「〜より多くない」「〜以上…ない」と英語で言いたいとき、みなさんはどのように表現しますか?
いくら英語を勉強していても、日本に住んでいて日常的に使っていないと、パッと正しい単語が出てこないという人は少なくないでしょう。

比較級に苦手意識を持っている人は多く、”no more〜”や”no more than〜”など、なんとなく意味がわかっているようなフレーズでも、実際は正しく使いこなせていないケースも見受けられます。
そこで今回は、実践が難しい比較表現“no more”の正しい意味と使い方、さらに”no more than”や”say no more”などの関連表現について解説していきます。

“no more”の3つの意味

no moreの3つの意味

“no more”は、「これ以上〜ない」という意味を持つ英語として知っている人も多いかと思います。
しかし、じつは他にも複数の意味があることを知っていましたか?

英和辞典を調べると、以下のような3つの意味が載っています。

  1. それ以上(もはや、二度と)~しない、これ以上~ない
  2. (すでに)死んでしまった、もう存在しない
  3. (否定文に続いて)~もまた…でない

参考:Weblio英和辞書

1.では、「〜より多い」という意味の比較級”more”を”no”で否定していることで、「〜よりも多くない」となり、「それ以上〜ない」または「二度と〜ない」を表しています。

2.では、「もう〜ない」の意味から、「もう死んでしまって、今はいない」という状態も表現できます。

3.では、通常否定文の後ろに”no more”と続いたときに、「〜もまた…でない」と訳すのが正解です。

“no more”は、古英語の”na mara”に由来しており、「全く、少しもない」を表す”na”と「より大きい、より強い」を表す”mara”が組み合わさり「これ以上~ない」という現在の意味になりました。

また似た比較表現に”no less”がありますが、”no more”が「~より多くない」と上限を表しているのに対し、”no less”は「~よりも少なくない」と下限を示す表現であることを覚えておきましょう。

“no more”の使い方を3つの意味ごとに例文で紹介します。

【それ以上(もはや、二度と)~しない】

Aさん
There is no more time for discussion.
訳)これ以上議論している時間はありません。
Aさん
He said no more stealing.
訳)彼は、もう二度と盗みはしないと言いました。
Aさん
I have seen no more of Kyle.
訳)わたしはそれ以来、カイルに会っていません。

返答や相槌で、以下のような言い方もよく使われるので覚えておくと役立ちます。

Aさん
I’ll say no more.
訳)もうこれ以上何も言わないよ。
Aさん
No more, thank you.
訳)もう結構です(いらないです)。
Aさん
No more of your jokes!
訳)冗談やめてよ!

【死んでしまった、もう存在しない】

Aさん
She is no more.
訳)彼女はもうこの世にいないのです。
Aさん
There are no more premium tickets available.
訳)プレミアムチケットはもうなくなってしまいました。
Aさん
The old building is no more.
訳)その古い建物はもうありません。

【~もまた…でない】

Aさん
If you don’t do it, no more do I.
訳)あなたがやらないのなら、わたしもやりません。
Aさん
Sophie had no complaints and no more did Taylor.
訳)ソフィーは不満がなかったし、テイラーもまたそうでした(不満はありませんでした)。
Aさん
My father doesn’t like pork, and no more do I.
訳)父は豚肉が嫌いですが、わたしもまたそうなんです(豚肉が嫌いです)。

 

“no more than”の意味

“no more than”は、2つを比較して、そうではないと否定を強調するときによく使われる表現です。
難しく身構えがちな”no more”ですが、”than”が付いただけで「何かと何かを比較して言っているんだな」と理解しやすくなりますね。

“no more than”は、英英辞典では以下のように定義されています。
“does not have”や”would not do”とあるように、持っていないこと、しないであろうことを強調しているとわかります。

used to emphasize that someone or something does not have a particular quality or would not do something
誰かや何かが特定の資質や能力を持っていない、あるいは何かをしないだろう、ということを強調するときに使用する。

参考:Longman Dictionary of Contemporary English

【例文】

Aさん
Ryan is no more fit to be a teacher than David is.
訳)ライアンはデイヴィッド以上に教師としてふさわしくありません。
Aさん
No more than 30 people attended the music event.
訳)その音楽イベントに参加したのは、30人だけでした。
Aさん
Tom can lift no more than 15 kilograms.
訳)トムは、せいぜい15キログラムしか持ち上げられません。

 

“no more than”と”not any more than”

“no more than”と似ている”not any more than”ですが、実はどちらも「~と同様に…でない」「~と同じくらい…でない」という意味を表します。

“no more than” = “not any more than”

以下の例文は、「馬が魚ではないのと同じくらい、クジラも魚ではない」という意味の有名なフレーズです。
比較級にすることで、クジラも馬も魚ではないということを強調しています。

  • A whale is no more a fish than a horse is.
  • A whale is not a fish any more than a horse is.

また以下の例文も、直訳こそ少し異なりますが、どちらも「5,000以上は持っていない」ということを表しています。

  • I have no more than 5,000 yen.
    直訳:私は5,000円より多くないお金を持っている
  • I don’t have any more than 5,000 yen.
    直訳:私は5,000円より多くのお金は持っていない

 

“no more”を使ったイディオム

"no more"を使ったイディオム

”no more”は、特定の状況や状態が終わったことを強調するときの表現として使われます。「もう~は終わりだ」というニュアンスを持つ会話でよく出てくるイディオムを3つ紹介します。

Say no more.

“Say no more.”は、「それ以上言うのはもう終わり」という意味から、「わかってるよ」と訳されることが多い口語表現です。
相手の言い分を遮るように言うと、「もう十分、それ以上言わないで」の気持ちがより強く伝わるでしょう。

Aさん
Dad, every other kid has an iPhone.
訳)パパ、他の子はみんなiPhone持ってるんだよ。
Bさん
Say no more.
訳)わかった、わかった。

 

No more Mr. Nice Guy.

“No more Mr. Nice Guy.”は、映画やドラマなどのスポーツや競い合うシーンでよく使われています。
その場合、「お人好しはもうやめた」という意味から、日本語では「これから本気を出す」と訳すのが自然です。

Aさん
Okay. No more Mr. Nice Guy.
訳)よし、これから本気出していくぞ。
Aさん
No more Mr. Nice Guy! We are going to show them that we are the champions!
訳)本気出して、チャンピオンであること見せつけてやる!

 

No more!

“No more!”は、そのまま「もうそれ以上はない」という意味で「もう終わり!」「もうダメ!」と言うときによく使われます。
子どもがおやつを何度も欲しがったときに、親が「もうおしまい!」と声をかけるようなイメージで覚えておくとわかりやすいですね。

Aさん
Can I have another one?
訳)もう1個ちょうだい?
Bさん
No more!
訳)もうおしまいだよ!

 

まとめ

実践が難しい比較表現”no more”の正しい意味と使い方、そして”no more than”や”say no more”といった関連表現やイディオムについて解説しました。

比較表現であることはわかりつつも、いざ使うとなると上手く話せないという人が多い”no more”。
「それ以上〜ない」の他にも、「死んでしまった」「もういない」や否定文に続けて「〜もまた…でない」といったいろいろな意味を持っています。

“no more than”は、”not any more than”とイコールなので言い換えが可能です。
また”say no more”のように一言で的確な相槌も表現できます。

今回紹介した例文を参考に”no more”の苦手意識を解消し、会話力アップにつなげていきましょう!

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