このシリーズでは、英語を短期間で習得するための様々な方法を紹介しています。英語を勉強するのが久しぶりな方、また、本格的に英語を勉強するのが始めての方はまず初めに「初級編」「中級編」をご覧ください。
今回は上級編その1ということで、既に日常会話程度は英語が話せるくらいのレベルの方向けに、ここから更に上達を目指すにはどうすれば良いのかを伝授したいと思います。
上級編に共通するのは、英語を学んでいる目的に出来るだけ近いことをしてみることです。カテゴリー別に具体的に説明していきましょう。
ボキャブラリーの追加と復習
中級編で紹介した単語集とアプリをコツコツ続けてきた場合、相当数の単語が身についていると思います。
上級者におすすめするのは、アプリを使った単語の勉強は続けながら、単語集を専門的なものに切り替えることです。ビジネス用語、専門学術的用語(医学、工学、スポーツ学、経済学など)、試験対策単語集(TOEFL、TOEIC用)など、自分の目的に沿った単語集を購入し、アプリと並行して始めてみましょう。
すると、驚くほど既に知っている単語があったり、または知らない単語であっても、同義語や反対語を知っていたり、単語の作りからなんとなく意味が予測できたりなど、英語を勉強し始めた頃とは違った感覚に陥ると思います。これは明らかに英語力が伸びている証拠です。1冊ベーシックな単語帳を網羅し、アプリで毎日単語クイズをしていると、ボキャブラリーの基礎が確実に形成されます。特にアプリで行う復習作業はとても効率が良く、単語をただ頭に詰め込むだけではなく、綴りの確認や、文章との組み合わせなどの応用を同時に学ぶことになるので、自分が思っているよりも単語力が身についているはずです。
2冊目の単語集を始めても、あまり1冊目を勉強した時と感覚は変わらない場合は、もう一度1冊目の復習をしてみましょう。全てのページを見直すのは大変ですが、チャプターごとのクイズや、巻末の復習テストなどを全てやってみるなど、自分の理解しているレベルを把握するところから始めます。テスト結果で苦手な単語や傾向が浮き出てきたら、それらを中心に復習し直しましょう。また1冊目の復習をやり直すとなるとモチベーションが上がらないかもしれませんが、この復習作業をするだけで、2冊目の進み具合が大分違ってくるはずです。
2冊目の専門用語は1冊目よりも難しい単語が多いはずなので壁にぶつかることも多いかもしれませんが、単語集・アプリ・復習テストの繰り返しを徹底すれば必ず単語力がレベルアップします。1冊目同様、根気よく続けていきましょう。
リーディング練習用の教材をレベルアップする
ネットの英語ニュースを読むのが習慣になり、児童書などの中級者向けの洋書を読み終えた後は、リーディングで使用する媒体も専門的で、より難易度の高いものに切り替えます。ただ、ネットなどのニュースを読むという習慣を継続することが第一なので、いきなり難しい内容のものに切り替えて、難しすぎて読む習慣が崩れてしまったりしないように注意が必要です。例えば、経済に関連する記事をCNNのヘッドラインなどで読んでいる場合、同じトピックの考察記事をNew York Timesなどのコラムが多めのサイトで探し、長めの記事を読んでみるなど、小さいステップから踏んでいきます。
洋書も同様に、前回読んだ作品よりも難易度が少し高めのものを選びましょう。ファンタジーなどのフィクションが元々好きな人は、少し難しめの児童書(ハリーポッターシリーズなど)を手に取ってみたり、試験対策で英語の勉強している場合はTOEICやTOEFLの問題集や参考書にある例文を端から端まで読んでみたり、ビジネス英語を学んでいる人は紙媒体の経済系の雑誌を海外の雑誌コーナーで購入したりするなど、目的に合わせてピックアップしましょう。
リーディングの練習はあくまで読む力を付けるためのものなので、読解力を付けることも大切ですが、まずは無理なく読み続けられるものを選ぶことが先決です。多少理解に苦しむ程度であればいいですが、何度読んでも全く意味が分からないような内容の場合、単語や表現の知識が足りていない場合が多いので、それらをレベルアップさせてから再度挑みましょう。
アマゾンジャパンの洋書のセクションで、自分の英語の読解力に合った洋書を探すことができるツールがあるので、自分のレベルに合った洋書選びに困ったら是非使ってみましょう。
アマゾン 英語 難易度別リーディングガイドの検索
実践的なライティングの練習をする
日記や簡単なエッセイなどを書く練習に慣れてきたら、次は本格的なエッセイやビジネス文書など、実践的なライティングの練習をします。
TOEICやTOEFLなどの試験対策
試験対策用にライティングを練習する際は、当たり前ですが試験対策用の参考書などをベースに進めるのが一番です。試験の種類によって出題の内容や傾向が違うので、試験対策用の勉強は必ずしましょう。今回は、TOEICのOpinion Essayの練習問題を使った基礎的なライティング試験問題攻略法をお教えします。
例題:
Write an opinion essay
Directions: Read the question below. You have 30 minutes to plan, write, and revise your essay.
