「ベクトル」は、物理学や数学で使われる単語ですが、日常会話やビジネスシーンでもよく耳にしますね。
でも、「聞いたことはあるけど、よく意味が分からない」、「どんなシチュエーションで使うものなの?」と疑問に思う方も少なくないはず。

そこで今回は、ベクトルの日本語の意味やその英語表現について、例文と一緒にご紹介します。
ビジネスシーンで使える表現もお教えするので、ぜひ参考にしてくださいね。

そもそも「ベクトル」とは?

そもそも「ベクトル」とは?

ベクトルには大きく次の2つの意味があります。

  • 大きさと向きを持つ量
  • 方向性

それぞれ確認しましょう。

1つ目は数学や物理学で用いられる概念である「大きさと向きを持つ量」。この場合、ベクトルを用い、「位置」や「速度」を表します。

2つ目はより抽象的な意味です。こちらが日常会話やビジネスシーンでよく耳にする「ベクトル」。物事や考え方の「方向性」を意味します。

例えば、「チームのベクトルの最大化が目標の達成には不可欠だ」や「あの人とはベクトルが合わない」など。

「チームのベクトルの最大化」とは「チームが一丸となって力を合わせること」、「ベクトルが合わない」は「方向性が異なる(=気が合わない)」と言う意味です。

ベクトルには他にも「声を届ける方向や距離」、プログラミング上での「2つ以上の数字が構成する構造体」などの意味もあります。

ベクトルは英語で何て言う?

では、英語の「ベクトル」を確認しましょう。
ベクトルは英語では”vector”。 ”vector”の意味は日本語と同様に「数学的なベクトル」と「方向」で、ラテン語の“vehere(運ぶ)”が語源です。

英語の”vector”と日本語の「ベクトル」は発音が違うところに気をつけましょう。
英語の”vector”の発音はカタカナだと「ベクター」で、日本語の「ベクトル」とは大きく異なります。
実は、日本語の「ベクトル」はドイツ語の”Vektor”に由来。そのため、ドイツ語風の発音なのです。

Aさん
A vector is a quantity of magnitude and direction of a force.
ベクトルとは、力の大きさと方向の量のことである。
Aさん
It is very important for employers to align employees’ mental vectors
雇用主にとって従業員の心の方向性を合わせることは非常に重要である。

align”はもともとと2つ以上のものを一直線に並べることを意味しますが、ビジネスシーンでは「足並みをそろえる」、「提携する」という意味でよく使われる動詞です。

病原菌媒介生物という意味も

ベクターには「病原菌を運搬する生物」という意味もあります。語源であるラテン語の“vehere(運ぶ)”を知っているとイメージしやすいですね。

Aさん
Mosquitoes are vectors of malaria.
蚊はマラリアの媒介生物である。

方向性って英語で何て言う?

方向性って英語で何て言う?

英語には”vector”以外にも「方向性」を表す単語があります。主なものを確認しましょう。

direction

direction”は「方向性」を表す最も一般的な単語です。物理的な方向はもちろん、比喩的な意味での「目指すべき目標」などの意味も持ちます。

Aさん
The company was trying to figure out its direction for the future.
その会社は、将来の方向性を模索していた。
Aさん
You need to have a clear direction before you start a new project.
あなたは新規プロジェクトを始める前に、明確な方向性を定める必要がある。

orientation

日本語で「オリエンテーション」と聞くと「新入生や新入社員が組織に適応するために行われる研修」というイメージが強いですね。

英語の“orientation”には日本語と同様に「新人への研修」という意味もありますが、「方向付けや適応、取り組む方向性」という意味もあります。特に個人や組織の価値観や優先順位を表すときによく使われます。

Aさん
The company’s orientation is towards customer satisfaction.
その会社の基本的な方針は、顧客満足度を追求することである。

Aさん
The political landscape is undergoing a major reorientation.
政治情勢は大きな方向転換を遂げています。

political landscape”は「政治的な見通し」、“reorientation”は「新しい方針、方向転換」という意味です。

course of action

具体的な行動計画や目標達成への方針や活動指針を意味します。

Aさん
She outlined the course of action to be taken in case of an emergency.
彼女は、緊急時の行動計画を説明した。

Aさん
The company has a clear course of action for dealing with customer complaints.
その会社は、顧客からの苦情に対処するための明確な行動計画を持っています。

aim

「ねらう」や「目指す」という意味を持つ”aim”。「目的」や「」という意味もあり、そこから目指すべき目標ゴールへの方向性を表現します。

Aさん
What is your aim in life?
あなたの人生の目標は何ですか?

Aさん
The company’s aim is not clear.
会社の方向性が定まっていない。

日常生活やビジネスシーンで使える「方向性」を使った表現

「方向性」を使ったよく使う表現を3つご紹介します。

方向性を決める

方向性を決める」はビジネスシーンでよく耳にするフレーズですね。「方向性を決める」は英語では”determine a direction”といいます。

Aさん
The marketing team is conducting market research to determine the direction of their next campaign.
マーケティングチームは、次のキャンペーンの方向性を決めるために市場調査を行っています。

方向性を変える

方向性を変える」は「変える、変更する」という意味の動詞”alter”を使って表現します。

Aさん
The company altered its direction to focus on more sustainable practices.
その会社は、より持続可能な慣行に焦点を当てるために方向転換しました。

方向性が同じ

同じ考えを持っているというときは”on the same page”というイディオムを使います。ビジネスでもカジュアルなシーンでも使える表現です。

Aさん
I’m glad we are on the same page.
みんなの意見が同じでうれしいです。

まとめ

今回は「ベクトル」について確認しました。ベクトルには数学的な意味だけでなく、考え方の方向性という抽象的な意味もあります。特に方向性の意味のベクトルはビジネスシーンでもよく耳にしますね。

英語の”vector”にも日本語と同様に、数学的な意味と抽象的な意味があります。また、 “vector”以外にも方向性を意味する単語も。シチュエーションによって使い分けるようにしてくださいね。