形容詞とは一体何なのか?

英語を身に付けるうえで、必ず理解しておかなければならないものの一つに形容詞があります。形容詞というのは、物の状態や性質などを文字通り形容するために用いられる単語のことで、他者とコミュニケーションを取る際にはなくてはならない重要な概念です。
我々が言葉を使って何か物事を表現する時には、ほとんどの場合において人や物、事といった名詞に関する話題がメインとなります。例えば、人であればMr. Smith(スミスさん)、物であればapple(リンゴ)、事であればpicnic(ピクニック)といった具合です。もっとも、ただ単に名詞を挙げるだけだと、いったい何を言いたいのかが正確に相手に伝わりません。スミスさんは丁寧な人であるということを伝えたいのであれば「丁寧な」という意味を表す形容詞であるpoliteやgentleを一緒に使用する必要がありますし、リンゴが赤いと言いたいのであれば「赤い」を意味するredを用いなければこちらの意図を相手に理解してもらうのは困難となるのです。このように、形容詞は表現の幅を大きく広げ、自分が伝えたい内容の微妙なニュアンスを他者に伝えるのに不可欠な単語であると言えるでしょう。
なお、形容詞と似た概念に副詞がありますが、形容詞が名詞の状態などを説明するものであるのに対し、副詞は動詞や形容詞の状態などを説明するものであるという点で両者は異なっています。例えば「ゆっくりとした動き」と「ゆっくり動く」という2つの表現は一見すると同じ意味に見えるかもしれませんが、前者では「ゆっくりとした」という形容詞が「動き」という名詞の状態を表しているのに対し、後者は「ゆっくり」という副詞が「動く」という動詞の状態を表しているのです。これは、英語の場合でも同様であり「ゆっくりとした動き」は「slow action」、「ゆっくり動く」は「slowly act」となり、それぞれslowは形容詞、slowlyは副詞として扱われます。

英語における形容詞の役割とは?

洋の東西を問わず、形容詞の役割は、名詞の状態や性質を表すという点にあり、これは英語であっても変わりません。もっとも、日本語では、形容詞は名詞の前に置かれる場合がほとんどであるのに対し、英語の場合は形容詞の場所は必ずしも名詞の前だけというわけではありません。そこで、以下では英語における形容詞の使われ方について、少し掘り下げて見ていくことにしましょう。

名詞を前から修飾する場合

形容詞のもっとも一般的な使われ方は、名詞の前においてその状態などを表すために使用するというものです。先ほどの例でいうと「赤いリンゴ」を表す「red apple」などが典型的な事例で、形容詞の次に名詞が続くという流れで使われます。日本語と同じ使用方法ですので、多くの日本人にとっては、それほど違和感はないのではないでしょうか。また、このように名詞を前から修飾することによって、話の対象をより絞りこめるようになります。appleというだけでは、聞き手は世界中にあるありとあらゆるリンゴを想像しながら話を聞かなければなりませんが、red appleと言えば、そのうちの赤いものだけにイメージを絞り込めます。さらに、red and sweet appleというように、複数の形容詞を使えば、赤いリンゴであって甘いものについて話そうとしているのだということが相手によりクリアに伝えられるでしょう。
なお、形容詞と名詞を組み合わせる場合は、以上で説明したように形容詞が先に来るのが原則ですが、これには一部例外あるという点に注意しなければなりません。それは、somethingやanything、nothingといった単語の状態を表すために形容詞を使用する場合です。これらの単語も名詞ではあるのですが、他の名詞と異なり、形容詞を付ける場合は後ろに着けるというのがルールとなっています。そのため「何か新しいもの」と言いたいのであれば「something new」という必要があるのです。もし、間違って「new something」と言ってしまっても、相手がネイティブであれば意味を理解してもらえるはずですが、英語の表現としては不正確ですので、正しい順番で話すように心がけるようにしましょう。

be動詞に続けて用いる場合

形容詞のもう一つの使い方は、isやareといったbe動詞の後ろに置いて使うというものです。学生時代に英文法の授業で習った経験があるという人も多いはずですが、英語の文章を構成する要素として、主語、動詞、目的語、補語という4つがあります。それらのうち少なくとも主語と動詞は正しく文章を作る際には不可欠とされているため、形容詞を名詞の前に置くだけでは文章として未完成です。「リンゴが赤い」ということを説明したいのであれば、単にred appleというのでは不十分で、appleとredを結びつける動詞が必要になるのです。このような場合に、名詞と形容詞をつなぐ役割をする動詞がbe動詞と呼ばれるもので、「apple is red」や「apples are red」といったような形で用いられます。ここでは、appleまたはapplesが主語で、isやareが動詞、redは補語という位置づけになります。以上から分かるように、補語として使うことができるというのも形容詞の持つ役割の一つなのです。

形容詞を使った具体例とそこから見えてくる意味の違い

では、ここからは実際に形容詞を使った具体例を見ていくことにしましょう。具体例を見ると、同じ形容詞でも名詞の前に置いた場合と、be動詞につなげて使う場合とで、表す意味が違うというのが分ってきます。例えば、oldという形容詞は「his old high school」のように名詞と一緒に使うと、彼が「以前に」通っていた学校という意味になりますが「his old father」というように動詞の後ろに置くと、彼の「長生している」父親という意味になります。oldはもともと事物が古くから存在している状態を示す形容詞なのですが、このように使われ方によって少しずつニュアンスが異なってくるという点に注意しなければなりません。
また、形容詞によっては、名詞とセットでしか使われないものがあるという点にも注意が必要です。例えば、花嫁の季節を表す「bridal season」という表現がありますが、この「bridal」という「花嫁の」という意味で用いられる形容詞は、名詞との組み合わせ以外では原則として使用されません。そのため「This season is bridal」といった表現を使うと、ネイティブには非常に奇妙に聞こえてしまいますので、くれぐれもそのような言い方はしない方が良いでしょう。
同様に「indoor」という形容詞も名詞とセットでしか使われません。これは「室内の」という意味で用いられる単語で「indoor dress」(室内着)のような使われ方をするのが通常です。「インドア派」のようにそのまま日本語になってしまっていますが「彼はインドア派だ」という場合に「He is indoor」言ってしまうと誤りになりますので、注意する必要があります。正しく言いたい場合は、「He is an indoor person」というように、後ろに名詞を組み合わせて使用すれば良いのです。
一方、形容詞の中には、名詞ではなく、be動詞とセットにして使われるものもあります。典型的なものは「生きている」という意味の「alive」で「He is alive」(彼は生きている)という表現では使われますが「alive person」のような言い方はできないという点に注意が必要です。他に、同様の使われ方をする単語には「alone」(ひとりで)、「asleep」(眠って)、「awake」(目が覚めて)、「due」(支払われるべき)などがあります。

形容詞を使いこなせれば英語の表現力が飛躍的に高まる

以上で見てきたように、形容詞にはいくつかの用法があるのですが、それを正しく理解して使いこなせるようになれば、英語の表現力を大幅に高めることが可能になります。形容詞を駆使して微妙なニュアンスを伝えられるようになれば、海外に行ってもコミュニケーションに苦労することはなくなりますので、英語をマスターしたいのであればまずは形容詞の使い方をしっかりと学ぶようにしましょう。