今回のテーマは “coat” です。coat という英単語には複数の意味がありますが、それぞれの意味がなぜ生まれたか、どのような場面で使われるのかなどを、詳しく解説していきます。

また、coat を使った英語ならではの慣用表現や、モッズコートなどの代表的なコートの特徴についても取り上げるので、coat について何か疑問点がある人は、ぜひ参考にしてください。

それでは、早速始めていきましょう!

英単語 “coat” の表す意味とは?

英単語の coat はいろいろな意味を持つ多義語であり、主に以下の4つの意味で使われます。

  • 防寒・雨除け用のコート
  • スーツなどの上着
  • 動物の外被・毛皮
  • 物の表面を覆う層・コーティング

なぜこのように意味が発展したのかという背景も含め、それぞれの意味用法について、詳しく確認していきましょう。

coat ①:防寒・雨除け用のコート

coat の最も基本的な意味は「防寒・雨除け用のコート」です。日本語の表現だと「外套(がいとう)」が近いでしょう。coat の語源には諸説ありますが、ラテン語でチュニックのような衣服を表していた “cotta” に由来するという説が有力です。

cotta はもともと着丈の短い衣服でしたが、上半身を覆い隠すようなデザインでした。そこから時代が下るにつれ、徐々に着丈が長いものが出てきて、現在のように身体全体を覆うコートを表すようになったのです。

また、coat は動詞としても意味が発展し、「(人に)コートを着せる、支給する」という意味でも使われるようになりました。ただし、これは軍隊などの制服を指して使われる専門的な用法であり、日常会話で使われることはあまり多くないので、豆知識程度に覚えておくとよいでしょう。

Aさん
The military coats soldiers with camouflage jackets to help them blend in with their surroundings.
訳)軍は兵士に迷彩ジャケットを支給して、周囲に溶け込めるようにしています。

現代では洋服のバリエーションが大きく広がったのもあり、コートの様式も様々あります。詳しいコートの種類については後で詳しく解説するとして、今は coat の他の意味について、さらに確認を進めていきましょう。

coat ②:スーツなどの上着

coat は防寒・雨除け用の大がかりなコートだけでなく、スーツのジャケットやブレザーなどの、軽めの上着を指すことも少なくありません。

たとえば、男性が外出する際の上下を “coat and trousers(上着とズボン)” と、女性用のものを “coat and skirt(上着とスカート)” と呼び、セット販売しているお店も多いです。日本人の感覚だと秋冬の服装のように感じられますが、春夏に着るような軽い装いの場合でも coat が使われます。

Aさん
The coat of this suit is designed with quick-drying material.
訳)このスーツの上着は、速乾性のある素材でできています。

coat ③:動物の外被・毛皮

以上のように、coat はもともと人間が上半身に着る服を表す言葉でしたが、時代が下るにつれて、人間以外、つまり動物の上半身を覆う外被・毛皮も表すようになりました。

一説によれば、人は猿から進化する過程で、その外被にある毛皮を退化させ、環境に応じて衣服を着て体温を調整するようになったといわれています。つまり、coat の役割はもともと外被・毛皮の方がオリジナルということですね。

Aさん
The fox’s coat is thick and bushy.
訳)キツネの毛皮は、分厚くてフサフサしています。

coat ④:物の表面を覆う層・コーティング

以上見てきた coat に共通するのは、上半身や身体全体を「覆う」というイメージです。そこから、coat は物質の表面を覆う層を表すように意味が発展しました。

たとえば「タマネギの皮」は英語で “coats of an onion” ですし、壁紙の層なら “coats of wallpaper”、チョコレートの層なら “coats of chocolate” といった具合です。

また、この意味は動詞としても意味が発展し、coat で「~を覆う」という意味を表すようになりました。これが日本でもよく使う「コーティング(coating)」という言葉の由来になっています。

Aさん
The screen of this smartphone is coated with a fingerprint-resistant coating.
訳)このスマホの画面には、指紋防止のコーティングが施されています。

coat を使った慣用表現・イディオムをマスターしよう!

