「長文問題を読む時、itがいっぱい出て来るなあ」
「でも、学校で習った『それ』っていう日本語訳では意味が通らない時もたくさんあるぞ…?」
そんな疑問をお持ちではないでしょうか?itは代名詞の中で最も代表的な英単語のひとつで、英語に触れるには必ずといって良いほど目の当たりにします。しかし、それだけ使われる頻度が高い「it」だからこそ、直訳の「それ」だけでは理解が出来ないものも多くあります。
この記事では、直訳の「それ」だけにとどまらない「it」について詳しくお伝えしていきます。この記事を読み終わる頃には、英語に必須レベルで登場する「it」について、日本語訳や意味理解に悩むことが激減するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
「それ」以外の「it」の意味をご存知ですか?
「it」の主な役割は代名詞です。
You play soccer every day.
訳)あなた毎日サッカーしてるわね。
Yes I do, I love it.
訳)そうですね。私はそれが好きです。
You play Sax very well.
訳)キミはサックスがすごく上手だね。
Thanks, I practice it every Sunday.
訳)ありがとう。毎週日曜日に練習してるんです。
上に挙げた例文のように、前の文章に挙げられたものごと(サッカーやサックス)を表す代名詞として機能することが多いです。だから日本語に訳すと「それ」になることが多いんですね。
しかし、itが受け持つことが出来る役割は、「それ」だけではありません。「それ」以外のitが表す役割は、主に以下の3つが挙げられます。
- 天候、時間、距離
- 形式主語
- 強調構文
順番に見ていきましょう。
1.天候、時間、距離を表すit
天候、時間、距離を表す時に、形式的にitが使われます。この場合のitは代名詞なのですが、先の話題に挙がっていたことを反復して言うわけではないので「それ」と訳すことはありません。
天候を表す「it」の英語
天候を表す時に使われるitは、前に話題に挙がっていたものごとを反復するわけではないので「それ」として日本語に訳出されません。
It’s sunny today! Let’s to on a picnic.
訳)今日は晴れているね!ピクニックに行こうよ。
Please drive carefully, because it’s foggy today.
訳)今日は霧が濃いので、気を付けて運転してください。
「天候を表す時は主語にitを使う」と覚えておきたいですね。
時間を表す「it」の英語
時間をitで表す際は、曜日や季節も表すことが出来ます。
It’s Sunday today.
訳)今日は月曜日です。
It’s ten o’clock.
訳)10時です。
It’s fall in Japan now.
訳)現在、日本では秋です。
天候を表す時と同様に、「それ」と訳されることはありません。
距離を表す「it」の英語
距離を表す時の「it」も、天候を表す時と同様に「それ」と訳されることはありません。
It’s 30 kilometers from here to Tokyo.
訳)ここから東京まで30キロです。
It’s four stations away.
訳)電車で4駅先です。
2.形式主語を表す「it」
形式主語とは、英文をスマートでシンプルにするために用いられる構文です。形式主語に用いられる「it」も、「それ」と訳すことはありません。itを用いた形式主語は、to不定詞、that節、動名詞、疑問詞節で使われます。具体的な例を見ていきましょう。
to不定詞の場合
It is dangerous to swim across this river.
訳)この川を泳いで渡るのは危険だ。
It is difficult for Japanese to understand the speech spoken in French.
訳)日本人にとって、フランス語で話されたそのスピーチを理解するのは難しい。
上の例文の主語がどこだかわかるでしょうか?
もちろん、文頭にあるのがitですから、itが主語と考えるのが自然です。しかし、訳出を見てみると、to不定詞以下が主語になっていることがわかります。これは、英語の特性として主語が長くなりすぎるのを避ける傾向があるからだと言えます。
先に「It is dangerous = それは危険だ」と、英文で伝えたいことの骨格をハッキリさせておいて、後からto不定詞以下を主語として説明していくという手法です。形式主語も形式目的語も、「先に英文の骨格をハッキリさせておく」という考えに基づいて使われます。
that節の場合
It is clear that he is guilty.
訳)彼が有罪なのは明白だ。
It is no wonder that she should be angry.
訳)彼女が怒るのも無理はない。
to不定詞の形式主語と同様に、「先に英文の骨格をハッキリさせておく」という性質が見て取れますね。
It is clear(それは明白だ) that he is guilty.(彼が有罪だということは。)という感じで、先に文章を完結させておいて、後から主語を詳しく説明していることがわかります。
動名詞の場合
It is no use crying over the spilt milk.
訳)覆水盆に返らず。
(こぼれたミルクを嘆(なげ)いても仕方がない)
It is worth reading this book.
訳)この本には読むだけの価値がある。
動名詞の場合も同じく「先に英文の骨格をハッキリさせておく」という考えに基づいていることがわかります。
It is no use(それは役に立たない) crying over(嘆くことは) という感じで、先に文章を完結させておいて、後から主語を動名詞を用いて詳しく説明していることがわかります。
疑問詞節の場合
It doesn’t matter when he comes.
訳)いつ彼が来るかは重要ではない。
疑問詞節とは、疑問詞を用いて「When = いつ~するか。」や「Which = どちらが~するか。」などの意味になる節を指します。形を見るとthat節の形式主語に似ていますね。
疑問詞節の場合も同じく「先に英文の骨格をハッキリさせておく」という考えに基づいて、It doesn’t matter(それは問題ではない) when he comes(彼がいつ来るか) という感じで、先に文章を完結させておいて、後から主語を詳しく説明していることがわかりますね。
3.強調構文
強調構文とは、It is ○○ that ~ の形で文章を作り、○○の部分を強調する英語の構文を指します。
Mary borrowed money from Tom yesterday.
訳)メアリーは昨日トムからお金を借りた。
この例文を、「メアリーがお金を借りた」というように、誰がお金を借りたかを強調したい時には
It was Mary that borrowed money from Tom yesterday.
訳)昨日トムにお金を借りたのはメアリーだった。
このように、It was Mary(それはメアリーだった) that borrowed money(お金を借りたのは)という感じで、ものごとを先に言及して、強調したいものを強調するのが強調構文です。強調構文のitも、「それ」と訳されることはありません。
まとめ
この記事では、ほとんどすべての英語で見かけるといって過言ではない「it」について、以下の点からお伝えしました。
- itは「それ」だけの意味にとどまらない
- 代名詞として使われることが多いが、日本語として訳出しない場合も多い
- 英語には「先に英文の骨格をハッキリさせる」という性質があり、そのために使われることも多い
- itを訳出しない具体的な3つのパターンの紹介
itを適切に使えるようになれば、英文が読みやすくなるだけでなく、クリアでシンプルな英文を作ってより自然な英語を話すことが出来るようになります。ぜひ英語学習をする際には、例文や英会話内の“it”の使われ方や意味などにも注目してみてください。この記事でお伝えしたことが、あなたの英語学習をより充実したものに出来れば幸いです。