英語の勉強を始めるときに「英語をマスターしたい」「英語をマスターする」と言ったことがある方は多いでしょう。
「マスター」は、他にも「車のマスターキー」や「バーのマスター」など、ものや人を表す言葉としてもよく耳にしますよね。

そんな日本語になじみのある「マスター」は、英語”master”からきたカタカナ言葉です。
会話では聞き慣れているものの、「英語本来の意味はよく知らない…」という人もいるのではないでしょうか。

今回は、日本語としても浸透しているカタカナ言葉「マスター」について、英語”master”の意味と正しい使い方、言い換え表現を紹介していきます。

「マスター」の意味

「マスター」の意味

「マスター」は、英語の”master”に由来したカタカナ言葉です。
仕事やスポーツ、芸術などにおいて、スキルや技術を極めた人、優れた能力を持った人を表します。

辞書では、以下のように定義されています。

  • 師匠、親方
  • 集団の責任者、長
  • 経営者、主人、支配人
  • (学位の)修士
  • 物事に熟達していること、習得すること
  • レコードや映画フィルム、ビデオテープ、CD、DVDなどの原盤
  • 元になるもの、基本となるもの
  • コンピューターなどの基本、主装置

参考:Weblio辞書

特定の分野での高い地位や権限を持つ人、大学院の修士課程を修了して得られる学位の「修士」を指す場合もあります。
レコードや映画フィルム、ビデオテープ、CD、DVDなどの原盤も「マスター」です。
IT分野では、同じのものが複数ある状況で、優先されるもの、元になるものなどを区別するときにも用いられます。

「マスター」には、以下のような使い方があります。

  • 「マスターデータ」
    コピーや加工される前の、元になる正規のデータのこと
  • 「マスターキー」
    ホテルやマンションなどで導入されている、1つの鍵で複数の錠前を開けられる鍵のこと
  • 「マスターテープ」
    音楽録音複製品のもとになる音源テープのこと
  • 「コンサートマスター」
    管弦楽団の首席第一バイオリン奏者のこと
    楽団の指導的立場で、指揮者の代わりをつとめることもある
  • 「マスターとスレーブ」
    ハードウェアで、制御する側の機器のこと(制御される側は「スレーブ」という)
    ジャンパースイッチと呼ばれる切り替え装置で入れ替えが可能

”master”の意味

”master”は、支配力がある「主人」「雇い主」「所有者」「指導者」の意味以外に、熟練した人を指す「達人」「修士」などいろいろな意味を持った単語です。
「習得する」「極める」「打ち勝つ」のように、何かのスキルを身につけるために学ぶ動詞としても幅広く使用されています。

”master”にはおもに名詞と動詞2つの用法があるので、文脈によって使い分けが必要です。
辞書では以下のように定義されています。

【noun】

  • a person who has control over a particular situation
    特定の状況を管理できる人
  • a person who is very skilled in a particular job or activity
    特定の仕事や活動に非常に熟練した人
  • an original version of something from which copies can be made
    コピーが作成できるもののオリジナル版のこと

【verb】

  • to learn to control an emotion or feeling
    感情や気持ちをコントロールすることを学ぶ
  • to learn how to do something well
    何かを上手に行うための方法を学ぶ

参考:Cambridge Dictionary

イギリス英語とアメリカ英語で発音が異なるため、どちらの発音も正確に聞き取れるようになっておきましょう。

イギリス英語 /ˈmɑː.stər/マァスタ」
アメリカ英語 /ˈmæs.tɚ/メァスタ」

”master”は、ラテン語の”magister”(先生、監督)が語源といわれています。

12世紀後半 「非常に熟練した男性」「職人や職人の主人」
 ↓
13世紀半ば 「管理、指導、監督を任された人」「特定の学位を取得した人」
 ↓
14世紀半ば 「自由に制御、使用、処分する力を持つ人」「他の人を雇用する人」
 ↓
14世紀後半 「商船の船長」「機関の頭」「議長の称号」
 ↓
15世紀初頭 「競技用の動物の公式な保管人」

