四方を海に囲まれた日本にとって、船は無くてはならない存在です。ヨットやボートに乗って、余暇を楽しんだことのある人も多いことでしょう。スポーツの中には、ヨットを使った競技があります。それがセーリングです。オリンピックにも採用されているこのセーリング、英語ではいったい何と言うのでしょうか?また、オリンピックではどのように開催されるのでしょうか?
セーリングの英語表記は?
セーリングの英語表記は”sailing”です。帆走する、航行するという意味の “sail”の変化形で、セェィリィンのように発音します。
I like sailing.
訳)セーリングするのが好きです。
I’m interested in sailing.
訳)セーリングに興味があります。
オリンピックではアトランタ1996大会までは「ヨット」と呼ばれていましたが、シドニー2000大会からセーリングという競技名が使われるようになりました。
セーリングとはどんな競技?
セーリングは、帆で受ける風の力を使うことによって艇を推進させる競技です。セーリングとは1~2人乗りの小型ヨット「ディンギー(dinghy)」で海上のコースをまわり、ゴールを目指す競技です。セーリングに使われるヨットのことを”sailboat”や”sailing boat”と呼ぶこともあります。海上で行われるため、天候に非常に左右される競技です。他の船との駆け引きや天候、船の状態などを総合的に判断し、勝利を狙うところにセーリングの面白さがあります。また、海上で繰り広げられるスリリングなレース展開もセーリングの見どころの1つです。コーチ(coach)や監督(manager)の指導のもと、選手は上位進出を目指します。
歴史
ヨット自体の発祥はオランダで、史上初めてヨットレースが開催されたのは1660年だと言われています。ちなみにヨットレースの最高峰とされているアメリカスカップは、1851年から継続して開催されています。オリンピックでセーリング競技が最初に採用されたのは、第2回のパリ1900大会です。また、ウィンドサーフィンが種目に加えられたのはロサンゼルス1984大会です。日本はベルリン1936大会からセーリング競技に参加しています。
ルール
複数の船が一斉にスタートし、ゴールした順番で順位が決まります。スタート後、海上に設置されているマーク(ブイ)を決められた順番どおりにまわり、ゴールに向かいます。。レースは一発勝負ではありません。オープニングシリーズ(opening series)の後、10チームが参加するメダルレース(medal races)が行われます。オープニングシリーズは10~12回実施され、レースごとに順位に応じた点数が与えられます。セーリングが採用しているのは低得点方式です。そのため合計点の低い10チームが、メダルレース(決勝)に進むことになります。そして決勝で、最終順位とメダリストが決まります。
日本代表の成績
セーリング日本代表は初参加のベルリン大会から、ほぼ毎回オリンピックに参加しています。参加しなかったのはメルボルン1952大会とメキシコシティ1968大会、そしてモスクワ1980大会の3大会のみです。なおモスクワ大会には、日本選手団そのものが参加していません。東京1964大会の最高順位は13位です。日本代表の最初のメダルはアトランタ1996大会で、女子が銀メダルを獲得しています。男子の最初のメダルはアテネ2004大会の銅メダルです。
覚えておきたいセーリング用語
セーリングには特別な用語があります。「最低限覚えておきたいセーリング用語」と「重要な専門用語」にわけて解説します。
最低限覚えておきたいセーリング用語
・バウ(bow)船首
・スターン (stern) 船尾
・ハル(hull)船体
・スターボード(starboard)右舷
・ポート(port)左舷
・沈(capsize)艇が転覆すること
・リコール(recall)フライングのこと
・ドン吹き 風が強いこと
・ノット(knot)速力の単位
ヨットの方向転換にはジャイビング(gybing)やタッキング(tacking)などのやり方があります。ジャイビングではバウ(船首)を風下に向けますし、タッキングではバウ(船首)を風上に向けます。
トラピーズ(trapeze)とは艇外に身体を乗り出すための用具と、その行為のことです。艇が風を受け、横に傾くことをヒール(heel)と言いますが、トラピーズはヒールをおこすために行います。
ロープの結び方にはエイト・ノット(eight knot)やフイシャ-マン・ベンド(fishermans bend)などがあります。エイト・ノットは8の字結びで、フイシャ-マン・ベンドは錨結びです。
セーリングの重要用語
セーリングのレースを追いかけたいなら、知っておくべき基本用語をいくつか紹介します。
“stuck in irons”
これはセーリング用語で、船首が直接風に向いているため、風が船を前進させるのに役立たないことを意味します。
“Tacking”
「タッキング」とは、風を切ってボートを旋回させるセーリング操作のことです。これは、風が吹いている方向がボートの左右で変わることを意味します。「カミング・アバウト (coming about) 」と呼ばれることもあります。アップウインドでセーリングする場合、ボートはジグザグのパターンでセーリングしなければなりません。
