私は機械式の時計が動いている様子を見るのが好きで、複数の歯車が噛み合って、それぞれがカチコチと動いている様子をよく観察しています。時間を見るべき道具で時間を忘れる、なんとも本末転倒な事態に陥ってますね。
さて、そんなわけで今回のテーマは「歯車」です。英語で歯車を何て言うのか、語源も交えつつ詳しく確認していきます。
また、日本では「社会の歯車になる」などの比喩表現でも歯車が使われますが、英語ではどうなのでしょう。そのあたりの実態についても深掘りしていきます。
これを読めば、歯車に関する英語はバッチリです。
それでは、早速始めていきましょう!
「歯車」は英語で何て言う?
機械の部品としての「歯車」は、英語で “gear” と言います。発音記号は “ɡɪər” で、カタカナだと「ギア」または「ギア―」と聞こえます。
歯車には文字通り、たくさんの歯(突起)が付いていて、複数の歯車の歯が噛み合うことで、機械を動かします。
IT技術が発展し、歯車が使われた機械はだいぶ少なくなってきましたが、今でも自動車や自転車などの乗り物だったり、機械式時計だったりと、色々なシーンで歯車は私たちの生活を支えてくれています。
Machines are powered by many gears working together in harmony.
訳)機械は、たくさんの機械が相互に噛み合って動作しています。
また、歯車を指して “toothed wheel(トゥーストウィール)” と呼ぶこともあります。
これは文字通り「歯付き(toothed)の車輪(wheel)」という意味で、歯車の「形状」に着目して語る際に使われます。その一方、gear は機械の部品としての歯車の「機能」に着目する表現です。
日常的には歯車の機能に着目することが多いので、gear の方が使用頻度が高いといえるでしょう。
That cloud looks just like a toothed wheel.
訳)あの雲、歯車みたいだね。
Yeah, it really does. I wonder what causes it to form such a shape?
訳)ほんとだ。何があったらあんな形になるんだ?
gear はもともと「装備」の意味だった?
gear の語源を遡ると、中期英語で「尖った武器」を表していた “gere” に行き着きます。そこから「装備を付ける」という意味の “garwijana” になり、現代英語の gear に発展しました。
つまり、gear はもともと武器や装備を表していた言葉だということ。確かに、剣や盾などの装備を整えて戦う様子は、歯車をクルクル回して動く機械に通ずるところがありますね。どちらも、欠けたら十分な働きができなくなります。
なお、余談ですが、現代でも帽子などの頭に装着する衣類を “headgear(ヘッドギア)”、足に履く靴やブーツなどの総称をを “footgear(フットギア)” と呼びますが、これは ”gear” が装備を表していた名残りかもしれませんね。
My headgear is a part that moves the machine called “me.” So if I take it off, I won’t be able to function properly.
訳)私のヘッドギアは、私という機械を動かしているパーツの1つなんだ。だから、これを脱いでしまうと、上手く動けなくなるんだよね。
You’re saying something strange again…
訳)また何か変なこと言ってる…。
「時計の歯車」は英語で何?
「時計の歯車」と言いたい場合、英語では “clock gears” か “watch gears” と言うのが一般的です。clock は壁掛け時計、watch は腕時計をそれぞれ表します。
時計の歯車は非常に小さく、それぞれが複雑に噛み合っています。そのため、複数の歯車を同時にイメージすることが多いため、gears と複数形にするのが通例です。
I love observing the gears of a mechanical watch in motion.
訳)私は機械式時計の歯車が動く様子を観察するのが大好きです。
名詞”gear”の他の意味
「歯車」を表す英語は “gear”で、”gear”の使い方について詳しく見てきましたが、名詞 “gear”には「装備」以外にも、「用具一式、道具」という意味もあります。どんな例があるのか見ていきましょう。
- rain gear「雨具」
- climbing gear「登山道具」
- camping gear「キャンピング道具」
- fishing gear「釣り具」
- electronic gear「電子器具」
Aさん
Some people try to climb Mt. Fuji with light clothing, but it is important to be prepared with climbing gear.
訳)軽装で富士山に登ろうとする人もいるが、登山道具を準備して登山することが重要だ。
「装備」equipment ほど大がかりなものではないですが、「道具」tool の意味合いでも “gear”が使われていることが分かりますね。上記の5つの道具については、日常生活の中で使える機会も多いのではないでしょうか。機会があれば、ぜひ使ってみましょう。
歯車だけじゃない? gear を使った熟語・慣用表現の意味
ここまで見てきた通り、gear の基本的な意味は「歯車」ですが、その意味から派生して、色々な熟語・慣用表現の中でも使われています。
ここでは、gear を含む代表的な表現をいくつかピックアップし、表す意味について詳しく確認していきましょう。
gear を使った表現①:get into gear
“get into gear” は、物事を新しく始める際に使われる表現です。
イメージとしては、歯車の使われた機械のスイッチを入れる感じでしょう。
Let’s get into gear and work hard!
訳)本腰を入れて働きますか!
gear を使った表現②:shift gears
“shift gears” は、2つの意味でよく使われます。1つめは、「ギアを入れ替える、変速する」という意味になります。
Aさん
He shifted gears by using an automatic transmission.
訳)彼は自動変速装置を使うことによって、ギアを変速した。
2つめは、「方針や気持ちなどを変更する」という意味でよく使われます。機械の歯車を入れ替えることを比喩的に表現しています。
日本では乗る馬を変えるイメージで「鞍替えする」と言いますが、それと同じような感覚でしょう。
Let’s shift gears and make a comeback in the second half!