 

coat を使った慣用表現・イディオムをマスターしよう!

coat の基本的な4つの意味がわかったところで、ちょっと発展的な、coat を使った慣用表現・イディオムについても学習を進めていきましょう。

coat の慣用表現①:ride on parent’s coat-tails

“ride on parent’s coat tails” は、「親の七光り」を意味する慣用表現です。

ここで使われている coat tails は直訳すると「コートの尻尾」となり、コートの背面の裾部分を表します。その部分に乗る(ride)ということは、親の背中に乗っかること、つまり「親の力を利用して生きていく」ことを意味します。

日本語にも「おんぶにだっこ」という言い方がありますが、それに近いニュアンスですね。

coat の慣用表現②:cut one’s coat according to your cloth

“cut one’s coat according to your cloth” は、「身の丈に合った生活をする」という意味の慣用表現です。

ここで使われている cloth は「布」の意味で、この表現を直訳すると「自分の布に合わせてコートを裁断する」という意味になります。

手持ちの布が少ないならそれに見合ったコートを作る、身の丈以上のお金を借金などで工面しがちな人には、耳が痛い教訓的表現に響くでしょう。

coat の慣用表現③:sugar coat

“sugar coat” は、「上辺を取り繕う」という意味で使われる慣用表現です。

ここでの coat は「~を覆う」という動詞として使われていて、sugar coat を直訳すると「砂糖で表面を覆う」という意味になります。

どんなに不味いものでも、表面を砂糖で厚くコーティングすれば喉を通りますよね。そのイメージで、相手にとって不都合なことを隠し、上辺をよく見せかけることを sugar coat と言うのです。

日本語にある表現だと「オブラートに包む」のニュアンスが近いでしょう。

モッズコートなど、代表的なコートの特徴や由来をチェック

モッズコートなど、代表的なコートの特徴や由来をチェック

以上色々と見てきましたが、coat の本来の意味は最初に挙げた「防寒用・雨除け用のコート」です。そこで、最後に代表的なコートを3種類取り上げ、それぞれの英語名と特徴について、詳しく確認しておきましょう。

モッズコート(mod coat)とは?

モッズコート(mod coat)とは、主にオリーブカーキ色をした、フード付きの上着のことです。

物としてはアメリカ陸軍で採用されていたミリタリーコートですが、1950~1960年代にイギリスの若者たち「モッズ」が好んで着用したことから、慣例的にモッズコートと呼ばれています。

トレンチコート(trench coat)とは?

トレンチコート(trench coat)とは、着丈が長く腰にベルトが付いた、防水素材で作られたトラディショナルなコートです。

トレンチコートの trench はもともと「塹壕(ざんごう)」という意味で、イギリス陸軍で兵士が防寒・雨除け用に着用していた上着がルーツになっています

ファーコート(fur coat)とは?

ファーコート(fur coat)とは、表面部分に動物の毛(fur)が付いたファッション用コートのことです。女性用のデザインが多いですが、最近では男性向けのファーコートも数多く出ています。

ファーの素材には色々ありますが、最も一般的なのはウサギの毛である “rabbit fur(ラビットファー)” です。また、廉価な製品だと人工的に作られた “faux fur(フォーファー)” もよく使われます。

まとめ

今回は “coat” という英単語が表す意味について、詳しく確認してきました。

coat はもともと防寒・雨除け用のコートを表す言葉でしたが、そこから軽い上着や動物の外被、そして物の表面に施すコーティングなども表すようになりました。

一見無関係に見える coat のそれぞれの意味にも、実はイメージの繋がりがあることがご理解いただけたでしょうか。

今回の内容を参考に、coat のそれぞれの意味を使いこなしていただけたら幸いです。

それでは、これからも楽しい英語学習を。

Let’s enjoy!!