆の意見に耳を傾けるべきだ」という考え方として広まりました。
”silent majority”は、イギリス英語とアメリカ英語で発音に若干違いがあります。
▶︎イギリス英語 /ˌsaɪ.lənt məˈdʒɒr.ə.ti/ 「サイレントゥマジャーゥリティ」
▶︎アメリカ英語 /ˌsaɪ.lənt məˈdʒɔː.rə.t̬i/ 「サイレンッマジョーゥリリィ」
カタカナの「サイレントマジョリティー」のようには読めないため、英会話では注意して発音するようにしましょう。
”silent majority”を使った例文
積極的に自分の意見を唱えない多数派を意味する”silent majority”の例文を紹介します。
訳)声なき声に従えば、みんなトラブルに巻き込まれてしまいます。
訳)彼らは、自分たちの将来に重大な影響をおよぼす問題でさえ、サイレントマジョリティーの声を聞こうとはしません。
疑問形の例文も確認しておきましょう。
訳)サイレントマジョリティーは沈黙していないかもしれないが、実際、彼らの支持は彼らの反感ほど声高ではないでしょう?
訳)サイレントマジョリティーであるわたしたちは、自分たちがされていることに対して、どうすれば効果的に抗議の意思を表明できるのでしょうか?
”silent majority”の対義語
積極的な発言行為をしない多数派”silent majority”に対して、自分の意見を声高に表明する少数派も存在します。
自分の考えや意見、不満などを直接伝えられる少数派は、”minority”(マイノリティー:少数、少数派)を含む以下のような英語で表現されます。
vocal minority
”vocal minority”(ボーカルマイノリティー)は、「主張や意見を遠慮なく表明する少数派」「大きく声をあげる少数者」のことを意味した言葉です。
”vocal”には、「言葉に表す」「声高に主張する」といった意味があり、自分の意見を積極的に主張する人たちを指して使われます。
あくまで自分の意見をはっきりと主張する、という意味合いが強く、批判的なニュアンスは含みません。
noisy minority
”noisy minority”(ノイジーマイノリティー)は、批判的・攻撃的な態度で意見を表明する「口うるさい少数派」のことを指した言葉です。
”noisy”には、「やかましい」「うるさい」といった意味があり、論理性に欠ける主張、まるでノイズ(雑音)のように騒がしく抗議してくる小集団を表して使われます。
いわゆるクレーマーやモンスターペアレンツなどが一例として挙げられます。
loud minority
”loud minority”(ラウドマイノリティー)も同じく「やかましい少数派」の意味で使われる表現です。
”loud”には、「声が大きい」「うるさい」といった意味があり、自分の主張や意見を大きな声でしつこく主張してくるような少数派を指しています。
”noisy minority”(ノイジーマイノリティー)と同様に、クレーマーやモンスターカスタマーなどネガティブな表現に使われます。
まとめ
聞いたことはあっても、意外と知らないカタカナ言葉「サイレントマジョリティー」について、英語”silent majority”の意味と使い方を解説しました。
「サイレントマジョリティー」は、英語の”silent majority”をカタカナで読んだ言葉です。
”silent”は「口数が少ない」「無口」、”majority”は「多数派」「多数党」を意味しており、
組み合わせて「声なき声」または「静かなる多数派」とも呼ばれています。
集団の大多数を占める「サイレントマジョリティー」は、政治はもちろん、マーケティング業界では非常に重要な考え方とされています。
出る杭は打たれるといった価値観が根強い日本では、「サイレントマジョリティー」が圧倒的な力を持っていますよね。
良くも悪くも、わたしたちの生活に大きな影響をおよぼす「サイレントマジョリティー」。
対義語の「マイノリティ」も一緒に覚えて正しく使い分けていきましょう。
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