へルメスはオリュンポスの神々の伝令係として冥界、地上界、天界を行き来する神とされています。その役割は多岐に渡ります。この記事では、オリュンポス十二神の一柱であるヘルメスの役割と性格をエピソードを交えながら解説します。

ヘルメスとは?

ヘルメスとは?

ヘルメスはギリシャ神話に登場するオリュンポス十二神の一柱で、商業、旅行、盗賊、伝令、雄弁、境界の守護など、多様な役割を持つ神です。ローマ神話では「マーキュリー」として知られ、「水星」の語源ともなりました。俊敏で機転が利く性格を持ち、神々の間を行き来する使者として活躍します。
ゼウスとマイアとの間に生まれたヘルメスは、生まれたその日から驚くべき才能を発揮しました。幼少期から抜け目なく狡猾で、知恵に長けていた彼は、ギリシャ神話の中でも特に個性の強い神として知られています。

英語での説明:

Hermes is one of the twelve Olympian gods in Greek mythology. He is the god of many things, including commerce, travel, thieves, messages, speaking well, and boundaries. The Romans called him Mercury, and the planet Mercury is named after him. He is fast, clever, and acts as a messenger between the gods.
Hermes was born to Zeus and Maia. Even as a baby, he was very talented. He was smart and tricky, and he is known as a very unique god in Greek myths.

ヘルメスの神話とエピソード

ヘルメスの多彩な性格が表現されている神話やエピソードを紹介します。

1. アポロンの牛を盗む

ヘルメスの最も有名なエピソードの一つが、彼がまだ生まれたばかりの赤ん坊の時に起こったアポロンの牛泥棒事件です。
生まれて間もないヘルメスは、昼間にゆりかごを抜け出し、アポロンが所有していた牛50頭を盗みました。彼は牛を逆向きに歩かせることで足跡を混乱させ、誰にも犯行がバレないようにしました。しかし、アポロンは占いによりヘルメスの仕業だとわかり、ゼウスの前で裁きを求めました。
ゼウスの裁きのもと、ヘルメスはアポロンに弁解しつつも、最終的に牛を返しました。そして和解の証として、ヘルメスは自作のリラ(竪琴)をアポロンに贈り、それを気に入ったアポロンは音楽の神としての地位を確立しました。

2.アルゴス殺し

ヘルメスは、ゼウスとイオの伝説において重要な役割を果たしました。ゼウスが愛したイオは、嫉妬したヘラによって牛の姿に変えられ、百の目を持つ巨人アルゴスに監視されていました。アルゴスは寝ている間も50の目は開いており、死角が全くない状況でした。
ゼウスの命を受けたヘルメスは、アルゴスを眠らせるために葦笛で美しい音楽を奏で、彼が完全に眠りに落ちた瞬間、剣で首をはねました。こうしてヘルメスは「アルゲイポンテス(アルゴス殺し)」という異名を得ることになりました。

3. アフロディーテとの関係

ヘルメスは、美の女神アフロディーテとも関係を持ちました。二人の間に生まれた子供が、両性具有の美しい神ヘルマプロディートスです。
伝説によると、ヘルマプロディートスは成長すると、美しさを誇るニンフのサルマキスに愛されました。サルマキスは彼と一体化することを望み、神々に願いを叶えられた結果、二人は一つの身体となり、男性と女性の両方の特徴を持つ存在となりました。この神話は、ギリシャ神話の中でも特に独特な性別に関するテーマを持つ話として知られています。

4.冥界の案内役

ヘルメスは「プシュコポンポス(魂の導き手)」とも呼ばれ、亡者の魂を冥界へ導く役割を担っていました。死者の魂が冥界へ迷わず到達できるように案内する彼の存在は、古代ギリシャにおいて重要なものでした。
また、ヘルメスはハデスの使者として、時には生者と死者を繋ぐ役割を果たし、冥界の神々との交流を持つこともありました。このため、彼は単なる伝令神ではなく、生と死の境界を超える特別な存在としても崇拝されていました。

5.オデュッセウスを助ける

『オデュッセイア』では、ヘルメスは知恵と機転を活かしてオデュッセウスを助ける重要な役割を果たしました。オデュッセウスが魔女キルケに捕らわれた際、ヘルメスは彼に魔法を無効化する薬草「モリュ」を授け、キルケの呪いを防ぐ手助けをしました。

ヘルメスの神話とエピソードを英語で解説

ヘルメスの神話とエピソードを英語で解説

1. Stealing Apollo’s Cows

One of Hermes’ most famous stories is when he stole Apollo’s cows as a baby. When he was just born, Hermes got out of his cradle and stole 50 of Apollo’s cows. He made the cows walk backwards to confuse their footprints and hide his tracks.
Apollo found out Hermes did it through his powers, and they argued in front of Zeus.
Hermes gave the cows back and gave Apollo a musical instrument called a lyre as a peace offering. Apollo liked it and became the god of music.

2. Killing Argus

Hermes played a big part in the story of Zeus and Io. Zeus loved Io, but Hera turned her into a cow and had a giant with 100 eyes, Argus, watch her. Argus never slept, so he could always see everything.
Zeus told Hermes to free Io. Hermes played beautiful music on a reed pipe to make Argus fall asleep, then cut off his head.
This is how Hermes got the nickname “Argeiphontes” (Argus slayer).

3. His relationship with Aphrodite

Hermes had a child with Aphrodite, the goddess of beauty. Their child was Hermaphroditus, a beautiful god with both male and female traits.
When Hermaphroditus grew up, a nymph named Salmacis fell in love with him. Salmacis wanted them to be one person, and the gods granted her wish.
They became one being with both male and female characteristics.

4. Guide to the Underworld

Hermes was also called “Psychopompos” (guide of souls). He guided the souls of dead people to the underworld.
Hermes helped them find their way so they wouldn’t get lost. He also acted as a messenger for Hades and sometimes talked to both the living and the dead.
People saw him as a special god who crossed the line between life and death.

5. Helping Odysseus

In the “Odyssey” story, Hermes helped Odysseus using his cleverness. When Odysseus was trapped by the witch Circe, Hermes gave him a magic herb called “moly.”
This herb helped Odysseus resist Circe’s spells.

ヘルメスのシンボルと崇拝

ヘルメスの象徴として最も有名なのは、翼のついたサンダル(タラリア)と、二匹の蛇が巻き付いた杖(カドゥケウス)です。タラリアは彼の驚異的な速さを、カドゥケウスは平和や交渉を象徴しています。
彼は旅人や商人の守護神として崇拝され、特に交易の神としてギリシャ全土で信仰されていました。また、ヘルメスは道ばたや畑の境界に置かれた「ヘルマ」と呼ばれる石柱によって崇められ、商業活動の繁栄を願う信仰が広まりました。

まとめ

ヘルメスはギリシャ神話において、多彩な役割を持つ神として活躍しました。彼は神々の伝令使であり、商業や盗賊、旅人の守護神としても知られています。幼少期から知恵と狡猾さを発揮し、アポロンとの牛泥棒事件や冥界の案内役、オデュッセウスを救うエピソードなど、数々の伝説を持っています。
その俊敏さと機転の良さから、古代ギリシャにおいて広く信仰され、現代でも「伝令」や「商業」といった概念に結びつく神として語り継がれています。