Question: There are many ways to find a job: newspaper, advertisements, Internet job search Web sites, and personal recommendations. What do you think is the best way to find a job? Why? Give reasons or examples to support your opinion.
(参照:IIBC ETC TOEIC Speaking & Writing Tests Sample )
エッセイ全体の構成を考える
英語でエッセイを書く際に一番気を付けなければいけないのが全体の構成バランスです。
簡潔で、明確に、主張するポイントをしっかり捉える必要があります。
私がエッセイの練習中に使用していた黄金のテンプレートがこちらです。
<英文エッセイテンプレート>
- 導入部分で簡単に結論を述べる
- 事例などを用いて持論を広げる
- 冒頭で述べた結論を最後に改めて総括する
逆に、1. 前置き→2. 事例→3. 結論のパターンの方が、序盤から少しずつ結論に歩み寄る形でドラマティックな流れができるので、日本語でエッセイ等を執筆する際には向いていると思います。
ただ、このパターンを英語のエッセイに適用してしまうと、ぼやけた、分かりにくい文章になってしまいがちです。特に試験向けのエッセイはとにかく何を言いたいのかをはっきり簡潔に書くことが重要なので、冒頭で簡潔に結論を提示する癖をつけましょう。
解答例
≪導入≫
Online job search is becoming popular more than ever amongst job seekers today. Internet job search gives both candidates and corporations flexibility and convenience. In this modern age, job markets move quickly, due to a high-level competition and a higher turnover rate. Both job seekers and hiring managers are looking for a platform where they can reach out to one another in a most efficient way possible. Newspapers, advertisements and other traditional forms of recruitment listings have limitations when it comes to reaching out to broader demographics in a quick manner.
訳文:今日、求職者の間ではオンラインでの仕事探しがかつてないほど人気になっています。インターネットによる求職活動は、求職者と企業の双方に柔軟性と利便性をもたらします。現代では、ハイレベルな競争と離職率の高さにより、求人市場は素早く動いています。求職者も採用担当者も、可能な限り効率的な方法で互いに連絡を取り合えるプラットフォームを探しています。新聞、広告、その他の伝統的な募集要項では、より幅広い層に迅速にアプローチするには限界があります。
- turnover rate: 離職率
- efficient way:効率的な方法
- demographics:人口統計
(解説)
冒頭の部分で、ネット上で仕事探しをすることが主流になってきていることを述べ、企業と求職している人の双方が求めているものは何かを説明しています。
≪事例1≫
From candidate’s perspective, online job boards help them save time to search exactly what they are looking for, by using filters and keywords. Also, some websites provide useful information such as how many people have already applied to the position to gauge the competitiveness of the job.
訳文:求職者の視点から見ると、オンライン求人情報サイトは、フィルターやキーワードを使用することで、探しているものを正確に検索する時間を節約するのに役立ちます。また、ウェブサイトによっては、その求人の競争力を測るために、すでに何人がそのポジションに応募しているかといった有益な情報を提供しているところもあります。
(解説)
求職者からの視点から、ネットを活用した仕事探しのメリットを述べています。
≪事例2≫
Online job marketing offers numerous advantages to corporations as well. First: cost efficiency. The average cost of online job advertisement is significantly lower than publishing ads on newspapers and choosing other traditional outlets. Second: time saver. Unlike traditional advertisements in a paper format, the online job board is easy to manage. Companies can make changes to a listing in a matter of a second, and they can open and close the position whenever needed. Lastly, integrated functionality is a big advantage. Some of the online job boards or in-house career websites could facilitate different functionalities such as screening test, compliance agreement, and employee referral tracking. These additional functions are almost impossible to integrate into traditional platforms, however, online job marketing made it possible.
