わたしたちが普段何気なく使っている言葉には、英語に由来したカタカナがとてもたくさんありますよね。
なかでも「レガシー」は、日常会話に限らずビジネスシーンでも多用されている言葉です。
英語”legacy”に由来しているのですが、カタカナと英語では示す意味に少し違いがあります。

今回は、本来の英語と解釈が異なるカタカナ言葉「レガシー」について、”legacy”の正しい意味と使い方、言い換え表現を紹介していきます。

「レガシー」とは

「レガシー」とは

「レガシー」は、英語の”legacy”を語源とするカタカナ言葉です。
英語の”legacy”は、「遺産」や「先人の遺物」などの意味を持っており、亡くなった人が遺したものを指して使われる名詞です。

一方、カタカナの「レガシー」は、過去に築かれ、受け継がれていくものという意味で使われることが多く、特にビジネスでは「時代遅れ」を意味するネガティブなニュアンスで用いられる場合もあります。

「レガシー」を含む表現でよく見聞きする言葉をいくつか紹介しましょう。

レガシーカンパニー
「遺産」や「伝統」などの意味を持つ「レガシー」から転じて、次世代へ受け継がれていく企業を指して「レガシーカンパニー」と呼びます。
この場合の「レガシー」には、文化や建造物がただ古いだけでなく、価値があるものという意味合いを含んでいます。

レガシーキャリア
「後世に残すべきもの」または「後世の人々に恩恵をもたらす財産」を意味するのが「レガシーキャリア」です。
基本的には良いイメージを持っていますが、しばしば「後世の人々を悩ませる過去の遺物」のように、あまり喜ばれないもの、否定的なものに対しても使われることがあるため覚えておきましょう。
なお、航空業界では、格安航空会社のLCC(ローコストキャリア)に対して、昔からある航空会社の総称としても用いられています。

レガシーコスト
否定的な意味合いで使われる「レガシー」の代表例が、「レガシーコスト」です。
時代遅れのものや従来型のものを指して、日本語では「負の遺産」や「負のレガシー」とも呼ばれています。
具体的には、過去から引き継いで経営を圧迫している年金や各種保険料、年功序列型の賃金制度などの費用を指します。

レガシーシステム
IT分野において、新しい技術や基準に対応していない古いシステムを「レガシーシステム」と呼びます。
機械端末は「レガシーデバイス」、オペレーティングシステムは「レガシーOS」や「レガシーインターフェース」とも言います。
いずれも、現在引き続き使われているものの、過去に開発されたままの状態なので、新しい技術や基準との互換性がなく、更新や改善が困難である場合が多いのが特徴です。

”legacy”の意味

”legacy”は、「遺産」や「遺物」のほかに、「時代遅れのもの」や「伝来のもの」という意味を持つ英語です。
辞書では、以下のように定義されています。

  • money or property that you receive from someone after they die
    誰かが亡くなった後に受け取るお金や財産
  • something that is a part of your history or that remains from an earlier time
    歴史の一部である、または以前の時代から残っているもの
  • a situation that has developed as a result of past actions and decisions
    過去の行動や決定の結果として生じた状況

参考:Cambridge Dictionary

名詞と形容詞の2つの用法を持ちますが、「亡くなった人が遺したもの」というコアの意味では共通していると覚えておきましょう。

”legacy”は、「大使」や「使節」を意味する中世ラテン語”legatus”が語源です。
後に「使節団」や「代理人集団」を表す”legatia”へ変化し、14世紀後半に後期中英語の”legacy”を経て現代の”legacy”にいたりました。
現代の「遺物」や「遺産」の意味で使われるようになったのは、15世紀中頃のスコットランドが始まりといわれています。

”legacy”を使った例文

”legacy”を使った例文

”legacy”を使った例文をおもな意味に分けて紹介していきましょう。

遺産・遺贈・財産

Aさん
He received the small house as a legacy from his uncle.
訳)彼は叔父から遺産としてこの小さな家を譲り受けました。
Aさん
She is beginning, ever so slowly, to think about the legacy she has built for herself.
訳)彼女は少しずつ、自分が築き上げた遺産について考え始めています。

受け継いだもの・受け継がれるもの・遺物

Aさん
His greatest legacy was his message that humans can improve their lives if they try.
訳)彼の最大の遺産は、人間は努力すれば人生を向上させることができるというメッセージでした。
Aさん
This was an enormously significant legacy for all educators that followed.
訳)これは、その後のすべての教育者にとって非常に重要な遺産となりました。

旧式・負の遺産・時代遅れのもの

Aさん
The business won’t upgrade its hardware because legacy apps only work with the old operating system.
訳)企業がハードウェアをアップグレードしないのは、古いOSでしか動かない旧式アプリが原因です。
Aさん
A negative legacy from the past is still haunting her.
訳)過去からの負の遺産が、彼女をいまだに苦しめています。

”legacy”の言い換え

「遺産」や「遺物」などを表す”legacy”は、似たような意味を持つほかの英語に言い換えが可能です。
”legacy”と言い換えられる英単語を紹介します。

遺言によって誰かに残された金銭または個人財産など

  • bequest … 遺贈、遺産、形見
  • inheritance … 相続、相続財産、遺産、受け継いだもの
  • endowment … 寄贈、寄付、寄金、資性、才能
  • estate … 所有する地所、団地、財産
  • heirloom … 先祖伝来の家財、家宝、法定相続動産

”bequest””heirloom”は、少し難しいですが、相続や遺贈を意味する代表的な単語なので覚えておくと役立ちますよ。

後継者に引き継がれたもの、昔からの慣習や伝統など

  • heritage … 世襲財産、先祖伝来のもの、遺産、未来に残すべき環境遺産
  • tradition … 伝統、慣例、古来の流儀、型、伝説、言い伝え
  • birthright … 生得権
  • patrimony … 世襲財産、家督、親譲りのもの、伝承、伝統

”legacy”と同じ「遺産」と訳されることが多い”heritage”ですが、文化的、歴史的な価値が高く、お金に換えられない貴重な存在というニュアンスを含んでいると覚えておきましょう。

まとめ

本来の英語と解釈が異なるカタカナ言葉「レガシー」について、”legacy”の正しい意味と使い方、言い換え表現を紹介しました。

「レガシー」は、英語”legacy”に由来したカタカナ言葉です。
”legacy”は、亡くなった人が遺したものという意味を軸とし、「遺産」や「伝統」のように後世に受け継がれるプラスの意味を持つ場合もあれば、「旧式」や「時代遅れのもの」といったマイナスの意味を表すこともあります。

”legacy”のように、英語を語源とするカタカナ言葉は、分野や用法、文脈によって訳が異なるため、正しい意味を使い分けることがとても大切ですよ。

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