“Gybing/Jibing”
ジャイビング(Gybing)またはジビング(Jibing)とは、風を切って船尾を回転させ、ブーム(メインセイルの下部にある)を船の片側から反対側に振るセーリング操作のことです。ジャイビングはタッキングよりも難しく危険な操船です。
”Hiking”
セーリングにおける「ハイキング」とは、バックパックを背負い、ブーツの紐を締めてトレイルで1日を過ごすことを意味しているわけではありません。船乗りにとって「ハイキング」とは、ボートが転覆しないように、できるだけボートの風上側に体を傾けることを指します。
”Trapeze”
「トラピーズ”Trapeze”」はサーカスでは「空中ブランコ」を意味しますが、セーリングでは、「トラピーズ」はマストの上から船員のハーネスのフックにつながれたワイヤーを指し、腰の高さ近くにあり、このシステムにより、乗組員はボートのさらに外側に身を乗り出すことができます。ハイキングと同様、トラピーズを使う目的は、ボートの転覆を防ぐと同時に、セイルをしっかりと引き込んでスピードを最大にすることです。トラピーズが1本しかない艇ではクルーだけがこれを使うことになるが、49erの場合はクルーとスキッパーの両方がトラピーズを使います。
”Heel”
ボートのヒール’Heel”とは、帆に当たる風の力に対して、ボートが片側にどれだけ傾いているかを指します。乗組員は船のヒールをコントロールし、転覆を防ぐために「ハイキング」や「トラビーズ」をします。
”Protest”
セーリングにおいて「プロテスト」とは、ある艇が他の艇のルール違反を抗議することです。プロテストは、違反の内容に応じて、違反を犯した側が指定された回数のペナルティターンを行うことで水上で解決することができます。もし違反を訴えられた側が水上でペナルティを行わなかった場合は、関係艇全員が試合中に起こったと思われることを説明する水面外の審問でその主張が決定されます。
Aさん
Let’s learn the sailing terminology little by little!
訳)セーリングの専門用語を少しずつ覚えよう!
オリンピックでのセーリング種目
ここでは一例として2020東京オリンピックでのセーリング種目について説明します。男子、女子で合計10種目が実施されます。東京オリンピックのセーリング会場は江の島ヨットハーバー(Enoshima Yacht Harbor)です。
男子RSX級/女子RSX級(RS:X)
RSX級はウィンドサーフィン(windsurfing)の種目です。北京2008大会から採用されています。1人乗りの競技で、体力と持久力がものを言う種目です。強風時には、時速50kgを超えることもあります。また、全身の力で帆を前後に動かすパンピング(pumping)も見どころです。
男子470級/女子470級(470)
470級は、日本が男女ともにメダルを獲得したことのある種目です。また、日本では競技人口が最も多い種目でもあります。2人乗りで、乗組員の最適な体重は100〜145 kgとされており、日本人向きな種目だと言えるでしょう。「ヨンナナマル」と呼ばれることもある470級はとてもスピードが出やすく、要注目のレースです。
フィン級(finn)
セーリング最古の種目であるフィン級は1人乗りで、男子のみが行われます。1人乗りではもっとも大きく重量のある船を使用した、肉体的に厳しいレースだとされています。この種目を勝ち抜くためには強靭な体力が必要です。また、持久力も欠かせません。
レーザー級(laser)
レーザー級に使われるヨットの全長は約4.2メートルと小型です。ディンギーとしては全世界で1番普及しており、日本でもスタンダードな存在となっています。1人乗りの種目で、男子のみが行われます。クラブレベルからオリンピックまで、さまざまな規模の大会が開かれているとてもポピュラーな種目です。
レーザーラジアル級(laser radial)
レーザーラジアル級は1人乗りです。レーザー級は男子のみの種目でしたが、このレーザーラジアル級は逆に女子のみの種目となっています。船の大きさはレーザー級と同じで、帆の大きさのみが異なります。レーザー級より一回り小さいのがラジアル級です。帆が小さいぶん、スピードが遅くて乗りやすいのが特徴です。オリンピックでは、北京2008大会で正式に採用されました。
49er級
49er級は男子の2人乗りです。全長約4.9メートルの船を使うので、この名称で呼ばれています。とても大きく、バランスを保つのが難しいヨットでもあり、クルーがいかに船をコントロールするのかが見どころの1つです。トラピーズを装備しており、艇外に身を乗り出すことも珍しくありません。パワーも必要となるこの種目、オリンピックに採用されたのはシドニー2000大会です。
49erFX級(49erFX)
この種目は女子のみです。扱いやすいよう、帆の大きさが49er級よりも小さくなっているのが特徴です。とはいえ迫力のあるレースが展開されるのは変わりません。オリンピックに採用されたのはリオデジャネイロ2016大会で、最初の金メダルは地元のブラジルが獲得しています。
