私はアメリカのアリゾナ州の語学学校に通っており、サウジアラビアやドバイなどの中東系、中国、メキシコ、さらにはアフリカなど様々な国の人と一緒に英語を勉強しています。
なかには語学学校に通う必要があるのか疑問に思うほどに英語が達者な人もいますが、そういう人は英語のテストが苦手なため勉強しているといった感じ。私が通っている語学学校の生徒は、基本的には「話す」ことはまったく問題ない人ばかりです。
日本人は英語のテストの成績は抜群にいいのですが、プレゼンテーションやディスカッションが圧倒的に苦手な傾向があります。もちろん、私も例外ではないのですがクラスメイトからすれば「テストが出来るのに英語を話せないのはおかしい」と映るようで、いつも不思議がられています。
今回は、私の実体験を通じて見えてきた各国の英語力について、主に勉強方法にフォーカスして紹介したいと思います。
なぜ、英語能力に差が出るのか、日本以外の国の人はどのように英語を勉強しているのか、なぜ英語が上手なのか、色々気になる部分を掘り下げてみましょう。
結論は「読書と熱意」です!
矛盾に陥る日本人
まず始めに、日本の英語教育についてですが、日本の英語教育の質は世界でもトップクラスと断言できます。日本の中学や高校などの教育課程で学ぶ英語は、アメリカに来ると分かりますが、十分すぎるほど網羅されており、仮に日本の英語教育すべてをこなせれば英語圏の生活で困ることはないほど。
特に英語の文法に関しては、中学3年間で習うことさえ理解し、アウトプットできるようにしておけば、ほぼどの教科書も読んで理解が可能です。ただし、単語力は中学レベルでは間に合いませんので、単語力を向上させる努力は常に求められると思っていいでしょう。
中学3年間で習う英語をしっかりものにしていれば、アメリカで会話に困ることはありません。特にクラスメイトや授業などで使われる会話の内容は、簡略化された英語がほとんどで、決して難しいことはありません。日本の中学生英語で習ったことを口にするだけでコミュニケーションは出来ると考えいいと思います。それくらい、日本の英語教育の質は高いのです。
では、なぜ日本人は英語が苦手なのでしょうか。誰もが中学英語を3年間やってきており、なおかつその英語教育の質は世界でもトップレベル。それにもかかわらず、英語が話せないのは、ごく単純に「口に出さないから」さらに「聞く機会が少ないから」に尽きるでしょう。
いくらインターネットが発達したとは言え、日本で生活する限り英語を使う機会は、意図的に作りでもしない限りあまりありません。英語を聞く機会がないということは、口にする機会もないということ。この環境が遠因となって、英語が苦手という現象になっているだけです。
私がアメリカに来て感じたことは、正しい英語であろうが、間違っていようが、英語を口に出せばなんとかなるということ。さらに、相手にゆっくり喋ってもらえばこれまたなんとかなるのです。このことは英語の基礎学力が身に付いている証拠。私はこの自分なりの推測を前向きに考えて、とにかく口に出すことを実践しています。
この心がけが影響してなのか、クラスのプレゼンテーションの評価も高く、クラスメイトと比較して言葉数こそ少ないのですが、的確で正確な英語を使えていると言われます。
このことから、「日本人は英語が苦手」なのではなく「英語を口にせず、耳にしていないだけ」という実情が分かっていただけるかと思います。実際に日本人の英語と、中東系やアフリカ系の人の英語を比較すると、日本人のほうが英語の正確さは格段に上でしょう。
日本人はしっかり英語を勉強できています。ごく単純に、英語を話さず、聞く機会が少ないだけなのです。
中東系の英語学習法
私のクラスメイトにはサウジアラビアやドバイなど中東系の学生が多いのですが、彼らの英語能力は極めて高く、物怖じしない性格と、自己主張の強さが牽引するかたちで、弾丸のように英語を操ります。しかし、クラスのレベルは7段階中の3や4といったところ。
英語を話せるのに、学校のクラスレベルは低いという矛盾が生じているのです。日本人とは真逆で、話せるけどテストができない。日本人は話せないけど、テストはできる。両者、悩ましい問題ですね。
私がサウジアラビアから留学しているクラスメイトに「なぜそのように英語が達者なのか?」と尋ねたことがあります。
すると、彼らの国では学校の授業すべてが英語で行われるらしく、テキストも先生もすべてイギリス英語で進められるため、母国にいながらして、一日の大半は英語を聞き、英語を話すのだそう。
学校にもよるそうですが、中東諸国では英語で授業をするのがごく当たり前らしく、英語を使わざるを得ないから、結局、英語を話せるようになるようです。
ただし、英語の文法は滅法弱く、びっくりしてしまうほどテストで点が取れません。彼らのようには英語が話せない私が80点取れているのに、英語が達者な彼らが50点も取れないのです。
さらに、彼らに「どのような勉強法で英語を勉強しているのか?」と尋ねてみました。すると、基本的には勉強しないのだそう。この回答には驚きましたが、無理もありません。なぜなら、学校にいる間はずっと英語なのですから、わざわざ家に帰ってから英語を勉強しようとは思わないのでしょう。
「学校に通うことそのものが英語の勉強」といった感じでした。なかには、自宅で英語の勉強をするという意味で英語の本を読むという人もいますが、中東系の人たちにとって英語は勉強するものではないというのが答えでした。