訳文:オンライン・ジョブ・マーケティングは、企業にも多くのメリットをもたらします。第一に、コスト効率。オンライン求人広告の平均コストは、新聞に広告を掲載したり、他の伝統的なアウトレットを選択するよりも大幅に低くなっています。二番目に時間の節約。紙媒体による従来の広告とは異なり、オンライン求人広告は管理が簡単です。企業は掲載内容の変更を一瞬で行うことができ、必要なときにいつでもポジションを空きにしたり閉鎖にしたりすることができます。最後に、統合された機能は大きな利点です。オンライン・ジョブ・ボードやインハウス・キャリア・サイトの中には、スクリーニング・テスト、コンプライアンス同意、従業員紹介のトラッキングなど、さまざまな機能を利用できるものもあります。こうした追加機能を従来のプラットフォームに組み込むことはほとんど不可能でしたが、オンライン・ジョブ・マーケティングはそれを可能にしました。
(解説)
こちらでは逆に企業側の視点から、ネット上で求人をする際の利点を説明しています。
≪総括≫
Overall, online job search surpasses any other choices out there, from both end user’s perspectives. Traditional platforms will not disappear completely. However, it is certain that the online platform will continue to be the mainstream and has more potentials for growth.
訳文:全体として、オンライン求職は、エンドユーザーの両方の観点から、そこにある他の選択肢を凌駕しています。伝統的なプラットフォームが完全に消滅することはないでしょう。しかし、オンライン・プラットフォームが今後も主流であり続けることは確かであり、より大きな成長の潜在的可能性を秘めています。
(解説)
最後に、オンライン求人が双方の利用者の視点からみて優れていることを示し、結論づけています。
今回の例のように、段落ごとに書く内容をはっきりさせると、読み手に分かりやすく伝わります。最初に「導入」で簡単に結論を述べ、次に「事例」を挙げます。事例を挙げる際に、いくつかの視点がある場合は、それぞれの視点から事例を挙げていくと、読む側にとっても分かりやすいです。そして最後に「結論」を持ってきます。
「結論」はそれまで述べたことの「総括」ですから、In conclusion, や Overall, という表現を最初に持ってくることが多いです。「結論」部分で、「導入」で述べたことを全く同じように繰り返す人がいますが、「総括」になるように「導入」とは少し表現を変えて、うまくまとめるように努めましょう。この例題でも、「結論」の部分で、第一文に “online job search surpasses any other choices”「オンライン求職は、他の選択肢を凌駕しています」と明確に述べています。”surpass”「凌駕する」は be better than … のパラフレージング(言い換え)に使える表現ですので、覚えておくと使う機会があるかもしれません。”outweigh”も、「〔重要度や価値が~より〕上回る、勝る」という意味でパラフレージングするときに使えます。
譲歩して認めることを述べた後に、”However, …”として、一番伝えたいことを述べるという書き方も、「結論」部分でよく使われます。
最初のうちは文章の構成バランスに違和感を感じるかもしれませんが、いくつかトピックを選んで練習してみると慣れてくるはずです。
直接的で簡潔な表現を多用する
英文のエッセイを書く際は、少し直接的過ぎるかな、と思うくらいのダイレクトな表現を使うように心がけましょう。日本語の丁寧さを表そうとすると、曖昧で分かりにくい文章になってしまうので、回りくどい文章を削って簡潔な文章になるように注意すると、すっきりと読みやすい英文エッセイができます。
具体例として、上記の [総括] の部分に再度目を通してみてください。
(解説)
解答例の総括の部分では、”certain” など、かなり強めで直接的な表現が使用されていて、後半部分も、「潜在的可能性l (potential) があるかもしれない」というような曖昧な表現ではなく、「潜在的可能性がある」と、はっきり結論を述べています。potentialという単語自体が「潜在的可能性」という意味なので、そこで少し曖昧さが入っていますし、動詞の部分を「かもしれない」としなくてもいいとも言えます。
あまり良くない例文
I believe that online job search is better than any other choices because of numerous reasons stated above. Although traditional platforms might not disappear completely, the online platform has more potentials to develop in the future in my opinion.