混合フォイリングナクラ級(nacra 17)
この種目は男女混合です。ナクラ17級とも言われるこの種目の特徴は、カタマラン(catamaran)に乗ってレースを行う点です。カタマランとは双胴船の1種で、フォイル(foil)という水中翼を有しており、揚力によって海面から浮かび上がることもあります。この種目が採用されたのは、49erFX級と同じリオデジャネイロ2016大会です。
2024年パリ オリンピックのセーリング種目
2024年パリ オリンピックでは、ウインドサーフィンiQフォイル級(RS:X級から変更)とカイトーフォーミュラーカイト級の2種目が新たに登場し、混合ディンギー2種(470とナクラ17)に加え、男女各4種、合計10種目が以下のように実施される予定です。
- 男子1人乗りディンギー – ILCA 7(旧名称:レーザー)
- 女子1人乗りディンギー – ILCA 6(旧名称:レーザーラジアル)
- 男子スキフ – 49er級
- 女子スキフ – 49erFx級
- 男子カイト – フォーミュラカイト級 – 新種目・新装備
- 女子カイト – フォーミュラカイト級 – 新しい種目と用具
- ウィンドサーフィン男子 – iQフォイル級 – 新しい用具
- ウィンドサーフィン女子 – iQフォイル級 – 新装備
- 混合ディンギー – 470 – 新種目
- 混合マルチハル – ナクラ17 – 新種目
2024年パリ オリンピックのセーリング会場はマルセイユ・マリーナで、2024年7月28日~8月8日まで開催されます。
パリオリンピックにおけるセーリングの変更点
世界的なセーリングは、大会における男女平等と、予選プロセスにおける各国の多様性を実現するため、上記のように男女470を1つの混合ディンギー種目とし、ナクラ17で帆走する混合マルチハルと合わせて2つのセーリング混合種目とするなど、いくつかの修正を行いました。
オリンピック・セーリングの採点方法は?
次に、オリンピック・セーリングの採点方法について見ていきましょう。
オリンピックの期間中、各クラスは数多くのレース(天候にもよりますが、1日に最大3レース)を行います。ポイントは、与えられたレースでの艇の成績に基づいて与えられます。1位は1ポイント、2位は2ポイントといった具合です。そして、これらの得点はすべて合計されます。合計点が低いほど、その艇の総合順位は高くなります。
「オープニングシリーズ」と呼ばれるレースの後、上位10艇がメダルレースに出場し、このレースでは順位のポイントが2倍になります。メダルレース終了後、合計得点(オープニングシリーズを含む)が最も低い艇が勝者となります。ポイント数が低いほど順位が高くなるというのが、他の競技と違います。
オリンピック・セーリングで使用されるボートの種類
「ディンギー」とは、歴史的にあらゆるタイプのヨットや手漕ぎボートを指すのに使われる広い用語です。今日、オリンピックでセーリングに使われるディンギーには、サイズ、スピード、乗船人数が異なるいくつかのカテゴリーがあります。
セーリング選手たちは 「スキフ (skiff)」と 「高性能ディンギー(high-performance dinghies) 」を区別します。スキフは最もスピードの出るディンギーの種類で、平らで狭い船体(ボートの水面に座る部分)と大きく左右非対称なフォアセール(スピネーカー (spinnaker) と呼ばれる)が特徴です。高性能のディンギーもスピードとレース用に作られていますが、より丸みを帯びた船体と左右対称のフォアセールを持つ傾向があります。
マルチハルとは、その名の通り、2つ以上の船体を持つボートのことで、例えばカタマラン(2つの船体を持つ)などが含まれます。
オリンピックには、ボードを使ったセーリング競技もあります。サーフィンとセーリングを組み合わせたウインドサーフィンは、1984年にオリンピック種目となりました。カイトボーディングは、2024年のオリンピック・セーリング・プログラムに追加されました。この種目では、選手がウェイクボードに似たボードに乗り、手で操作するキットを使って水面を操縦します。
セーリングで英語を学ぶなら動画がおすすめ!
セーリングで英語を学ぶなら、動画を利用するのがおすすめです。欧米で人気なこともあり、数多くの動画が投稿されているからです。動画なら実際のレース場面を見ながら英語を学べますし、セーリング用語を知るのにも役立ちます。最初はなかなか聞き取れないかもしれません。しかし繰り返し聞くことがヒヤリングスキルを伸ばすためには必要不可欠なので、諦めずに何度も視聴するよう努めましょう。
英語を学んでセーリングをより深く楽しもう!
セーリングは日本でも徐々に人気となってきている競技の1つです。特に470級は日本人の体格にフィットしているので、競技者人口がさらに増えつつあります。セーリングの本場は欧米です。セーリングに関する動画や記事も英語のことが多く、詳しく知るためには英語力が欠かせません。英語を学び、オリンピックやセーリングをより深く楽しみましょう。