地中海に面する中東の国レバノンは、古代フェニキア文明の発祥地であり、これまでも商業や文化の中心地となってきました。レバニーズと呼ばれるレバノン料理は新鮮や野菜、ハーブや豆類にレモン汁やフムス、ヨーグルトなどを多く使うことが特徴で、美食の国としても知られています。この歴史あるレバノンで祝祭に欠かせないお菓子があります。マームールと呼ばれるスイーツがどんなものかご存知ですか?
この記事では、レバノンのお菓子「マームール」を紹介します。中東の世界に触れながらレバノンのスイーツ文化をみていきましょう。
マームールはソフト焼き菓子

マームール(Ma’amoul)はアラビア語です。そしてma’amoulを英語にすると”filled”であり、マームールは何かの詰め物がされたお菓子ということが想像できます。
レバノンの伝統菓子マームール
レバノンは英語でLebanon、正式名称レバノン共和国はLebanese Republicです。レバノンの首都はベイルート(Beirut)であり、かつては中東のパリと呼ばれた素敵な街です。そして、地中海に面した湾岸都市でもあります。
本記事で紹介するマームールはレバノンの伝統菓子であり、シリアなど他の中東の国でも食べられています。
訳)マームールは、レバノンの伝統的な餡いりバタークッキーです。
何の餡が入っているの?
マームールは、なかに詰め物の餡が入っているクッキーです。その餡とは、デーツ・クルミ・ピスタチオなどのフィリングです。デーツとは長さ3〜7cmの大きめのナツメヤシの実を乾燥させたもので、とろっとしていて自然の甘さがとても美味しいドライフルーツです。これらナッツやドライフルーツを細かく刻み、バターと水で加熱して餡を作っていきます。この時点ですでに美味しそうですね。
訳)マームールには、細かく刻んだデーツ・クルミ・ピスタチオが詰められています。
中東の料理屋お菓子づくりには、ナッツやドライフルーツがよく使われますね。
マームールの生地はセモリナ粉

さて、マームールづくりには小麦粉のなかからセモリナ粉が使われます。セモリナ粉を使用することで、マームール独特の食感を得ることができます。
セモリナ粉の産地は地中海沿岸
硬質小麦であるデュラム小麦を粗挽きしたものがセモリナ粉です。セモリナ粉は北アメリカや北アフリカに加え、地中海沿岸で栽培されます。セモリナ粉は粒子が粗いため、独特の風味と歯応えがありますが、これがマームールの食感になっています。
セモリナ粉でマームールの生地づくり
マームールの生地づくりには、セモリナ粉、バター、グラニュー糖、ドライイースト、水が使われます。これらの材料で作ることで、グルテンが少なくほろほろとした食感とバターたっぷりの風味によりとても美味しい焼き菓子ができます。また、焼き上がりはソフトですが、これは短時間で軽く焼いて柔らかさを出すというコツがあります。
マームールのレシピ
ここで、簡単にマームールの作り方をまとめてみましょう。
マームールのレシピを紹介
生地は、セモリナ粉、バター、グラニュー糖、ドライイースト、水で、そしてなかに入れる餡はデーツ・クルミ・ピスタチオを細かく刻みバターと水で加熱して作ります。
生地でフィリングを包み、専用の型でパターンをつけます。
そして約15〜20分、オーブンで焼けば出来上がり!です。
イード(Eid)に欠かせないビスケットたち
皆さん、イード(Eid)を知っていますか?イードはアラビア語で「祝祭」や「ご馳走」を意味し、イスラム教徒にとって重要な2つの祝祭を指します。
イード・アル・フィトルとイード・アル・アドハー
イスラム教にとって、とても大切な祝祭が2つあります。これらはイスラム暦にとって重要なもので、イード・アル・フィトル(Eid Al Fitr)は、ラマダンの終わりを告げるもの、ここから連休に入ります。そしてイード・アル・アドハー(Eid Al Adha)は犠牲祭りとも呼ばれ、預言者の信仰を讃える祝祭です。
イードに欠かせないマームール
イードでは子どもたちはお年玉のようなお小遣いをもらったり、ビスケット類がお菓子売り場を占領する光景が見られます。この時期には、家族や友人と一緒にマームールを作る習慣があります。
訳)マームールはデーツが入ったビスケットで、中東ではラマダンの終わりにイードを祝うためによく食べられます。
レバノン人とマームール

レバノン人たちはマームールをイードの時だけに食べるわけではありません。マームールがどのようにして食べられているかレバノンの文化を少し紹介します。
いつでもマームール!
イードという重要な祝祭だけでなく、イースター(キリスト教復活祭)やクリスマスではこの時期教会でマームールが配られます。宗教的なシーンに限らず、誕生日や結婚式のギフトという特別な場面から、普段のおやつタイムに食べるようなお菓子でもあります。
レバノン人にはおもてなしの心を食事でもてなす文化があります。そんなときもマームールは大活躍です。コーヒーやミントティーといただき、その後はダブケという伝統的なダンスで皆が盛り上がるでしょう。
訳)今では、一年中いつでもマームールを見つけて楽しむことができます。
美しいマームールづくりには専用の木型
しっとりとした餡をほろほろの生地で包んで焼くマームールはとても美味しいのですが、実は見た目も大変美しい焼き菓子です。
マームールづくりに専用の木型
マームールは、セモリナ粉を使った生地をただ丸めるだけではありません。焼くときにマームールの専用の型を使用し、表面にとても美しいパターンをつけます。セモリナ粉の特徴である黄色味の濃い色とこの装飾パターンによって、焼き上がりはとてもスペシャルなものになります。型にはドーム型、細長い型、平べったい型がありますが、それらによってマドレーヌのような放射線状であったり交差する数本の繊細なラインなどを作ることができるのです。
この型のイメージは、以下LEBANESE BAKERYウエブサイトをご覧ください。
このようなこだわりのセンスは、中東のイスラム模様という美しい文化を持つ人々ならではなのでしょう。
まとめ
本記事ではレバノンの伝統的な焼き菓子「マームール」を紹介しました。セモリナ粉を使って作る生地のほくほくした食感に、しっとりしたナッツやドライフルーツ餡のコンビネーションがとても美味しいスイーツです。イードというイスラム教徒にとって重要な2つの祝祭に欠かせないお菓子であることも分かりました。レバノンは現在、エリアによって渡航中止勧告と避難勧告が出ている国でありなかなか訪れることはできませんが、この記事をお読みになって少し中東またはレバノンの雰囲気を感じていただけていれば嬉しいです!