日本とは大きく環境が異なるため、中東系の英語学習スタイルは真似できそうにないですね。
中国人はシャドーイングに必死
私のクラスメイトには中国から来ている学生も多く、中国語と英語の発音の違いに苦戦している人がほとんど。そもそも、中国と日本の英語力の差はほとんどないと感じます。むしろ、中国のほうが日本よりもコミュニケーションや文法などは上かもしれません。
中国から来ている学生は、ほとんどの人が積極的で友好的なため、日本人よりも遥かに英語を口に出している量が多いと思います。ただし、発音だけは本当に苦労している様子で、プレゼンテーションの評価ではいつも「聞き取れない」という厳しい評価を受ける人が大半。
そんな中国人に「どのような勉強法で英語を勉強しているのか?」と尋ねたところ、テキストを買って文法を勉強したり、本を読むことを続けているとのこと。日本人同様に勉強熱心で、英語を学習することへの気迫を感じるほどです。
さらに中国人の留学生に共通している勉強法が「シャドーイング」で、インターネットの英語の動画を再生しながら、動画に合わせてまったく同じことを発音するという方法。日本でもごく当たり前の勉強法なのですが、みんなシャドーイングを頑張って発音を矯正しているようでした。
加えて、中国国内では視聴できないYouTubeなどを使って、英語のプレゼンテーションが題材の「TED」を観たりして、英語耳を鍛えているようです。中国人留学生が英語の勉強法として取り入れていることは、日本でもごく一般的な方法ですが、ひとつ言えることは「みんな熱心」ということでしょう。
マンガを活用するアフリカ系
私のクラスメイトにはマダガスカルなどアフリカエリアからやってきた人もいます。彼は中東系の学生とほとんど同じで、英語を話すこと、聞くことに関しては一切問題なく、ネイティブと言ってもいいほどのレベル。
しかし、文法やエッセイなどのテストになると点数が取れないため、アメリカで学生生活を送るのはなかなか難しいようです。マダガスカルはフランス語圏なので、フランス語と英語が流暢な彼は、幼い頃から弁護士の父親から英語を教えてもらっていたそうです。
さらに、独学で「日本のマンガ」を使って勉強していたらしく、フランスで流行している日本のマンガの英語版を手に入れて、マンガを読みながら英語を習得していったのだとか。
そのため、ドラゴンボールやNARUTO、ワンピースなどは話を完全に理解しており、マンガ内で使われる台詞を英語で理解しています。マダガスカルの彼の勉強法法は意外にも「日本のマンガ」でした。
ちなみに、フランス語に翻訳されたマンガもあるようですが、英語版を選んだのは父親からの勧めだったそうです。マンガを使って勉強した彼の英語は、どことなく子供っぽく、短いセンテンスになりがちのため、アカデミックな場面ではやや物足りない印象。
我々日本人も、慣れ親しんだマンガの英語版で勉強してみるのもいいかもしれませんね。
各国共通の勉強法は読書
私が通っている語学学校の学生たちに共通している英語の勉強法は「読書」です。なかにはマンガを読むというケースもありますが、いずれにせよ英語を読むということは重要なようです。
実際に語学学校の先生たちは口を揃えて「読書」の重要性を説いており、関係性が少なそうなオーラルコミュニケーションの授業でも読むことの大切さを教え込まれます。
そのなかでよく言われていることは、フィクションなどの物語系の本では英語の「時制」が身に付きやすいと言われ、ノンフィクションの本を読むとボキャブラリーが増えていくとされています。
よって私が通っている語学学校では、英語の文法が苦手な人は、ごく一般的な物語の本を読むことを奨められ、語彙力を向上させる必要がある人は新聞などの経済欄を読むことを勧められています。
日本でも有名な「ペンギンリーダーズ」はアメリカでも一般的で、英語を学習する人にとってマストアイテム。6段階のレベルに別れているので、自分に合ったレベルを選べるため便利です。私の語学学校でもペンギンリーダーズが採用されており、授業の課題として使われるほど。
事実、週に1冊必ず読むということ3ヶ月続けた学生たちの成績は、リーディングスキルを始めライティングやオーラルコミュニケーションなどすべて向上したらしく、読書の有効性を証明しています。
アメリカで学生をする限りは必ず図書館を利用できますので、ぜひ特権を活かして読書を継続してみましょう。
まとめ
私のまわりの留学生たちが英語を勉強している方法は、ほぼ日本と同じようなことばかりでした。特別なウェブサイトや本があるわけでもなく、特別なテクニックを使っているわけでもありません。
そのようななかで、各国の勉強法に共通していることが「読書」です。目に見えて効果が出てくるわけではなく、時間もかかるため敬遠しがちですが、日々読書を続けていると、知らぬ間に英語力が蓄積されていき、脳のなかが英語を中心にした構造になるようです。
さらに、各国の勉強法に共通しているのは「熱意」でしょう。どんなことでも習得するには熱意が必要です。語学学校でメキメキと英語力を向上させている人は、やはり熱意があり積極的。
これらのことから、どの国で育っていようとも英語を習得するためには「読書」をすることと、さらに「熱意」を持って取り組むということが重要であることが分かりました。
1年以上アメリカに住んでいながら、なかなか英語が上達しない私も、彼らのように熱意を持って、もっと読書を続ける必要がありそうです。