訳文:
私は、オンライン就職活動が他のどの選択肢よりも優れていると信じています。従来のプラットフォームが完全に消滅することはないかもしれないが、オンラインプラットフォームは将来的にもっと発展する可能性を秘めていると私は思います。
先ほど紹介した[総括]で述べていることと、同じような内容のことを述べていますが、回りくどく感じられます。”I believe”や”in my opinion”といったフレーズは、こういったライティング試験問題に答える際に使いやすくてよく使われますが、状況によっては省いてしまった方がすっきりとした文章になることもあるので、全体のバランスをみて使うようにしましょう。
以上、試験対策用のエッセイの攻略でした。
こちらはあくまで筆者個人の見解なので、実際の試験に挑む際は専用の参考書などもご参照下さい。
訳)試験対策用のエッセイライティングでは、導入、事例、結論というテンプレートを使うと便利です。
訳)テンプレートを使うのは便利だと分かりましたが、テンプレートの各パートで使える便利な表現なども覚えると良さそうです。
ビジネス用クライアントメール練習
日本語メールを英語で書き直してみる
社内・社外を問わず、英語を使用したコミュニケーションが日常化している企業も増えてきていると思います。英文でメールを書く練習をする際は、実際に日本語で書いたメールを、英語圏の人向けに送るつもりで書き直してみるのがおすすめです。
日本語クライアントメール例
ABC社 鈴木様
平素よりお世話になっております。A to Zソフトウェアの田中です。
XYZアプリケーションの納期の件ですが、前回の打ち合わせで追加が決定された機能を作成する時間をエンジニアと共に計算したところ、約3か月ほどの猶予が必要であると確認しました。つきましては、納期の時期は予定していた年末ではなく、来年3月末(第一四半期末)となりますが、ご了承願えますでしょうか。
ご理解頂けるようでしたら、こちらから新しい契約書を送らせて頂きます。
以上、ご連絡お待ちしております。
A to Zソフトウェア 田中
英語クライアントメール例
Hi Mr. Suzuki,
I hope all is good with you. This is Tanaka from A to Z Software.
Regarding the delivery of XYZ application, I sat down with our engineers to calculate a new time frame of our project. After adding some of the new functions we discussed at our previous meeting, our estimate shows that it will take three additional months to deliver a finalized product.
Would you agree to change the delivery date of this product from the end of this year to the end of March next year? (End of the first quarter in 2018)
Once you agree to the change, I will send a revised contract to you shortly.
Thank you for reading this e-mail. I’m looking forward to hearing from you.
Regards.
Tanaka
訳文
鈴木様
すべてが順調であることを願っています。A to Z Softwareの田中です。
XYZアプリケーションの納品に関して、私はエンジニアと一緒にプロジェクトの新しい時間枠を計算しました。前回の会議で議論した新機能のいくつかを追加した後、最終的な製品を納品するまでにさらに3ヶ月かかると試算しています。
この製品の納期を今年末から来年3月末(2018年第1四半期末)に変更することに同意してくださいますか?
変更にご同意いただけましたら、近日中に修正した契約書をお送りいたします。
本メールをお読みいただきありがとうございます。ご返信を楽しみにしています。
敬具
田中
まとめ
ふだん自分が書いている内容を基に英文メールの練習をすると、自分の言いたいことや伝えたいことがはっきりしているので、全く知識のないトピックを使って練習するよりも挑戦しやすいと思います。身近なトピックから、英文メールを書く練習をしていくことをおすすめしたいです。
また、英語に書き直す際に気を付けたいのは、「そっくりそのまま英語に訳す」練習とは少し違うということ。日本語のメールを基に英語に書き直すとはそういうことじゃないの?と思うかもしれませんが、直訳の練習とは違います。
英語に書き直すプロセス中に、「この部分はこう言い換えた方が英語だとしっくりくる」、「ここにはもう少し説明を付け足した方が分かりやすいかも」など、英語でコミュニケーションを取る際に気を付けるべき点を学ぶ練習でもあるので、なるべく直訳は避け、ネイティブが読んで自然だと感じられる文章を目指しましょう。
以上、上級編その1でした。次回はシリーズ最終回となります!