ニュースなどでよく耳にする「被害者」という言葉、英語では何と言うでしょうか?関連語の「犠牲者」、類義語”casualty“との違いなども解説します。
「被害者」は”victim”
英語で「被害者」を意味する最も一般的な単語は”victim“です。犯罪の被害者、交通事故や自然災害の被害者などを意味し、幅広いシーンで使われます。英英辞典では以下のように説明されています。
a person who has been attacked, injured or killed as the result of a crime, a disease, an accident, etc.
犯罪、病気、事故などの結果、攻撃、負傷、殺害された人。
The victims of the aircraft accident were taken to the hospital.
航空機事故の犠牲者は病院に運ばれた。
“become a victim of fraud“で「詐欺の被害者になる」「詐欺被害に遭う」の意味になります。”fraud“は「詐欺」です。
I became a victim of fraud.
He took away all the money from me.
How can I forgive him?
わたしは詐欺の被害者になったの。
彼はわたしから全財産を奪ったのよ。
許せないわ。
「加害者」は”perpetrator”
「被害者」に対して、「加害者」は”perpetrator“と言います。”perpetrate“は「犯す」の意味の動詞で、”perpetrate a crime“で「罪を犯す」となります。
The victim and the perpetrator did not know each other.
被害者と加害者には面識がなかった。
「犠牲者」は”toll””fatal victim”
「被害者」の類義語として「犠牲者」があります。「犠牲者」の英語を見ていきましょう。
“toll“は、事故や災害の犠牲者、死傷者数の意味で使われます。
The death toll from the typhoon climbed to 50 people.
台風の犠牲者数は50人にのぼった。
“toll“は「料金」「義務」を表す言葉で、”expressway toll”、「高速道路の通行料金」のように使われます。「(払われた)犠牲、代償(の量)」の意味もあり、”death toll“で「死傷者数」となり、”toll”は「数」の部分にあたります。
「犠牲者」は”fatal victim“と言うこともできます。”fatal“は「致命的な」「死者を出す」という意味の形容詞ですね。”fatal victim“で「死傷者」となります。
「被害者の家族」は”bereaved family””victim’s family”
「被害者の家族」は直訳の”victim’s family“で通じますが、報道などでは”bereaved family“という言い方がよく使われます。”bereave“は「(事故や病気などが)人から家族を奪う」という意味の動詞です。”The traffic accident suddenly bereaved her of her young son.”、「彼女は交通事故で突然幼い息子を失った。」のように使います。
“bereave“が”bereaved“と受動態になると、「肉親に先立たれた」「後に残された」という意味の形容詞になり、”bereaved family“で「遺族」の意味になります。”victim’s family“と比べると、被害者に寄り添うニュアンスがあります。
We mourn for him and for his bereaved family.
彼と彼のご遺族に謹んでお悔やみ申し上げます。
被害者ビジネスの「被害者ぶる」は”play the victim”
「被害者ビジネス」という言葉は、事件や事故の被害者であることを利用してお金を儲けようとするビジネスのことを言います。例えば、被害者が正当な賠償金を求めているにも関わらず、「被害者ぶってお金儲けをしようとしている」、「被害者ビジネスだ」などとネット上で批判を浴びる、といったことが起きています。
英語では、「被害者ぶる」「被害者面をする」を”play the victim“と表現します。
She is playing the victim as if she is not at fault at all, but I think she is to blame, too.
彼女は自分には全く非がないみたいに被害者ぶってるけど、彼女にも責任があると思うな。
“victim”と”casualty”の違い
“victim“の類義語に”casualty“があります。どちらも「被害者」の意味ですが、使い方に違いがあります。英英辞典で”casualty“の意味を確認してみましょう。
a person who is killed or injured in war or in an accident
戦争や事故で死傷した人。
“victim“は、事故や詐欺などさまざまな被害の被害者を指します。これに対し、”casualty“は、戦争や災害での死傷者を意味します。”victim”よりも範囲が狭く、大規模な事故や災害の場合に使われます。「死傷者」と訳してもよいでしょう。
There were a great number of casualties in the earthquake.
その地震では多くの死傷者が出ました。
Estimated number of casualty in World War Ⅱ varies because many deaths were unrecorded.
記録されていない死者が多いため、第二次世界大戦の推定死傷者数にはばらつきがある。
“World War Ⅱ“は「第二次世界大戦」です。冠詞はつけずに使います。”the Second World War“とも言い、このときには”the”をつけます。
“casualty“は、「カジュアルな服装」と言うときの”casual“と似ていますね。実は、どちらもラテン語の「偶然」という言葉から派生した言葉なんです。偶然その場に居合わせたために事故に遭ってしまった、という”casualty“、型にはまらず偶然そうなったような様子を表す”casual“。なんとなくつながりがわかりますね。
まとめ
今回は「被害者」の英語表現について学びました。
一般的に「被害者」と言えば”victim“ですが、大規模な災害や戦争の被害者は”casualty“を使います。
ニュースなどで使い分けを確認してみてくださいね。
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