時代によって細かい意味は異なりますが、「支配する」「制御する」「熟達する」といったコアなイメージが共通しているのがわかりますね。
意味がたくさんあって覚えるのが難しい単語は、語源を紐解いてみるとグッと理解しやすくなりますよ。

”master”を使った例文

”master”を使った例文

”master”を使った例文を用法ごとに紹介します。
日本語の「マスター」や「マスターする」に惑わされないよう、正しい使い方を習得していきましょう。

名詞としての”master”

Aさん
She studied under the international chess master for many years.
訳)彼女は長年にわたって、国際的なチェス名人のもとで学びました。
Aさん
In addition to being a doctor, he was a master violinist.
訳)彼は医者であるだけでなく名バイオリニストでもありました。
Aさん
I just started painting, but I dream of becoming a master one day.
訳)絵を始めたばかりですが、いつか達人になることを夢見ています。
Aさん
You don’t have to be an artist to benefit from a Master of Fine Arts.
訳)美術修士号の恩恵を受けるのに、芸術家である必要はありません。

 

動詞としての”master”

Aさん
My sister mastered Chinese in less than two years.
訳)妹は、2年足らずで中国語を習得しました。
Aさん
It is not easy to master English in a short time.
訳)短期間で英語を習得することは簡単ではありません。
Aさん
Speaking is the most difficult part of the language to master.
訳)スピーキングは、言語習得のなかで最も難しい分野です。
Aさん
I’m determined to master English this year.
訳)この1年でなんとしても英語を習得したいです。

”master”の言い換え表現

最後に、”master”の言い換え表現を紹介します。
どの単語も、会話によく使われる表現なのでぜひ覚えておきましょう。

expert

”expert”は、「専門家」や「高度な知識やスキルを持つ人」を意味する英語です。
ある分野に関して、専門的な知識や技術を持っていることを表し、信頼のおける専門家であることを示します。

Aさん
She studied for years to become an expert in physics, and now she teaches at a university.
訳)彼女は、物理学の専門家になるために何年も勉強し、現在は大学で教えています。

proficient

”proficient”は、「熟達した」「堪能な」という意味を持つ英語です。
日本語では「プロ」と呼ばれており、特定の分野でのスキルや能力が高く、他の人よりも優れている状態を表します。

Aさん
The new engineer is proficient in coding.
訳)新しく入ったエンジニアは、コーディングに精通しています。

adept

”adept”は、「熟練した」「特定の能力や技術を上手に使いこせる」という意味の英語です。
ある技能に熟練していて、高いスキルや知識を持つ”expert”や”proficient”と同じ意味を表します。

Aさん
With years of practice, she became adept at playing the piano.
訳)何年も練習した結果、彼女はピアノの演奏が堪能になりました。

skilled

”skilled”も、「熟練している」「特定の分野での技術や能力が高い」ことを表す英語です。
スキルや能力を高い水準で実行でき、人々の尊敬や評価を得る肯定的なニュアンスで用いられます。

Aさん
It takes a skilled driver to handle a drifting car.
訳)ドリフト走行するためには、熟練したドライバーが必要です。

まとめ

カタカナ言葉「マスター」について、英語”master”の意味と正しい使い方、言い換え表現を紹介しました。

「マスター」は英語”master”に由来したカタカナ言葉です。
”master”は、支配力がある人や熟練した人を指した名詞と、何かのスキルを身につけるために学ぶ動詞の役割を持っています。
「主人」「雇い主」「所有者」「指導者」「達人」「修士」など、さまざまな日本語に訳されるので、文脈によって正しく使い分けることが重要です。
「専門家」や「プロ」を意味する言い換え表現も合わせて覚えておくと、幅広いシーンで役立ちますよ。

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