訳)気持ちを切り替えて、後半戦で逆転しよう!
gear を使った表現③:grind gears
“grind gears” は文字通りに訳すと「歯車をギシギシさせる」という意味です。そこから、人と人とが上手く行かない様子を表す比喩として使われます。”grind”には「こすり合わせる、こすってきしらせる」という意味があるので、「歯車をこすり合わせると、ぎくしゃくするイメージが目に浮かびますね。
日本語の「馬が合わない」と似たニュアンスでしょうか。先ほどの「shift gears ≒鞍替えする」といい、英語では機械、日本語では馬にたとえる点が共通していて面白いですね。
My uncle and father always seem to grind gears with each other.
訳)私の叔父と父は、なんだかいつもギクシャクしています。
gear を使った表現④:throw a wrench in the gears
“throw a wrench in the gears” とは、直訳すると「歯車が動いている中にレンチを投げ込む」という意味です。
機械にレンチなんて投げ込んだたら、機械はストップしてしまいますよね。そこから、「計画やプロジェクトを阻害・混乱させるという意味」で使われるようになりました。
機械にレンチなんて入れたら、修復は困難ですし、最悪の場合は大事故にも繋がります。現実の機械にしても比喩的な計画にしても、なるべくそんな真似はしないように気をつけましょう。
His last-minute cancellation really threw a wrench in the gears of the project’s progress.
訳)彼がドタキャンしたことが、プロジェクトの進行を大きく妨害しました。
「社会の歯車になる」「人生の歯車が狂う」など、日本独自の歯車表現を英訳してみよう!
日本語には歯車を使った慣用表現がいくつかあり、特に「社会の歯車になる」と「人生の歯車が狂う」は有名な言い回しですよね。
しかし、このような言い方は英語には存在しません。そのため、英語で同じニュアンスを伝えるためには、ある程度「意訳」を行う必要があります。
それぞれを英語で何と表現すればいいか、詳しく確認していきましょう。
「社会の歯車になる」in English
英語には「社会の歯車になる」という言い回しはないものの、「機械の歯車となる」という表現は存在します。その場合は “be a cog in the machine (of the company)” と言います。
ここで使われている cog は歯車の1本1本の歯を表す単語です。日本では「歯車になる」というイメージになる一方、英語では「歯車の歯になる」というイメージなんですね。
これを応用すれば、「社会の歯車になる」も “be a cog in the society” とでも言えるでしょうが、現状あまり一般的とは言えません。
I feel like I’m working as a cog in the machines of the company.
訳)私って、会社の歯車として働いているにすぎないと感じている。
Well, it’s good to work as a cog. I’m just working as a wheel, after all.
訳)まぁ、歯車になって働いているだけいいじゃん。僕なんてただの車輪として働いているよ。
It’s nice to be able to roll around freely.
訳)自由に転がれるからいいじゃん。
Even though I won’t quite mesh with anything well.
訳)何とも噛み合わないまま進むだろうけどね。
Anyway, let’s think about contributing to society through our job.
訳)とにかく、自分の仕事を通して社会に貢献することを考えようよ。
You are right. By doing so, society as a whole will be better off, which will lead to the growth of the Japanese economy.
訳)そうだね。そうすることで、社会全体がより良くなり、日本経済の成長にもつながるね。
「人生の歯車が狂う」in English
日本では、人生全体を大きな機械にたとえて、何か不測の事態が起こると「人生の歯車が狂う」と表現します。一方、英語では人生を機械にたとえる感覚がないので、life’s gear(人生の歯車)と言っても、相手に真意が伝わらない可能性が高いです。
それでも敢えてニュアンスを意訳するのであれば、以下のような表現が適しているでしょう。
Everything in my life is falling apart.
訳)私の人生のすべてが崩壊しています。
My life is spinning out of control.
訳)私の人生は制御不能になっています。
動詞”gear”の意味と使い方
名詞 “gear”の使い方について詳しく見てきましたが、”gear”は動詞としても使えます。動詞 “gear”の使い方を見ていきましょう。
動詞”gear”の意味
(他動詞)目的語をとる
1. (あるものを)別のものに合うように、あるいは別のものと機能するように調整する
Aさん
We found it important to gear our output to the current demand.
訳)私たちは、現在の需要に合わせて生産量を調整することが重要だと発見した。
(自動詞)目的語をとらない
– gear down (from something to [into] something):(変速)ギアを落とす。
Aさん
He geared down as he approached the bend.
訳)彼はカーブにさしかかると、変速ギアを落とした。
– gear to/towards something:(ふつう受け身で)特定の目的に適するように何かを調整する
Aさん
The workouts are geared to your specific needs.
訳)彼はカーブにさしかかると、変速ギアを落とした。ワークアウトは、あなたの特定のニーズに合わせて調整される。
Aさん
The country’s economy is exclusively geared towards tourism.
訳)その国の経済は観光業にに特化している。
– gear up:何かをするために、自分/誰か/何かを準備する
Aさん
The police around the country are gearing up for the National Traffic Safety Week.
訳)全国の警察は、全国交通安全週間に向けて準備を進めている。
目的語をとらない自動詞については、次に来る前置詞によって意味が変わってくるので、句動詞として意味と使い方を確認しておくのが合理的ですね。
まとめ
今回は「歯車」を英語で何と言うかについて、詳しく確認してきました。
歯車は英語で “gear” と言います。文字通りの歯車を表すのはもちろん、自分の調子や人間関係、会社での働きなどを、”gear” を使って比喩的に表すことも多々あります。
今回ご紹介した内容が、皆さんの英語知識の歯車を増やすことに繋がっていれば嬉しいです。
それでは、これからも楽しい英語学習を。
Let’s enjoy!!